弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
ともかく第58話です、お楽しみください
日本 伊吹山の麓にて…
見渡す限り木々しか見えない場所の上空を一機の大型ヘリ、カーゴボブと呼ばれる乗り物が飛行する
着陸可能地点を探して数分程、やがてパイロットは開けた広場を見つけて着陸体制へと入る。
本来ヘリの着陸には誘導員がいるものだがここにそんな人間はいるわけが無いし彼女にも必要なかった
「…っと、目的地に到着いたしました♡」
「ああ」
プロペラから巻き上がる喧しい風の音を聞きながら外へと出る
「………」
新しく召喚したアサシン、望月千代女によれば50年前にここで召喚され、影月 此方──つまり
コヤンスカヤの事前調査によれば現在の伊吹山は人も動物も近寄らない異常地帯…たまに中へ入ろうとする奴が居るがそいつらさえも何者かが排除しているらしい
「お、お館様」
「分かってる、おい彼方」
「なに?」
やや怯えた声色でヘリの中から顔を覗かせるアサシンの手首には何度か見た紫色の尻尾がちょっかいをかけるように絡みついている(ややこしいので以後パライソと呼ぶ)
「そいつは大事な案内人だ、手を出すな。無視しろ」
「えー?」
まだパライソについてよく分かっていないがどういうわけか彼方が近くに居ると異常に怯える上に彼方自身がそれを面白がっている、ように見える
仕方なくパライソの元へ
「…今尻尾を離すか小指をヘシ折られて痛みで離すのがいいか決めろ」
「え、分かったよ。指折られるのは今も痛いし」
とまあ、そんなことを言っている彼方の無防備な小指を掴み──
ボギッ
「エッ、ギャーッ!!??なんで???」
「気が変わって折らずに済ませるのをやめた、コレに懲りたらパライソに近付くな。お前は姉さんとくっついていればいい」
そうだろ、姉さん?
「…」
ヘリの中で借りてきた猫のように大人しい姉さんを見ながらパライソを連れ出す
来たは来たでダンマリか、こっちとしてもありがたいからそれでいいんだが
「──お館様は」
「うん?」
「姿は同じでも、ざいる殿とは違うでござるな」
「不満か?」
「いえ滅相もありませぬ、それよりもこうしてまた手を貸していただきかたじけない」
「…気にするな、いずれこんなことも忘れるくらい死物狂いで働いてもらう時が来る」
さて…
振り向けば「びっくりしたー」と小指の骨を再生させた彼方とコヤンスカヤがヘリから降りてきていて、さらに──
「やれやれ、どこに行くつもりだ茨木童子?」
姉さんに化けた茨木童子の腕を掴む
「!!!な、なぜ…?」
表情に余裕が無さすぎだ、逆に言えばそれ以外では完璧といえる見事な変化でありコイツのメンタルが強ければ分からなかっただろうが
「それをお前に言う必要は無い」
逃げられても面倒だ、やはり伊吹山ハイキングにコイツは行けないな
「まぁどうせこのまま戻るから関係ないが。コヤンスカヤ、終わったら連絡しろ」
「もちろんですわザイルさん♡では皆さま、参りましょう!」
「コヤンスカヤの道案内を頼むぞ、パライソ」
「はっ、はい!」
伊吹山の入口へ向かうコヤンスカヤ、上機嫌な彼方とやや怯え気味なパライソ、3人の背中を見送ってヘリに乗り込む、と──
「姉さんも行くのか?」
「…うん」
「そうか、気を付けてな」
「………うん」
顔を伏せていて表情の見えないまま姉さんとすれ違い、ヘリ内部の座り心地最悪なイスに腰掛ける
「分かった、もう逃げぬ。だから手を離してくれ」
「それを聞いたのはこれで4回目だ、許可できないな
それにその気になればこの程度の義手、簡単に壊せるだろう?」
出方を見るためにあえて何回か逃げる隙を与えてみたが分かったことが2つ
危機察知能力が今まで俺が会った誰よりも高いこと、そして鬼のくせに小心者であるためか強硬策に出る気配が無い…今のところは
「まぁ強硬策に出るのは逃走経路だの隠れ家だのを見つけでもしない限りしないだろうがな」
「な、なんだ?なんなのだ貴様は?心が読めるのか…!?」
図星か、やれやれ
「おいコヤンスカヤ」
「あー終わりました?じゃ
コックピットから顔を覗かせるパイロットスーツを着たコヤンスカヤに指示を出し、ヘリを飛ばす
…今さっき伊吹山へ登って行ったコヤンスカヤとは同一人物であり別人だ
「それにしても分裂出来るとは驚いた、スキルや戦闘能力は問題ないのか?」
「まぁこれくらいならなんとも、ビーストとしての権能をバンバン使うというのは無理ですが」
「そうか」
ちなみに今ここでヘリを操縦しているのがアサシン霊基のコヤンスカヤで下にいるのがフォーリナーという霊基のコヤンスカヤらしい
「ところでザイルさんは行かなくて良かったんですか?」
「俺は報告を聞くだけでいい、あんな場所には1秒だって居たくないからな」
みるみる内に眼下の伊吹山が小さくなっていくのを見ながら返事を返す
「ところで義手はどうなってる?」
そろそろ
「それでしたらあとはザイルさんの義手を外してサイズや相性を測るだけです」
「ボーダーに戻り次第、作業を頼む」
もう、俺に魔術回路は必要無い
「かしこまりました、それとワタクシからも相談事が2点ほど」
相談事?
「なんだ?」
「ザイルさんの礼装、否幻想弾ですが残り弾数はいくつですか?」
残りは確か──
「8発だ、それがどうかしたのか?」
「実はその礼装をもっと強力なものに加工できるかもしれず、1発お譲り頂けないかと」
「へぇ…?」
サーヴァント貫通よりも強力な効果が見込める、ということか?
「もちろん結果が出次第、すぐに報告致しますわ」
出発前、コヤンスカヤが彼方から採血をしていると姉さんが言っていた。そして忘れそうになるが俺のこの身体は元々は彼方の肉体が人格と共に変化したものだ。何か思いついたのかもしれないな
「良いだろう、もう一つはなんだ?」
「ノーアさんについてです、実は──」
操縦桿の方へ向いたまま片手でひらりと彼女が見せたもの
あれは確か…
「ノーアのスマホか?」
「はい、グランドアーチャー戦に向けて下準備をしている時にたまたま拾ったものです。
死んでいる以上もう脅威になることはあり得ませんが彼女が何故ああなったのか?という点に個人的に興味があり解析を進めていますがプロテクトが異常に固く…」
成程、付き合いのある俺なら何か解除のヒントを持っているかもしれない、ということか
「義手換装までの暇つぶしにはなる、構わない」
「ありがとうございます♡」
…
「…さて」
向こう側は今何をしているんだろうな?
〜
同時刻
伊吹山 寂れた登山口にて…
とまぁ、嫌がるザイルさんに変わりワタクシが文字通り身を削ってこちらに来たわけですが
「分かってはいましたがビビりっぷりが凄いですねぇ」
影月 彼方の視界から少しでも外れたいのか物陰に隠れる小動物のようにピッタリと横にくっついているアサシン、望月千代女
真名を知らなければすぐにでもポイしてましたが場所が場所な上に真横にいるのは(不完全とはいえ)神。流石に同情致しますわ
ちなみに当の彼方さんは彼女に目もくれず犬のよう遥さんにすり寄っている
まぁなんであれ仕事はキッチリ終わらせるだけです
「次はどちらに?」
「え、ええと…あと一里程このまま直進でござる」
一里…3㎞前後ですか、山奥なのは知ってましたが鬼以外と関わる気の無い一族だったんでしょうか?
いえ、だとすればザイルさんの記憶と矛盾します。彼の記憶には影月家以外の人間が何人もいました
ザイルさんの過去とは別に、50年前の痕跡も見つかるといいのですが
「!?敵でござる!」
いきなり大声を上げたパライソさんに全員の視線が集まる
「敵?」
間の抜けた表情の彼方へ、直後黒鍵が投げつけられる
「彼方っ!」
それを素手で弾き返しているあたり遥さんも大概ですね
「うーん?」
この武器、確か代行者の…まさか敵ってコレですか?
ということは山に入ろうとする人間を排除しているのは聖堂教会ということになりますが…
どうも代行者本来の役割から外れているような気がしてならない
少なくとも1箇所に構えて迎撃、なんてことをする人員では無かったような──
そんなこちらの思案をよそに林の向こうから出てくる2つの人影、恐らくどちらも代行者だ
やはり代行者らしくない、基本単独行動の彼らが複数人で動くのは妙だ
門番が欲しいなら代行者よりもっと向いた魔術師や使い魔を配置すればいいハズです
2人の代行者とは全く関係のない方向から再び飛んでくる黒鍵を尻尾で軽くはたき落とす
「まぁ考えるのはこのへんで。今は戦いましょう」
「承知」
「うん!今度は私がお姉ちゃんを守るね!」
「待って、私も戦う」アルテミスちゃんの力ならきっと殺さずに──
しかしコレは…ねぇ?ぱっと見は我々4人と代行者4人の4VS4ですが。
「私が戦うからお姉ちゃんは私の後ろに隠れてて!」
←神霊伊吹童子に気に入られ、半ば神と化した人間
「彼方!私は大丈夫!大丈夫だからここは私に任せて、ね?」
←ギリシャの月女神の霊基を譲り受けて並の英霊以上の力を行使する人間
「誰であろうと敵ならば容赦はしないでござる、お覚悟!」
←英霊
「で、ワタクシ」
←世界を滅ぼしうる力を持った災厄の獣(実績アリ)
「………」
………まぁサクっと行きましょうか
コヤンスカヤに耳かきして欲しいし耳かきしてあげたい作者のルルザムートです、ハイ。
正直ここはザイル陣営全員で乗り込んでも良かったんですが色々考えた結果別行動に。うん、こっちのほうがしっくりくる。