弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》   作:ルルザムート

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第63話です、お楽しみください


第63話 取引終了

ロンドン 時計塔入口にて…

 

 

「ここが魔術教会の総本山か?」

どうも建っている場所に違和感があるような気がするが…イギリスの建築センスか?

 

 

「ええ、しかしこんな条件を飲んでくれるとは正直思っていませんでした」

相変わらず読めないですね、と横を歩くコヤンスカヤが呟く

…確かにな

 

 

時計塔にある自身の自室で話がしたい、というキリシュタリアの提案に対し1つ条件を提示した

 

 

 

 

『互いにサーヴァントを連れて行かないこと』

 

 

もちろんこんな条件普通なら通る訳が無い、ここから少しずつ条件を変える予定だった

 

 

『…一つだけ条件を変えさせてくれ』

『なんだ』

『彼女、コヤンスカヤだけは例外として話に参加させて欲しい』

 

 

しかし彼の口から出てきたのはコヤンスカヤも連れて行くという意味不明なもの

もちろんこっちにとってはメリットしかない。罠を疑ったが生半可なものでは足止めにもなりはしない、と条件緩和?を受けることに

 

 

『…カイニス、悪いが少し席を外してくれないか』

『お前正気か?』

『正気だとも、そちらの鬼と外で待っていてくれ』

 

 

『…そういうことだ、待っていろバーサーカー』

『う、うむ』

 

 

 

 

「さ、こっちだ」

彼に続いて時計塔へと足を踏み込む

当初は茨木童子を囮に暴れさせ、忍び込む予定だったが…これはこれで好都合だ

 

 

時計塔に居た人間も最初は奇怪な目でこっちを見ていたが彼が一言『私の友人だ』と言っただけで奇怪な目は止み、蜘蛛の子を散らすように殆どが逃げていった

 

 

「…」

ふと足が止まる

「どうしたんだい?」

 

 

…やはりうまく進みすぎている

目の前の男に魔術行使の気配は無い、コヤンスカヤも沈黙を守っている以上それは間違いない

「いや、なんでもない」

 

 

再び足を進める

どういうことだ?目の前の男は確かにキリシュタリアではあるが大西洋異聞隊で大神ゼウスと交友関係を築いた人間じゃない

 

 

オリュンポスやアトランティスで見せたデタラメな魔術はあの異聞隊あってこそ、どれだけ優秀であろうとも単騎でビーストを相手にするなんてことができるのか?

答えはノー、だろう。もしそんなマネができるのであればとっくに封印指定を食らっているはずだ、その上でこの行動は…

 

 

「…ち」

分からない、何を考えている?キリシュタリア・ヴォーダイム…

 

 

思案しているうちに部屋の前に着く

キリシュタリアの部屋という訳ではなく、ただの客室のようだ

 

 

「どうぞ座ってくれ、今お茶を出すよ」

「ああ」

茨木童子を通して探知する限りランサーはこちらに来ていない、変わらずサーヴァントの気配も無し

時計塔の部屋にしては質素な内装…特徴の無い部屋の中に設置されたソファに座る

 

 

 

「どうぞ」

既に用意されていたであろうお茶の入ったカップが目の前のローテーブルの上に2つ置かれる

「おや、良い香りの…どこのお茶ですか?」

「うーん…すまないが人に頼んで用意してもらった物でね、美味しい以外自分でもよく分かっていないんだ」

 

 

フランクな口調にややペースを乱されそうになるが落ち着いてさらに思考を重ねる

「…」

ただのお茶だ、紅茶でもなくコーヒーでもない普通のお茶。細工無し

(そこまでピリピリしなくても大丈夫そうですよ?…()()

…そうか

 

 

「今は、か」

誰にも聞こえないように言葉を漏らしつつ、とりあえず一口。

…美味いな

 

 

「さて、改めて名乗らせていただくよ

私はキリシュタリア・ヴォーダイム。この時計塔で勉学に励むただの魔術師さ」

ただの魔術師ときたか、やれやれ…

「神霊をコキ使える魔術師を()()()と言っていいか甚だ疑問だが今はいい、何を目的としてこんなフザけた提案に乗ったのか教えてもらおうか」

 

 

どうにもやりづらい、コヤンスカヤとはまた別の掴みどころの無さと言うものか?

コイツの意識は今はっきりと俺に向いているというのに、考えどころか感情も読めない

 

 

「災厄の獣コヤンスカヤ、そのマスターのザイル・ニッカーがどういった人物なのかを肌で感じに来た」

ゴネるかと思った返答を、まるで自分で書いた台本を読むかのようにサラサラ出していく

 

 

目的はこっちと大差無いな、それにしてもコヤンスカヤに対する追及が無いということは──

「さらに正確に言うならキミの動機を聞きに来た、何を持って人間を憎むのか、滅ぼそうとするのかを」

 

 

恐らくランサーから何か聞いているんだろう、コヤンスカヤの情報は武器にはなりそうにない

が、今はキリシュタリア・ヴォーダイムという男のことを知る絶好の機会でもある

 

 

「教えてもいいがお前は何を差し出すんだ?商談がしたいと言いだしたのはお前だと聞いているが?」

「もちろん、タダで聞くつもりは無いよ」

 

 

そう言って彼が懐から取り出したのは1つの金属片だった

どう見てもゴミにしか見えないソレからは俺でも分かるくらい喧しい神性が放たれている

この気配…姉さんから出てる気配にどこか似ている?

 

 

「カイニスが無理矢理こちらに持ち込んだ大西洋異聞隊の王『機神ゼウス』…その一部さ

私のことを話してもいいが、それが本当だと証明する手段を持ち合わせていなくてね」

これで代わりにならないかいと彼は神の一部を差し出してくる

 

 

「本気か?それこそ俺がいくら言葉を並べたところでそれが本当だと証明する手段は無いかもしれないぞ?」

「構わない、私はキミの言葉が聞きたいしそれに──キミは証明の手段を一部持っているんじゃないか?」

 

 

「…やれやれ」

これがただならぬ物というのは分かるが使えるかどうかは別問題だ、おいコヤンスカヤ

鉛玉飛び交う殺し合いの場に金の延べ棒があったって意味がない、それが意味ある物になるかどうかをコヤンスカヤに質問する

 

 

お前から見てコレは使えそうか?

(ただの燃料としてボーダーの動力部に放り込むだけでも充分なリソースが期待できます、武器や義手への流用もできるかもしれません

異聞隊から持ち込まれた、という点も加味すればある意味ドリームマテリアルでしょう)

 

 

ふむ

(それに兵器としてワタクシがコピーしたアフロディーテ等と違い実物として目の前に存在しているのも大きいです、ワタクシがその場に居なくともザイルさんが不自由無く運用できます)

出来ることなら回収したいと言う彼女に賛同し、その破片を受け取った

 

 

「さて、何から話したらいいか」

「簡単さ、ザイル・ニッカーが望むもの…今のキミ自身の行動をするにあたった根源を教えてほしい。()()()()()()()()()()()

いつかのコヤンスカヤと似たような質問、あの時はまともに答えられなかったが今は違う

 

 

「憎いから、だな。ガキの頃からボロクソに攻撃してきた人間は許せないし、そいつら以外もどうしようもなく憎くて殺してやりたいからだった」

「…()()()?」

「ああ」

 

 

疑問符を浮かべる彼に言葉を続ける

自分でも不思議なくらい言葉が出てきて驚いている、これが彼方ではないザイルとしての本音ということらしい

 

 

「人間を殺し尽くしたい願望は変わっていない、だがソレ以外の目標がコヤンスカヤのお陰で1つできた。『楽しむこと』だ」

映画を観るのは楽しいしパフェを食うのも楽しい、ボウリングもカラオケも。

日本でもアメリカでも俺1人では決して知る術も無かった娯楽の数々

 

 

「そうだな、簡潔にまとめるなら…『人間を殺しながら自分の人生を楽しむため』だ」

「なるほど」

意外とも予想通りとも取れる彼の表情。一見最初から変わってないように見えるその瞳の奥には密会前には無かった焔が付いたのを俺もコヤンスカヤも感じ取った

 

 

「…今からでも、止めるつもりは?」

「あると思うか?」

「無いだろうね、ここで止めるくらいなら彼女もここまでキミに尽くしたりしない」

 

 

直後彼の雰囲気が更に変わった、明確に敵だと判断したらしい

いずれにせよ人類皆殺しにあたってキリシュタリア・ヴォーダイムとの激突が避けられないことはもう間違いない、カイニスが出てきたのは想定外だったが存在を確認できただけで良しとしよう

 

 

「その通りだ、ところでコヤンスカヤもお前に聞きたいことがあるらしいんだがコイツとの質疑応答もこの会談の内に含まれているのか?」

「そのつもりだ、私に答えられることなら答えよう」

 

 

そう言われて視線のスポットを当てられるコヤンスカヤはやや困惑しているようだった

(おっと、ザイルさん?)

ゼウスだかの破片を見た瞬間、何か考え…予想や推測か何か出ただろう。いい機会だ、質問しておけ

 

 

(ふむ、確かにありますよ。聞いておきたいこと、それでしたらここは是非甘えさせてもらいますわ)

「ではキリシュタリアさん、ワタクシからも1つ」

「構わないよ、なんだい?」

 

 

(いくら彼でも存在しない証拠は用意できません、空回りならそれで良いんですが)

なんの話だ?

 

 

「機神ゼウスの破片はあとどれだけ残ってますか?」

「…残っているのはキミらに渡したそれだけさ」

ほんの一瞬、それもほんの僅か。だがさっきまでと声の高さが違った

今のは…

 

 

(もう少し掘り下げていきます)

分かった、好きにやれ

「どうでしょう?もしそうだとすれば色々と辻褄が合うんですがねぇ」

()()とはどういうことだい?」

 

 

「ワタクシがザイルさんと共に駆け抜けた聖杯戦争にはギリシャ出身サーヴァントが多かったんです。剛腕の狩人 オリオン、トロイアの英雄 ヘクトール、オケアノスの魔女 キルケー」

キルケー?

(ノーアさんが今回の聖杯戦争に紛れるため真っ先に排除したキャスターです、彼女のスマートフォンの記録により分かりました)

 

 

もっともまだ10%も解析できていませんが。と零しながら彼女はさらに言葉を続ける

「もちろんこれだけでは偶然と言われれば否定する材料はありません、問題なのは日時です

…彼らは全員今より10日前の全く同じ時間に召喚されていることが分かりました」

 

 

「…」

そんな話は聞いていない、ということは恐らくカマを掛けているのだろう。ここは静観しておいた方が良さそうだ

(カイニスさんに対するこっちのキリシュタリアさんの態度、物腰からざっくりと予測した数字です、仮に最初から関連性が無くとも事実確認の手段は彼らにありません)

 

 

「こちらを」

コヤンスカヤが彼に差し出したのは数枚の写真だった、写っているのは──姉さん?

「…彼女は」

 

 

「更には擬似的にとはいえ、彼女…影月 遥という人間を依代に月女神まで降りてくる始末。

擬似サーヴァントとして神を召喚するというのは本来、理論上は可能というだけで現代ではほぼ再現は不可能です

キリシュタリアさん、例えそれがアナタでも。

それがロクな準備も無く、秀でた魔術の才能も無い彼女に降りているのは異常でしかありません」

 

 

コヤンスカヤ以外誰も喋らない、俺もキリシュタリアも彼女の話をただ静かに聞いている

「ここまでの点を踏まえてもう一度質問させていただきます」

答えにくいのであれば答えなくても結構ですよと一言添え、彼女はもう一度同じ質問を投げかけた

 

 

「ゼウスの残骸はあとどれくらい残ってます?」

 

 

キリシュタリアは答えない、顎に手を当て何か考え込んでいる

「…うん、そうだね」

──が、それも少しの時間、彼は俺の質問に答えた時と同じようにさらりと答えた

 

 

「機神ゼウスの破片が他にも存在したことは合っている、だがそれも数日前までの話さ。カイニスが持ち込んだ最高神の遺物は既に使い切っている」

まさかそんな遠い場所に影響が及んでいるとは思わなかったけどね、と付け足し紅茶を飲むキリシュタリア

 

 

「へぇ、ちなみに何に使ったんですか?」

「…キミらを倒すための秘密兵器にさ」

 

 

「…やれやれ」

秘密兵器、と来たか。どう思う?

(ぶっちゃけ全く分かりません。ただのブラフな可能性もあります。

しかしワタクシの知る限り彼が雑な嘘を付くとは思えません…これ以上根掘り葉掘り聞いても無意味でしょうね)

 

 

「一応質問するがその秘密兵器の正体は?」

「流石に答えられないな、キミらがもう誰も殺さないと言えるなら明かしてもいいのだが」

なるほど、無理な話だ

 

 

「そりゃ答えるわけないでしょう」

「だから一応と付けていただろう。まぁいい、これ以上無意味なのは分かった

こっちから聞きたいことはこれで終わりだ、そっちからは?」

「ならばあと一つ、ザイルに聞きたい」

 

 

ティーカップを手に取り、じっと空っぽのカップの中を見てから…そのままテーブルへ戻す。言葉の整理でもしたんだろうか

(案外『あれっ、もう無くなったの?』とか内心思ってたりしませんかね?)

「…」

やれやれ、目の前のコイツは別世界じゃ人類の敵筆頭でもあった程の男だぞ、ありえない。

 

 

「キミは私が証拠を求めたら何を提示するつもりだったんだい?」

コヤンスカヤとの下らない念話やりとりを遮るように最後の質問を投げてくる

証拠か

「日本、岐阜県もしくは滋賀県にある伊吹山の廃村、そこに証拠がある…とだけ言っておく。調べたいなら好きにしろ」

仮に今すぐ向かったとしても姉さんと鉢合わせになることは無いしな

 

 

「──日本か、うん。分かったよ、これでこちらからの質問も終わりだ」

「そうか、じゃあこれで商談は終わりだ」

有意義な時間だったよ、とティーカップを片付けるキリシュタリアの背中を見て…決心した

 

 

「ティーカップの片付けなんて後にしてランサーを呼べ

コヤンスカヤ、お前もバーサーカーにこっちへ来るよう伝えろ」

ああ、やっぱりこうなるんですねぇ…とジト目で見てくるコヤンスカヤに催促し、バーサーカーへ連絡を入れさせる

 

 

「いいのかい?」

「不意打ちされる方が面倒だ、ただの天才なら交戦する気なんて無かったがお前は人類滅亡計画において間違いなく1番の障壁になり得る奴だと確信した。そうも言ってられないらしい」

 

 

え、計画あったんですか?と小声で言ってくるコヤンスカヤ

ああ、あるとも。時間はかかるが確実なのがな

「…キリシュタリア・ヴォーダイム」

 

 

ザイルの手元にはNFF印のライフルが

キリシュタリアの元には高度な魔術で創られたであろう杖が

そしてその場に居ないはずの2騎のサーヴァントが2人に呼応し

コヤンスカヤからはそれまで微塵も感じなかったり火薬の香りが漂い始める

 

 

もうそこから先は何も言わずとも何が始まるのか誰もが理解していた

理解してはいたものの再認識のためか、あるいはただ言いたかっただけか

 

 

「お前はここで死んでおけ」

 

 

──その呟きと共に戦闘が始まった──




朝コーヒーを嗜むコヤンスカヤを想像して寝起きの活力にしている作者のルルザムートです、ハイ。
10/25から2週間、スマホが触れなくなる可能性が大なのでしばらく更新が止まります。
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