弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡   作:ルルザムート

68 / 111
お待たせしました、第65話です
お楽しみください(久しぶりに7000超えてしまった…)


第65話 希望を担うもの

時計塔 上層 廊下にて…

コヤンスカヤvsリンボ

 

 

「まったく次から次へと」

ヒトの気配が無い廊下にバイクを走らせ、とりあえずクソ坊主から距離を取る

「ンンン!緩い、緩い!あまりにも緩い!獣らしく拾い食いでもして霊基を崩されたので!?」

 

 

ふむ、やはり

キャスターでもあるリンボさんが()()()追いかけてきているあたり、少なくとも魔術の射程距離は弱体化しているようです

「鏡と会話してらっしゃるところすみませんがワタクシには猫マッチョと戯れている時間は無いんです」

 

 

アンタマテリアルライフルM82を展開、目視することなく標準を合わせて撃つ

「…外れましたか」

できればザイルさんが以前持っていたノーアさんのライフルをコピーしたかったんですが。性能が破格ですし。

 

 

余談だが彼女(ノーア)が作った兵器は何故か軒並みコピー出来なかった、作った当時何者であろうと元がヒトであり、この世界に住まう人類であったのなら間違いなく使えるはずなのだが…

 

 

まぁ、それは後で考えるとして──

 

 

バイクを乗り捨てて跳躍、呪詛で塗れた突きを避ける

床のバイクと自身に挟まれるような位置へ飛び込んできた道満、その位置関係を瞬時に把握してスキルを発動、バイクを引き寄せる

「ンン、逃げ足だけは──ンッ!?」

 

 

バイクにカチ上げられ、無防備に迫り上がった2メートルの巨体の首めがけてライフル弾を叩き込む

元の時点で鋼鉄の戦車に風穴を開ける威力を持った弾丸がコヤンスカヤのスキルによって更に強化された結果、命中した弾丸は豆腐を抉るように道満の首を吹き飛ばした

 

 

これで──

「死にました?」

「滅相もございません!」

吹き飛んだ首がそう喋るが早いか、真横から飛んできた陰陽師とは思えない蹴りにこちらも蹴りを打ち込んで相殺

 

 

波一つない水面に鉄板を叩きつけたような乾いた音が周囲に響き、一つ一つが無駄に大きな窓ガラスがガタガタと振動する

「おっとっと」

衝撃を逃しつつ後退、マシンピストル(スコーピオン)を手に彼の出方を伺う

 

 

どこかで式神と入れ替わっていたらしいですね

弱体化していようと小細工だけは1級というのは変わっていないようです

「霊基の差もありますし最悪時間をかければ殴り勝ちできそうな気がしますが他の戦場(場所)が気になります」

 

 

早いところ駆除した方がいいですねぇ

 

 

時計塔 下層 エントランスにて…

カイニスvs茨木童子

 

 

廃墟同然に荒れ果てたその空間を更に荒らしながら戦い続けるサーヴァントが2騎

 

 

「くっ、そっ…ガキがッ!!」

「ギギィッ!?」

暴走状態のサーヴァントを渾身の力を込めて殴り倒し、槍を手元に呼び寄せる

 

 

今度、こそ!これで終わりだ…!早くキリシュタリアのところへ──

「ガッ、ガオオォォアアア!!!」

「がっ…!」

 

 

背中から聞こえた怪物の咆哮と一瞬遅れてやってきた衝撃に吹っ飛ばされる

「フーッ!フーッ!フッ…!」

「クソ…ふざけんな!不死身か!?てめぇは!!」

 

 

槍で瓦礫を払いのけてバーサーカーへ急接近、お返しと言わんばかりに吹き飛ばすが──

「グッギギッ!」

 

 

まだ立ってきやがる…!これじゃキリがねぇ、宝具を使うか?

倒せなくともそう簡単に戦線復帰ができないくらい遠くへ吹き飛ばすことはできるかもしれない

 

 

いやダメだ!異聞帯の時とは違う、今のアイツはオレとアルターエゴの2騎と契約しているせいで既に魔力消耗が大きい、加えてアイツだって戦闘中だ

そんな状態で宝具を使ったら…

 

 

絶対的な確信が彼にはあった。もし自分が手こずっているとキリシュタリア(マスター)が知れば躊躇なく令呪を切りに来ると。

今の状態で宝具を使うには令呪に頼るしかねぇが──

 

 

「ルガァッ!!」

「るっせぇッ!!」

バーサーカーと打ち合いながら、数時間前キリシュタリアに言われた言葉が脳裏を過ぎる

 

 

『もしビーストの陣営とここで戦うことになったとしても無理に倒そうとしなくていい、何故なら──』

 

 

まだ()()()では無いのだから

 

 

時計塔 中層 大廊下にて…

ザイルvsキリシュタリア

 

 

「ここも含めて…戦況は拮抗しているようだね」

「やれやれ、とんでもないハンデ背負った状態で涼しく言ってくれるな」

予備動作を消し、滑るように接近してナイフを振る

カプセルのように奴の全身を守る魔術の防壁にナイフが突き刺さる

 

 

これくらいの攻撃、本来は弾き返す代物だろうがNFFボーダーのようなバックアップもなくサーヴァント2騎と契約状態にあるせいか魔力が不足して本来のスペックを発揮できていない、同様の理由で攻撃にも弱体化が見られる。これなら──

 

 

「俺1人でも勝機はある」

アサルトライフルのアンダーバレルとして取り付けられたグレネードランチャーを叩き込み、防壁を砕く

よし、コヤンスカヤの武器装備(商品)ならあの防壁はカンタンに砕けるらしい

 

 

先のナイフと同じ要領でもう一度接近し、ガラ空きになった胴体を殴り上げる

「…っ!」

吹き飛ばしはしたが手応えが違う、杖でガードしたか。

…まぁ関係ないが

宙へと吹き飛ばしたキリシュタリアを蜂の巣にしようとライフルの銃口を向け──

 

 

ふわっ…

 

 

っ!!魔力の流れ…!

「『レオレオ!防御機能強化!』…ぐぅ!」

さっきまでキリシュタリアが立っていた場所から無数の魔弾が形成され、叩き込まれる

 

 

最初に張ったこっちの防壁を貫通したのは想定内として、防御力を上げているというのに1発1発がここまで重いとはな…

「ふぅ、まさか今のを防がれるとは…君も、その義手を作った人物も相当優秀のようだ」

「煽りにしか聞こえないぞ、やれやれ」

 

 

今の攻撃、遠隔か?それならキリシュタリアに何かしらの動きがあるはずだ、ということは──

「時限式か、顔に似合わず無茶をする奴だ」

「もう無茶をしないでどうにかできる領域じゃなさそうだったからね」

 

 

俺が接近してくるタイミングを見計らって仕掛けたんだろう、それも残り少ないハズの魔力を惜しみなく使って。でなければ義手の防御と防壁の上からここまで重い攻撃を出せるわけがない

 

 

結果だけを見れば読み合いを制したキリシュタリアだがほんの少しでも読み間違えれば大打撃を被っていたのは彼の方である、その事実を確認したザイルは小さなため息とほんの少しの汗を流した

 

 

「『レオレオ、防御強化解除』」

一瞬とはいえ博打にまで頼らざる得ない状況になったにも関わらず涼しい顔のままか。底が知れないな…このまま続けて倒せるか、どうか。

 

 

「…微妙だな」

コヤンスカヤ、そっちの状況はどうだ?

(このまま続ければ終わりそうですが腐っても元異星の神の使徒…

即決着、というワケにも行かなさそうです。こちらはもう少し時間がかかります)

 

 

「…そうか」

バーサーカーの方は聞くだけ無駄だろう、さて

(ザイルさん?)

──このまま小競り合いしていても仕方ないのも事実だ、仕掛けるぞ。

指定座標にタマモタンクを出せ

 

 

警戒しつつスマホを取り出し自身の座標と指定座標を素早く入力しコヤンスカヤのスマホへ

(ふむ?かしこまりました!落石にご注意下さいませ♡)

こちらの意図を即座に汲み取ったらしい、話が早くて助かるな

 

 

「メールかい?」

「電話ならともかく生粋の魔術師がメールなんて知っていたことに少し驚いたがまぁそんなところだ。悪いがそろそろ退場してもらう」

直後キリシュタリアより5メートル程後方の天井が崩れ、見知った桃色の戦車が落ちてくる

 

 

魔力反応が感じ取れない?…この一瞬で偽装までやってくれたらしい

「!?」

キリシュタリアがタンクに気付いたが遅い

 

 

「『レオレオ、防壁解除。打撃強化』」

それまで守りに回していた全ての強化を攻撃に回し、前へと走る

左右は壁、後ろは天井が崩れ、その瓦礫と戦車によって床も抜けることは互いに想像が付く、とすれば奴に残された回避経路は──

 

 

前方(俺の方)しか無いな」

「防御を…!」

「はあっ!」

 

 

走ってきたキリシュタリアを杖の上から渾身の力で殴り飛ばし、崩れ落ちる天井の下へと吹っ飛ばす

よし!

「轢き潰せ!コヤンスカヤ!」

「──ってますよ!」

 

 

何らかの方法で防いだとしても、その瞬間ライフル弾を頭部に撃ち込むだけだ

終われ!

 

 

ガンッ

 

 

だが期待とは裏腹に肉を轢き潰す音は聴こえない、そして戦車を防いだのはキリシュタリアでも無かった

「え、えっ?」

落ちてきたタマモタンクの動きが止まった、それどころか少し持ち上がっていて──

 

 

『怪力 B+』

 

 

「う、おおお…っ!!2…度も…!」

「カイニス!?」

 

 

さっ…せるかよォッ!!

サーヴァントということを加味しても冗談みたいな怪力で受け止めたカイニスが、そのまま階下へタマモタンクを投げ飛ばした

 

 

「うっわ!?力頼みにも程がありません!?」

「タマモタンクは放棄!カイニスを足止めしろ!」

このチャンスを逃したくはない!

 

 

否幻想弾が装填されたマグナムを抜く

間に合うか…!?

 

 

「お、おい人間!一体なんだ!?これは何が起こっている!?」

床を突き破り喚くように現れたのは茨木童子だった、理性は元に戻ったらしい

「今は説明している時間は──いや」

 

 

違う!

 

 

「危険なのが分からんのか!今にも床や天井が崩れそうで「『レオレオ!筋力強化!』」

撃ちかけたマグナムをしまい、爆散寸前の義手で強化付与。茨木童子『のようなもの』へ全力で近付き

 

 

「な──「ッがぁ!」

渾身の力を込めてその首を捻った

 

 

「ンン…いささか、躊躇が無さすぎるのでは?」

藤丸立花体験劇場にてイヤと言うほど聞いた声が茨木童子『のようなもの』から聞こえてくる

 

 

「茨木童子は俺のことを名前で呼ぶ、それに命令しない限り俺を助けようとはしないんでな」

「左様で!拙僧、貴方の元に召喚されていればと今心より思っていました!」

捻れた首のまま、心にも無い言葉を並べる芦屋道満に背を向け、再びマグナムを抜いて走る

 

 

やれやれ

「悪いが願い下げだ、お前にコヤンスカヤの代わりは務まりそうにない」

まだ位置が悪い、確実に狙える角度へ…!

 

 

「ンン…!全く!マスターとサーヴァント揃って…

コケにしてくれますねぇ!」

 

 

ぺたっ

 

 

崩壊音にまじって聴こえたシールを貼ったような音が警告に変換されて脳に届く

「!!」

義手(右腕)に、呪符──これが狙いか!

 

 

理解の及ばない真っ黒な呪いが義手を走って身体へ向かってくる

「ち──」

これは避けられないな

 

 

ボンッ

 

 

が、それを遮るように接合部が砕け義手が床へと落ちる

M82の撃発音?ということは

「すみません、こうするより他にありませんでした!」

「いや、カイニスを相手にしながらよくやってくれた」

 

 

お陰でこの瞬間は助かったが、片腕を失ったのはまずいな

「ンンンンン!雇い主に尻尾を振るのも一苦労のようですねェ?女狐!」

優勢と取るや否や…やれやれ、記録で見た通りだ

 

 

         たな…」

「「調子に乗り始め

         ましたね」

 

 

「ンンッ!手負いのマスターを庇いながら戦われますか!元々豆粒ほどしか無いプライドを捨てて鼠のように逃げ出すか!見定めさせてもら

「グルル…!」

 

 

「「あ」」

「ン?」

 

 

階下から床をブチ抜いた見覚えのある鬼の手がガッシリと道満の足を掴み

「グルルア"ア"ア"!!!」

「ンナンッ!?」

 

 

コントのようにそのまま階下へ引きずり込んで、消えた。

「………俺の召喚に()()でなくお前が応じてくれて本当に感謝している」

「あはは、感謝の気持ちは伝わってきますが比較対象が悲惨すぎてまっっったく嬉しくありませんね」

 

 

さて、フザけるのもこのくらいでやめておこう

無くなった右腕側をコヤンスカヤにカバーさせ、前方にマグナムを向ける

 

 

「キリシュタリア!大丈夫か!?」

「君のお陰で、なんとか無事だ、追撃が来なかったのは、道満のお陰、かな?」

瓦礫の落下により発生した煙を掻き分け、ランサーのサーヴァントとそのマスターが姿を現す

 

 

カイニスは予想以上に茨木童子に手こずったらしく深手とはいかなくともかなりの消耗が見られる、キリシュタリアの方は外傷こそ殆ど無いものの息切れが激しい

 

 

絶好のチャンスであることには変わりない、しかし。

く…右腕さえ健在なら…

 

 

いくら消耗しているとはいえ片腕潰れた状態で相手にできるほどキリシュタリア・ヴォーダイムはカンタンな相手じゃない

それに消耗しているとはいっても奴はまだ令呪を3画とも持っている、中途半端に追い詰めれば最悪、芦屋道満とカイニスの宝具を同時に使わせることもあり得るだろう

 

 

「ザイルさん」

「分かっている」

 

 

博打をするのは娯楽施設でだけだ、これ以上戦い続けるのは得策じゃない

「流石にこれ以上は戦えないな、カイニス!道満!そろそろ逃げようか!」

「…!?」

退くぞ、と言いかけた声はキリシュタリアの思わぬ言葉と令呪の光によって遮られた

 

 

「ンン?令呪による瞬間移動ですか」

「そうだ、逃走用の術式を!」

キリシュタリア、カイニス、道満が1箇所に集まり、それぞれの魔力もその1箇所に集まっていく

 

 

「災厄の獣コヤンスカヤ、そしてそのマスターのザイル

次はこことは違う場所で会うことになるだろう

それまで変わらず君達が人類の敵であるのなら、私は!私達は!全力で君達を打ち砕く!」頼む道満!

「お任せあれ!」そぉ〜れっ

 

 

吹雪のような符が視界を遮り、キリシュタリア達を隠す。そして──

「…逃げましたね」

「ああ」

さっきまでの混沌とした戦場が嘘のように静まり返り、聴こえてくるのは床や天井から崩れた小さな破片が落ちる音だけ

 

 

…やれやれ

追いますか、と言う彼女の質問をやんわりと静止し、ボロボロの床に腰を下ろす

「結局底が見えない男なのに変わり無し、か」

 

 

あの状況、キリシュタリアもカイニスもまだまだ戦えただろう(道満は分からんが)むしろ義手を失ったことで俺の戦闘能力が落ち、結果的にコヤンスカヤも動き辛くなった

あっちにとってまだ有利状況のままだったはずだ

 

 

「茨木童子の回収を、暴走させたからには落ち着かせる方法も分かっててやったんだよな?」

「それはもちろん、すぐに向かいますわ」

「そうしてくれ」

 

 

「…」

何故自分から退いた?あのまま続ければ逆にこっちを退かせられることは想像できるだろう、ここに残った俺達が空になった時計塔を吹き飛ばす可能性だって思い当たっただろうし──

 

 

『予定していた客人とは違うが』

 

 

「客人…」

コヤンスカヤが録音していた音声にはキリシュタリアの声で確かにそう記録されていた

秘密兵器、予定していた客人、カイニスだけでなく道満という隠し玉の露見、退避済みの魔術師、放棄された時計塔…

 

 

「やれやれ、厄介なことになりそうだな」

「戻りました!」

爽やかに戻ってきた彼女の腕には死んでいるんじゃないかと思うほど衰弱した茨木童子がおり、耳をすませてようやく寝息が聞こえるほどだった

 

 

「派手にやったな、とりあえず茨木童子は一足先にボーダーに置いて回復させろ」置いてきたらすぐこっちへ戻ってこい

「おや、まだ一仕事あるご様子…かしこまりました、必要なものはございますか?」

「ああ、対城宝具に相当する火力を用意しろ

時計塔を吹き飛ばせ

 

 

お任せくださいと得意げな背中を見送り、ナイフを抜く

「そろそろ出てきたらどうだ、ベリル・ガット」

時計塔に入った時からずっと感じていた視線に向かってナイフを向け、名前を呼ぶ

 

 

「おいおいおい!まーバレてるとは思ってたけどよ、名前まで知られてるのはちょっと驚いたぜ?」

眼鏡をかけたギャングのような格好をした男、こことは別の世界ではブリテン異聞帯を担当するクリプターとしてカルデアに立ちはだかった魔術師、ベリル・ガットが観念したように瓦礫の影から出てきた

 

 

邪魔してくる気配が無かったので放っておいたが、せめて何が目的かは知っておきたい

「で、何が狙いだ?まさか善に目覚め、正義の魔術師になった…というわけでもないだろう」

「なーんかオレ、メチャクチャ警戒されてないか?でも見ず知らずのアンタが警戒するほど殺した記憶も無いんだが…

まぁ面白そうだしいいか!ザイル、だったか?俺もお前の『人類滅亡隊』に1枚噛ませてくれよ!」

 

 

「…やれやれ」

そんなフザけた隊を結成した覚えはない

 

 

NFFボーダー 管制室にて…

 

 

エクスカリバー砲 要求量のエネルギー充填完了 発射体制へ移行 認証待機中

 

 

「えー、目標は時計塔、最終認証入力!っと」

 

 

認証受信 標準固定

エクスカリバー砲 発射

 

 

過剰に輝く聖剣の光が収束、光線となって主砲から発射。何年、何十年とそこにあり続けていたであろう時計塔をあっさりと消し飛ばした

「うおおう、俺が言うのもなんだが容赦ねぇな!」

消し飛んだ時計塔を見て目を輝かせるベリルを無視し、缶コーヒーを飲む

 

 

「お掃除完了です!」

「ああ、ご苦労だった。義手の制作も引き続き頼むぞ」

「それはいいのですが…本当に連れてくおつもりですか?」毒にしかなりませんよ彼。

コヤンスカヤの言い分もよく分かる、ブリテン異聞帯の記録を見た後なら尚更な

 

 

「だが毒なら毒で使い道はある、今はこれでいい

…それに奴には魔術師でありながら魔術師としての常識がいい意味で殆ど無い、キリシュタリアやクライム側に付かれても面倒だ」

奴は魔術師、一般人以前に殺し屋として特化している、人類根絶やしという俺の目的に沿った優秀な人材だ

 

 

「ま、信頼度で言えばあのクソ坊主より幾分マシですが仲間にするなら相応の覚悟と警戒を」

「分かっている、『今は』これでいい」

 

 

消し飛んだ時計塔を管制室から見下ろしながらコーヒーを口に運ぶ

念のため妨害も警戒してたがそれも無い、キリシュタリアは本当に時計塔を放棄したようだ

「未だ腑に落ちない点はいくつかあるがここで考えていてもしょうがないだろう」姉さん達を迎えに行くぞ

 

 

「かしこまりました」

「お、他にもいるのか!行こうぜ!」

 

 

キリシュタリア・ヴォーダイム、そして何処かで絶対に生きているであろうクライム・アルバート

恐らく客人というのはお前なんだろう?クライム…

「やれやれ、楽しみが増えてきたな」

 

 

誰に当てたわけでもない皮肉を呟き、俺は空になった缶コーヒーをゴミ箱へと投げ捨てた

 

 

同時刻 ()()()()()()() 霊基アルビオンにて…

 

 

「うおっ、奴ら本当に時計塔を吹っ飛ばしやがった!」

「聖剣の概念を取り込んだ戦艦搭載型砲台か、厄介だね」

「キリシュタリアさん、今は…」

 

 

おっと、そうだった

眼帯をかけた魔術師の女性、オフェリアに諭され本題へ

幻獣種が闊歩するこの空間で誰かと密会するなんて思ってみなかったな、なんて考えながらその相手へ一礼する

 

 

「魔術師、キリシュタリア・ヴォーダイム

そして彼が私のサーヴァント、ランサーの神霊カイニス」

「カイニスだ、あと芦屋道満ってのがいるがギリシャの神に劣らずクソ野郎だから近付ない方がいいと忠告しといてやる」

 

 

「…?そうか、俺は米陸軍中将クライム・アルバート。

こっちが俺のサーヴァント、バーサーカー土方歳三だ」

「『新撰組副長の』土方歳三だ

ところで…それが、()()なのか?」

 

 

背後で建造途中の()()を指差し、彼が言う

「──そうだ」

幻獣種達の目を欺きながらゆっくりと、それでも着実に出来上がっていっている

 

 

神霊カイニスが持ち込んだゼウスの残骸を核に建造されているもの

近い未来、人類の希望を担う船。

「ああ、これが『HOPEボーダー』さ」




借金を理由にコヤンスカヤに束縛されたい作者のルルザムートです、ハイ。
ここのキリシュタリア様は異星の神と取引したワケではないのでオフェリアさんが彼を呼ぶ時は『様』でなく『さん』になっています、眼帯キャラいいよね
そして今回メッチャ長い…2000で終わりそうだからちょっと付け足すつもりがこれである。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。