弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
冬木市 とある埠頭にて…
長い船旅を終え、冬木市に降り立った魔術師が2人。
「…思ったより時間が掛かった、急ごう」
「まぁ待ちなさいって、知識で知っていてもここは私達にとって未知の土地よ?ここは確実にゆっくり行きましょう!」
リラックスリラックス!と微塵も緊張感を漂わせない彼に釣られたか、自分も少しだけだが肩の力を抜くことができた
「そうかもしれないな、ゆっくりはできないがお陰で少し落ち着いた」
そういえば──
「彼女は…ミラ・ツールは?」
「ミラちゃんなら、ほらアレ」
彼が指差す方を見るとアヴェンジャーのサーヴァント、平景清に抱かれて眠っているマスター、ミラ・ツールが居た
あまりにも無防備で魔術師ですらないが様々な偶然が重なりマスターとして成り得たらしい
「…」
彼女は子供だ、無理もない…しかし上を目指す魔術師の身としてはやはり腹立だしい、とどこかで思ってしまうところはある。
彼女の境遇を考えれば筋違いどころか八つ当たりにも近いもの──いや、これを考えるのはよそう
なんとなく彼の視線が気になり、思考を強引に変えて彼女の方へ
「アヴェンジャー、ここからは僕が彼女を連れて歩く。お前がここで実体化していると色々とマズいからな」
「何度も聞いた、分かっている」
アヴェンジャーという禍々しいクラスに似合わない、優しく丁寧な動作でミラをこちらに引き渡し、そのまま霊体化。
意外にもあっさり指示に従ってくれたことに驚きつつも、ここに来た目的を再確認する
「こうしてみると兄妹みたいねぇ〜」
「どこをどう見たらそうなるんだ、そんなことよりここに来た目的をもう一度確認するぞ」
あれは確か…
=
『現状の戦力だけでコヤンスカヤとザイルの攻撃を受ければ今度こそアメリカの彼らは崩壊する、そしてそれは我々も同様だ』
時計塔の中の、どこにでもあるような空き教室で魔術師、キリシュタリア・ヴォーダイムの声が反復する
『私たちと
そこで2人に冬木市及び伊吹山の調査を頼みたい
まず伊吹山については50年前、聖杯戦争が発生した可能性が示唆されているんだ』道満が察知してくれた
『ンンンン!拙僧が見つけました⭐︎どうにも嗅ぎ覚えのある気配でして、ええ!』
うおっ…!
眼前に文字通りいきなり現れる大男に若干たじろぐものの、ランサーがすぐさまそれを蹴り飛ばす
『どけ』
『ンンン!?』
『ありがとうカイニス、そしてすまないが少しだけ下がっていてくれ道満
…あとは冬木市だね、こちらについては近いうちに新しい聖杯が顕現するかもしれない、ということだけで充分かな』
『あと伊吹山での聖杯戦争を生き抜いたマスターがまだ日本のどこかに生き残っている可能性もある、前例がある以上気にはとめておいてくれ』
『分かったわ、任せて』
『…』
『アメリカからも1人マスターを派遣してくれるらしいがそのマスターは未熟らしいから上手くフォローしてあげてくれ』
『…?分かった』
=
「すー…すー…」
「…」
だからってこれは未熟とかそういう次元ではないと思うが…
「とりあえず例の大災害の現場に行ってみましょ、間違いなく聖杯戦争が原因でしょうし無駄足になることはまずないから」
「ああ、僕も賛成だ。行こう」
背中の少女マスターをなるべく揺らさないように背負い直し、街へと向かう
もしかすると戦力としてでは無く逃がす意味を込めてこの未熟なマスターを派遣させたのだろうか?そうだとすれば納得が行くが。
「…やっぱり分からない」
しかしそれとは別に全く理解できないこともある
キリシュタリアは何故僕らを選んだ?それも選抜の速度から考えて大勢の中から吟味したわけでもなく、まるで最初から決めていたかのように僕らを名指しで選んだみたいだ、この理由はいったい…?
「ちょっとカドック?大丈夫?」
「大丈夫だぺぺ、さあ行こう」
心配するようにこちらを覗く彼にお礼も含めて言葉を返し、僕らは冬木の街へと向かうのだった
〜
同時刻 冬木市 とあるヒールショップにて…
「…やれやれ」
選択、この世の事象はあらゆる選択が積み重なって『今』を形作っている
それは自分自身の選択だけに留まらず、全くの他人の選択が影響することも多々ある。
例えば…もし切嗣が俺に聖杯戦争参加の依頼を持って来なければ、今の俺はここにないだろう
まぁそれはいい、今は──
「きゃーん♡良いじゃないですか〜♪」
「………」
どうして…こうなる?
冬木市の街並みとは切り離されたような、一言で別世界とも言える赤色だらけの靴屋で、俺は内心頭を抱えていた
「アンペルドさんアンペルドさん!このセットバックヒールとハイヒール!どちらが良いと思いますか!?」
「…知らん、どっちでもいいだろう」
キリシュタリアとの戦闘により義手を失った今、新しい義手が出来上がるまでの時間を使って切嗣に会う。そのために冬木市に訪れていた…のだが
「やれやれ、義手を作る本人がここに居てどうする?」
「まぁまぁ♡それはもう1人のワタクシがやってるのでノープログレム♪」
だからといって付いてくる理由にはならんだろう、探りも含めてベリルを連れてくるつもりだったんだぞ
「それよりもここの靴を見てください!
このクオリティなら日本円で8〜9万はしてもおかしくないというのに!
まさか!まさかの1万切りですよ!?」
…コイツどんどん馬鹿になってきてないか?
「店員さん!本当にこの価格でいいんですか!?」
「あーやっぱりお姉さんもそう思う?私もさぁ、もっとボってもいいって言ったんだけどねぇー?店長ちゃんがこれでいい、って言うから」
作り手がそう言うんじゃ仕方ないわよー(ー▽ー:)
──とネームプレートをイジりながらアルバイトの少女が言う
…?そういえばこいつ見覚えがあるな、確か藤丸立香体験劇の第7特異点で見た
1番喧しかったからよく記憶に残っている
やや年齢に差異が見られるがテンションが高いのは変わらないようだ
「うーん、間違いなくお買い得なんですがねぇ…『お1人様1日1点限り』と大きく明記されては悩みます…」
「………」
明日また来ればいいだろ、と言いそうになる口を慌てて抑える
人類の脅威たるビーストが靴屋に張り付けになるなんて冗談でも笑えない
というかそろそろ嫌な予感がする、ここはさっさと退散した方がいいだろう
中世の王族が使うような豪華で真っ赤な扉を音なく開け、俺はその場を早足に立ち去った
「そーですよ!アンペルドさんがワタクシのお金で買ってくだされば2つ買えるではありませんか♪
アンペルドさ──あれ…?」
〜
冬木大橋にて…
「やれやれ、付き合っていられない」
追跡されないように僅かな魔力も完全に遮断してコヤンスカヤを撒き、橋を歩く
「そういえば1人になるのも久しぶりだな」
心地よい風に、ふと独り言を零す
まぁ、だからなんだという話だが。
「ダメだな、これは」
コヤンスカヤに習ってあらゆることに興味と疑問を持つこと。そうすれば娯楽が見つかると彼女が言っていたがこっちはまだ難しいらしい
とりあえず切嗣の家に急ごう
詳しい場所は知らないが【衛宮】という家があることだけは知っている、交番なり探して聞けば良いだろう
「…このあたりはなんともなさそうだな」
ここに来る前、例の『大災害』の現場へ立ち寄ったが酷い有様だった、流石に火の手や死体は無かったものの僅かに残る屍臭と建物の残骸がそこで何があったのかを大まかに教えてくれた
ただ聖杯に魔力を貯めただけでああなるとは思えないが…
「失礼、そこのお方」
「ん」
呼び止められた瞬間、俺は思考をザイル・ニッカーからアンペルド・ローラーに切り替え、振り返る
「私ですか?」
「ええ、見たところ外国人の方のようですがパスポートはお持ちですか?」
そう言ってきたのは身長190㎝はある警察官の女性だった
身長だけでなくその体躯も大きく、肩幅等いつか見たクライムのバーサーカーより大きい
「ええ、どうぞ」
用意していたパスポート(もちろん偽造)を黒髪の女性に手渡し、アンペルドとしての笑顔を作る
「アンペルド・ローラー、さん、冬木市にはどのような用事で来たのかしr──ゴホン!どのような用事で?」
「古い友人に会いに来たんです、アメリカでの仕事がひと段落つきまして
冬木市に住んでいることは知っているのですが詳しい住所までは…」
「なるほど、ご友人に会いに…」
それにしても本当にでかい女だ、確かブリテン異聞帯にこんなのが居たような気がするが──…?この女…
「いや、まさかな」
「どうかされましたか?」
「いえ、これからどこを探そうかと思いまして」
魔力反応も隠蔽の気配も無い、別人だろう
「もしよければ私が力になりましょう
差し出がましいかもしれませんが見知らぬ土地を隻腕で移動するのは体力を使うでしょうし」
「ありがたい、見ての通り満身創痍でして。傷を癒してから来ようとも思ったのですが次の仕事がありましてやむなく…」
コヤンスカヤを呼ばなくていいのは素直に助かったな。ここは言葉に甘えてもいいだろう
「ちなみになんという名前の方でしょうか?」
「衛宮です、衛宮切嗣。彼とどうしても会って話をしたくて」
「…!衛宮さん、ですのね」
…?
名前を聞いた途端警官の表情が曇った
「あの、どうかされました?顔色が悪いですが」
「彼の自宅は知っています、案内しましょう」
結局目的地に着くまで警官は言葉を濁したままだったが…いざ着いてみるとその意味が分かった
──やれやれ
「遅かったか」
〜
衛宮家付近の通りにて
「〜♪」
スキップしそうな足取りを抑え、両腕に一つずつ掛けたヒールショップの紙袋を持ってザイルさんの元へ向かう
「お姉さんご機嫌だねぇ、そんなにその靴が気に入ったの?」もぐもぐ
みかんを食べながらこちらを覗き込む人間、藤村 大河
「それはもう!コーデするのが楽しみです♡」
たまたまシフト交代だった彼女を賄賂みかんで買収し、ワタクシの買い物を一緒にしてもらってこの通り!ホクホクなのです!
「ところで藤村大先生?この靴を作ったという店長さんがどんな人か教えてくださりは──」
「おおっと!もぐもぐそればっかりはもぐもぐ何度聞かれても答えられないわね!もぐもぐいくらみかんを積まれようと!もぐもぐ」
むぅ、流石にダメですか。このクオリティでこの値段、経営者としても見習えそうなところがあるかも、と思ったのですがこれは無理そうですね
「まぁ2足も手に入ったのでヨシとしましょう!」
義手の電波を頼りに歩き続ける
「道案内ありがとうございました」
「これも警官の義務ですので気にすることはありませんわ」
おっと、今のはザイルさんの声ですね!全くもう、意図的に念話全部シャットアウトしているせいで少し時間がかかってしまいました
「うんっ?アレッ?もしかしてお姉さん士郎ん家に用事?」
「え?あーまぁそうなりますね、ちょっと知人を回収しに」
そうなんだー、と頷くと共に衛宮邸の門をくぐる、その瞬間
ぬっ
「おっと」
「むぎゃっ」
大きな人影が出てくるのを察知して一瞬後ろへ
あらら、藤村さんが盛大にコケてしまいました
「あったたた…さすがダイナマイト190㎝…」
「も、申し訳ありませんわ!お怪我は?」
「心配無用!命があればパワーは無限なのよ!」
うっわ、色々とデカい婦人警察ですねぇ…警官服ギチギチですし。犯罪者逆に増えませんコレ?
「そちらの方も!どうも失礼しま、し──な…!?」
おや?警官がフリーズして──
「おっはーっ!!」
「「きゃーっ!?」」
「ギニャーっ!?」
警官とワタクシの間に稲妻の如く空から降ってきた青年が満面の笑みでフザけ倒した挨拶をする
もちろんこっちはたまったものではなくワタクシも警官も藤村さんも全員驚いてしまった
浮かれてました!まさか気付かないとは!…というか藤村さんギニャーってなんですかギニャーって。
「…?おかしいな、初対面の人にはこうすれば絶対楽しんでもらえるって友達に聞いたんだけどあまり嬉しくなかった?」
仕事帰りと言わんばかりに手提げ鞄を片手にスーツを着こなすイギリス人の青年は『なんで?』とでも言いたげに目を丸くしてこっちと警官を交互に見る
「誰よそんなこと言ったアンポンタンは!?いきなり空から降ってきておっはーなんて私心臓飛び出しちゃうかと思ったんだからね!!」
「驚きましたわ、レガリオさん」
「ごめんね、でも君の姿が見えたから来たというのもあるよ、話したいこともあるし少し一緒に歩かない?」
「え、ええ…いいですわね、行きましょう。では失礼いたします」
ぶーぶー怒る藤村さんを見惚れるほど華麗にスルーし、警官と青年はそのまま出て行ってしまった
「ンモー!レガリオさんったら真昼間からイチャついちゃって!」
「いや真昼間って時間でもないでしょう」もうすぐ午後4時ですよ?
揚げ足を取られ、さらにブーブーと喚く藤村さんを引きずって衛宮邸の門をくぐった
〜
衛宮邸 居間にて…
「親父の、知り合いだったんですね」
「そうですね、私も彼にはよく助けられました。…亡くなっていたのはとても残念ですが」
切嗣の養子だという千子村正…ではなく衛宮 士郎
どうやら彼の中で切嗣は魔法が使えるスーパーヒーローという存在だったらしい、まぁコイツから見れば大災害の中で命を救ってくれた恩人だからな
「じゃあこの前無理してアメリカまで行って会った人っていうのも──」
「恐らく私のことでしょう、いきなりの来訪に少々面くらいましたが…死期を悟ってたんでしょうね」
それにしても既に切嗣が死んでいるというのは予想外だった、あともう少し持つと思っていたが…
わざわざ冬木市まで来て彼に会おうとしたのは近い未来冬木市で行われる聖杯戦争、それがあと何年で始まるのか大まかな予想を聞くためだった
できればこの地域にはあまり関与したくなかったが…仕方ない、自分達で調査するしかなさそうだ
「しーろぉー!帰ったわよー!」
「アンペルドさーん、居ますー?」
玄関から聞こえる聞き慣れた声に立ち上がる
やれやれ、もう嗅ぎつけてきたとは恐れ入る
「藤姉と…誰の声だ?」
「私の連れの声ですね。
彼が居ない以上私がここにいる意味も無いですしお暇させてもらいます」
お茶の礼を言い、去ろうとするも呼び止められ、足を止める
「親父は最後…貴方に何を頼んだんですか?」
「切嗣さんが君に何も言わなかったのなら私から君にこれ以上言えることはありません」
「…」
コヤンスカヤなら面白がって断片的に悪質な言い方で教えたりするだろうが俺にそんな趣味はない
とはいえ片腕が義手、もう片腕はそもそも無い負傷した男の言葉を子供が納得するとも思えないので少し付け加えることにした
「そうですね、では貴方があと10年大人になったら全てお話します」
「…!分かった!あ、いや分かりました!」
ありがとうございました!と言う声を背中に受け、玄関でノーアのスマホ弄っているコヤンスカヤと合流、そのまま衛宮邸を後にした
10年後、お前たちがまだ生きていたら、な
〜
大空洞にて…
「この辺りでいいかな?ねぇ、さっきの彼女…知り合いかい?」
「知り合い、という訳ではありませんが確かにわたくしは彼女を知っています。名は確かコヤンスカヤ、妖精園ではよくムリアン様と密会していたようですわ」
50年振りにマスターとサーヴァントとして話を続ける2人。
青年の眼に映る彼女は既に警官の服装ではなく、騎士の甲冑に身を包んでおり、髪型やその色も本来あるべき姿へと戻っている
「衛宮士郎さんを見た時と同じ衝撃が走って動揺してしまいました」まさか町でいきなり出くわすとは…
「なるほど。動揺したのはそれが理由だったんだね、ともあれ悟られなくてよかった」
しかし…まいった、彼女の反応から察するに伊吹童子よりも厄介なサーヴァントらしい
「レガリオさん」
「うん、分かってる。でも僕らだけじゃ無理だ、とりあえず50年来の知人に連絡を取ってみよう」
あの時は殺し合いをしていた僕らだが50年も経ったんだ、クランツェルはもちろんのこと彼ももう僕らと戦う気なんてないだろう
「クランツェルの元にはダヴィンチが居るし、ニュースで見る限りフーレンさんも全く衰えていなさそうだ、ひとまず協力を仰ぐつもりだ」
一通り話し終え、出口の方へ向き直る
本来このような会話、マスターとサーヴァントなら念話で済ませてしまえばいいのだがそれをわざわざ言葉に出したという事実が示すのは──
「さぁ、そろそろ出ていらしてはいかがです?心配せずとも、いきなり斬ったりなどしませんわ」
威圧ではなく、保護しようとする感情の篭った声、そのおかげか魔術で隠れていた2人組──いや、3人組はあっさりと出てきた
「自己紹介が必要だよね、僕はレガリオ・ハルトマン。ここにいる彼女…バーゲストと50年前から契約しているマスターだ
情報の交換をしたい」
オリジナルと違って料理している描写は無いけどコヤンが料理しているのを見てみたい作者のルルザムートです、ハイ。
12/9から2週間、お山に封印され、更新が止まります