弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 作:ルルザムート
察知できる時はあとがきに書き留めるようにします、すみませんでした
幕間 ロンドン、時計塔にて…
12時30分。昼休みも残り半分となったのでそろそろ食堂へ向かう
「〜♪」
経費の無駄としか思えないような、だだっ広い廊下を歩いていると曲がり角から1人の生徒がふらりと現れたのでとりあえず挨拶する
「こんにちは!」
「ああ、こんにちーーーッチ、お前か」
いきなり舌打ちとは…ま、いつものことだけど。
どうもここの人達の大半は血筋の凄さ=個人の凄さと思い込んでいる節があり、弱小家系出身の私は目の敵にされているわけだ
「100年にも満たない弱小家系出身のお前みたいな底辺が、このボクに話しかけるなよ」
嫌悪感丸出しで言葉を吐き捨てる男子、それに負けじと言い返す
「…その底辺より成績が悪いじゃんアナタ。血筋を鼻にかけてロクに努力してないから私に追い抜かれるんじゃないの?」
「〜!お、お前なんかに…!」
言った途端、彼はみるみるうちに顔を真っ赤にし、掴みかかる勢いでズイッと近づいて来る
まぁ彼が努力…少なくとも人よりも一つ頭抜けて努力しているのを実は知っている。
その点を馬鹿にする気は無かったが、だからといってさっきのような言い方をされて黙っているのも癪に触る
私の魔術適正は低いというわけでは無いが時計塔の生徒に比べれば低い位置付けになる、もちろんそのままでは彼らを追い越すのは不可能であるため、その差分を知識で埋めている。
多分野の勉強に手を出すのはかなり辛かったがその甲斐あってちょっとした講義なら私でも開いていいとケイネス先生に言われたこともある。
「ふふん、悔しかったら結果出したら?」あっかんべー
「ッ!お前、お前っ!」
「…よりによって昼休みという最も人の往来が多い時間帯に、通路の真ん中を塞ぐものじゃ無いぞ、君達。」
!この声は…
「ケイネス先生!?」
講師であり、ロードの1人…ケイネス先生だ
「何の言い争いをしているか知らないが…その口論は道を塞いでまでする必要のあることかね?」
「無いです!すみませんケイネス先生!」
即答する。だって私は挨拶しただけだし。
「〜!………すみません」
無いと言った瞬間、彼が凄く睨んできたが…ま、気にしてたら保たないし気にしない!
「キミは以後気をつけるように。さ、もう行きたまえ…それとプライマリ君、キミには話がある」
「…はーい」
ここで話があるってことは…ハァ、言い争い最初から見てたってことね
食堂の方向から僅かに漂ってくる匂いを惜しみながら、ケイネス先生に連れられて近くの空き教室へ
「プライマリ君…キミはもう少し愛想良く出来ないかね?」
予想通り開口1番これだ、私としてはただ挨拶しただけなんだけど
「私はただ挨拶をしただけです、それだけで彼が突っかかってきたので『少し』言い返しただけです。」
それを聞いたケイネス先生は、まるで老人が数日ぶりに椅子から立ち上がったように、ハァ…とため息を漏らし、話し始める
「私が言っているのは目上の者に対する言葉遣い…敬意を払う心なのだがね。彼の家系は知っているだろう?キミが友達感覚で挨拶するような人物じゃない」
「…」
結局彼自身は全然凄く無いってことじゃないですか、と言いたくなるのを抑える
「キミはもう少しそれが出来ていれば言う事は無いのだがね…気をつけるように。」
「…はい」
出したい言葉を飲み込んで教室を出て、そこから充分離れたところでーーー
「ハァー…これさえ無ければなぁ〜」
周りに誰も居ないのを確認してさっき飲み込んだ言葉を吐き出す
魔術師たる者、1番重んじるのは『血筋』である…私はコレが物凄く気に食わない
「…」
ケイネス先生もさっきの男子も…もちろん他の人も。知ってる限りはみんないい人だ、魔術師、魔術師の卵としてではなく、1人の人間として接すればそれが分かる(家系を偽ってお喋りしたからバレた時ひどかったけど)
だから私はそれを変える…変えたいと思っている。家系が小さな人だけのためじゃ無い。家系が大き過ぎて押し潰されそうになってる人もきっと居るだろう。
微妙に考え方は違うがこの時計塔で血筋を重んじる考え方を嫌う知人も居る
「ルマス!お前また揉め事を起こしたのか?」
ん
噂をすれば何とやら。…いや噂ではないけど彼が来た
「やっほ、ウェイバー!」
「やっほ!…じゃない!お前なぁ…あんなこと繰り返してたら居場所が無くなるぞ?」
「えー?でも見てたならスッキリしたでしょ?」
「それは、まぁ…」
うん、やっぱり彼とは気が合う。血筋を重んじるだけの人達を見返したいと言う彼の考え方は私も結構共感できるからね
「でしょ!」
…ま、私のやってることは無敵状態で時計塔の内側に泥ばら撒いてるようなものだからウェイバーの言うことも分かるんだけど。…あ
そういえばウェイバーに話があった事を思い出した、私たちにとっての千載一遇のチャンスかもしれないものだ
「ね、ちょっとナイショ話しない?」
「はぁ?」
〜
時計塔別館、ゴミ集積場にて…
「よーし、ここにしよう」
魔術師…というよりプライドの高い人間はこんな場所に近付かないし、そもそもゴミ出しの時間とは大きくズレている、誰かの部屋や空き教室より安全だ
「なんだよ、こんな場所まで連れて来て話って?」
「それはね…私達が聖杯戦争に出れる!…かもしれない話。」
「え"っ!?」
まさかそんな言葉が出てくるとは思わなかったのだろう、ウェイバーの顔が普段に増して面白くなっている
「ケイネス先生が近く、冬木市の聖杯戦争に参加するって話は知ってる?」
「え、ああ、知ってるが…それがどうしたんだよ?」
ここで私は私だけが知り得た凄い情報を彼に伝える
「そのケイネス先生がね、用意した聖遺物を盗まれたって話だよ」
「!!!そ、そうなんだ、それで?」
なんか予想より3倍くらいウェイバーの顔が面白いことになってる…そんなに驚いてもらえるとこっちも面白いな
「ね、ね、今から私達でその盗んだ奴探さない?」
「…さ、探し当てたとして、さ?どうするんだよ?」
え?そんなの決まってるじゃん
ひょいっ、と近くに落ちてた鉄パイプを手に取り、ブンブンと振り回しながら言葉を続ける
「ボコボコにして聖遺物を取り返す!そしてそれを私達のどっちかが使…ちょっとウェイバー聞いてる?」
「え、あ、ああ、聞いてる、聞いてるぞ?…でも流石に時計塔内でそんな暴力沙汰を起こすのはまずいんじゃ無いかな?」
なーんか反応が悪い…?珍しいな
「まぁいいや、とりあえず私は来週から講義を休むよ、いきなり休んでも怪しまれるし…うん、空港で日本行きの便を張ってることにするよ、時計塔の…それも今から聖杯戦争に行くぞって人なら多分雰囲気で分かるし…ああ、安心して?ホントにボコボコにするつもりは無いから!」
多分…!
「そ、そうか…僕は遠慮しとくよ、レポートが溜まってるし今講義を休むわけには行かないから」
「んー、残念…」
相変わらず彼は真面目だなぁ、気持ちは分かるがサボり時はサボっていいと思うけど。
結局空港に張るのは私1人だけということになったが…まさかあんなことになってるとは、この時は夢にも思わなかった
〜
時間は流れ、日本 とある老夫婦の一軒家 2階にて…
「ふむふむ?ライダー…征服王イスカンダルを召喚し、聖杯戦争を戦い抜いた、と…よし!ウェイバー?」
「な、なんだよ?」
「せいっ!」
顔を上げたウェイバーにすかさずナックルを喰らわせる!
「いっ!?な、何するんだよ!?」
「うるさぁい!この裏切りモンが!」
急に消えたウェイバーを探し、遂に見つけたと思ったら聖杯戦争やってました、と来た。そりゃこうするよ
「お前…本気で殴らなくたっていいじゃ無いか!」
「本気にもなる!…どれだけ心配したと思ってるの!?」
正直なところ聖遺物を1人で持ってこっそりロンドンから出て行った、という点には全く怒っていない、私がショックだったのは彼が私にも秘密にした、という点だ、聖杯戦争は文字通りの殺し合い…細部は知らないが死にそうになったこともきっとあるだろう
「いてて…悪かったよ、黙ってて…でも言ったらお前『じゃあ頑張ってね!私も応援しに行くから!』とか言いだすだろ?」
「え、なんで分かったの?」
「お前なぁ…」
むしろなんで分からないと思ったんだよ、と呆れ顔で彼は言う
「それに言わないでおいて正解だった、あれは僕らには早過ぎたんだ、お前も見たんじゃないのか?冬木市のニュース」
「あの大火事?え、あの件やっぱり聖杯戦争だったの?」
派手すぎるから流石に聖杯戦争とは関係ないと思ってたけど。
「向こうで何があったのさ?」
「…まぁお前なら話してもいいかーーーギャッ!なんで殴るんだよ!?」
「なーんかムカついたから!で?何があったの?」
「話は…うん、僕がこの家を隠れ家に決めた時からがいいかな…」
〜
さらに時間は流れアメリカ合衆国 ワシントンD.C.行きの飛行機内にて…
ふん、いいんだいいんだ、のけ者にされたことなんかちっとも悔しくない。
カバンをポフポフと手で触りながら、これから起こるであろう聖杯戦争に想いを寄せる
「…」
この異常と言える連続で開かれた聖杯戦争…参加しない手は無い
「触媒もある、うん…やれる!できる!」
知名度MAXと言っても過言ではないギリシャの英雄アキレウス…と互角に渡り合った英雄その人が身に付けていたと言われる鎧の断片、これが私の用意できた触媒だ
「…」
ーーーでも
本当に参加するの?と私の臆病な部分が囁く
もちろん、とそれに応えるように私の勇敢な部分が宣言する
舞台は整ったんだ、チャンスは自分で作り、掴むもの!行くしか無いよ!
こうして彼女は内の不安を押し殺し、聖杯戦争の舞台へと降り立った
…もしこの時点でケイネス・エルメロイ・アーチボルトが聖杯戦争によって既に死亡していることを知っていれば彼女は引き返しただろう、だが当時ウェイバーが後ろめたさから意図的にケイネスについて話を伏せていたため、彼女はそれを知らなかった、聖杯戦争による命の取り合いに対する認識が甘かったのだ。それを少しでも身近に感じ取れていればーーー
〜
「クソッ…マスター!聞こえるか!?生きてるか!?」
両足が無くなって少し軽くなった私の身体。
それを抱え、ひたすら何処かに向かって走る私のサーヴァントをぼんやりと見つめながら思った
魔術の知識だけなら負けないと思ったのになぁ、まさかシンプルに爆弾とは…
ーーーああ、確かに早過ぎた。
正直聖杯戦争のことを軽く考えていた、自分の親友であり、私とそう大した差の無い彼…ウェイバーも生き残れたのだから。
「………いや」
違う
「………怖かった、んだ」
「マスター!生きてるな!?よし、もう喋るな!」
「唯一、あの場所で、いっしょ、にいて…楽しい奴、が…遠い存在に、なるの、が」
彼が聖杯戦争を生き残ったと言うのなら、私も生き残らなきゃーーー
「気の…合う親友、に、置いて、行かれたく、無かったんだ」
ああ…今気付いた、聖杯戦争なんてどうでも良かったんだ
〜
ベッドの上、夢か現実かも分からない中思う
最初の最初は、魔術師の考え方を変えようと必死でだったハズだけど…いつからかなぁ…?
「っ…『レオレオ!防御機能強化!』」
自分の考えを話すことから…いつからか彼に会うことが目的になってたんだ
「終わりだ!」
「うおおおっ!」
歪な形の弾丸が、槍をすり抜けて向かってくる
…こうなるって、分かってたらなぁ
「告白、してたんだけどな」
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もっふもふの9つの尻尾に親指を立てて沈みたい作者のルルザムートです、ハイ。
ザイル以外にもスポットを当てたいのでちょくちょく幕間を挟んでいきたいと思います…ルマスの幕間はこれで終わりですが。
妖精ランスロの夏休みもロクに更新できてないしペース戻さないとマズい…汗