弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
…第73話です、お楽しみください
NFFボーダー カジノルームにて…
「ザイルさんの行動記録?」
カウンターでグラスを拭いていた時、ふらりとやってきたベリルにそんなことを聞かれた
「ああ、聖杯戦争が始まってからの物なら多分アンタが記録してるだろうと思ってな、見せてくれないか?」
「ふむ」
それは合っている、ワタクシはビーストである前にザイルさん専属の秘書でもある、
「うーん?」
別に見せることに関しては何も問題はない、ザイルさんからも『見たいのなら勝手に見ればいい』とこちらが申請する前から投げやり気味な許可をいただいている
驚いたのはむしろこっち。
「貴方も他人の過去とか興味あるんですねぇ」
言うほど過去でも無いですが
「ザイルといいアンタといい会って殆ど経ってないよな?なのにオレへの評価どうなってんだ?」
「んーそこはノーコメントで、部屋の端末からアクセスできるようにしておきますのでご自由にご高覧くださいませ♡」
その言葉に彼も『まー見れりゃいいか』とカジノルームを後にする
行きましたか、とりあえず残りのグラスを拭いておきましょう
「………」フキフキ
「………」キュッキュッ
「………暇ですねぇ」
遥さんも茨木さんも離反しましたしザイルさんは試運転のため伊吹山へ、望月さんもそれに着いて行った
彼方さんがいる以上ワタクシまでここを離れるわけにはいきませんし…
暇なうちに休んでおけばいい、とよく聞くが『休み』と『暇』ではまるで意味が違ってくる
特に疲れてもいないのに休むことがストレスに感じる方はきっとワタクシだけではないでしょう
アサシンのワタクシが少々羨ましいです
クラス、特性等を考えてあちらがロシアでの任務に就くのは理解できるんですがこちらがここまで暇になるとは思ってませんでした
「はぁ…」
『回収を頼む』というその一言を今か今かと待ちながらグラスを拭く
伊吹山の魔力濃度、密度が高すぎて山の状況がまるで分かりませんし…
ザイルさん、早く帰ってきてくれませんかねぇ
〜
《B班》カドック、アタランテ、レガリオ、バーゲスト
伊吹山 影月家の屋敷跡にて…
「はあぁーっ!!」
「っと、なんだやっぱり日本で会った警察官はお前だったのか
妖精騎士ガウェイン、いやバーゲストと呼べばいいか?
やれやれ、異世界の厄災が日本の秩序を守っていたとはな」
大地を削る勢いで振られるガラティーンを避けるザイル
だめだ、分からない!周囲の魔力濃度が高すぎて魔術を使っているかどうかの判断も難しい
こんな時に限ってキリシュタリアと連絡が取れない、妨害はされておらずコール音は鳴っているが…
レガリオが直接呼びに行った今、少しでも早くアタランテの足を治し、ザイルの謎を解かなければならない
考えろ、何故奴はサーヴァントの攻撃を回避できる?いや、本当に回避しているのか?
アタランテがやられた直後奴は屋敷ごとガラティーンの衝撃を受けた筈だ
今のところガウェインの攻撃を全て避け切っているように見えるが最初の一撃は間違いなく直撃している
──にもかかわらず奴にはかすり傷1つ無い
「ガラティーンを上回る神秘で防御している…?バカな、だとすると相当な対魔力が…それにそれだとここまで回避に徹する理由にならない」
宝具では無かったが屋敷とその背後の深林まで消しとばした彼女の一撃は殆ど全力だろう、それを防ぐほどの防御能力ならばかなり大きな代償、
「グッ!何故当たらない!?」
「ふーっ…ふーっ…やれやれ、合わないのは予想外だな」
ザイルの息があがっている…1分にも満たない回避行動だけで息が?
相手はサーヴァント、そういうこともあるのかもしれないが見たところそれだけじゃない、と思う
思考を止めるな、今のザイルの行動には不明瞭な部分が多すぎる
奴はなぜ回避に徹している?何かの時間稼ぎか?それならもっと効率的で危険の無い米陸軍をやった時のような手段がいくらでもあるはずだ
なぜ僕を狙わない?レガリオもそうだ、背を見せて離脱する彼を無視した
狙われたのはアタランテ、次にガウェイン…サーヴァントと戦う理由がある?
「それにその殺気と気配はどうなっている!
貴様本当に人間、いや生物なのか…!?」
「なるほど、お前らサーヴァントはそう感じるのか」貴重な意見だ
貴重な意見、激しくガラティーンを叩きつける轟音の9割がその一言にシャットアウトされる
〝お前らサーヴァントは〟少なくとも今ガウェインにとってザイルの気配は動揺を誘うほど異質なものになっている
…僕はといえば特におかしなものは感じない
彼の気配は魔術師よりも一般人、どこにでもいる普通の人間と差が無い
だがこれでひとつだけはっきりした
ザイルは新しく手に入れた魔術の『何か』を試すために伊吹山にやってきた
伊吹童子が呪った影月 彼方が元になっているのなら伊吹山の異常な環境下でもリスクを負わないという可能性は大いにある
リスクが無ければこの山は神秘の薄れたこの現代において神代並みに魔力で満ち溢れた場所、魔術師として言わせれば楽園と言ってもいい
魔術を試すにはもってこいだ
戦闘開始時、殺していくなんて言っていたがそれなら僕やレガリオから狙わない意味が分からないし思えばそもそも先に攻撃を仕掛けたのはアタランテだった、なら──
「ガウェイン!ザイルの目的が分かった、今すぐ戦うのをやめろ!」
「…!何か分かったのですね!」
「………やれやれ」
即座に剣を引くガウェイン
…予想通り追撃は来ない
「ザイル・ニッカー!」
「ふっ、はっ…ふぅ、何か用か?」
「僕たちにはこれ以上お前と戦う意志は無いしこの地で邪魔するつもりもない
調べるべきことを調べたらすぐにここを出て行く
…お前もここで僕らと戦うのは本意じゃないだろうし今も誰1人殺すつもりはなかったんじゃないのか?」
「──ああその通りだ、少なくとももうこの場で戦う必要は無くなった
知りたい事もだいたい分かって満足している
これ以上交戦する動機は既に無い、ここで退散させてもらおう」
結局1発も撃発することが無かった歪なリボルバーマグナムを2丁ともホルスターへと納め何かを呟くザイル
「お待ちしておりました♡さ、さ!帰りましょう!」
「やれやれ、次があるかは分からないがまたな、カドック」
何処からともなく現れた狐耳のサーヴァントに連れられ、ザイルは姿を消した
恐らくアイツが獣、コヤンスカヤなんだろうが外見だけでは世界を滅ぼしうる厄災だなんてとても信じられないな
…とんでもない中身のおかげですぐ納得できたが。
「カドック!」
聞き覚えのある声に振り返ると丁度ぺぺ達がやってきたところだった
「…!ぺぺか、せっかく来てくれて悪いがもう人手はいらなくなった、すまないな」
「撃退した、というワケじゃなさそうね」
「ああ、恐らくアイツはただ魔術の鍛錬場として伊吹山を選んだだけだ、交戦の意志はあまり無かったらしい」
「バーゲスト!大丈夫かい?」
「ご心配ありがとうございますレガリオさん、少々奇妙な相手ではありましたが何も問題はありませんわ」
と、ふとぺぺの横にレガリオが居るのに気付いた
キリシュタリアの班は居ない…?
「そういえばキリシュタリアとは会えたのか?それにぺぺの班に入っていたはずの影月 遥の姿も見えないが」
「彼の班とは合流できてないんだ、どこにいるのか…」
「ハルちゃんは山頂よ、ザイルが来てる以上鉢合わせたらあのコまた苦しむことになるから置いてきたわ」
そうか、月女神の印象が強すぎて忘れていたが彼女も伊吹童子ゆかりの人間か
「とりあえず…どうするよ?カドック」
クマ…ではなくオリオンが指示を仰いでくる
班決めの際、有事に備えた場合の序列もキリシュタリアは作っていた
確か表ではA班長(キリシュタリア)>B班長(僕)>C班長(ぺぺ)
正直必要ないと思ったが取り決めた以上は厳守すべきだろう、ここは──
「班員を入れ替えよう
ペンテシレイアはこっちだ、僕やレガリオ、アタランテと一緒にA班を探す」
「分かった」
「ガウェインはぺぺの班に、遥が居ない以上無いとは思うが山頂に続く道で異変が起こる可能性は否定できない
僕らよりこの山を知っていて、かついざという時はガラティーンで強引に道を作れるアンタに行ってもらいたい」
「ええ、従いますわ」
…よし
「行動再開だ!」
〜
伊吹山 山頂にて…
「その剣に触るんじゃねぇ!!」
クレーターの底に突き刺さった草薙に手を触れかけた瞬間、背後から飛んできた男勝りな女性の怒号に身体が萎縮する
…誰?
見上げると一目で良いところのお嬢様だと分かる、フリフリで真っ赤な洋服に身を包んだ女性──いや少女がゴミでも見るような目でこちらを見下ろしていた
実体があるみたいだしサーヴァントでは無さそうだが人かと言われても…
「あのクソ蛇封じ込めるのにどれだけ犠牲が出たかも分かってないザコの分際で!それに近付くんじゃねぇよ!」こっち来い!
が、目線や表情、言葉遣いはお嬢様と呼ぶにはあまりにも遠すぎる
「あの、貴女は誰──」
ズボッ
「「!」」
──触れてない
私は手を近付けはしたが草薙には触れていない
その、地面に突き刺さっていたはずの草薙の刀身が抜けて倒れている
「っ……!!!早くこっちに来ねぇとクソ蛇が出てくる前にバラバラに裂くぞ!
とっとと動けよザコ女!」
彼女とは間違いなく初対面だが最初からここまで暴言を飛ばしてくる人は初めてだ
だがその分必死さが伝わってきたのでとりあえず彼女の元へ
「そこまで言わなくても…貴女一体誰なの?」
そう聞くと彼女は心底面倒臭そうな表情で答えを返してくれた
「あたしはバーヴァン・シー、ただの…靴職人だ」
コヤンに眼鏡拭きをプレゼントしたい作者のルルザムートです、ハイ
この調子で投稿スピードを戻していきたい、疲労骨折のためある意味仕事(の量)が楽になるかもしれないので上がる、と思い…ます、うん。多分…