弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
…第86話です、お楽しみください
NFFボーダー コヤンスカヤの部屋(元ダヴィンチ工房)にて…
「………!!」
──バカな
思わず手元のスマートフォンを壁に叩きつけかけたがギリギリ踏み留まった
だがこれは…
「はは、は…」
こんなものを。こんな存在を認めろと?もしそうなのなら今までのワタクシは?いやそれ以外も!
ここに自分以外の誰も居なくてよかったと内心安堵しつつ自身の携帯を取る
「もしもしベリルさん?」
『おっコヤンスカヤか、もう交代の時間か?』
「いえ、艦の計器確認は続行で。今から異常があった場合の報告はワタクシではなくザイルさんかフォーリナーのワタクシにしてください
………少し休みます」
『おいおい大丈夫か?まさかビーストが体調不良ってわけでも「体調不良です、今日は働けません」
言い切った、当然だ。どうしていいか分からない、頭を冷やす時間が必要だ
『マジかよ…分かった、ザイルには?』
「ワタクシから報告します
今は休ませてもらいますわ」
通話を切った携帯をベッドに投げてため息を吐く
報告するとは言ったもののもう一度携帯を拾い上げて彼に報告する気にはとてもなれなかった。だって…なんて言えばいい?
「ハァ…処分、始末書は確定ですね…」
机に向かってぼんやり壁と手元のスマートフォンを交互に流し見る
まったく、ノーアさんもそうですが全て知った上で一緒に居たダヴィンチさんも相当ですね。普通なら気が狂いますよコレ
「…とはいえ、アナタには感謝しなければならないのかもしれません」
ノーア・クランツェル、いや鈴木京子が現れなければ誰も気が付かなかった
もしこの事実が明るみに出ればワタクシ達が手を下すまでもなく世界は混乱の極みに達し滅亡する──かどうかは分かりませんが少なくとも大混乱を引き起こすことは間違い無い
このことから現在米軍内で存在が確認されているダヴィンチの思考がコピーされた人工知能の記録からこの事実は意図的に削除されている可能性が高い
「…」ヒラヒラ
鈴木京子のスマホは回収した時点で既に電波やGPSといったものが出ていなかった、恐らく回収直前にその場で使われた宝具が原因だろう
無駄に高性能だったおかげで自動復旧するより早くそれらを取り除くのに苦労したしパス解除にも9年強の歳月がかかってしまった
何もしなくてもプロテクトが進化し続けるとかどうなってんです?ま、こんなフザけた内容ならロックの固さも納得ですが。
「気分転換に何かしたいところですがそんな気力はありませんし、なんならベッドまで行くのも億劫ですね…
机で休みますか」
未だ治らない頭に響く鈍痛に押し倒されるように机に突っ伏して目を閉じる
「・・・これからどーしましょう?」
◆ノーア・クランツェルのスマートフォン解析完了
〜
NFFボーダー トレーニングルームにて…
「ぜー…ぜー…ご、ごじゅ、う…」バタッ
「まだ腕立ては5セットより多くはならないか
なんだ、文武両道な割には思ったよりも少ないな」
「はーっ…うる、さいな!お前みたいに普段から重装備担いで人を殺し回ってるわけじゃないんだ…!一緒にするな!」
「…ふむ?」
トレーニングルームにて筋トレをするザイルさんとワカメ…ではなく慎二さんを扉の影からちらりと見る
思ったより真面目に鍛錬してますねぇ…結局彼、何を言ったんでしょう?
忘れそうになるがアレでもザイルは元ギャングのボス、クライムのようなカリスマ性は無くとも口八丁だけで人を使う才能はある程度持っている
「ワカメさん、いっかにも『自分天才だから努力なんてしなくていい』みたいに見えましたけどワタクシの勘違いだったのでしょうか」
「やれやれ、何の用だフォーリナー?まさか扉の影から野次を飛ばすためだけに来た、なんて言うなよ?」
おっと、これは失礼♡
「ええもちろん!ええと、だからなんだという話になってしまいますが米軍がようやく私達が核攻撃する可能性があるとを知ったようです」
「そんなことか──ちょっと待て、まさか連中今まで知らなかったのか?」
「らしいですね」
「…やれやれ、例の計画を一部盗み聞きしていた茨木童子が向こうに渡って10年が経とうとしているというのに今更か」
「まぁまぁ、仕方ありませんよ。核の脅威を彼女は知りませんから
あ。お2人とも何か飲まれます?」
「アップルジュースを頼む」
「あっぷ…相変わらずお前の見た目に似合わないな」
「何を飲もうが俺の勝手だ、慎二は?」
「水分補給に適した飲料ならなんでも良いよ」
「かしこまりました♡」
いつも通りの笑顔で応えながら部屋を後にする
「ザイルさんが決戦と銘打った期日まであと半年…癪ですが慎二さんの助力で例のデータもより精巧な物になりましたし戦力も申し分無し
あとは戦場の選択と戦闘時の大まかな作戦立案、そして冬木の3人ですか」
割と近くにあるドリンクバーから3人分の飲み物を用意して部屋に戻る
「…どうせもう忙しくなるでしょうしここらあたりで全員慰安旅行とか計画してもいいかもしれません、彼に相談してみましょう」
そして──
〜
日本 愛知県 ホテル天の外にて…
「いー湯ですねぇ」
手拭いを自慢のケモミミに引っ掛けて湯船に浸かる
驚くほどアッサリ通った慰安旅行…ぶっちゃけ本番に向けた訓練と例の3人の説得くらいしかもうやることが無いので通るのはほぼ確定していたわけですが。
「…で?
「………」
アサシンのワタクシは答えない、同じ人物が2人いることを気にするような人間がここにいるわけではない。
別に貸切にしなくても良かったのだが慎二さんが株で儲けたから、とか言って強引に貸切状態にしたのだ
っとと、それは今関係ありませんでした
まぁ自分のことだ、聞くまでもなく原因は分かり切っている
「………」
さっきはわざとらしく質問したが自問自答するのもおかしな話だし、そもそも元は1つの獣。『教えない』と決めればアサシンだろうとフォーリナーだろうとワタクシから情報が漏れることなどない
──つまりはそれを忘れる程の衝撃だった。と
「ま、例の作戦が終わったら2人(1人ですが)仲良く謝りましょう
今は忘れてのんびりリフレッシュですよワタクシ」
思考共有が切れているお陰でさも会話しているように見えるかもしれないが結局これは自問自答だ。なんの意味もない
意味がなくても、いいと思いますけどね!
「ひとまずそれは忘れて慰安旅行を楽しみましょう、先延ばしが全て悪というわけてはありませんし」
「………」
意味のない自問自答を終えて浴場から出る
「さて、お風呂上がりの牛乳でも飲みますかね」
〜
「はぁー…」
自分から木っ端みじんに言われる、という中々に無い経験をしたワタクシは湯船に浸かりながら先のことを考えていた
未だに信じられませんがアレが真実なら人類を滅ぼしたところでワタクシの仕事は終わらない、仕事があるのはまだいいです。問題なのはその仕事をどう処理したらいいか分からないこと。
「生まれてこの方、ここまで悩んだことがありませんでしたよ全く…」
「なんだ、お前も悩むようなことがあるんだな」
「そりゃワタクシだって悩みの1つや2つ────え。」
やたら聞き覚えのある男の声が真横から聞こえ、何気なく返事をする。普段とさして変わらないやり取りであり特に問題は無い。…ここが女湯でなければの話だが
「ギャーッ!!??」
「いきなり叫ぶな」あと飛沫もかけるな
「いやいやいや!なにナチュラルに女湯入ってきてるんですか!」
「俺たち以外に居るのは彼方とパライソくらいだ、別にいいだろう」
「何が良いんですか!!我が社はそんなサービスやってません!」
ホントもう何考えて「何か勘違いしてるようだから言っておくが俺は女だ」
「──」
は?………え、無い?
10割悪足掻きの言い訳みたいなセリフに思わず見てしまったが…男性なら間違いなくあるはずのものがそこに無かった
「え、ザイルさん女だったんですか?ホントに?」
「むしろこれだけ長く一緒にいてなんで気付かなかったんだ
やれやれ、米軍のことを言えないぞ」
「まさかコヤンスカヤ殿、今まで主殿が男性だと…?」
呼び寄せたのか最初から居たのか知らないうちにパライソさんも来ており、珍しく完全OFFモードにてザイルさんの後ろから野次を飛ばしてきている
「そうですよ!だいたいザイルさん、あんな振る舞いしておいて──あ。」
ふと彼の言動で思い返してみて気がついた
そういえばこの人自分の性別について一切何も言ってません!
「まぁお前の言っている通り男として振る舞っていたのはある、ギャングのリーダーが女だなんて敵にも味方にも悪影響だからな
お前を召喚してからはその必要もほぼ無くなったが。」
ええ…?だからってコレ詐欺じゃないですか?
「あのな、俺はそもそも影月 彼方の肉体にあった空想の兄としての人格が表に出て出来上がった人間だ。
神じゃあるまいし人格が変わったくらいで性別が変わるわけが無い」
「くそ正論ですが言われたら言われたでムッカつきますねぇ…」
とはいえ言われてみれば思い当たる節はある、フーレンとの戦闘で重傷を負った彼を運んだ際に男性にしては筋肉か少ないなとか体重が軽いなとか…いや体重はそうでもなかったかも──
「お前だって異星の神のアルターエゴだと匂わせていた時があっただろう、それと同じだ」
「だったらどうして今まで一言も言わなかったんですか!」
「聞かれなかったからな」
んもう!ノリノリで男性用コーデさせてたワタクシがバカみたいです!
あれらはあれらで似合っていたものの、実際の性別を知れば当然そっち方面のコーディネートも思いつきますし…うん?ということは──
「まさかとは思いますが服屋に行くのが面倒だからあえてぼかしてただけじゃないですか?」
「・・・いや」
否定しましたがワタクシ、アナタが一瞬フリーズしたのを確かに見ましたよ!?絶対図星じゃないですか!
「目ェ逸らしてんじゃねーですよ!」
「言いがかりだ」
「シャラップ!!」
まったくもう!こちらは真剣に悩んでいるというのに!
「やれやれ、いつもの調子に戻ったな」
「はぁ?」
いきなり会話の方向性を変えたザイルさんにキレ気味なため息で返事をする
「コヤンスカヤ」
「なんです?」
「今だから言うが俺はノーア・クランツェルが怖かった」
…はい?
「あの女、常にフザけているくせに観察眼や振る舞いに隙が無く、何を考えているかもまるで読めなかった
たまに未来予知としか言いようが無い行動に出る時もあったな
多分聖杯戦争が始まる前から、いや俺が生まれるよりずっと前から別の次元で物事が見えていたんだろう。9年前に敵として対峙した時も決着は奴の自決に近かった」
「いきなりどうしたんです?」
質問を投げつけるも『黙って聞け』と言わんばかりにシカトされ話が続く
「ダヴィンチの存在が露呈した後もそれは変わらない、お前と違ってあそこまで俺に尽くす理由が分からなかった
だから奴のスマホの解析に賛成した、アイツは不死身の身体を持った化物だったがそれ以上の何かがあると思ったからな」
「彼女の、スマホ…」
「お前が理由も言わずにいきなり仕事を放棄するなんてありえないからな、すぐに分かった
…奴は死んだが今もノーアという女は得体が知れないままだ、9年物のロックが掛かっていたスマホにお前や異星の神以上の何かが残っていようと不思議じゃない」
「………」
知らないうちに頭から落ちていた手拭いを拾い、ワタクシの頭へと戻した彼は静かに笑った
「だからノーアの件は全面戦争が終わるまで忘れていい、終わった後も言いづらいのなら言わなくていい」俺の寿命が尽きるまでには流石に言って欲しいが。
「ザイルさん…」
「影月 彼方は最早救えないがザイル・ニッカーという人間の人生はコヤンスカヤのおかげで意味のあるもの…端的に言って楽しいものになった、感謝している。
そしてそれなら俺もお前に習って貰った分は返さないとな
お前が何を見たのか、まるで想像がつかないがお前と一緒にその『何か』を受け止め、共に歩く覚悟はある。
これについてお前がどう思うかは分からないが…これが俺の嘘偽りの無い本心だと言うことだけは知っておいて欲しい」
………
まさか温泉地に来てこんな話を聞かされるとは思ってもいなかった、せいぜいザイルが自分のことを話す時なんてパフェか映画の感想くらいだったからだ
「久しぶりに──いや初めてだ、こんなに一方的に喋ったのは。
お喋りになったものお前のおかげかもな」先に上がるぞ
思いもよらぬ告白と長風呂のせいで思考力か普段より落ちていたコヤンスカヤだったが『商人』でもある彼女は1つの事実に気付き、強引に思考力を元へと戻した
がしっ
湯から上がりかけたザイルの手を逃すまいと掴む
「コヤンスカヤ?」慎二と卓球の約束をしてるんだが。
「『貰った分は返す』『共に歩む覚悟がある』…言いましたね?」
「言ったが」
…ワタクシの前で言った以上、もう後戻りはできませんよ?
「それなら戦争が終わったら手始めにフリフリのお洋服でも着てもらいますね♡ザイルさんが外見的な女子力を見たいですし」
「なっ…おいちょっと待て」
「待ちません♡」
全ての人類を狩り尽くしたら、アナタは絶望するでしょう。ですがどんな手を使っても立ち直ってもらいます
「ウサ耳カチューシャとかもつけてアイドル歌手みたいなこともやってもらいましょう」
「なぜそうなる…!?」
「?ワタクシが見たいからですが。」
そして最終的にNFFサービスへ永久就職してもらいましょう、最も地球には顧客がいなくなるでしょうが
「・・・あー、コヤンスカヤ?」
「はい!如何されましたか?」
「さっきの発言を無かったことにしたいんだが。」
「だめです♡──覚悟、しておいてくださいね?」
「………やれやれ」
コヤンスカヤと一緒にチャーハンを作りたい作者のルルザムートです、ハイ。
コヤンスカヤの二次創作なのにコヤンスカヤメインの話の方が少ないってどういうこと…
いっそのことクライム&副長を主人公にすれば良かったのでは?と知人から言われましたがそれでも作者はコヤンスカヤが好きだから…