弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》   作:ルルザムート

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副長の第2スキルのガッツを戦闘続行スキルに当てはめちゃったけどいいかな…
第92話です、お楽しみください


第92話 堕ちる王

 以下、米軍魔術師合同勢力内における警戒すべき5つの特記戦力

 確認できる敵勢力の中でも特に警戒すべきである上位5人をリスト化。確認されたし。

 

 

① サーヴァントバーサーカー 土方歳三

 特記戦力筆頭。狂化としての能力値上昇はそのままに理性を保ち、単純な戦闘だけでなく単騎戦、集団戦双方における状況判断能力も高い。

 また征服王イスカンダルと類似した宝具を持っており召喚される新撰組隊士は数や質共に高く、本人のスキルによってそこから強化が可能。

 さらにバーサーカー最大の弱点である膨大な魔力消費もノーア・クランツェルの持っていた聖杯を取り込むことによって帳消しにしている

 同様の理由でマスターからの魔力供給も必要ないのでマスターという弱点すら無く、トドメに戦闘続行と仕切り直しが複合したような厄介極まりないスキルを持っているため排除するにはコヤンスカヤの持つ愛玩の檻のような特別な手段を用いて封殺しなければ現状不可能である

 

※マスターを持たないサーヴァント達は彼の内包する聖杯の魔力によって現界しているためサーヴァント総大将とも言える。

 また彼のマスターであるクライム・アルバートが米軍大将であり、彼の生存が米軍の士気に直結していることなどを鑑みて早急に排除したいが…

 

 

② 魔術師 キリシュタリア・ヴォーダイム

 実質的に魔術師達の総大将、基本的に自分(と自分の家系)のことしか考えていない魔術師達が米軍と手を組み共同戦線を張れているのはひとえに彼の存在無くしてはあり得なかったことだろう

 彼を倒せば魔術師達が瓦解する可能性は大きく、排除優先順位は高いが彼の付近には神霊カイニス並びにアルターエゴ芦屋道満が控えており、両者が揃って彼の元を離れるのは考えづらいためサーヴァント戦、魔術戦を仕掛けても撃破は容易ではない

 だが魔術師であることには変わらないので排除の際は魔術を無効化できるザイルが適任と思われる

(仮に逃げられたとしても彼の周りには優秀な魔術師が多く居ると予想され、ザイルなら一方的にリスク無くそれらを排除できる)

 

 

③ サーヴァントセイバー 渡辺綱

 頼光四天王の1人、鬼殺しの剣士。

 鬼を含めた魔性に対して強力な特効を持つのは元より、厄介なのはその隙の無さである

 騎士王や英雄王のようにデタラメな強さこそ無いものの、自分に出来ること出来ないことを熟知しており博打をしない。

 戦闘に対してあらゆる私情を介入させず攻め時は攻め、守りに入るのなら徹底的に守り、逃げを決めれば即刻背を見せる

 こちらの陣営には彼が得意とする魔性属性の入った戦力が多く、無効化しようにも逃げを決められると生身であるザイルでは追いつけないため排除するにはこちらも地に足をつけ、小細工無しのサーヴァント戦の中で唯一の弱点であるマスターを殺す必要がある

 

 

※追記。仮に影月 彼方をここで排除するのなら彼の宝具は必須であるため、場合によっては排除しない選択肢も出てくる可能性あり

 

 

④ 自律型AI レオナルド・ダヴィンチ

 キャスター、レオナルド・ダヴィンチが退去前に作成していたと思われるAI

 単騎での戦闘力は皆無だが彼の頭脳がそのままコピーされている様子。そして実体が無いので直接攻撃での排除は不可能

 ただし所詮機械なのでメインコンピュータの所在を突き止めれば撃破可能。

 撃破できれば分かりやすく弱体化が見込めるため各員所在が分かり次第、すぐに間粡慎二を呼び求め、彼の指示に従うように。

 

 

⑤ サーヴァント? バーヴァン・シー

 ブリテン異聞帯にて妖精騎士トリスタンの名前を着名されていたアーチャー

 …なのだが何故か実体を持っていて、異聞帯の時には確認されなかった杖を所持している。

 杖の造形は異聞帯の王であるモルガン女王が持っていた物と酷似しているが関連は不明。(モルガンが居ない以上流石に本物ではなさそうだが)

 霊基反応を見てもアーチャーというよりキャスターに近く、そもそも受肉サーヴァントである土方歳三と違いサーヴァントの反応自体無いため現状正体不明。

 生け捕りにすれば何か分かるかもしれないが冬木の一件以降、彼女の護衛が異常に固くなり生け捕りは困難が予想される

(守りの硬さから彼女には『何か』があるのは察知できるが…)

 

 

…以上。対応すべき5つの特記戦力について

 

            レポート作成:コヤンスカヤ

                  :間粡慎二

 

 

米陸軍駐屯地 グラウンドにて…

 

 

「うええ、ワタクシの一張羅が…」

 カルデアデータベースに残っていたプリテンダークラスの特性を悪用…もとい利用して彼の千里眼にダミー映像を流したまでは良かったものの、まさか隠れ場所が大蛇の体内になるなんて思いもしなかった

 

 

 大蛇の操作権を譲っていただいたおかげで大蛇ごと串刺しにされることなく英雄王を撃破できましたがそれにしたってこれはひどい

「とりあえず1分でシャワー浴びて30秒で着替えて1秒で戻って「──のれ」

「あら?」

「おのれおのれおのれェェ!女狐ェ!!!」

 

 

 おお、流石は聖杯の泥を飲み干した英雄王と言ったところでしょうか。並の英霊なら1発受けただけでも充分オーバーキルのケガレ弾を2発もまともに食らって尚乖離剣を出そうとしている

 ですが

 

 

 3丁めのマグナムを怒号を放つ彼の口内へねじ込み、最後のケガレ弾を脳幹へ撃ち込む

「何度も同じことを言わせないで下さいます?遅いんですよ、何もかも」

 新撰組が展開している以上撃たせても良かったがそれはそれ。同士討ちさせるのはまだ早い

 

 

「今度こそお片付けおしまい!」

 勢い余って預かってた3発全部使っちゃいましたがこれで英雄王は完全排除完了と。あとやるべきなのは彼方さんの援護ですが──

「報告だけしてまずシャワーですねぇ」

 

 

HOPEボーダー 甲板にて…

 

 

『と、言うわけで英雄王の排除は完了。アタランテさんも慎二さんが撃ち落としたようで目ぼしいアーチャーは1騎を除いて削り終わりました

 一旦シャワー浴びてきますね』

「分かった、こっちはまだもう少しかかりそうだ。

…やれやれ」

 

 

 彼のインカムから聞こえてきた衝撃的な言葉に動揺しかけた心を落ち着かせる

「戦闘中にシャワーを浴びに行くサーヴァントなんて聞いたことあるか?少なくとも俺は初めて聞いた」

「    」

 中指を軸にくるくるとマグナムを回しつつ、ザイルは彼へと問いかける

 

 

 魔術特性『現在』…神秘の類一切が効かないという魔術師泣かせの特性だとばかり思っていたが──

 神秘が込められた兵器(爆弾)を持って特攻してくるのは予想外だったわね…

 

 

「死んだフリか気絶しているのかは分からないが…なにも地雷(クレイモア)が4発直撃したぐらいでアンタが死ぬとは思っていない」

 

 

 自爆とは名ばかり、リスクゼロの自爆特攻。それに加えて特性によって無害化した地雷原(もちろんこっちが喰らえば致命傷は必須)

 あれらを魔術以外で防ぐ手段は当然こちらに無く、人への特効が備わっているためか魔術を使っても可能なのは『遮断』ではなく『軽減』であるし当然魔術行使の隙を彼が逃すわけもない

 狙いは私ではなくキリシュタリアとこの艦、なんとかやり過ごして不意打ちを決めるしかないかも…

 

 

「手負いの時が1番危険なのは俺なりに分かっているつもりだ、だから──」

 …!?

 

 

 そう言った声の方向から掛けられたのは妙な匂いのする液体、いやこれは、この匂いは知っている

「ブリテン異聞帯のアンタを俺は見た、加えてこちらの世界でもキリシュタリアの太鼓判を押されているというのなら妥協も油断も一切無く行かせてもらう」

 

 

 確かこの匂いは──

「死んだフリだろうが気絶だろうが関係無い、死ぬまで燃えろ」チャキッ

「ガソリン…!」

 

 

 満身創痍の身体を跳ね起こし、ギリギリで弾丸を避ける──が

「ぐっ…!?」

 甲板上に飛散したガソリンから糸を伝うように炎に追われ、身体に引火

 

 

 流石にこれはまずい!

「〜っ!!!」

 

 

 ガソリンを介して燃え上がる身体で何かできないか思案するが──

「やはりか、まあいいサヨナラだ」

 こちらが動くよりも早く艦内へとザイルが消えてしまった

 

 

 キリシュタリア…!

 

 

 

 

 

「…やれやれ、やる気か?」

「ンン?いえいえ滅相も!拙僧はただ甲板の掃除をしに行くのみにて!」

「そうか、なら早く行った方がいいぞ」

 

 

 入ってすぐすれ違った芦屋道満に軽く甲板の状況を教えてやり(多分分かっていたが)そのまま艦内を進む

 当初の作戦通りなら俺がここでやるべき仕事は既に終わっているがアルトリアが乗っているとなれば話は別だ

 

 

 ギルガメッシュとアルトリアが最優先で排除すべき敵であることに変わりはない。財宝の雨と聖剣だけはまともにやり合ってはだめだ

 …その上で特記戦力から外れたのは彼らと違い分かりやすい弱点があるからだろうな

 

 

 裏を返せば特記戦力というのは如何に『攻略しづらいか』とも言える…ん、乗組員が居たな

 とりあえず発見した乗組員と思しき3人組へ声をかける

 

 

「おい」

「ザイル!?」

 魔術師2人に…米軍も乗っていたのか。コイツらのことをほぼ知らないが向こうは顔を見ただけで俺が誰か分かったらしい、10年前じゃありえないことだな

 

 

「お前ら下っ端と戦うつもりはない、アルトリア──甲冑を着た金髪の女を見なかったか?」

 返答は別に返ってこなくてもいい、大切なのはアルトリアについて質問するという行動だ。こちらの目的と行動を知れば向こうから現れる

 

 

「クソ…!くたばれテロリスト──ガッ…!?」

 弾が勿体無いのでさっき拾ったクレイモアの破片を投擲、米軍の男の方の首を掻き切る

 魔力の波動や波長は…無し、まだ気付いていないようだ。もう少し殺すか

「く、クライムさ──」

 

 

ごしゃり

 

 

 男の身体が崩れ落ちるよりも早く接近、人特効の乗った義手で頭部を殴り砕いて横の女の腹部を突き抉る

 コヤンスカヤ本人程ではないが生身の人間を殺すには充分すぎる特効だ

 

 

「…!?…え、え…?魔術、魔術が…効かな「ふっ」

 腹を抉られ困惑する魔術師の女の首を蹴り砕き、3人目…腰の抜けた魔術師の女へデザートイーグルを向ける

 ちなみにだが撃つつもりは無い、殴り殺せばそれで済む

 

 

「一応質問するがアルトリアを見たか?」

「ひ…船に乗ってから、見てない…知らない、ごめんなさい…本当に知らないの…!と、投降します…!だから殺さないで…お願──げほっ!?」

 両手を上げて隙しか無くなった腹部を蹴り上げる

 ん…?義手で殴らないと特効は乗らないのか、俺の特性と両立出来るとはいえこれは少し不便だな

 

 

「や、やめて…」

「何を勘違いしているか知らないがこれは魔術師同士の小競り合いじゃない、戦争だ。コヤンスカヤの保護を蹴って戦場に立ったのはお前だろう?

 その中においてお前ら下っ端の降伏や投降に意味は無い。互いの大将どちらかが白旗を上げない限り戦おうが降伏しようが逃げようが勝てなきゃ大将以外は死ぬだけだ。それを覚えてから死ね」

 

 

パシュッ

 

 

 殴り砕こうとしたその手を防御へ移し、飛んで来た弓矢を叩き落とす

 …矢?

 

 

「うおおおおお!!」

「やれやれ」

 

 

 無謀としか言えない体当たりを仕掛けてきたソイツにカウンターを入れようとして──

「…!」

 顎に入りかけたアッパーを抑え込んで飛び退く

 

 

 …衛宮士郎?

「大丈夫ですか!?」

「げほっ、うう…」

「セイバー、彼女を連れて逃げてくれ!ここは俺が戦う!」

「シロウ!しかし彼は…!」

 

 

 と、遅れて士郎の後ろから出てきたのはアルトリア

 驚いた、まさか士郎が乗っていたとは。いや、まさかアルトリアのマスターは──

 

 

「…!令呪を持って命ずる、セイバー!彼女を連れて安全なところへ!」

「なっ!?シロウ!…く、分かりました!すぐに戻ります!」

 やれやれ、確定だ。アルトリアのマスターは衛宮士郎だ、慎二が知ったらなんて言うかな

 

 

「久しぶりだな、士郎」

「アンペルドさん…!」

 まさかそれで戦うつもりか?…と聞いて欲しいのか、彼の手には鉄パイプが握られている

 皮肉にもその鉄パイプやさっきのただの弓矢が魔術より100倍有効打になってはいるのだが客観的に見ればとてもそうは見えないだろう

 

 

 周囲には…通路で狭いとはいえ見える限り誰もいないな

 想定外ではあるがこの対面は幸運だった、今彼を保護できれば憂いが1つ減る──その前に令呪を剥がす必要があるが。

 

 

「構えているところ悪いが士郎を殺すつもりは無い、というかできない」

「自分が…自分が何をしてるか、分かってんのか!台所に立ってた時のアンタの笑顔、あれはなんだったんだよ!?」

 

 

 演技だったのか?と今までに見たことがないような怒りを露わにする士郎に少しだけ驚いたが同時に以前慎二が言っていたことが少し分かった気がする

 

 

 裏切られた怒り、というよりもこれは…悪に対する怒り?

 直感だが多分的外れな推理では無いと思う、慎二が心配していた意味はこれだろうか

 

 

「いや演技じゃない、あの3ヶ月は本当に楽しかったしなんならまた料理を教わりたいと思っている」

「だったら──うっ!?」

 

 

 特性を維持しつつ予備動作を消してゼロ距離へ。少し反応されたのに驚いたもののそのまま両手で包むように左手を掴む

「戦争を仕掛けたのも同じだ、料理をしたり映画を見たりするのと同じだ」

「そんな理由で人を…!?」

「そんな理由とは酷い言われようだ、楽しむことは生き甲斐…人生に直結する大切なことだと思うが。…さて」

 

 

 振り払われるままに手を離し、その左手を注視する

「令呪が…!?」

 よし成功だ、NFFボーダーのシミュレーションだけだったから少し不安だったが2画残っていた衛宮士郎の令呪は()()()()()()。これでアルトリアは勝手に消えるだろう

 

 

「これで憂いも無くなった、行くぞ士郎」

 手招きしつつ元来た通路を引き返す

 ここでの俺の仕事はこれで本当に終わりだ

 

 

「俺は、こんなことに手を貸すつもりは無いぞ!」

「?ああ、別に何もしなくていい。前に言ったかもしれないが士郎を連れていくのは間粡慎二との約束だからだ。遠坂凛、間粡桜、衛宮士郎、3人を保護することが慎二の力を借りる条件だった

 お前たちがどういう関係か知らないが慎二のアレは並の覚悟じゃないぞ」

 

 

 プライドが高く、能力が高く、魔術の才が無く、想定外の事態に弱く、臆病…と思っていたが

「慎二はお前たち3人を守るために自分の右腕を切り落とした、子供ができることじゃない」

「…!?お前、アイツに何をした!!!」

「やったのは俺じゃない、アイツ自身だ」

 

 

 10年前の残骸…フーレンとの戦闘と時計塔での芦屋道満との戦闘によってそれぞれ破壊されたダヴィンチの義手、コヤンスカヤがそれらをかき集めて復元した『ダヴィンチちゃんアーム3号機 NFFカスタム』…は元の性能に遠く及ばなかったものの本来の目的である外付け魔術回路としての役割だけは保てていたため慎二に使用を勧めた

 だが肉体そのものに直接接続する必要があるため義手をつけるにあたって彼は…

 

 

「こういうのを親友、と呼ぶのかどうかは俺には分からない。だがそうそう居るものじゃないのは分かる。慎二を裏切らないためにもこっちに──」

 

 

たたたたっ

 

 

 ──やれやれ

「死ねェッ!ザイル!!!」

 首筋狙いのナイフをデザートイーグル本体で弾き、闘牛を避けるように勢いをいなして距離を取る

 

 

「いい加減空気を読むことを覚えてくれないか?クライム」

「ゼッ…ゼェッ!また、また俺の部下を殺したな…!」

「ああ、それが?普段ならともかく戦争中に人殺しを咎めるなバカが。」

 相変わらず怒り心頭だ、そこの首がヘシ砕けた魔術師の女も気にしてやれよ…

 

 

「これじゃ保護は無理だな…仕方ない逃げるか。またな士郎」

「逃がすかァァ!!!」

 

 

 とりあえず元来た通路を逆走して出口へ、怒り狂っているとはいえ流石に弁えているのか艦の中でロケランを撃つほど馬鹿でもないらしく律儀にアサルトライフルを持っている

 通路は一本道、隠れる場所も凌げる部屋も無し、なら──

 

 

 アルミニウム粉末の詰まった袋をクライムへ投げつける

「小細工を!──く!?」

 構わず撃とうとしていたクライムだったがそのまま撃てば当然粉塵爆発が起こり後ろにいる一般人(士郎)に危害が及ぶと分かったのだろう、即座に射撃を中止してコンバットナイフを片手に追いかけてくる

 

 

 構うか、出口はすぐそこだ

「おや、もうお帰りで?」

「ああ」

 途中、全身重度の火傷を負った妙蓮寺に式神を貼り付けて治療?をしている芦屋道満とすれ違ったがお互い特に何をするわけでも無くそのまま外へ

 

 

 甲板に戻って来たな、クライムに追いつかれても面倒だしさっさと行くか

 目撃者が誰もいないことを確認し、甲板から飛び降りて格納庫の外──ではなくノーアの秘密基地奥へと向かった…

 

 

米陸軍駐屯地 医療棟前にて…

 

 

『ザイルだ、HOPEボーダー内に衛宮士郎と騎士王を確認した。保護はできなかったが騎士王のマスターの令呪を破壊、退去は確認できていないがじきに騎士王の無力化もできるだろう』

「分かったよ、じゃあザイルは計画通りそっちに向かって。じゃあね」

 

 

 2メートルはある筋肉質な弓兵を従えて医務室と書かれた建物に入る

 コヤンスカヤが戻って彼方の援護を始めるまで少しある、今のうちに…

 

 

 特に情報があったわけではないが彼、慎二には確信があった

「桜、ここにいるんだろ?出てきなよ、兄さんが守ってやるからさ」

 妹がここにいるかどうかは分からない、だがもし『彼』がまだ生きているのなら──

 

 

 ザイルは殺したと言っていたけど本当に殺したのか、どうか

 

 

「〜〜!〜!」

「〜〜〜!」

 

 

 そっちか?

 右腕の義手で、声のする方の扉を開いた…

 

 

医務室にて

 

 

「グ…」

「ど、どうしたんですか神父様!いきなり倒れて…」

 

 

「…恐らく英雄王が倒された」

「え…?」

「医者が患者になってどうするんだ、彼は放っておけ。こっちの兵士の処置をする!サクラ、止血剤を!」

 

 

「え、ですが…」

「ソイツはずっと前から死者だ、今の僕には治せない。質問を返すな、医師の行動言動に疑問を持つな、急げ!」

 

 

 間粡桜を含めた医療スタッフ達に檄を飛ばす医神アスクレピオス、既に脅威は去ったとはいえ影月 彼方の投擲の影響が大きく、ここに運び込まれる人間も爆発的に増えていた

 そしてそれに追い打ちを掛けるように現れる敵が1人と1騎──

 

 

「ああ、ここにいたのか桜」

「兄さん…?その、右腕は…」

「ち、オリオンのマスターか…!?」

 

 

 キャスターアスクレピオスと桜…ベッドにはバーヴァンシーもいる、連れ去るなら今かな?

 が、今は桜だ。コヤンスカヤが戻ってくれば本格的に戦争が始まる、それより早く桜を戦線から保護しないと

 

 

「心配しなくても桜を連れてすぐ消えるよ、ほら行こう?」

「…はい」

 やはりというか桜は大人しくこっちの指示に従ってくれるみたいだ、これでさっきまでの疑念が確信に変わる

 

 

「く、この…」

「お前は動かず寝ていろ、魔力の使いすぎで身体が崩れかけている。患者が医者に逆らうな」

 バーヴァンシーは動けないようだが例えそうでも今連れ去る理由にはならない、何故なら──

 

 

「じゃアーチャー、援護頼むよ」

「………」

 適当にアスクレピオスを足止めさせつつ桜を連れて外へ

 …ここでいいか

 

 

「兄さん…どこに行くの?」

「NFFボーダーさ、そこなら安全だ。それよりも──やっぱり生きてたんだ、おじいさま?」

 

 

 そう言った瞬間、何かの冗談のように桜の顔色が変わった

「………『ふん、どれだけ腐り果てても間粡の人間、ということか?』」

 ここに自分と桜以外の人間は居ない、にも関わらず聞こえる老人の声

 

 

「そういうアンタは僕の妹にしがみついて随分見窄らしいな、本当に間粡の当主なの?」

「『口の減らない小僧が。間粡家の魔術師の血を途絶えさせたばかりか、そんなものに頼った上で魔術使いに成り下がり、それを恥とも思っておらぬ。貴様は間粡家が生んでしまった魔術世界の恥だ。』」

「魔術師本来の目的も忘れてただただ生永らえるだけの怪物よりマシだと思うけど?」

 

 

 桜の意識は無いのか表情や身体に動きはなく、老人の声だけが聞こえてくる…が、声の感じからかなり頭にきているようだ

「『ビーストに付いて強くなったとでも勘違いしたか?笑わせる』」

「そんなつもりは無いよ、ただ不死に固執して穴蔵を決め込む老害に僕が負ける要素が無いってだけさ」

 

 

 直後、虫の大群がそれぞれ別の方向から向かってくる

「っと『レオレオ』」

 脚部に軽い強化をかけて飛び上がり、真下に集まった虫に向けて義手搭載の火炎放射器を放つ

 なんだかんだ言ってザイルとの体力作りが生きてるな

 

 

「『貴様を間粡と認めてたまるか、魔術界一の恥晒しはワシ自ら葬ってくれる…!』」

 どうやら戦闘はできるようだが間粡家の魔術の要ともいえる水が周囲に無い、それに今の攻撃もそこまで強くなかった

「丁度いいや。…ケリをつけようじゃないか」

 ワザと弱くした可能性も無いわけじゃないがこの状況でそれは考えづらい、今の僕なら──

 

 

『慎二、人には得手不得手がある。魔術の才が無いのなら魔術以外で見返してやればいい』

『魔術より優れた物は無い?…なら良かったじゃないか、魔術相手に魔術無しで勝てばもう相手はぐうの音も出ないだろう?』

 

 

「戻ったらザイルにお礼と文句を言ってやるか、とりあえず僕の妹は返してもらうよ」

 この日、慎二は人生で初めて臓硯と対峙した。

 

 

〜サーヴァント アーチャー アタランテ退去〜

〜サーヴァント アーチャー ギルガメッシュ退去〜

〜魔術師 言峰綺礼 死亡〜




正座して痺れた足をニンマリ顔のコヤンスカヤにいぢめられたい作者のルルザムートです、ハイ。
おじいさま相手にキレッキレの慎二、いいぞ。
ザイルの魔術特性『現在』は一見無敵ですが《今を生きる人類》属性のサーヴァントに対しては効果が無かったりするし義手に乗った特効も守りが得意なサーヴァントなら上から防御力で打ち消せるという…もしここにマシュがいたらとことん相性が良い、というのをイメージして書いてます
そして特記戦力の分が多くて8000超えちゃった⭐︎前回の投稿から結構経ってるし2週間後にはまた出張…ううむ
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