呪具解封   作:ベリアル

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2話

 

 

呪力に覆われた木刀を真希に振り降ろす。

 

それを薙刀の石突(薙刀の刃の反対側)で払い、そのまま半回転させるように布袋に収まった先端が多田良の左わき腹へ軌道を描く。直撃すれば、肋骨粉砕コースまっしぐらである。

 

多田良は払われた勢いで両腕が上がっており、腹部ががら空きとなってしまっている。だが、払われた勢いを利用して、後ろに転がる。そこからロケットスタートの如く、攻撃を仕掛ける。

 

薙刀は既に振り抜いていた。通常であれば、防御が間に合わず、多田良からの攻撃は免れない。真希は動じることなく、体ごと一回転させて、木刀を受け止めた。当然、薙刀で受けたといえ、衝撃は相当なはずだが、真希はなんてことないようにニヒルな笑みを浮かべていた。

 

「ここは当たってくれるとこじゃねえの」

 

「へっ、読みが甘えんだよ」

 

木刀と薙刀の鍔競り合いは、ほんの刹那で終わり、激しい攻防が始まった。

 

武器と武器とのぶつかり合いによって生まれた音は止むことはない。

 

両者の集中力は深まっているのか、動きに無駄はない。

 

単純な力比べでは真希が遥かに上をいっている。つまり、まともに防御しても吹き飛ばされてノックアウトもありえる。

 

これは真希の特性と言ってもいいだろう。

 

ではなぜ、多田良はこれほどの持ちこたえられているか。単に、数多の戦歴がここまで成長を飛躍させた。

 

幼い頃より、付き添いと称し、呪霊と戦わせられていた。

 

故に自分より接近戦が遥かに上を行く存在と戦う術を身に着けていた。防御の際には、ある程度受け流すように防いだ方が、疲労もダメージも最小限で済む。それらを体で覚えているのだ。

 

それでも尚、天与呪縛のフィジカルギフテッドに蹂躙されてしまう。

 

激しい攻防を繰り広げていたが、ついに真希の蹴りが多田良の腹部に直撃した。

 

「っはぁ!」

 

一瞬、呼吸困難に陥り、腹を抑えて悶える。

 

「勝負ありだな。81戦81勝」

 

真希は嬉しそうに笑いながら、多田良の手を引っ張りあげて立ち上がらせる。

 

サンキュ、といって多田良は服についた砂を払う。

 

「とまあ、慣れれりゃこんな感じでいけるわけよ。参考になったか」

 

ギャラリーとして多田良と真希の組手を見ていた乙骨憂太は見いっていた。今回の組手は憂太の参考になるとパンダと棘に勧められ、観戦していた。

 

「凄いよ!真希さんも多田良くんも!映画みたいだった!」

 

興奮した様子で憂太は目を輝かせる。真希は鬱陶しそうに、多田良はドヤ顔で対応する。

 

「まあまあ、俺の凄さはもっと別のところにあるからさ。こんなもんで驚かれちゃ心臓がもたないぜ」

 

「うぜえ。負けた分際で調子に乗るなよ」

「高菜」

「憂太、こいつは悟のウザい部分を引き継いでるから気を付けろ」

 

同級生からボロクソに言われてるが、多田良の耳には入らなかった。

 

「憂太、お前はこいつらと違って見所がある。昔の俺を見ていようだ。俺の背中を見て育ちなさい」

 

「どっから目線だ!散々私にボコられた奴がほざいてんじゃねえよ」

 

「うるせえ、俺は人から褒められたいし、ちやほやされたいんだ!文句あんのか!」

 

己の承認欲求を満たしたい多田良にとって、憂太の存在は貴重だと言えるだろう。そんな浅ましい姿に憂太は若干引いていた。

 

「というわけで、実習でーす」

 

「うおッ!」

 

どこからともなく現れた五条は多田良の肩に手を置く。

 

「どういうわけですか」

 

「今回、憂太は多田良と一緒に実習ね。二人まだ一緒に仕事したことないでしょ」

 

「ようやくっちゃようやくですね」

 

憂太が転校してきて、一月が経過していた。真希、棘、パンダと組んだことはあっても、多田良と共に戦ったことは一度もなかった。

 

「憂太にとっては一番お手本になるかもね」

 

五条の発言に多田良を見つめ直す。

 

確かに、憂太は武器に呪力を流すことが上手くいってない。刀の扱いもまだまだなので、今の組手でも参考になることは多かった。

 

憂太はあまり多田良のことを知らない。

 

同級生としてでなく、呪術師としての話だ。

 

一級呪術師であることはパンダから聞かされているが、どんな術式を用いているかまでは教えられていない。

 

「なんか渡しときます?」

 

「まだ早いでしょ。今日のとこは、戦ってるとこ見せてあげたらいいいし」

 

「オッケす」

 

早速移動してね、と五条の指示に従い、現場に向かう。

 

憂太は補助監督の運転する車内で、多田良を横目に見る。多田良はタブレットでこれから向かう先の情報を頭の中に入れていた。

 

以前、多田良の術式について聞いたことはあるが、「なんだと思う?」「お前にはまだ早い」などと録な答えは得られなかった。もっとも、普通は聞いたからといって、他人に術式をペラペラ喋るものではないと分かっていなかった。

 

「んー、今回の呪霊ちょっと厄介かもな。」

 

「なんかあるの?」

 

多田良の一人言に憂太が反応する。

 

「ご存じの通り、俺一級だからさ。基本的に戦う呪霊って一級なんだわ。ここまではわかるよな?」

 

憂太は頷く。呪術士が呪霊を討伐する際には、それに合った強さの呪霊と戦う。つまり、一級呪術師は三級の呪霊をあてがわれることはないし、逆もあり得ない。

 

なので、今回の任務は必然的に一級案件となる。

 

憂太は特級だが、特級であるが所以の折本里香の制御が出来てない状態にある。現状、憂太は誰かの付き添いという形になる。

 

「一級つっても特級寄りとか二級寄りとかあんだけど、これから向かうの特級寄りかもなんだよ」

 

タブレットに写し出されている画面を憂太に見せる。写し出されている画像は山をバックにした寂れた施設、○○病院と書かれていた。

 

「ド田舎の廃病院。これだけでも負の感情が集まる要素たっぷり。そんでその山が地元じゃ自殺のスポット。厄介な呪霊かもな」

 

「多田良くん一級だから倒せるんじゃ」

 

「どうせなら楽な相手がいいって話だよ。面倒な相手ほど労力やら時間がかかってサビ残になっから」

 

疲れきった社会人のような顔をして、深い深いため息をつく。

 

「んで、憂太がピンチになればなるほど、里香が暴走する可能性が高くなる」

 

「なら、僕はどうしたら」

 

「いつも通りで。不安にさせるようなこといったけど、心構えだけしとけって話。里香を除けば、お前が出会う中で一番強力な呪霊なんだからよ」

 

そんなことを話しているうちに目的地に到着し、補助監督が帳を張り終えていた。

 

「行きますか。ま、俺なら負けはしねえからさ。緊張しすぎるなよ」

 

「うん。ん?」

 

帯刀した憂太は多田良の右手にマチェットナイフが握られていることに気付く。刃渡りは40cmはあるであろう。白い刃の側面には、人の骸骨がデザインされている。

 

こんなものを持っていただろうか。車に乗るときも、乗っているときも、降りたときも、多田良は荷物一つ持っていなかったはずだ。

 

「呪霊具術ってんだ」

 

憂太の疑問に答えるように話し始める。

 

「倒した呪霊を呪具にする術式」

 

これもそうといって、マチェットナイフをぷらぷらさせる。

 

「真希さんみたいに戦うってこと?」

 

「ではない。似て非なるものだ。一般的な呪具は呪力がなくても、戦える代物。けど、俺が作った呪具は呪力があって初めて成立する呪具だ。その辺りは今から見せるわ」

 

多田良はそう言うと、左手にハーモニカが握られていた。呪力を纏わせて、ハーモニカを口に運ぶと低い音が一体に鳴り響く。

 

1分ほど演奏すると、ハーモニカを消して廃病院の入り口前から動こうとせず、マチェットナイフを右手に持つだけになる。

 

「刀抜いときな。来るぞ」

 

「え?」

 

その瞬間、病院の窓や壁から複数の呪霊が飛び出してきた。

 

「三級とか四級の雑魚ばっかだ。その辺りは憂太、お前が対処しろ。俺は二級以上を潰す」

 

「え?」

 

呪霊の数は20~30体程度。二級が一体いたので、多田良はそれを相手取るようだ。

 

「雑魚狩りよろしく。ファイト」

 

「え?」

 

人間の瞳が至るところに備え付けられたカブトムシが角を振り回している。多田良は人間大のカブトムシの攻撃をあしらいながら、憂太に指示を飛ばす。

 

「そんな急に言われても」

 

「言っておくけど、他の3人ならその程度なんなく終わらすぞ」

 

声色が変わった。

 

「お前はこの呪術の世界に入って、まだ日は浅い。その割には成長速度は早いけど、俺からすりゃまだまだだ。動きに無駄が多い、動揺もしまくる」

 

カブトムシの甲殻の隙間にマチェットナイフナイフを突き刺し、隙間を縫うように肉を切り裂く。人間特有の断末魔を上げてもお構い無しだ。

 

「肩を並べて戦えるようになりてえなら、その程度どうにかしろ」

 

カブトムシの頭部を胴体と分離させ、呪霊として消失しようとした時、呪霊具術を発動させる。左手にはスプーンの形状をした呪具だった。 

 

憂太はと言えば、呪力を纏わせた刀で一体ずつ確実に倒していき、呪霊の攻撃は注意して回避している。一体倒すごとに動きは速さを増していく。

 

「安心しろ。五条先生に見込まれたってのは、お前にその可能性が秘められてる。自信持っていいぞ。オケ?」

 

「はいッ!」

 

「言い返事だ」

 

刀に呪力を纏わせた状態で戦う憂太の姿は先ほどまでの動揺していた状態と違い、冷静さを取り戻していた。

 

呪霊を倒しきるのに時間はかからなかった。

 

「お疲れ」

 

「うん、ありがとう」

 

水の入ったペットボトルを手渡し、ハーモニカを見せる。

 

「こいつは呪力を込めながら吹くと雑魚限定で呪霊を呼び寄せることが出来る。つまり、俺の呪霊具術は呪霊の能力を使用できる。だから、今回の本命はまだまだね」

 

唐突に術式の説明が始まり、驚く余裕も持たせず、口を動かす多田良。それでも、呪霊の能力を使用できる術式に驚愕をせざるを得ない。

 

「凄い……」

 

呪術の知識が浅い憂太でも多田良の術式の凄さがわかった。

 

呪術師は才能が全て。つまり、術式で強さの序列が決まるといっても過言ではない。手に入れるものではなく、生まれ持ったものなのだ。

 

多田良はそれを無視した術式だ。

 

しかし、多田良は憂太に純粋な称賛に目線を落とす。

 

「んー、や、まあな」

 

多田良は一応、称賛を受け止めて切り替える。

 

その姿に憂太は疑問を覚えたが、多田良の視線が廃病院に向けられて、自身も意識をそちらに集中させる。

 

本命の一級呪霊は未だ姿を隠している。

 

「んじゃ、行きますか」

 

しかし、潜んでいるのは呪霊だけではない。

 

かつて院長室だった一室のソファーに腰をかける袈裟姿の男が笑っていた。

 

 

 

 

 

伏黒 恵は女体化させるべきか

  • 普通に男のままがいいなぁ
  • 女体化するとヒロイン枠が増えるなぁ
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