呪具解封   作:ベリアル

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4話 昔話①

「ご両親は?」

 

「お馬さんの応援。一昨日から」

 

「なるほど」

 

玄関が開かれた先には、薄汚れた服で出迎える多田良であった。

 

体は細く、頬は少しばかり痩せこけている。多田良の家庭環境が、お世辞にも恵まれてるとは言えないのが見てとれた。

 

玄関の奥に見える部屋はゴミが散乱していた。

 

「では、これから高専へ向かうわけですが、その前に昼食を買っていきましょう。パンは食べられますか?」

 

「朝からなにも食べてないからなんでも食べられる、ますよ」

 

「なによりです。それから、着替え、保険証を持って来ていただけますか。急遽、日帰りは難しくなってしまいました」

 

「でも、父さんと母さんが」

 

「ご両親には私から話しておきます」

 

「うん」

 

多田良はバックに服を乱雑に詰め込み、七海が待たせていた車に乗り込む。

 

 

 

******

 

 

「七海が見つけたって子供はキミか?」

 

ベンチでポツンと座っている多田良の横に座った女は、多田良に問いかける。 

 

多田良が女に目を向けると、ショートカットの女学生らしき姿をしていた。七海とは違い、白衣を着ているものの、口に咥えた煙草には火が着いているので、幼い多田良は面食らってしまった。

 

多田良は七海と出会って、4日後に呪術高専と呼ばれる高校に連れられ、自販機のあるスペースで七海が帰ってくるのを待っている。七海は期学長の夜蛾という男を呼びに行った。 

 

七海に買ってもらった缶コーラを飲みほしたところで、女がやってきた。 

 

「私は家入 硝子。君の名前を教えてくれるかい?」  

 

「成瀬 多田良、です。あの、ここは禁煙じゃないんですか?」 

 

慣れない敬語でたどたどしく家入に質問をした。

 

「知らないの?呪術師はどこでも煙草を吸ってもいいんだよ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん」

 

さらりと嘘を吐いた硝子は、すっかり鵜呑みにした多田良を面白く思い、更なる嘘を吐くことにする。

 

「呪霊ってね、実は食べられるんだよ。フグって知ってる?あれと同じで毒袋を取れば食べられるんだよ」 

 

「ええー!?おいしいの?」

 

「そりゃもう。ご飯と一緒に食べるとねー」 

 

「今度試してみよっと」

 

「ああ、頑張りたまえ」 

 

ようやく年相応の態度を多田良は目を輝かせている。硝子は笑いを堪えるのに必死で肩を震わせていた。大人の嘘を鵜呑みにする純真な心を弄ぶのは、硝子としては中々の遊び相手になった。 

 

「そうだ。多田良、きみの術式を教えてほしい。七海から聞いてはいるが、直接見てみたい」

 

多田良は言われるがままに、左右の手の平を上に向けた。

 

すると、右手にナイフ。左手にメリケンサックをどこからともなく、手の平に置かれていた。

 

メリケンサックの方に関していえば、先日入手した歯形の呪具と同じものだ。歯茎も犬歯まである前歯も潤いがみられる。まるで、生きているかのようだ。

 

ナイフの方も独特でおおよそ一般的には売られてないような、デザインをしている。

 

「呪霊具術。倒した呪霊を呪具にするそうです」

 

「なるほど、奴と似ている呪術とはそういうことか」

 

知り合いと似た呪術に親近感が湧く。同時に、多田良の身を案じる。

 

「その呪具は他の人にも使えるのかい。」 

 

「はい。七海さんも使えてました」

 

「そうか。これは」 

 

家入は口を手で抑えて、恐ろしくも哀れな呪術だと確信した。そういう意味では、多田良を発見したのは七海であって、運が良かった。

 

これらの意味を、まだ幼い多田良に説明するのを酷だと思い、黙り込んでしまった。 

 

「お待たせしました。こちらへいらしてください。次期学長夜峨先生がお待ちしております」

 

「学長じゃないのかい、七海」

 

「ここは夜峨先生に任せるとのことでした。時期が時期だけに、次期学長の引き継ぎも面倒だから夜峨先生なのでしょう」  

 

「それもそうか。では、またね。多田良」

 

「うん。お姉さん」

 

バイバイと手を振って、夜峨と呼ばれる教職員がいる応接室に入った。

 

「では、夜峨先生、多田良くん。私はここで失礼します」

 

多田良はてっきり七海が傍にいてくれるものだと思っていたが、そうではないらしい。どうやら、別件があり、多田良の傍にはいられないようだ。

 

「君が成瀬 多田良だな」

 

「はい」

 

夜峨という男は坊主頭で体格がよかった。しかし、座っているソファーには特徴的で愛らしいぬいぐるみが置かれていた。手に持っている道具からして、夜峨の自作であることが把握できる。

 

多田良も夜峨と対面する形で、ソファーに座る。

 

「なぜ、呪霊を払っていた?」

 

静かに語りかけるように問う。

 

「前に呪霊で困っている人を見過ごせなかったから」

 

簡潔に述べた一言に、ぬいぐるみ作成をしていた手を止めた。

 

「では、困っている人を助けようとした挙げ句、君が死んだら、困っている人のせいにするのかね?」

 

「それ七海さんにも言われました。答えられなかったけど」

 

「そうか。子供の君にはまだ分からないかも知れん。呪術師は転んで怪我をした程度の痛みでは比較にならない苦痛がある。困っている人を助けたいという正義感は、警察官や消防士を目指せばいいだけだ」

 

多田良はなにも言い返せずに、黙りこくってしまった。

 

「いずれにせよ、これから考えていけばいい。君を呪術高専で保護する」

 

「え?」

 

「君の術式は珍しく、悪いことにも使われることもありえる。だから、私たちで力の使い方を導く」

 

「なら、母さんと父さんに言わなきゃ」

 

「すまないが、しばらくは家に帰せそうにない」

 

そう告げて、夜峨の胸は張り裂けそうになった。

 

端的に言えば、誘拐である。

 

一人の子供を、親から引き離して、呪術の世界に引きずり込んだのだ。しかし、成瀬 多田良を調べるにあたって、両親に問題があると判明した。

 

袖から見え隠れする痣は、夜峨には痛々しい日々を匂わせた。このまま、親元に帰してしまえば、多田良にとって取り返しのつかない悲劇が起きてしまうことも予想できた。

 

通常であれば、児童福祉の問題となるが、多田良は呪術界にとっても稀少な術式を持っている。放置はできない。

 

放っておけば、呪詛師あるいは御三家の餌食になってしまう。

 

まだ年端もいかない少年の顔はどうなっているのか。己の目が反らすことを許さなかった夜峨は、多田良が特に表情を変えていないことに拍子抜けをした。

 

「平気そうだな」

 

「前に母さんと父さんが、愛してるって言ってくれたんだ。でも、嘘だってわかるんです」

 

「なぜ?」

 

「わからない。でも、昔からそうなんです。術式だとかそんなんじゃなくて、昔から嘘がわかるんです。親戚の叔父さんもそうだから」

 

多田良の学校は嘘に満ちていた。

 

学校の担任は「君たち生徒が大好きだ」と言った嘘も、校長先生も「世の中お金が全てじゃない」と言った嘘も、同級生の「俺たち親友だろ」と言った嘘も、下校中の高校生が「行けたら行くわ」と言った嘘も、多田良は全て気づいていた。

 

人から発せられる嘘のサインを無意識にキャッチしているのだ。

 

多田良は親戚の叔父さんに教えられた。

 

人はなにかを取り繕うために、本心を隠すものだと。

 

「なるほど。だから、七海に着いてこれたのか」

 

考えてもみてほしい。出会って、数日の歳が離れた男に着いていけるか。

 

答えはNOだ。

 

普通であれば、なにかしらの警戒心を抱くものだ。

 

しかし、七海は多田良に対して、何一つとして嘘を吐いていない。

 

だからこそ、ここまで連れてこれたのだ。

 

「では、寮に案内しよう。うちの学生が来るはずなんだが」

 

本来であれば、この部屋には夜峨ともう1人学生が入るはずっであったが、まだ来てない。

 

約束の時間を5分オーバーしている。

 

チラリと夜峨が時計を確認したところで、応接室の扉が開かれた。

 

「うーっす。遅れましたー」

 

「五条。5分遅刻だ。責めるほどではないが、時間には間に合わせろ」

 

「すみませんね。ん、その少年が例の?」

 

白髪に目隠しをした黒い服の男。

 

五条 悟。

 

最強と称される男との出会いは果たされた。

 

「五条 悟、多田良って君でしょ。来なよ、僕が寮に案内するから」

 

「うん」

 

そして、数年後に多田良は五条 悟に敗北を与えることは誰も予想し得なかった。

 

 

********** 

 

一台の車が止まった。

 

「多田良くんのご両親ですか?」

 

七海はアパートの駐車場で二人の男女を待ち構えていた。

 

「あ?誰よ?」

 

「多田良くんは私共呪術高専で保護させていただきました。つきましては」

 

「はあ!?おい話進めてんじゃねえぞガキ!」

 

男が詰め寄ると、七海は顔を歪ませる。アルコール臭い。

 

この男は運転席から出てきていたが、飲酒運転でもしていたのだろう。

 

戸籍上、多田良の義父とされている。

 

多田良の母は何度も男を変えていた。一応、誰の父親かまでは調べがついている。

 

「しじつこうさんだぁ?聞いたこたあねえんだよボケ!」

 

「うちの子になにすんのよ」

 

「呪術高専です。正式には東京都立呪術高等専門学校と呼びます。それとうちの子とおっしゃられましたが、どなたが多田良くんの世話を?」

 

「あの子もう小学生になるのよ?自分の面倒くらい自分で見れるわよ」

 

(聞くにたえない。こんな家庭環境でよく自主的に呪霊狩りなんてやろうと)

 

「んなこたぁどうでもいいんだよぉ」

 

男。つまり、多田良の義父が、多田良の人間性に感心していたところで七海の胸ぐらを掴みあげる。

 

「生安でも福祉でもねえクソガキがでしゃばってんじゃねえぞ。あいつ使って商売すんだからよ。てめえが金出すってのか?」

 

「子供になんの仕事をさせようと?」

 

多田良の義父は口元から涎を滴しながら笑った。

 

「あいつ、顔はいいからよ。そっち系の変態にゃ人気がでんだろ」

 

「そういうことしでしたか。失礼いたしました」

 

七海の謝罪に気分を良くした多田良の義父は、七海の胸ぐらを離して、背中をバンバンと叩く。

 

「分かりゃいいんだよ。金がありゃ、てめえにも使わせてやっからよ」

 

「いえ、結構」

 

「あ?ッオ!!?グギャッ!」

 

七海は多田良の義父の顔面を殴り飛ばす。彼らの車に頭を打って、気を失わせ、鼻血がとどめなく流れている。

 

多田良の母、顔面蒼白といった様子で七海を見て固まっていた。

 

「今後、多田良くんへの干渉を避けてください。でなければ」

 

七海はそこで言葉を止めて、多田良の母へ歩み寄る。

 

それに対し、震えるだけで一歩も動けずにいた。

 

七海は倒れている男を指差す。

 

「あの程度ではすまさない。お約束します。いいですね?」

 

何度も首を縦に振る姿に必死さが伝わる。

 

「それでは失礼します。ああ、警察の通報はお勧めしませんので」

 

七海はその言葉を残して、去っていった。

 

 

 

 

伏黒 恵は女体化させるべきか

  • 普通に男のままがいいなぁ
  • 女体化するとヒロイン枠が増えるなぁ
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