ラウラ・ボーデヴィッヒ
原作同様だが、裸などに耐性の無い一夏に朝起こすと言う事は無くなっている。とある人物から、一夏について探ってくれと依頼され情報を集めている。
※注意 今回は長いです
「………………」
私は今、バスに揺られながら上を見ていた。絶賛、横になっていると言う事だ。
「鈴~?起きた方が良いと思うよ~」
「起きてるわよ~」
間延びした声……シャルロットが私を現実へと呼び戻す。私が通っているIS学園の1年生は臨海学校の為に旅館へ向かっている。専用機持ちは一つのバスに纏められている。
「……そういえば、一夏を知らないか?」
「あれ、一夏来てなかったっけ?」
その人物……私が好きな人、織斑一夏はこのバスには居なかった。
「朝起きたら部屋にはもういなくてな……」
「わたくしも見かけていませんわね……」
「左に同じく、だ」
「私も~」
一夏の周りに居る全員が見かけていない、という。そういえば……今日はとっても大事な日だった気がする。
「ダメだ……思い出せない。何だっけ……」
「何を話している?」
そう言うのは一夏の姉、織斑千冬だ。ああ、この人なら知っているはずだ。
「一夏が来てない事何か聞いてますか?」
「……あいつは、
墓参り……墓参り?何か思い出せそう……
「あっ……今日だったんだ。道理で来ないはず」
「何か、そういう行事あったっけ?」
シャルロットがそう、聞いてくる。話づらいから着いてから話そう。
「あるのよ。あっちに着いたら話すわ……一夏は今日はどのくらい遅れるんですか?」
「……確か、昼頃に来ると言っていたな。荷物はこっちで持って来ているから後は本人が来ればいいだけだ」
一夏はそういうのを大事にする人間だから、仕方ないか。しかも、
「……お前ら、海が見えてきたぞ」
「海、か……魚でも捕まえようかな」
「素手で捕まえるのか?無理があると思うぞ……」
そんな話をしながら私達は海へと向かっていった……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「………………」
バイクを走らせ、俺は天宮市の郊外のとある墓場に向かっていた。今日は7月7日。世間的には七夕と呼ばれる行事が行われるが、俺にとっては特別な日である。悪夢が一つ消えた日、そして皆が
「…………ん、来たぞ。遅くなったかもしれないけど」
目の前の墓石に向かってそう言う。その墓石に刻まれている文字……俺は忘れられない。
「んー、案の定汚れてるか。じゃあ、拭かせてもらいます」
濡れた布で汚れを落とす……
「よし……何が良い分からなかったからこれにしたけど、大丈夫かな?」
少し高めの果物を供え、線香を焚く。手を合わせて祈っていると最初に出会った頃を思い出す。
「大丈夫……なわけないか。何があったの?」
「…………別に、何でも……」
あの時はぶっきらぼうな感じで過ごしていた。ただ、飢えを満たすために人を喰って、喰種を喰ってを繰り返している日常が普通だった。
「あ、もしかして君……喰種?」
「だからどうした……俺は喰種だけど」
「喰種だからって否定しないよ。兄さんみたいには出来ないけど……私が貴方を肯定するから」
その言葉にどれだけ救われたことか。その言葉が、俺を変えてくれた。
「………………」
彼女と居る時間が楽しかった。彼女と一緒に居ると満たされた気がした。だけど、居なくなった時を考えていなかった。いなくなると言う事自体を考えていなかった。全て、夢であったらいいのにと何度願った事か、彼女が居なくなり、新たな友人と思い出を増やす毎日。彼女との思い出がその思い出で塗りつぶしていく気がして。思い出が無かったことになりそうで怖かった。彼女を一時も忘れたくなかった。忘れたら俺が俺でなくなりそうで。壊れてしまいそうで。だから、早く会えるよう、死のうと思った。
「駄目だよ……?」
「こんな俺なんて……死んでしまえば、死んでしまえば、死んでしまえば、死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで」
死のうと思うといつも”あいつ”に止められる。何故止めるのか、俺にも理解できない。全部諦めた俺に何を求めているんだ?
「■■はそんな簡単に諦めないよ。一夏も、そうだと思うな」
嘘だ。俺にそんなもの無い。無いに決まっている。あれは彼女だからこそできたことだ。
「俺は……消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって、消えて、無くなって?」
もう、全部、消えて、忘れよう。それが簡単にできれば、良かった。
「…………はぁ……駄目、か」
ポケットから懐中時計を見ると丁度いい時間になっていた。そろそろ行かないと。
「…………今日、臨海学校だったんだ。だから、もう行くな……次会うんだったら……大晦日かな。じゃあな、siori」
名前がうまく言えなかった気がするが、いいか。バイクに乗って旅館へ向かおう。キーを回し、走り始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………はしゃいでるわねー」
「そう、だな……」
砂浜、其処のビーチパラソルで私達は休んでいた……海で泳いだには泳いだのだが、肝心の遊ぶ相手である一夏が居ないため皆で来るのを待っているという感じだ。
「…………?何か聞こえない?」
「戦闘機……いや、バイクか?」
耳を澄ますとバイクの音……海から?
「………………」
「私、夢でも見てるのかな……
轟音を鳴らしながら黒いスーツを着た男がバイクを走らせている。海の上で。
「ん。到着……」
「一夏って、マジシャンだったりする?」
「マジシャンではなくて、魔術師と言ってくれ」
バイクを止めながら黒いスーツの男……一夏がそう言う。
「……ねぇ、泳がないの?」
「……泳がないけど、海辺でならいいぞ」
「よしっ!一夏をびしょ濡れに……」
こうでもしないと遊ばないし、これなら大丈夫でしょ。
「じゃ、着替えてくる……」
旅館に入っていき、数分後。水着を着た一夏がこちらに向かってきた……上着を羽織って。
「海なんだから上着着なくてもいいじゃん」
「はぁ……お前、忘れたのか?」
上着を脱ぐと、其処には大量の傷が。あ、忘れてた……見せたくない事を。
「な、何だ……その傷は……?」
「こいつ、いっつも喧嘩ばっかりしてたのよ。相手は刃物とか銃とか使ってくるけど無事に帰って来た……それを私が治してたのよ」
本当になんで大事なことを忘れてるんだろう……誰かに
「分かっただろ、じゃ、海にいこうか」
上着を羽織ったまま海へ向かう一夏を追いかけるように私達も走り出した。
「冷た……」
「ほら!ずっとかかりぱなしよ!」
「しょーがねーな……おら!」
私が水をかけると、一夏も負けじと水をかけてくる。
「よし、これでも……喰らえ!」
「ごぼっ……水鉄砲!?」
私の後ろに居たラウラが水鉄砲を撃っていた……ん?セシリア、アレ、スナイパーライフルよね。
「一夏さん、覚悟!」
「ちょっと……!それは、不味いってー!」
「こちらも行くぞ!」
そう言いながら突撃する箒とシャルロット。私も持ってくればよかったなぁ。
「鈴、これを使え」
「お、いいじゃない。覚悟しなさい、一夏!」
手渡されたハンドガン型の水鉄砲を片手に一夏に向かって走り出した。
「待て!これ以上は!俺が死ぬ!」
「私達の水で溺れなさい!」
「ちっ……使いたくなかったけど、使うしかない!」
何処からか剣と水鉄砲を取り出し、こちらに向かって走り出す。
「スイミング!華麗!あまりにも華麗!帆柱と散れ!『
「ちょっとー!ごぼっ……ごぼごぼごぼ……」
目の前が水で満たされた……分かりやすく言えば津波が来たと言えばいいか。
「……ごほっ。やり過ぎよ……」
「大丈夫かー?」
そうすると一夏が私に向かって歩いて来て私を抱え始めた……えっ?
「な、なな……何やってんのよ……!?」
「……分かってる、分かってるんだ。だけど、これくらいはやらせてくれ」
抱きかかえ方が、優しい……いやらしさなどは一切感じない。私を抱えながら浜辺に戻ると流された他の箒やセシリア、シャルロット、ラウラが倒れていた……ん?なんで人差し指を指しているのか分からないけど。
「……止まるんじゃねぇぞ?」
「言いたくなったの?」
「使命感、かな……こいつ等も運ぶか。よっと……」
私を浜辺の奥にある椅子に座らせて二人ずつこちらに運んできた。どうしたらそんな力があるのか気になるけど。
「……何があった?」
「……本気の水遊び、ですかね」
こちらの様子を見に来た織斑先生が顔を引きつらせていた。
「……何をしたらこうなる。気絶しているではないか」
「……若干溺れたと言えばいいですかね」
ため息を付きながらも他の皆が目覚めるのを待った。数分もすると大体目覚めた。
「む……気を失っていたか」
「悪いな……本気でやり過ぎた」
そうして時間は過ぎ……夜。旅館の夕食を食べているが、一夏の周りに大体集っている……ご飯くらいゆっくりさせればいいのに。
「……ん、本わさか。道理で美味しいわけか」
「本わさ?これ……?」
あ、馬鹿が居た。シャルロットがそのまま本わさの山を一口で食べてしまった。
「……っ!!ふ、風味があって……おい、しいね」
「お茶でも飲んどけ……まったく、山ごと食うから」
まあ、私の場合は日本に居たことがあるから食べ方は知ってるけど。刺身に少しのわさびと醤油を付けて……うん、美味しい。
「……っ……」
あっ、セシリアが足痺れてもぞもぞしてる。面白いー。
「セシリア、椅子持ってくるか?」
「いえ……大丈夫、ですわ……」
しっかり我慢してるわねー。別にそんな我慢しなくてもいいのに。
「鈴ー?早く食べないと織斑先生に怒られるよー」
「んー」
さっさと食べて一夏の部屋にでも行こうかな。あわよくば、一緒に寝たいなー。
「……で、何やってんのよアンタら」
「ちょっと聞いて……」
廊下を歩いているとあるふすまの前に四人が聞き耳を立てていた……ん?此処って、先生の部屋だ。それにしても、なんか……いやらしい声が。
「……確かになんか……変な声」
五人で体重を掛けすぎたのか、ふすまが倒れた。そこにはマッサージをしている一夏とマッサージを受けている織斑先生が居た。
「……お前ら、何しに此処に来た?」
「ちょっと……一夏と話したくて……ですね」
「……ちょっと出てくるよ。話し終わったら呼んでくれ」
そうして一夏はスタスタと外へ出て行ってしまった。何かを察してかな?
「まったく……こいつらに説明もせずに行くとは。何でこんな奴になったのやら……」
説明?何だろう……一夏が私達に隠してることでもあるのかな?
「まあ、何だ……これでも飲んどけ」
手渡されたのはジュース。近くの自販機で売られているものだ……一夏が私達を来るのを見越して買っていたのだろうか?とりあえず飲む。
「飲んだな?……ふぅ……飲んでないとやってられん」
「……はぁ?」
お酒の飲みながらそう言う織斑先生。そういうものだろうか?
「……とりあえず、話だ話。あいつの何処が良いんだ?」
その話に戦慄した……此処で話さなければ落とされる。そのプレッシャーが感じられた。
「強いて言うのであれば、「強さ」に惹かれたといった感じですかね……」
「わたくしは……紳士的な所、でしょうか……」
「私は……放っておけないから、かな」
「僕は、優しい所……かな」
「私は、篠ノ之と同じです」
ふーん。思ったよりも真剣に私達、恋してたんだ。
「……まあ、そんなこと言ってもまだやらんがな」
全員がズッコケた……流石にないですよ、織斑先生。
「そんな事より、だ。あいつはお前らが思ったよりも裏社会に精通しているぞ?」
はっ?一夏がそんなことをしてた……ありえない。
「お前らに言っていなかったか?「仕事」があるから出かける、と」
仕事と関係……確かに、中学校の頃のあれは酷いものだったけど……あんな感じかな?
「あいつ……一夏は、喰種捜査官だ」
「はっ?一夏が……捜査官?」
なんで……そんな仕事を始めたの?どうして、私に言ってくれなかったの?
「……捜査官の位は特等。一番上だ……相方は、凰がよく知っている人間だ」
私が知っている人間……そして、一夏と仲が良い……まさか!
「五反田弾、ですか?」
「ああ、あいつは準特等。一夏専属の相方だ……」
あいつも馬鹿な事やってたなんて……何で私に教えてくれないの?
「あいつが仕事をやる時に言ったのは……自分にはやらないといけないことがある。まだ、正義を貫く必要がある。と言っていた……その時に気づけば良かったんだ、あいつが暗い物を抱えていることに」
「正義を、貫く、か……喰種捜査官になって何がしたいんだ?」
私は心当たりがある……だけど、復讐には走ってはいないはずだ。ただ、
「……私もちょっと外の空気吸ってくるわ」
「……え、ちょっと……」
シャルロットが呼び止める声を無視して一夏が居るであろう
「……来たか。全部、聞いたのか?」
「全部聞いたわよ……全部一人で抱え込んで!何やってるのよっ!」
「……これは俺がやらないといけないんだ。ケリを付けるまでやるしかない」
私は勢いよく一夏を押し倒した……力を抜いていたのか女の私でも押し倒せた。
「何がしたいのよっ……!一夏は……あの人に会いたいの!?」
「ああ……会いたい。だから、何回も
何で……そんな事、言うの?私は一夏が好きなのに。
「簡単に死なないでよっ!私、一夏が好きなのに!」
「……ああ、分かってる。皆が俺の事を好きなのも分かってる。だけど……終わりにしたいんだ」
「行かないで……!置いて……行かないで!!」
駄目……居なくなっちゃう。一夏が居ないと……私が、
「……でも、まだその時じゃないのかな。まだ、諦めきれないのか……」
「えっ……」
「鈴……特別に、だ」
私が上だったので一夏の方に体を寄せられ、キスをした。こういう事はする人間じゃないと思ってたけど、よく分からない。
「……ちゅ……っ」
随分長い時間キスをしていた……私が離したくなかったのでずっとキスをしていたが、一夏は拒むことなく私だけを見ていた。
「…………なんで、キスしてくれたの?」
「謝罪の為かな。鈴の想いに応えるっていうのもある……」
何か、読み取れない。どういう感情をしているのか分からない。一夏は今、どういう感情を抱いているか分からなかった。
「……時間か。戻ろう、鈴」
「うん……だっこ」
「おんぶな……俺が死ぬ」
おんぶされていると……小さい頃、お母さんにおんぶされている時を思い出す。一夏には母性を若干だが感じる所がある。
「……まあ、此処までだな。後は自分で部屋に戻ってくれ」
「うん……明日、会いましょう」
私は部屋に戻って眠りについた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……飲みすぎだ、千冬姉。皆の前で飲んだのか?」
「こうでもしてないとやってられん……つまみはあるか?」
「だろうと思って作って来てた……ほら」
冷蔵庫の中にあらかじめ入れておいたものを取り出す。明日もこんな感じか……
「俺は寝るから……勝手に食べて」
布団に入って意識を閉ざす。眠っていると久しぶりに「夢」というものを見た。
「ねえ、一夏……そんな簡単に諦めていいの?私にを喰べた時みたいに諦めない意思を捨てるの?」
「そんなので、■■に会えるの?私は駄目だと思うな」
「……私が二人の次に好きになった人……まだ、諦めないで」
後ろから……だろうか。背中を後押しされた感じで若干気持ち悪かった。シャワーでも浴びよう。
「今日は、訓練だっけか……あ、束さんも来るんだっけ」
今日の予定を思い出しながら何をするべきかを考える。特に何もなければ海でも見てようか。
「……諦めないで、か。諦めたよ、もう」
何もかも捨てた。諦めた。彼女が居ない事を受け入れてしまった。生きている意味が無くなった。
「……永遠の苦しみってこういうのを言うのか。面倒くさい」
シャワーのノズルを捻りお湯を止める。扉を開け、バスタオルで髪を拭きながら部屋の方へ向かう。相変わらず朝に弱い千冬姉を起しながら着替える。
「気持ちを入れ替えるか……」
何も考えず朝食を食べ終え、海岸の集合場所に一足先に向かう。海が見える崖で座り時間を潰す。
「……出てきたらどうですか、束さん」
「ありゃ、バレちゃったー」
そう言って後ろの森から出てくる人……束さんだ。大体の事情は聴いている。普通に渡せばいいのに……
「……海を見て、黄昏てるの?」
「……何も考えなくていいから、見てるんです。何をすればいいのか、分からなくなって……」
隣に束さんが座り、二人で海を眺める……暫くすると俺と束さんの頭に拳が入った。
「……痛い」
「うん、同じくだね」
「お前ら黄昏るんじゃない……訓練を始めるぞ」
立ち上がって後ろに下がる……上から恐ろしい轟音がしたからだ。
「……ニンジン?」
「へいへい!箒ちゃんー!ご注文の品を持ってきたよー!」
大体の生徒が首を傾げるが、その中を箒が歩いていく。
「これが第四世代IS<
「赤椿……!」
そこから束さんによる赤椿の説明があった。其処は俺にはあまり関係ない話なので聞いていない。
「じゃーちょっと、いっくん借りてくねー」
「……分かった」
「いっくんー、かもーん!」
森の中へ歩いていくと洞窟があった。その中へ入ると束さんお手製の秘密基地だった。
「……もうすぐ此処に
「……そう言うって事は、束さんがやったわけじゃないんですね?」
「……亡国産業が暴走させて、あわよくば殺そうとしてるみたい」
停止させるのなら代表候補生と箒が来るはず。それが失敗した時に俺がどうにかしないと被害が出る。
「……分かりました。でも、
「……絶対生きて帰ってきて。そうじゃないと怒るよ」
「そうですね……生きて帰ってくる理由を作りましょうか。これを、解析してください」
俺が拡張領域から出したのはとあるUSB。束さんだったら、取り出せるんじゃないだろうかと思い渡す。
「なーにーこれー?」
「俺の友人が入っています……それをデータごと取り出してください。取り出したら俺の携帯にでも送ってもらえばいいです」
「友人?……人工知能かな?」
その通り、と返す。まだ、生きる為に理由を付けて生きることしか俺にはできない。
「……ほら、呼ばれてるよ。私も少ししたら行くから」
「後は……全部任せます。全部終わったら……ご飯でも食べましょう」
「それいいね!頑張っちゃう!」
呼ばれた場所……旅館のとある一室に入る。そこには先生と代表候補生が居た。
「すいません、遅れました」
「いや、時間通りだ……では、説明する」
そうして話し始めたのは束さんから聞いた通りの事。こちらに暴走したISが接近しているから止めると言う事だ。作戦は俺の零落白夜でエネルギーをゼロにすると言う事だが……
「ちょっと待った―!」
「どうした束、珍しく滑り込みだな」
「それ、ちょっと危ないから全員で行ってくれないかな?束さんもスペックを見たけどなんかおかしいから」
スペックが上がった……と言う事だろうか。危険な事には変わりないのでこの後から整備に入るとの事。
「束さんが直々に見るから、IS貸してね。いっくんは先に待機しててねー」
「りょーかいです」
待機場所である浜辺へ向かう……この場所からでも分かるほど海が荒れている。風が強く、砂が舞っている。
「……嗚呼、会いたいよsiori」
違和感。また、名前をしっかりと言えなかった気がする……
「……ぐっ……がぁぁ……!!」
頭が割れる。目の前がノイズで覆い尽くされる。記憶が消えていく気がする。
「―――――?――――――!!」
声にならない何かが聞こえる。人ならざる者か、なんなのか分からないが俺に話しかけている。それを無理矢理拒絶した。
「……はぁ……はぁ……なんだ、今の?」
精神的に限界を迎えているとするのならば心当たりしかない。戦う前にこんなことになろうとは。彼女らが全滅しそうになったら”アレ”を使って無理矢理にでも返すしかないか。
「いっくんー!準備良いー?」
どうやら束さんがこちらに向かってきている……他のISの整備が出来たらしい。
「何時でも行けます」
「じゃー行こう!」
右手の後ろに振り払う……そうするとISが装着される。
「……絶対、帰ってきて。一人でも欠けたら地球壊すから」
「はは……無理言わないでくださいよ。行ってきます」
飛び上がり、迎撃地点へと向かう。
「一夏……大丈夫か?」
「……?別に問題、ないけど」
「そうか……なら、いい」
箒が聞いてきた……束さんが気を付けておけとでも言ったのだろう。心配性だなぁあの人。
「そろそろだ……来るぞ」
綺麗な歌と共にこちらに現れたIS。人が乗っていることが分かるくらいで特に武装などは見当たらない。
「la―――」
「行くぞ」
俺が先行して攻撃を仕掛ける。しかし、掠れるだけで避けられる。それを狙って後ろから箒が日本の刀で追撃を行うが見えていたのか、それを回転して避ける。
「シャルロット!ラウラ!仕掛けるわよ!」
避けた先には三人が。それを遠距離攻撃である「銀の鐘」で迎撃している。
「くっ……シャルロット!」
「分かってる!」
射撃が得意な二人が狙いを定め当てようとする……しかし、スピードを上げた福音に当たることは無い。
「ふんっ!!」
箒が福音と同じスピードで近づき刀を振るうが、当たらず。鈴も当てようとするが避ける。
「la――――!」
俺が懐へ入ろうとすると俺を足技で吹き飛ばし、近くに居た五人を纏めてレーザーで焼き払う。
「きゃぁぁ!!」
「大丈夫か!?」
ダメージレベルC。これ以上長期戦はまずい……決めないと。
「体勢を立て直したら、使う。準備は良いか」
「問題ない」
体勢を立て直した五人を先に行かせ、隙をつく。そこに零落白夜を発動した雪片弐型で斬った……
「……エネルギーが多すぎるのか。もう一回くらいやらないと駄目か」
「もう一回行くぞ!」
「la―――!」
急に福音のスピードが上がり目の前に来る。回避しようと思ったが遅い……被弾した。俺よりも皆の方が喰らう、もう失いたくはないから。
「
偽物で良い。これを使えればいいから。
「
「えっ……」
「皆……ありがとう。後は、俺がやる」
彼女達を風で吹き飛ばす。この風は台風並みなので旅館の辺りまで吹き飛ぶだろう。
「待て!!……いち……」
「まちな……」
強い風に吹き飛ばされ声は途切れる。もう、気にしなくていい。
「さあ、殺し合いをしようか」
「la―――?」
全部終わる。その為の力を、此処で使おう。
全て偽物。だけど、それでいい。これで終わるんだ。
気づいた時には堕ちていた……海へ、海へと。暗闇へと……意識はそこで無くなった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「え……」
私達が遠くから見ても分かるくらい其処にはナニかが居た。でもそのナニかが壊れて中を見ると白い物が海へと墜ちていった……白い物には赤い物が付いていて。
「一夏ぁぁぁ!!」
「無理だ!ここは引くしかないっ!!」
一夏が吹き飛ばさなければ、助けに行けたのに。なんで、どうして。
「あいつは!私達を生かすために!逃がした!それを!分かれ!」
旅館に戻り、報告をした。そこでは、織斑一夏は行方不明となったが書類上では死亡となっていた。
「あ……ああ……また、何も。できなかったっ!」
「……ねえ、一夏はまだ生きてるよね。そうだよね、ラウラ」
「私も分からないが……嫁ならば生きていると、思いたい」
ただ、夜の海岸で皆で一夏を待っていた。帰ってくると信じて。
「……話は変わりますけど、いいでしょうか?」
セシリアが話す。
「箒さんも思う所があるでしょうが……本国で情報を集めてみたんですが……一夏さんについて分かったことがありますの」
「喰種捜査官以外に?」
「ええ……一夏さんは……」
そう言う始めようとしたセシリア……しかし私達の後ろに空間にヒビが入った。そこから何者かが出てきた。
「ええ、ええ。一夏さんはわたくし達を助けて、恋をして。必死に生きた人間ですわ」
「む、そうではないと思うぞ狂三。シオリにデレデレではなかったか?」
「それは言わないお約束ですわ……」
私達を気にしないで話す、白い長髪の女と黒いお嬢様と思われる人。
「えっ……もしかして、貴方……
「私を知っているのか?……ああ、DEMの情報か」
ヤトガミトオカ?誰?
「精霊……隣界に存在する特殊災害指定生命体。発生原因、存在理由ともに不明。こちらの世界に現れる際、空間震を発生させ、周囲に莫大な被害を及ぼす。また、その戦闘能力は強大。ですわね」
「む……お前の眼。もしや……!」
「あらあら、わたくしのこともすこし知っているようですわね」
この人の眼……時計になっている。
「時計……一夏が持っている懐中時計と同じ眼だ。しかし、お前は死んだはずだ」
「ええ、
やばい、頭がパンクしそう……なんでこうなってるんだっけ。
「ああ、自己紹介が遅れました……わたくし、時崎狂三と申しますわ」
「夜刀神十香だ」
「今、何のためにこちら側に来た?」
ラウラがそう言う……
「……一夏さんを助けたいとは思いません事?」
「一夏を……助ける?」
「ええ、わたくしとしてもこちらの一夏さんに用事がありまして。死なれると困るんですの」
用事……だけど一夏は生きることがつらいと言っていた。これじゃあだめなんじゃ。
「こちらの一夏さんは大変ですわね……でぇも。そんな簡単に諦めないですわよ、あの方は」
「そうだな……シオリが大好きな一夏は諦めることを知らないからな」
何でそんなことを簡単に癒えるのか。よく分からない。
「……わたくしたちに言えることはたった一つ。戦うこと、ですわね」
「私達も手伝うから安心しろ!」
そう言って……精霊二人の力を借りながら、二回戦を始めるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
暗闇、暗闇。何も見えない場所を落ちていく。魔術を使っても勝てなかった……あいつ等を逃がせたことだけでもいいか。これで、皆に会える。
「何やってるの、一夏?」
「へっ?」
気づけば浜辺になっていた……此処はよく知る浜辺。消えたはずの楽園。隣に居るのは絶世の美女と呼ばれても間違いない女性……居なくなったはずの
「み、お?」
「そうだよ、一夏。さあ、行こう」
「とと、ちょっと……」
澪に連れられ浜辺を歩くと、見たことのある物が見えてきた。椅子とビーチパラソル、そして鉄板。
「まあ、座って。ちょっと話をしようよ」
よく分からないうちに澪が鉄板の上で焼きそばを作り始める。手際いいなぁ。
「はい、完成。あったかいうちに食べて」
「いただきます……」
焼きそばを食べながら澪の質問に答える。質問と言っても俺がいるIS学園についての事ばかりだったが。
「ねえ、一夏。まだ……士織の事好き?」
「sioriの事は好きだよ?」
「……やっぱり。踏ん切りがついてないのか」
そう言う澪。踏ん切りがついていない……というのはどういう事だろうか?
「一夏は士織が居るという事と居ない事を同時に考えてる。どっちかにしないとこれから大変だよ?もしかしたら……前の私みたいになるかも」
「そ、うか……やっぱり全部諦めた方が良いのかな」
その言葉に澪は暗い顔をする。本当はそんな事を言ってほしくないことくらい分かる……でも、無理なんだ。
「何やってんだか……この馬鹿は」
「仕方ないよ……こんな風になるまで思い詰めちゃったんだもん」
その声……あの時以来か。どれだけその声を聞きたかった事か。後ろを振り向く。
「……士道さん……士織」
「……あれ?ちゃんと言えてるね?」
推論が間違ってたのかなとぶつぶつ言う澪。それに対して二人は俺の横に座る。
「何がなんやら……一夏はこっちに来るし、澪は何か考えてるし」
「私もあんまり聞いてないな……」
何故、澪は俺をこの場所に呼んだのか。そして何を言いたかったのか。俺にはまだ分からない。
「まあいいや。言いたかったことを言うと、一夏。そんな簡単に諦めていいの?」
「……無理だ。もう、諦めがついたんだ」
「俺が知ってる一夏はそんなんじゃ凹む人間じゃなかったと思うけどな。がむしゃらに立ち向かう……そんな奴だったと思う」
立ち直れない。何もかも失った俺には何もできない。
「私が好きになった一夏は……私の為なら不可能でも可能にしてくれる人だったと思うな」
それでも……居てくれないと、俺は。彼女が居て欲しかった。
「……そんなんじゃ生きていけないぞ。新しい目的を持て」
目的……そんなものあったかな。
「そうだね……今、一夏と友達のあの子達を護るで良いんじゃないかな?」
「……護る?守れなかった俺には無理だ」
「別にいいじゃん。失敗から学んでいけばいいだけ。だから、行って一夏」
嗚呼、好きな人にこう言われたら行かなければならない、か。少しだが立ち直れたのかもしれない。
「……一夏、ヒントだ。
精霊、精霊……精霊?あれ……前にもそんな事あったような。
「まあ、戻ってから考えればいいさ。立てよ織斑一夏。俺の力、お前に託す」
「立って……一夏。私の大好きな人……」
「一夏……君は、出来る。私の様な心を持っていないから……」
三人に背中を押された……
「「「一夏……諦めるな!」」」
「あ……うぇ……」
辺りを見渡すと岩。どうやら海底洞窟に流れ込んだらしい……運がいいのか悪いのか。
「背中……押されたもんな。行かないと」
右手にあったはずのガントレットは薬指に移っていた。どっちかというと指輪だが。
「行くぞ、白式……」
「……ちゃんと使います、士道さん」
海の中から出て音がする方へとブースターを起動した。
「きひひ……ああ!楽しいですわね!」
「まあ、否定は!しない!」
聞き覚えのある声……よく見ると知っている人が居た。
「なーにやってんだ。暴れすぎで皆引いてるぞ……」
「一夏!」
「おう、戻ったぜ……話の前に、コイツを止めないと、な?」
目的をくれた彼女に、力を貸してくれた彼に。応えよう。
「「「さあ、私達の
決まったー。これやってみたかったんだよー。
「あら、一夏さんが言うなんて珍しいですわね」
「うむ。恥ずかしいくて何時も言わなかったはずなんだが……」
さあ、話を遮るものを壊そう。災害の名のもとに。
零落白夜を織り交ぜた宝具。福音は光の刃吹き飛ばされながら浜辺で動かなくなった。
「うぃ……終わった。疲れたなー」
「こんの……馬鹿ー!!」
「ごほっ……!!」
精霊二人に目を合わせて助けを求めるが、笑っているだけで助けてくれない。裏切ったな!
「悪かったって!!謝るから!!許してー!!」
「許さん!!」
「心配させた罰だ!!」
そんな皆から逃げながら旅館へ戻った。案の定、旅館でも先生に怒られるのは当たり前か。
「……うへぇ。もう、懲り懲りだ」
「……もう、いいの?」
「……大丈夫。俺は
目的をくれた。まだ、生きなければ。彼女の願いを無駄には出来ない。
「悪い、ちょっと海に居るからなんかあったら呼んでくれ」
「はーい、分かったわー」
彼女が居るであろう、海へと走り出した。
「来ましたのね……一夏さん?」
「ああ……久しぶりだな。狂三……」
「ええ、愛しの一夏さん……」
歩きながら事情を聴いた。あっちの平行世界で、こちらの危機を知り空間を斬ってきた事。ある事を俺に教える為にこちらに来た事。
「で、用事って……何だ?」
「精霊……マナと言えば分かります?士道さんがやろうとした、精霊の蘇りを」
大体俺でも理解できた。あの時に士道さん達が言った「俺達は精霊」という言葉通りならマナに還っているはず。なら、マナの巡りをある場所に回せば。
「……行ける、か。ありがとな、教えてくれて」
「ええ、当然の事をしたまでですわ。報酬として……お願いできます?」
「ええ……マジで?」
「マジですわ」
誰も見ていない事を確認し、彼女の唇と自分の唇を合わせる……そうしていると狂三の方からじゅるじゅると吸われる。
「……ぷはぁ……息が持たない……」
「きひひ……満足したので帰りますわ」
軽やかな足取りで歩いていく狂三。そして、何処からか現れた十香。
「ではな一夏!来れたら来てくれ!」
「無理じゃないかなぁ……でも、またな。二人とも」
「では、ごきげんよう……」
「……次は、こっちから行くよ」
その言葉は誰にも聞こえない。それは俺の決意。
「さて、帰って研究しないと……」
そして、次の日。帰る時に束さんにUSBを渡された。
「お仕事完了したから……後、IS情報取らせてね?」
「……はい」
束さんと話していると、バスにだいたいの生徒が乗り込み終わったようだ。
「……付いて行けるか」
俺はバイクで来ているのでバスに付いて行こうと思う。そうしていると声を掛けられた……
「あ、君が織斑一夏?」
「あ、はい」
「ありがとう、この子もありがとうって言ってる」
福音のパイロット、ナターシャ・ファイルス。お礼を言いにこちらまで来ていたらしい。
「いえ、やれることをやっただけですよ……ああ、後」
「何?」
「俺には恋人が居るので、キスは出来ませんよ?」
それを聞いていたのか、バスに乗っていた生徒全員から大絶叫。専用機持ちは知っているので何も言わない。
「そっかー。じゃあ、連絡先ね……また会いましょう。騎士様」
「はい、またお会いしましょう。お姫様」
バスのクラクションが鳴ったので、ヘルメットを被りバイクのキーを回す。
「…………」
「ねえー!一夏ー!先行かないのー?」
「別に良いかなって。一緒に帰れるなら帰るだろう?」
シャルが叫びながら言うが、それに倣ってか窓が開き始める。
「何だ、お前ら……俺と話ながら帰りたいのか……?」
「当たり前でしょ。あんたがバイクじゃなかったら無理やりこっちよ」
「やっぱ気が変わった。先帰る」
バイクのスピードを上げIS学園に帰る。
「ちょっと!!待ちなさいよ!!」
気にしないで先に進もう。これから、俺の新しい目的を達成するために生きよう。
今回は長いお話でした。次はちょっと遅くなります。