端的に言うとあの後、敦と猛獣指定されてる虎の関係性がわかった
そして、その関係性は異能力だ
異能力【月下獣】
虎へと変貌する異能力だと聞く
俺は眠くてしょうがなかったので寮で寝ていたのでしらないけど
今日は敦が入社試験だ
なのに何故、俺が事務所にいないのか
嘘をつくのが下手なのですぐに入社試験だとバレたら困るからだ
入社試験の内容はこう
谷崎と言われる社員が妹を人質にして爆弾魔を装う
そして、それを自分の身を変えてでも守るような行動ができれば入社が出来る
そして、今日と明日は休み
社宅にある俺は部屋で演奏を始めた
部屋のリフォームとして防音の一室を作り、そこにピアノとヴァイオリンを置いたのだ
なので、そこでの演奏で誰かに迷惑をかけた事がない
今日と明日はずっとこの部屋から出ず俺は好きに過ごしてみせる
『あっ、康成くん。今から仕事だから探偵社に急いでおいで」
そんな電話がかかってくるまでそう思っていた
「俺、今日は休日だったんですけど・・・」
不満をできるだけ表せるようにしながら声を出した
依頼人の樋口さんによって道案内されながら道を歩く
「あぁーごめんね、康成君。今日は密輸業者に対しての調査だから万が一があったらって太宰さんが」
この人は谷崎 潤一郎とゆう人だ
そして、その隣にベタベタと暑いくらいにひっついてるのは妹のナオミさん
この2人の関係は血の繋がった兄妹だ
だからこそ思うのはこの2人の関係性に関してはあまり関わりたくないという事である
それは何故か
距離がおかしくて恋人にしか見えないから
「またあの人か・・・」
そして、今回の休日出勤をさせてきた人はやっぱり太宰だ
毎度の如く必要もないのに潰される俺の休日は一体なぜ?
「それより敦はどうしたの?」
横でしょんぼりとなっている敦を見る
これが虎の猛獣だったなんて信じられないが事実なのか
人間は見た目で判断してはいけないとはこの事だな
そう思いながら違和感に気付く
かなり後ろの方にいるのだが杖を付いた若い男がいる
それだけでは違和感を抱かないだろうが着けられてるような気がするのは気のせいだろうか
「あぁ、それがね─────」
敦の声でハッとし話を聞き始める
ことの次第を聞くと国木田さんに注意を促されたそうだ
井伏という男もそうだが特に芥川という男に気をつけろと警告を受けたと聞く
芥川の異能は殺戮に特化している
それを踏まえて考えると俺の会いたくない人物のNo.2だ
「アハハ、それは脅されましたねぇ」
谷崎さんはそう言いながら笑った
割と本気で笑えることではないと思うがこの人のこういう所は美徳だと思う
「笑い事じゃないですよぅ。凶悪なマフィアとかすぐに死ぬとか・・・はぁ、とんでもないところに入っちゃった」
そう言ってため息を吐く敦
「まぁまぁ」
苦笑いでそれを宥める谷崎さん
「生きる為って極論で片付ける手段もあるよ」
「それが賢い選択なんだろうけど・・・何故か選びづらいよね」
そう言ってトボトボと歩く敦の後ろ姿を見た
思うのだが、ただ単なる任務で俺は必要なのだろうか?
何か危険があるのならば・・・
あの人のことだからそれは無いかな
脳裏で笑いながら手を振ってくる
「敦や俺よりも歳下でも働けてるから大丈夫だよ」
「そうですよ。それにボクでも働けてるくらいだから大丈夫ですって」
フォローが自虐みたいになりつつある谷崎さん
そして、敦が何かを閃いたかのような表情をした
「でも2人とも【能力者】なんでしょう?どんな力なんです?」
「や、あんまり期待しないで下さいよ。戦闘向きじゃないんですから」
たしかに戦闘向きの【異能力】ではない
その代わりに時と場合によっては厄介だろう
「うふふ・・・兄様の【異能力】素敵ですよ。ナオミ、あれ大好き」
先程まで歩きやすいように離れていたのだろう
それなのに急接近し始めるナオミさん
「やめなってナオミ・・・・こんな処で」
暑苦しいカップルの如くイチャイチャする2人を見て少し固まる敦
俺はもう慣れたので特に気にせずに歩く
人間の生活する環境においての適応力って重要だ
そうしみじみと敦を見て思う
「あら口答え?生意気な口はどの口かしら?」
そう言って艶かしい手つきで谷崎さんの下唇を端から端まで親指でなぞるナオミさん
それを見て敦は顔を赤くするが俺の顔に血が集まるような気配はない
やはり、こういうのは慣れというものが大半を占めるのだなっと再び考えた
「着きました」
谷崎さんとナオミさんの動きが止まる
もしかして仕事ということを忘れていたのでは?
連れてこられたのは路地裏だった
密輸業者の人間が本当にこんな所で取引するのか?
いや────しないだろうな
じゃあこの人は俺らを嵌めたことになる
何故?
敦に懸賞金が掛けられていたとするならどうだろう
この仮説は立証される
「3人とも逃げるよ!!」
「康成くん!?」
敦が俺の事を呼んだがそれに返事をする余裕などない
俺が走り出すと3人が遅れながら走ってくるのを確認しながら後方の樋口さんを確認する
「えっ、ちょっと康也くんどうしたの!?」
谷崎さんが慌てる
それもそうだろうが今は説明してる時間は無いのだ
ナオミさんの手を引きながらこっちに来るあたりおかしい所には気付いているようだけども
「資料通りの勘の良さですね。ですが、もう遅いですよ」
髪を結び片手に携帯を持った樋口さんが見えた
「失礼とは存じますが嵌めさせて頂きました。私たちの目的は最初からあなた方です」
左の頬に強い衝撃を受け、前から後ろに吹き飛ばされた
「康成くん!!」
一体、何故?
マフィアが既に後ろから付けていたのか
自分の失態に気づき、口の中に感じる血の味を噛み締めた
慌てた敦がその場で足を止めた
それによって残りの2人までも止まってしまう
「それじゃ樋口は連絡よろしく。俺は【雪国】を捕まえるから」
そう言って路地の入り口から入ってきた男が居た
ロフストランド杖という杖がある
握る部分と腕を支える部分がある杖なのだが、それを後ろへと放り投げた
足が悪いわけではないようだ
それにしてもきっちりスーツを着こなしたこの男は俺に何をしたんだ?
「
処分?
それにしても今、電話してるのが芥川ならコイツは
「初めまして康成くん。私の名前は井伏 鱒二。出来れば大人しく私に着いてきて欲しいのだが?」
最悪だ
この男の異能力は不明だが1つわかることがある
今、吹き飛ばされて分かったのは攻撃系統の異能だということ
資料から分かるのはこの男は殺人マニアの可能性が高いという事だ