やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。   作:アルファ麻呂

10 / 30
サマーキャンプ編の前編です。


第十話

待ちに待った夏休みがやって来た。色々あってほぼ丸々一学期を奉仕部での奉仕活動に従事させられたせいか、例年になく疲れた身体を癒すべく、今年の夏休みは予備校以外は一歩も外に出ないと誓い、比企谷家のリビングでプリティな戦士達の活躍を見ていると、スマホが震えて着信音が聞こえて来た。表示された着信相手は、平塚先生。当然、気が付きませんでしたと言う事にした。

 

別に夏休みだし、寝過ごしていました、と言う事にしてほとぼりが冷めた頃にメッセージで寝てて気が付きませんでした、と送れば大丈夫だろう。と、思っていたら、今度はスマホにメッセージが。

 

『おはようございます。先程連絡しましたが、もう起きていますよね?夏休みとは言え不規則な生活はしてはいないですよね?』

 

これを最初に平塚先生のメッセージが絶えず送りつけられて来る。この間の由比ヶ浜の時も思ったが、どんな指使いしているんだ、と唖然としていると、遂にはメッセージの内容が、ヤンデレ彼女みたいなノリに変わって来た。

 

『ねえ?起きてますよね?寝たふりですよね?ねえ?』

『電話、でろ』

 

怖えよあの人。何で結婚出来ないのかまた一つ理由が分かっちゃったよ。

 

「よし。着拒」

 

これで暫くは平和が訪れる。それにしても、平塚先生のせいでプリティな戦士達の活躍が既に終わりに近づいていた。仕方ないか、と少し悔しいと思いつつテレビに視線を戻すと、小町が俺のお古のTシャツ一枚で二階の部屋から降りて来た。

 

「ふぁー。生きてるって感じ」

「何かどっかで聞いた事ある気がするな…………と言うかTシャツ一枚ではしたないぞ」

「大丈夫大丈夫。ちゃんとパンツは履いてるから!」

 

ピラ、とTシャツを捲る小町。これが兄妹モノのラブコメなら何かしらの過ちのキッカケになりかねない光景だが、ただのシスコンお兄ちゃんとしてはそんなあられも無い姿を見ても何も感じたりはしない。むしろ呆れて言葉も出ないだけだ。

 

「にしてもブイモンは?」

「ブイモンは二度寝してる。こんなに静かだって事はシャウトモンも二度寝してるんだろ?」

「まーね。それよりお兄ちゃん。小町受験勉強結構頑張っていると思うんだけど」

「それは自分で言う事では無いと思うけどな。ま、夏休みだし偶にはいいか?何か買いにでも行くか?」

 

ちょうどプリティな戦士達の活躍が終わって仮面を被った戦士の戦いが始まったタイミングだった。こっちも楽しみだが、親のクレカでT●FC会員になったばかりだしな。

 

「買い物も良いけど、小町ちょっと千葉に行きたいんだよね」

「千葉?千葉って、あれか。千葉駅か。分かった分かった。財布と荷物持ちにブイモンとシャウトモンも連れていくか」

「ま、シャウトモン達も連れてくのは決定だけど、変な服着てこないでね。流石に恥ずかしいから」

「安心しろ。俺は変な服なんて一着も持ってないからな」

「…………ゴミいちゃんが持ってる服は大体変な服だけどねー」

 

失礼な。外行きの服を一着も持っていないだけだ。だから小町ちゃん、心底疑り深い目したって仕方ないでしょうが。

 

 

「よく来たな比企谷。やはり起きていたみたいじゃ無いか」

「騙したな小町…………」

 

ぱき、ぽき、と拳を鳴らしながら仁王立ちする平塚先生を前に、ニッコリ笑う小町を見てげんなりする。どうやら小町は受験勉強の途中で平塚先生と連絡を取り合っていたらしい。受験勉強はどうした。

 

「まーまー。ここまで来たら仕方ないだろ?逃げ出したらあそこの雪乃がスサノオモンになって追いかけて来るぞ」

「流石にそんな事はしないわ。ちゃんと奉仕部の活動だと言う連絡をしたと言うのに寝過ごしたフリで逃れようとする何てしていなければ、だけどね」

「死刑宣告じゃねーかそれ」

 

何故かその場に居た雪ノ下が殺意を込めた目つきで既にディースキャナーを構えていた。と言うかコレ、奉仕部の活動だったのかよ。どうりで由比ヶ浜もデジタマ持って曖昧な顔で立っている訳だ。

 

「で?奉仕部の活動ってなんだよ。活動内容次第じゃ逃げるぞ」

「逃げられると思うなよ?まぁ内容を聞けば逃げる気は無くなるだろう。千葉村のサマーキャンプの手伝いだ」

「…………離脱!!」

「エンシェントスピリット…………」

「待て待て待て。本気で殺す気か。こんな人の往来の中でもやる気かよ。進化する気かよ!?マジモンの本気の殺意じゃねーか!!」

 

普段は人前では進化しない雪ノ下が道端でディースキャナーを構える辺りに本気の殺意を感じてしまう。しかもエンシェントスピリットエボリューションって事はマジでスサノオモンで殺しにくる気じゃねーか。

 

「え、えーっと。ヒッキー?千葉村のサマーキャンプがそんなに嫌なの?」

「結衣さん。私達ちば組がデジタルワールドに行くキッカケになったのが千葉村サマーキャンプだったんですよ。嫌って言うより昔を思い出したく無いんだと思います」

 

小町の言う通り、千葉村に行くと昔に仲良しこよししていた記憶が頭をよぎるのだ。

 

「いやホントもう勘弁してもらえませんか。昔の記憶は綺麗なままで取っておきたいんで」

「知った事ではないわ」

「昔の事を思い出しても別に怪我する訳でもないだろう?それに、助っ人も読んであるんだ」

「助っ人?」

 

その時、タタタッと可愛らしい足音が聞こえて来て、振り向くと、まるで天使が二体のデジモンを肩に乗せて走って来ていた。

 

「お、お待たせ!あ、八幡も来てたんだね!」

「と、戸塚ぁ…………」

「お久しぶりー」

「この間はごめんねー」

 

戸塚とその傍らにはテリアモンとロップモンが。二頭一体のデジモンである二体が一緒に居るだけで、戸塚の可愛らしさを更に引き立たせてくれる。いや、それだけでなく、戸塚自身もいつもの学校指定のジャージではなく、今まで見た事のない私服で、その可憐さと言えば、この世にもはや比べられるものなど無いと断言できた。

 

「着いて行きます。千葉村…………」

「ゴミいちゃん…………」

「八幡…………」

 

戸塚の手を取り、渾身のキメ顔。そんな俺を、俺のパートナーと妹と妹のパートナーが心底呆れ果てた顔で見ている事は何となく分かってしまった。

 

 

「と言うか由比ヶ浜のパートナーまだ産まれてないんだな」

「うん。最近は時々動いてるんだけどね」

 

千葉村に向かう平塚先生の運転する車の中、由比ヶ浜が大事そうに抱えるデジタマを見て思わず呟くと、由比ヶ浜も少し寂しそうにデジタマを撫でていた。デジタマが由比ヶ浜のパートナーになったのは四月くらいなので、もう三ヶ月くらいデジタマのままだ。

 

「僕のテリアモンとロップモンは出て来て直ぐに孵ったっけ」

「だよー」

「ボクはこの間産まれた時も、さいかに会って直ぐ孵ったよ。もしかして、凄いパワーを蓄えてるのかもねー」

「凄いパワー?もしかして、ヒッキーのブイモンやゆきのんみたいに一気に究極体に!?」

「いや、それは恐らく無いな。選ばれし子供達の間でも比企谷達と戸塚達では違うのは分かるか?」

「え?違うの?」

 

由比ヶ浜が平塚先生の説明に首を傾げていた。まぁパッと見分からないよな。

 

「僕はテリアモンもロップモンも成熟期までしか進化させられないんだ。でも、八幡達は究極体まで進化させられるよね?何でかなぁ?」

「私達はデジタルワールド冒険してますしねー、シャウトモン」

「まー、俺は究極体への進化じゃ無くて、デジクロスだけどな!」

「デジクロス?」

「選ばれし子供達ちば組は、お兄ちゃんと葉山先輩以外は全員デジヴァイスが違うじゃないですか。で、私はクロスローダーってタイプのデジヴァイス。普通に進化じゃ無くて、デジクロスって言う他のデジモンとの合体でパワーアップするんですよ」

 

昔の冒険の時はシャウトモンの人望によってついて来る事を選んだデジモン達を、小町のクロスローダーに格納して連れて歩いていたものだ。デジタルワールドから現実に帰る際に全員デジタルワールドに残して来たが今頃どうしているのだろうか。

 

「まぁそれはともかく、デジタルワールド冒険した奴とそうじゃ無い奴では結構な差があるんだよ。完全体以上に進化させられるのは冒険した奴以外じゃ滅多に居ない」

「簡単に言ってしまえば、だけど、修羅場を潜り抜けて居る人と居ない人の差だと思うわ。由比ヶ浜さんもパートナーを究極体に進化させる事を目標にするのはいいけど、並大抵の苦労では間に合わないでしょうね」

「へ、へー。やっぱりみんな凄い冒険を経験してるんだね。だったら隼人君とももうちょっと仲直りしても良いんじゃ…………」

「「絶対嫌だ(よ)」」

「二人とも即答!?しかもシンクロしてる!?」

 

由比ヶ浜、お前は俺たちだけと一緒に居る時の葉山の面倒臭さを知らないんだ。まぁ、知らない方が良いが。

 

そんな会話をしつつ、遂に到着した千葉村。ブイモン達が真っ先に飛び出し、そして少し遅れて助手席から降りた俺が思わず凝り固まった背中を伸ばしていると、爽やかな笑顔が手を振りながらこっちに向かって走ってきていた。

 

「おーい!!みんなー!!」

「「鬱陶しい…………」」

「またシンクロした!?」

 

駆け寄ってきた葉山を前に一気に全身を強烈な虚脱感が襲う。雪ノ下も同感なのか思いっきり顔を顰めて平塚先生の車にもたれかかった。ここまで疲労感を全面に出すのは珍しいが、気持ちは同じだ。小町は曖昧な顔で距離を置いているし。

 

ブイモンとシャウトモンが少し遅れてやって来たワームモンと再会を喜ぶ中、満面の笑みの葉山と疲れ切ったうんざり顔を隠そうともしない俺と雪ノ下。その辺りで色々察して欲しい。出来ればこのまま帰って欲しい。

 

「なんで居るんだよ…………」

「俺は毎年、夏休みには千葉村に来ているんだ。大切な思い出だからね!」

「…………うん。ヒッキーとゆきのんが鬱陶しがる理由が何となく分かって来た…………」

 

むしろこの素顔を完璧に隠し切った教室の葉山の仮面の分厚さが怖い。

 

とりあえず来年の夏頃は千葉村に不審者が出るって警察に通報すると心に決めておこう。

 

「まぁそれはともかく、千葉村のサマーキャンプの手伝いは内申点にも響くからね。優美子や翔も来てるよ」

「平塚先生、今からでも帰って良いですか…………」

「ダメに決まっているだろう。いい加減クラスメイト達とのコミュニケーションを覚えろ。ついでに小学生達の引率もな」

 

畜生、どうして夏休み中なのに仕事なんかしなくちゃいけないんだ。暫く恨むからな、小町。

 

 

千葉村サマーキャンプのスケジュールは、俺達が小学生の夏休みに参加した時と変わりはなかった。まずは付近の幾つかの小学校から集まった参加者達がバスに乗って千葉村に来る。そして引率役のお兄さん達、つまりは俺達が自己紹介して、くじ引きで班訳け。それが落ち着く頃には昼だ。

 

「オイ由比ヶ浜。何で桃缶がここにあるんだよ」

「え?だって美味しいし」

「由比ヶ浜さん、ここは良いからあっちで子供達の相手をお願い出来るかしら。テリアモン達がオモチャにされてしまっているわ」

 

昼飯の準備、つまりは協力的な小学生達と一緒にカレーを作る最中、何故か野菜はみじん切りか切れ込みを入れるだけしか出来ないわ、必要の無い桃缶を入れようとする由比ヶ浜を雪ノ下の機転で追い払う。実際、視線の先にはカレー作成に一切手伝う気のない小学生達がブイモン達と遊んでいるのだが、小柄で大人しいテリアモンとロップモンはすっかりオモチャだ。

 

由比ヶ浜が怒りながらそんな子供達を止めるのを見つつ、ふと改めて見渡すと、予想以上にパートナーデジモンを連れた子供が多いことに気づいた。幼年期から成長期までが殆どで、中には成熟期まで進化させた奴まで居る。そしてそう言う奴らの多くは、遊んでるグループ、手伝うグループとそれぞれあるが、班の中心人物は大体成長期から成熟期まで進化したパートナーを持つ子供だった。

 

「…………俺らの時はパートナーなんか居なかったし、当たり前か」

「何だい?どうかしたのかい?」

「パートナーデジモンを持つ事、そしてパートナーデジモンがどこまで進化出来るかが、小学生の間のクラスカーストの新しい基準になってるって事だ…………って葉山、いつの間に…………」

 

何かごく自然な感じで話しかけて来た葉山に普通に返事してしまった事になんとなく面白くない物を感じる中、フーッ、フーッ!と鼻息荒く海老名さんが興奮しているのを見てしまい思わず肩を落とす。三浦も少し疲れた様子で海老名さんを救護担当の所まで連れて行って戻って来ると、葉山と距離を取ろうとする俺のところに近寄って来た。

 

「ねえ、アンタさ。結局何者な訳?ずっと聞きたかったんだけど」

「何者って言われてもな。ただのボッチだぞ。単にパートナーデジモンが居るだけの」

「でもアンタのパートナーのブイモン、マグナモンに進化してたし。アレ、ロイヤルナイツの一角でしょ。それに、隼人とは昔相棒だったって」

「それを言うからあの海老名さんが興奮するんだろ…………昔の話だ。昔、ここでやってたサマーキャンプで、葉山や雪ノ下と同じ班だった。そしたら、突然デジタルワールドに呼ばれて、ブイモンと出会って、冒険した。デジタルワールドに散らばった、全く新しい進化のデータを探せってな」

「新しい進化のデータ?」

「それまでは通常の進化しか無かったデジモン達に、新しい可能性を見つけて欲しいって。ブルーカードによるデジモンの強化や、人間との合体、デジソウルにデジクロス。そしてジョグレス進化。デジタルワールドの各地に点在してた遺跡に隠されていた進化のデータをサルベージしたのが、俺たち選ばれし子供達ちば組の冒険だったんだ」

 

突如俺と三浦の会話に割り込んできた葉山にまた思わず顔を顰めてしまう。まぁ三浦のしかめ面が葉山の乱入で少し和らいだのが唯一のメリットか。

 

「五年くらい前からデジモンやデジヴァイスの種類が急に増えたろ。アレは俺達が冒険して見つけたデータがデジタルワールドにインストールされた結果、らしい。それでお役御免で、選ばれし子供達ちば組は解散して、俺と葉山の相棒関係も終了した。これで十分だろ」

「俺はまだ君と相棒のつもりだよ」

「俺はそんなつもり毛頭ない。どうしてもジョグレスパートナーが欲しいなら、早いとこ新しい相棒見つけろよ」

「君じゃ無きゃ嫌さ」

「ファォォォォォォォ!!」

「オーケー口を開くな葉山。海老名さんの鼻血で千葉村が赤く染まるぞ」

 

ドクターストップを受けてなお、地面を這って追いかけて来た海老名さんの鼻から怒涛の如く噴き出す鼻血。三浦と葉山が慌ててもう一度救護テントまで連れて行くのを見送りつつ、余りの出血にドン引きしている小学生達をとりあえず雪ノ下が作っているカレー鍋の方へ誘導して行く。

 

多分雪ノ下から、カレー作成を手伝おうともしないとは良い度胸ね、くらいの事を言われると思っていたが、生憎と雪ノ下は他の事に気を取られているようだった。

 

「どうした?何かトラブルでも起きたか?」

「いいえ。特別な何かが起きた訳ではないのだけれど…………」

 

雪ノ下に視線で促された方を見ると、まじめにカレーを作って居る班のうちの一つに、少し他のメンバーと距離のある女の子が居ることに気づいた。と言うか距離がある、のレベルでは無く、露骨にその女の子だけがハブられていた。

 

恐らく無視を中心とした、小学生間での虐めがこの千葉村サマーキャンプにも波及しているのだろう。しかし、その原因は意外にもアッサリと分かった。その女の子が大事そうに抱えるデジヴァイスと、その傍で申し訳なさそうに座る、緑色のナメクジの様な、殻のないカタツムリの様な汚物系デジモン、ヌメモンだったからだ。

 

 

 

「アレ、どうにかならない訳?」

 

サマーキャンプ初日の夜、引率役の高校生組全員で揃って初日の反省を振り返る中で、まず真っ先に三浦がイラついた様子で挙げたのは、ヌメモンのパートナーの女の子への虐め問題だった。

 

「パートナーデジモンが原因で虐めに発展するって話は、時々ニュースとかで見た事あったけど、いざその状況を見ると辛いね」

「下らない話だわ。選ばれし子供でありながら、デジモンに選ばれた事の意味を理解出来ずに古い価値観のままで生きているなんて」

 

遊び疲れて眠たそうに目を擦るブイモン達をチラと見て、雪ノ下が不満げに鼻を鳴らす。

 

「ま、テイマーって言っても人間だしな。パートナーデジモンが出来たからって一足飛びに大人になれる訳でも、聖人になれる訳でも無い」

「…………癪だけど、確かにそうかも」

「結局、自分で変わらなきゃいけないって事なんだよね」

 

意外なことに、俺の言葉に三浦が合わせて来た。戸塚はともかく、三浦は本当に意外だったが、三浦はこっちにあまり視線は合わせては来なかった。ただ、それは拒絶というより今この議題に対して真剣に考えているからの様だった。

 

実際、意見を聞きたいのか葉山軍団の中で唯一の参加者である戸部の方を見ており、その視線に負けたのか戸部が口を開く。

 

「でもさー。小学生同士の話っしょ?俺ら高校生が関わって、良い結果にするのは難しくね?」

「戸部、だからって放ってはおけないだろう。この千葉村サマーキャンプに来た事を後悔して帰る子供を一人でも作るわけにはいかないんだ」

 

何かしらの決意を固めて拳を握りしめる葉山。やる気があるのは良いが、どうするかを考える場だぞここは。おずおずと手を挙げる海老名さんも同じ意見みたく、控えめな顔で口を開く。

 

「うーん。確かに何とかしてあげたいのは私も同じだけど、虐めを辞めさせる方針は難しく無いかなーって」

「女子間の虐めって、収拾つけるの大変なんですよねー。関わらないのが一番って言うか。その辺、雪乃さんはどうしたらいいと思います?」

「小学生の女子の間での虐めトラブルとなれば、生半可な反撃では更に陰湿な攻撃に発展する可能性もあるわね。やるなら本人に徹底的に叩きのめさせ、選ばれし子供としての立場を理解させるべきね」

「そんな事出来るのはお前だけだっての。小町、聞く相手を間違えてるぞ」

「それくらい強くならなければ、と言う話よ。むしろ下手に誤魔化す方針にする方が後々まで禍根を残すわ」

 

本当に敵対する相手に対しては容赦のかけらもない奴だ。勿論、それで勝ち残って来たと言う事実に裏付けられた態度なのだろうが、そんな事が出来るのは本当に雪ノ下くらいだといい加減自覚した方がいいと思うぞ、俺は。

 

「なら、いっそ僕たちであの子の友達になっちゃうとか、どうかな?」

 

そんな中、戸塚がふと手を挙げた。その意見を聞いて、余りの天使っぷりに思わず崇めたくなるが、それを由比ヶ浜が首を横に振った。この罰当たりめ、と言いたいが、とりあえず意見は聞かねば。

 

「多分、それやっちゃったらあの子は私達に馬鹿にされてるって感じちゃうと思うな…………」

「それは、そうかも」

「私、思うんだ。あの子がどんな結果になったら一番嬉しいかが分からない内にここで色々と言ってもダメなんじゃ無いかなって」

「…………由比ヶ浜」

 

由比ヶ浜の素直な言葉は、俺たちの胸にスッと入ってきた。雪ノ下でさえも、その言葉を否定せずに小さく頷いていた。

 

「あ、でもこれはあくまで私の考えって言うか、その…………」

「…………あーしさ。なんか、最近の結衣、凄いと思う」

「え?優美子?」

 

三浦の言う通り、最初に会ったばかりの頃の由比ヶ浜の、常に周りを気にしている様な気配はもう完全に無く、一人の人間としてこの場の全員に向き合っている、そんな感じがした。

 

「ん?あ、結衣、デジタマが!!」

「え?」

 

その時、ブイモンがふと気づいて声を出す。見れば、由比ヶ浜のデジタマが一人でに震え、ヒビが走っていた。全員がそっちに意識が向き、由比ヶ浜が駆け寄ると、デジタマが光って割れた。真っ白な幼年期デジモン、ユキミボタモンだ。

 

「う、産まれた!!」

「やったじゃないか、結衣!」

「長かったよぉ!!」

 

まだ産まれたばかりで喋る事もできないが、ひたすらに由比ヶ浜の腕に身体を擦り付けるユキミボタモンを抱き締める由比ヶ浜。雪ノ下も口には出さないが、少し嬉しそうな顔だった。

 

パートナーとの出会いを通じて本人もまた成長していく。パートナーが幼年期を超えて、成長期に進化し、やがて成熟期に至る過程で、テイマーもまた幼年期を終えて進化していく。デジモンの存在が知られる様になって以来、然りに語られる様になった、デジモンと人間のあり方。雪ノ下は本気で信じている様で、俺は別に信じては居なかったが、この光景を見ていると、少しは信じてみても良いかもしれない。そんな気がして来た。

 

「ふむ。なら、今夜のミーティングはここで終わりにした方が良さそうだな。由比ヶ浜、このサマーキャンプが終わったらまた役場と学校に書類提出の山だが…………まぁそれはともかく、だ。件の子の事は私たちも気に留めておく。明日また様子を見て、改めてどう動くか決めようじゃ無いか」

 

ここまで黙っていた平塚先生の号令に、俺たちは頷いたのだった。




多分、デジモンアドベンチャー02の最終回で描かれた未来に至る途中とかだと、パートナーデジモンが汚物系だから、とかデビモン系列だから、とかで虐めトラブルになるパターンとかあったと思うんですよね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。