やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。 作:アルファ麻呂
修学旅行編は何話まで宣言はしませんが、ちょいちょいオリジナルでデジモン関連の話をすると思います。
「俺からの依頼を、受けてほしい」
いつもより少し遅れて奉仕部の部室に入った俺は、怪訝そうな顔の雪ノ下と由比ヶ浜を他所に普段の椅子ではなく依頼人席に座った。そんな俺を見て、二人とも何が起きたのかわからない様子で顔を見合わせている。
こんな事、俺らしく無いって事は分かってる。それでも、俺は…………
「海老名さんのはやはち妄想をなんとかして下さい…………!!」
「無理よ」
にべもなくそう吐き捨て、雪ノ下は紅茶のカップに口をつけた。
思えば最初から、この事態は想像出来ていた事ではあった。俺と葉山がかつて相棒だった事がクラス中にバレてしまった上に、D-3のジョグレス進化まで知られてしまった時から海老名さんは爆発しまくっていた。
余りにもネッチョリとした紫色のオーラを漂わせ、俺と葉山の些細な言動にもビンカンに反応していた海老名さん。だから俺から離れろ、と葉山には散々から言っていたのだが…………
「今更じゃない。個人の趣味趣向について口を挟む気は無いわ」
「だからってなぁ!俺を題材にホモ妄想されて気持ちいい訳あるか!!おまけに相手は葉山だぞ!!」
「…………そうね。妄想と言うにはキャスティングに無駄な説得力があるわ」
「ちげーよ!!お前も海老名さんの同類なのかよ!!」
他人事だと思って頭を抱える俺を他所に優雅なティータイムを満喫する雪ノ下。俺の苦しさを理解してくれる人は居ないのかよ。
「た、確かに最近凄いもんね…………でも、ヒッキーとしては助かってる部分もあるんでしょ?」
「うっ…………」
由比ヶ浜の指摘に思わず言葉に詰まる。
この依頼の全てのキッカケはあの文化祭のグランドラクモンとの戦いだった。あの事件で俺は三年ぶりに葉山とジョグレスした。それ以外に対処出来ない案件ではあったし、あの時俺がゴネていたら今頃総武高校は無くなっていた可能性だってある。
だが、葉山と二人でインペリアルドラモンに指示を出す姿を全校生徒に見られてしまったのが運の尽きだった。同じクラスの連中はともかくとして、他のクラスや他の学年のカーストトップ連中がこぞって俺に接触してくるようになったのだ。
正直言って迷惑でしかないし、素っ気なく断ろうと思っていたのだが、そこで助け舟を出してきたのが三浦達だった。休み時間や放課後に俺がクラスに居る内なら他のクラス連中に声を掛けられそうになれば先んじて声を掛けて来る。
お陰で今では俺は葉山軍団の予備隊員扱いになってしまったが、他クラスのカースト争いに下手に巻き込まれる様な事態には今のところなっていない。その辺りは、感謝している。
問題は、そう言う時に率先して駆けつけてくれるのが大体海老名さんだと言う事。そして、話しかけて来る内容が大体俺と葉山のBL妄想だと言う事だ。
『比企谷君ッ!!早速だけど添削してくれるッ!?葉山君と比企谷君の青春の愛と欲望のデジタルワールド冒険期ッ!!いけすかないアイツとの最悪の出会いッ!!冒険の中で芽生える友情と愛ッ!!そして性別を変えた全く新しい性の目覚めッ!!それら全てを乗り越えた二人が不幸なすれ違いでコンビ解消するまでが第一章なのよぉッッッッ!!!!!』
『や、やめてぇーっ!!』
そんな会話と言うか一方的な朗読劇を披露されて、悲鳴をあげる俺を前に曖昧な顔をして去っていく他クラスの人達。
あれ?これ単にヤバいのに絡まれてるのを見て絡まれたく無いなって思われただけじゃね?最初に助け舟を出してくれた三浦が次第に海老名さん回収係になってしまったのも含めて、海老名さんが何もかもぶっ壊してるだけじゃね?
そもそも葉山は何してんだよ。近寄って来ないのは良いが、何仕方ないなぁのび太君みたいな青狸面して海老名さん見てるんだよ止めろよ。責任取れやお前。
「マジで海老名さんが実しやかに語りまくるせいで一部からそういう目で見られ始めているんだぞ…………」
「今更噂に振り回される様な生き方はしていないでしょう。好きに言わせておけばいいじゃない」
「ゆきのん…………でもヒッキーが困ってる訳だし。それに…………」
物凄い言いにくそうに言い淀む由比ヶ浜。その様子に何か由比ヶ浜が新しい爆弾を抱えている様な気がしてしまう。頼んでおいて何だが、頼むから変なことに巻き込むんじゃねぇぞ。
「…………最近優美子がね。タイで性転換するなら幾らくらい掛かるんだろって呟いてたのを聞いちゃって…………」
「「…………」」
由比ヶ浜、悪いんだけどさ。どうリアクションすりゃ良いんだよそんな話聞かされて。
「ま、まぁ三浦さんが高々高校生同士の色恋で人生の選択を間違えてしまうのはどうかと思うけれど…………」
「そもそも俺と葉山はあくまで元相棒であって、そう言う関係では無い」
「それは優美子も分かってると思ってたんだけどなぁ…………」
「マジで海老名さんが必要以上に噂をばら撒いてるのが原因だっての」
何もかも海老名さんを黙らせれば、後は多分時間が解決するだろう。もう間も無く修学旅行だし、多少の思い出は吹っ飛ぶだろう。そこでまた海老名さんを興奮を誘発させる様な出来事があれば話は別だが。
その時、奉仕部の扉がノックされた。この展開は何だか久しぶりな気がするが、俺の依頼についてまだ終わってねえぞ。雪ノ下にチラと視線で抗議するが、無言でそこをどいて席につけと目で指示されてしまった。
畜生、どうして俺はいつも雪ノ下の命令に逆らえないんだ。あれか、ギアスか何かでもかけられているのか。
「どうぞ」
「失礼するよ」
「俺、帰る!!」
葉山が扉を開けたのを見て、即座に荷物を持って走り出す。明日辺り雪ノ下にいくら暴言を吐かれようとも、平塚先生にぶん殴られても知った事か。今の俺はコイツと一分一秒たりとも一緒の空間にいたくないんだよ。
葉山の居る扉は黒板側なので、逆側の扉を開けて廊下に飛び出そうとする。だが、鍵が掛かっていた。
「何っ!!開かないッ!!何故だッ!!」
「基本使わない方の扉なのだから当たり前でしょう…………」
「ま、まあまあ。今は距離置きたいのは俺も同じだよ。単に道案内しただけだからすぐに帰るよ」
「え?戸部っち?」
葉山が曖昧な顔をして一歩引くと、葉山軍団の一人である戸部が奉仕部に入ってきた。
結局、葉山は戸部を置いてそのまま帰っていった。俺としては塩でも撒いて二度と来ない様にしたかったが、まぁ顔を見ずに済むならそれだけで十分だ。
「いやー、奉仕部?このメンツと関わるのは何回かあったけど、奉仕部に依頼なんて初めてだわー」
「だよね。戸部っちはあんまり悩みとか無さそうだし」
「え、ええ?悩みあるよ?ありまくりよ?」
「由比ヶ浜さん…………話が進まないわ」
放っておけばIQの低い会話を延々と続けかねない由比ヶ浜と戸部に郷を煮やした雪ノ下が咳払いをした。その音に微かに姿勢を整えた戸部が真剣な眼差しで俺を見てきた。なんだよ。
「比企谷君は知ってると思うけど、俺、実は好きな人が居るんだよね」
「え!そ、そうなの!?」
「え?」
由比ヶ浜と雪ノ下が俺を見て来るが、俺は顔にこそ出さなかったが困惑していた。何で俺が戸部なんかの好きな人について知ってる前提なんだ?そんな話する様な仲じゃないし、そんな話をするタイミングなんか…………。
「比企谷君に相談って訳じゃないけど、サマーキャンプの夜に話した通りでさ。俺、そろそろ本気で海老名さんに告白しようかなって思ってんだよね」
「え?あ、あー。海老名さん…………海老名さん!?」
「ヒッキー絶対聞いてなかったか忘れてる…………」
「ここだけの話にしましょう」
そう言えばサマーキャンプの夜にそんな様な事言ってたな。すっかり忘れてた。だって海老名さんの名前からああ、戸部が好きな女子ねって発想浮かんでこないし。基本あの人俺たちの住む世界を紫色に染め上げていくばっかりだから。
まぁ、惚れた腫れたは個人の自由だしな。海老名さんは見てくれだけ見れば美人の枠には入るだろう。俺を前にすると問題発言を繰り返すのでついつい忘れてしまうが。
「でさ。もうすぐ修学旅行じゃん?そこで告白しようと思ってさ。この告白を成就させて欲しいって訳」
「わー!素敵じゃん!!うんうん!!やろうよゆきのん、ヒッキー!!」
「え、ええ?」
「由比ヶ浜さん…………これは私達が受ける類の依頼とは思えないのだけれど」
「ちょっとだけ!ちょっとだけ協力してくれるだけで良いんだって!!最終、告白するのは俺だし!!邪魔よけとか、ロマンチックなシチュを作ってくれるとかで、おなしゃす!!」
「それくらいならいくらでも!ね?」
「ま、まぁ確かにその程度の協力なら…………」
何かどんどん由比ヶ浜が盛り上がり、そしてそれを受けた戸部がどんどん調子に乗り始めている。なんだかんだで雪ノ下も由比ヶ浜に乗せられて受ける流れが出来ていくが、それはどうなんだろうか。
「失敗した時のリスクはこっちじゃ何とも出来ないぞ。その辺は分かってるのか?」
「え?ま、まぁ、その辺は分かってるって!」
リスク、の一言に戸部が微かに怯む。だがすぐに元のテンションに戻った。本当に分かっているんだろうか。まぁその辺は俺の知った事じゃ無いし、何より戸部には最近ちょいちょい他クラス連中を追い返して貰った借りもあるしな。
「依頼は理解したわ。修学旅行中に貴方が海老名さんに告白するのを手伝う、と言う事ね?」
「おなしゃす!!」
それだけ言い残して、戸部はサッカー部の方に走って行ってしまった。俺と雪ノ下は受けてしまった依頼の難しさに眉を顰めていたが、由比ヶ浜は俺たちの難しい顔の意味が分かっていない様子だった。
「あ、あれ?もしかして二人とも、受けるの嫌だった?」
「嫌って訳じゃなくてな…………」
「比企谷君の言う通り、告白が上手くいかなかった場合のリスクを考えてしまうと、余り軽々しく受けて良い依頼ではなかったわね」
「え?え?」
「由比ヶ浜。分かってない様子だから言うけどな。この依頼はお前らのグループ内での関係性に変化をもたらすんだぞ。告白が上手くいけばそれで済むが、失敗したらどんな結果になるか考えてみろ」
由比ヶ浜が暫く考えて、さっきまでの浮かれた顔がサーッと青くなっていく。
「や、ヤバい…………ど、どうしよう…………カップル誕生かもって考えで頭いっぱいだった…………戸部っちごめん!今からでも断って…………!!」
「ここまで来たからにはやるしかないわ。比企谷君の警告のお陰で、ある程度のリスクについての説明は済んでいる訳だし」
考えを纏めようともう一杯紅茶を淹れなおす雪ノ下。その時、またしても奉仕部の扉がノックされた。珍しく千客万来だな。
由比ヶ浜がどうぞ、と言うと扉が開いた。そしてネッチョリとした気配が俺を襲った。
「ハァハア…………私が来たよ!比企谷君ッ!!」
「俺!帰る!!何っ!!開かないッ!!何故だッ!!」
「馬鹿は置いておきましょう。海老名さん、依頼ならそこにどうぞ」
「一応あーしも居るんだけど」
「優美子はこの椅子使って」
開かない扉をガチャガチャと音を立ててこじ開けようとする俺を他所に、雪ノ下達は海老名さんと三浦を依頼人席に座らせていた。
「これは依頼なんだけどね…………比企谷君ッ!!文化祭でぇ、ジョグレスしたよねぇっ!!修学旅行でもお願い出来ないかなッ!!今度は目の前でジョグレス進化させるところを見たいのッ!!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!!」
「姫菜、いい加減にするし。コイツ明らかに怖がってんじゃん。何か、こう…………虐待されたペットみたいに震えてんじゃん」
何となく元気のない三浦が海老名さんを抑えていく。しかし明らかに興奮状態の海老名さんはフーッ!フーッ!と鼻に詰めたティッシュが真っ赤に染まるのも気にせず俺を見つめていた。
ロックオンされた俺としては椅子の上で震えるしかないのだが、しかし不意にその眼差しが獲物を狙う腐った肉食獣から、何かに期待している様な目に変わった気がした。
「ホントさぁ。アンタらに関わってからあーし達どんどん壊れてく感じがするんだけど…………」
「私のせいではないのだけれど」
「比企谷君が何もかも変えたのよッ!!あんな、あんな美しく尊いモノを見せられたら、私…………ッ!!」
「…………うん。アンタのせいだし。比企谷、これ以上あーし達の関係を壊さないでくれる?」
「俺は何もしていない!!」
「だから、何もしないでって頼みに来た訳」
「私は文化祭の時みたいなのが期待してるんだけど、ね?」
「?」
その時、俺を見る三浦と海老名さんの目が全く同じ色をしている様に見えた。
「どう思う?」
「俺に聞くー?」
その日の夜。部屋で今日の顛末をブイモンに説明して意見を貰おうとしたが、ブイモンの返事は素っ気ないものだった。
最初は聞くフリくらいはしていたが、興味はすっかり修学旅行の方に移ってしまったらしい。俺の鞄を勝手に漁って修学旅行のしおりを読み耽り、せんべいを齧りながらふむふむと頷いていた。
「文化祭があんな事になったから、修学旅行には付いていけないかと思ってたぜ」
「ま、騒ぎを起こしたのは事実だが、解決したのも俺たちだしな。これから先の事考えれば、むしろデジモン連れた修学旅行でどんなトラブルが起きるかの実態調査も兼ねてるんだろ」
「小学校の時も、中学の時も修学旅行にはついて行けなかったからな。楽しみだぜ」
こっちの苦労なんぞ知った事じゃないブイモンが、俺の修学旅行のしおりにせんべいの破片を溢しながら横になって食べ進めていく。その姿に猛烈にイラッと来たが、だからといって何か投げつけても虚しいだけだ。
その時、スマホに着信が入った。見れば由比ヶ浜からの電話だ。時間が時間だし無視しようかとも思ったが、今日の依頼についての打ち合わせなら擦り合わせしておきたい事もある。
「もしもし?」
『あ、ヒッキー?』
「なんだ。随分テンション低いな」
『う、うん…………さっきまで優美子や姫菜に確認してて…………』
由比ヶ浜からのまさかの言葉に思わず姿勢を整える。まさに擦り合わせておきたかった部分を由比ヶ浜の方から言い出されるとは。それに、由比ヶ浜の口調からしてどうも俺の想像した最悪の場合っぽい。
「戸部の告白を阻止して欲しいって頼まれたって事か」
『うん…………姫菜は戸部っちの告白を受けるつもりは無いみたいだし…………何より二人とも、もうこれ以上私たちの関係を変化させたく無いんだって』
「戸部が告白なんぞすれば、その辺りは全部吹っ飛ぶってことか」
『どうしようヒッキー…………私、軽い気持ちで戸部っちの依頼受けちゃったけど、このままじゃ…………』
今にも泣きそうな由比ヶ浜の声。ぶっちゃけこのグループ間の空気を読めずに告白に動いた戸部の責任じゃねとは思うが、由比ヶ浜もカップル誕生に浮かれてしまった自分に対して責任を感じているのだろう。
「雪ノ下には?」
『まだ…………』
「明日、三人で考えるぞ。一人で解決案が思いつく話じゃねえ。今日のところは電話で状況だけ伝えとけ」
『うん、ありがとうヒッキー。おやすみ』
「ああ」
電話を切る直前、少しだけ声が落ち着いてきていた気がする。後は解決案をどうするかだな。
「八幡もおやすみって言ってやれば良かったのになぁ」
「五月蝿いぞブイモン」
「お、良いのか?今の会話を小町に報告されたら困るんじゃないのか?」
「こ、この野郎…………んな事したら修学旅行連れて行かねーぞ」
「なにをぉっ!!この野郎!!」
結局、その夜はブイモンとの喧嘩とその喧嘩の理由を聞きに来た小町による折檻で過ぎてしまった。
奉仕部の部室、俺たちは三者三様に顔を顰めていた。当然議題は戸部の告白阻止。そしてそれを葉山グループに痕を残さない形で実行しなければならないと言う事についてだった。
「難しいわね…………」
雪ノ下の渋い顔がこんな下らないっちゃ下らない事で見られるとは思わなかったが、由比ヶ浜の落ち込んだ顔を見ればそうも言ってられない。
まず案としては、戸部に依頼は打ち切りと宣言する事。だがその場合戸部は一人でも告白に動くだろうし、そうなれば海老名さんに断られて葉山グループはまた少し関係性が壊れてしまう。
そうなれば次善の案として、戸部の依頼を遂行するフリをしながら邪魔をする事だ。そして告白を完全に阻止してしまえば暫くは葉山グループも持つだろう。だがこの場合は戸部がまたいつ動き出すか分かったものではない。今度は信用できない奉仕部を頼らないだろうから、こちらの預かり知らぬ所で告白されてしまえば終わりだ。
つまりは最終的な案としては、戸部の告白を阻止した上で諦めさせると言うわけなのだが、その方法がわからない。
「いっその事、洗脳能力持ったデジモンに頼んで洗脳してもらうか?」
「最終手段ね…………」
「犯罪だよ!?」
危ない危ない。由比ヶ浜のツッコミが無ければ犯罪だと言う事を忘れてしまう所だった。なんとか、足がつかない方法を探さないと…………。
「邪魔するよ」
「帰れ!」
「う、いつもより当たりが強い…………」
葉山が顔を見せてきたので思わず俺と雪ノ下が本気で睨んでしまう。何か可哀想な俺みたいな顔してるけどな、この面倒くさい依頼はお前らのグループが崩壊しない為の依頼だぞ。分かっているのか本当に。
「一応、双方を軽く説得してみたよ。だけど無理だった。アイツはこの修学旅行で告白すると心に決めてるし、姫菜もそれを受ける気は無い。穏便に済ませるのはもう無理だ。君たちのやり方に頼るしか無いんだ…………」
「勝手に頼られても不愉快なだけなのだけれど」
「隼人君、何かアイデア出ない?」
「アイツが告白を諦めて、ついでに俺たちの関係性を崩さないやり方なんて思いつかないよ」
だから俺たちが頭悩ませてるって言ってんだろ。ぶっ飛ばすぞお前。
「大体俺の海老名さんのBL妄想を止めて欲しいって依頼も保留なんだぞ。ってそうか。普通に海老名さんが戸部と付き合えばその辺落ち着いてくれたかもしれないんだよなぁ…………」
「今関係ない話に頭を使う余裕があるのかしら?」
「何のアイデアも浮かばないんだから、そのくら、い…………」
その時、俺の脳裏に稲妻が走った。もしも海老名さんが戸部と付き合えば落ち着く?なら告白されればどうだ?戸部に告白された程度ではまぁ、落ち着かないだろう。だがそれが、BL妄想の対象の一人だったら?
「何か思いついたのかしら?」
「い、いや…………とりあえずお前は帰れ葉山!」
「…………そうかい」
葉山が居る前で話すわけにはいかない。しかし葉山は俺の目を見て何かを察したのか、含みのある笑みを浮かべていた。
葉山が扉を開けて出ていき、俺は一度廊下を覗いて奴が居ない事を確認してから二人の前に戻った。
「今回の依頼と、俺の抱えてる依頼を同時に解決する案がある」
「え?」
「何かしら。とりあえず、聞くだけ聞いてみるわ」
雪ノ下が黒板の前でチョークを片手にこちらを見て、由比ヶ浜が期待に満ちた目で見てくる。俺はその二人の視線を一身に浴びつつ咳払いする。
「俺が戸部の目の前で海老名さんに告白する。そしてフラれて、海老名さんが暫くは誰とも付き合う気は無いと宣言すれば良い。そうすれば戸部は諦めるし、グループも崩壊しない。そして何より!俺を題材にしたBL妄想しにくくなる!!」
「え、ええー…………」
「最後の方に力を込め過ぎているわね…………」
俺としては渾身のアイデアだったのだが、二人のリアクションは余り宜しくなかった。
「おい素で引くなよ。他に方法あるか?」
「まぁ…………」
「今のところは、無いわね…………」
「だろ?これを第一案として残しておいて、他の方法を探していけば…………」
その時、気配を感じた。もう一度扉を開けて廊下を覗いて見る。階段のあたりに見覚えのある背中を見た気がした。葉山だ。
「あ、あの野郎…………聞いてたな」
「え?誰?」
「葉山君じゃないかしら」
「こうなれば…………俺と葉山、どっちが修学旅行で戸部の前でフラれるかの勝負だな」
久しぶりに燃えてきたぜ。フラれる事に関しては間違いなく葉山よりも経験があるんだ。負けられないな。
「…………ヒッキー…………」
「由比ヶ浜さん。関わったら後悔するわよ。とりあえず修学旅行まではアイデアを出して行きましょう」
「そうだね!」
その間、雪ノ下と由比ヶ浜は呆れを通り越してもはや無関心な顔で次のアイデアを出そうと話し合いを始めるのだった。
前回の感想で、皆さんからデジクロスに関して暖かい声をいただき本当に救われました。本当にありがとうございました。今後とも宜しくお願いします。
後、まさかのゴーストゲームにドラクモン登場でしたね。このまま敵対し続けるのか、それともテイマーズのインプモンみたいになるのか。期待して見ていきますよ。