やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。   作:アルファ麻呂

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めっちゃ遅くなりました。申し訳ない。
おまけに今更ではありますが、だいぶ原作から離れてきましたね。一応決着の付け方はある程度私の中では形になって来ましたが。


第二十二話

「ふぅ…………」

「何で俺を呼び出しておいてそんな黄昏ているんだ君は」

 

マッカン片手に屋上で空を仰ぐ。気持ちのいいくらいの秋空だが、今はそんな秋空すらも実は俺を騙しているんじゃないかと言うくらいには不信感に囚われている。

 

隣で葉山が心底面倒臭そうに缶コーヒーのブラックを飲み干して手の中で弄び、結構露骨に腕時計を見る。早く話せと言う合図なのは分かるのだが、俺の気持ちの整理は中々付かなかった。

 

「…………修学旅行の最後の夜、雪ノ下と由比ヶ浜の二人に告白された…………」

「そうか。良かったじゃないか」

「少しは驚けよお前」

「いや、側から見てたらバレバレだったぞ。雪乃ちゃんは多分デジタルワールド冒険してた頃から」

「え、ええ…………?」

 

葉山の言葉に全身の力が抜けた。

 

あの雪ノ下が?そんな訳あるか?でも、今でも全くあの頃と変わらない距離感のアイツが俺のことを好きだって言って来たって事はそう言う事なのか?

 

それに雪ノ下もだが、由比ヶ浜も由比ヶ浜だ。あんなクラスカースト最上位の由比ヶ浜が、単に人数の少ない部活で一緒にやってただけの俺を?全く分からない。

 

「うん。君全く理解できないって顔だね。試しにどんな風に告白されたのか聞いてもいいかい?」

「え?あー…………」

 

何で説明しなきゃいけないのかは良く分からなかったが、誰かに説明しなきゃ頭の中で今の状況を把握する事すら出来ない。なのでとりあえずはあの夜、七大魔王襲来直前の事だ。

 

まず、最初に戸部の告白と海老名さんのはやはち妄想を食い止めようと色々考えた結果、俺が海老名さんに嘘告白すると言う作戦を考えついた。しかしそれを二人が嫌がり、それぞれで戸部と海老名さんを説得する方向で動いた。そして成功したら嘘告白の相手を雪ノ下と由比ヶ浜のどちらかに変えれば良いと言ってきた。

 

しかしその時、確かに二人とも嘘告白にちゃんと返事するとは言った。しかしちゃんと断るとは一言も言っていなかった。その時は気にならなかったが、まずそこで何かおかしかった。

 

そして戸部と海老名さんの話し合いに立ち会った時に海老名さんが言った台詞、『あはは。今はダメだよ。でも、女の子が告白してきても良いよってのはそういう事だよ?』と聞いてしまった。

 

一体どう言う事なのか物凄い気になったのだが、とりあえずはベルフェモンと戦った。そして全てが終わってホテルに戻った途端に緊張なのか唇を震わせた雪ノ下に手を引かれてホテルの外に連れ出された。

 

待ち構えていたのは寒空の下でたった一人で寒さなのかなんなのか、ホットのミルクティーのペットボトルを両手で抱えて頬を染めた状況の由比ヶ浜だった。

 

「まずは謝らないといけないわね。貴方を騙すような真似をしてしまったわ」

「騙すって…………まぁ確かに未だに上手く飲み込めないけど」

 

由比ヶ浜の足元で眠たそうに丸まっていたブルコモンをブイモンが何やら訳知り顔で背負って距離を取り始めるのを尻目に、二人が俺に告白させようとしていたと言う事実を改めて思い出す。

 

確かに俺は告白をするつもりだった。しかしそれはあくまでフラれる前提の事で、海老名さんに俺はちゃんと女子に好意を持っているのだが残念ながらフラれてしまったと言う現場を見せるつもりだったのだが。

 

「あはは。実は私が思いついたんだ。ヒッキーって多分、告白されても疑うか断るかしかしないんじゃないかなって。だから嘘って言い訳でヒッキーから告白してもらうのが一番だと思ったんだ」

「…………」

「どちらが告白されるかで勝負を決めるつもりだったのよ。例え嘘でも、私と由比ヶ浜さんのどちらを選ぶのか知りたかった。貴方に、選んで欲しかった」

 

ギュッと自分の胸を抱き締めて、雪ノ下が俺を見つめる。由比ヶ浜と二人で並び、後一歩前に出れば俺に触れられるくらい近くに立った。

 

それを見ても俺はもう現実の光景だとは思えなかった。二人とも現実の世界にはあり得ないくらいに綺麗で、そんな二人が真っ直ぐに俺の目を見つめていると言う事がもっとあり得ないはずなのに。

 

「ヒッキー」

「比企谷君」

「「私たちは貴方のことが好き」」

 

俺の頭はその言葉の意味を理解できなかった。腐った目をぱちくりさせることしか出来ない俺を見て二人はいつまでも微笑んでいた。

 

気がつくと俺は自宅のベッドで目を見開いて天井をただ見つめていた。修学旅行最後の夜と帰り道の記憶は全く無かった。ただただ記憶に焼き付いていたのは二人の告白と、最後に聞いた言葉。

 

「返事は今すぐしなくても大丈夫よ。貴方をこれ以上困らせたくはないもの」

「でもいつかちゃんと答えて欲しいな。ヒッキーが私とゆきのんのどっちかと付き合うか、それかそんな気が無いかは知りたいから」

 

 

 

 

「そうか。うん。ロマンチックな展開だね。それでどちらと付き合うんだい?」

「…………もうなにもかんがえられない…………」

「うん。重症だね。俺に相談して来たあたり想像はしてたけど」

 

葉山がスマホ片手にニヤニヤ笑っている。それも物凄い腹立つのだが、こんな話を出来るのがコイツしか居ないのが物悲しい。生まれて初めて自分の狭い交友関係を後悔してしまった。

 

ブイモンは相談しようにも小町に全部話してしまうから、既に鼻息荒い小町を更に刺激しかねない。そもそもパートナーデジモンの癖にパートナーの個人情報をばら撒くってどうなのかと小一時間ほど愚痴りたいが、それはまぁ置いておこう。

 

そして当然ながら小町には相談出来ない。理由は簡単だ。まず二人との関係性やら会話の中身を全部根掘り葉掘り喋らされるし、とりあえず告白されたことは筒抜けだったので試しに相談してみたが、勝手に義姉が増えたとはしゃいでいるだけだった。暫くは相談もへったくれもないだろう。

 

なので家の外に相談相手を探しに行ってみた。しかしとりあえず平塚先生には相談できない。理解はまぁ、自慢かと殴られるか泣きじゃくる平塚先生を慰めると言う結果しか見えないからだ。

 

そうなるともうコイツしか居ない訳なのだが、なんだってコイツは明らかに真面目に聞くフリすら出来ないのか。スマホを弄り、早く終わらないかなって顔を隠そうともしない。

 

「畜生、なんで俺がこんなにも頭ん中ぐちゃぐちゃに!?」

「日頃の行いだよな。喜んだらどうだい?モテ男じゃないか」

「ちっともそんな気にならねぇ…………なんでだろ?」

「気持ちは分からなくはないけどね。で?どうするんだい?雪乃ちゃんかい?それとも結衣かい?早めに教えてくれたら陽乃さんへの報告が一回で済むんだが」

「ふざけんなこの野郎…………!!」

 

すっかり他人事みたいな顔しておいてコレかこの野郎。他に相談できる相手が居ないからってこんな野郎に頼った俺が馬鹿だったと言えばそれまでだが、だからって陽乃さんにバラすことは無いだろ。

 

「これだから葉山は葉山だからよぉ!!」

「別に葉山は悪口じゃないぞ。それに君、昔俺が陽乃さんの事エロい目で見てるって相談したら即行で本人にバラしただろ」

「ぐっ…………」

「陽乃さんなら満面の笑顔で相談に乗ってくれるだろ?いいんじゃないか?」

「絶対嫌だね。くそ、こうなったら川崎か一色…………川崎だな」

「うん。やめておいた方がいいと思うけどね」

「なんで?」

「女子に相談する事じゃないだろ。戸塚君に相談するとか…………」

「いや、なら戸塚もダメだろ」

「え?」

 

全く話の通じない奴め。女子に相談出来ないなら戸塚にもダメだろうに。

 

「そもそもなんで相談が必要なんだい?まさかとは思うが女子に興味が無いとか…………」

「ちげーわ!!あの二人はそりゃ、めちゃくちゃ可愛いと言うか…………と言うかめちゃくちゃ良い奴らだって分かってるし…………」

「あー。実は嘘告白じゃないかと疑いたいのに疑えない感じで戸惑っているのか。実に面倒くさいな君は」

 

葉山の目が更に冷たくなる。何度目か分からないが、もう一度コイツに相談したことを激しく後悔した。

 

しかしながら物凄い悔しいが葉山の言う通りだ。俺なんかがモテるはずが無いし、もしも俺に対して告白なんてしてくる女子が居れば、十中八九罰ゲームか嫌がらせか何かだと思っていた。

 

だが雪ノ下は子供の頃からの付き合いだし、由比ヶ浜も四月からの付き合いでも心底良い奴だってことは分かりきっていた。嘘を嫌う雪ノ下と、嘘がつけるほど器用な奴じゃ無い由比ヶ浜だと俺は知っているから、この二人なら嘘告白なんてことはあり得ない。

 

だけど、俺はそんな事される様なタイプじゃない。あの二人から告白される理由なんて一つも思い浮かばない。マジで理解不能だ。なんであんなにも美人で性格も良い二人が、同時に俺に告白なんてして来たんだ。

 

「俺はこれ以上君の面倒臭さには付き合えないぞ。答えが出たらどちらと付き合うのかだけ教えてくれ」

「クソ、なんで俺の元相棒がこんな野郎なんだ…………」

「…………君の面倒臭さに付き合える相棒が俺しか居ないの間違いじゃないか?」

 

さっさと屋上を後にした、余りにも無情な葉山からの見捨てられっぷりに泣きたくもなるが、これ以上葉山に頼るのも確かに面白くないのも事実。

 

「こうなったら最終手段の川崎…………ってそうだった。川崎と連絡先まだ交換してないんだった」

 

スマホの数少ない連絡先の中から川崎の名前を探してしまったが、そもそも連絡先を知らないと言う事実に気づいて項垂れる。その時、連絡先の一番上に唯一この件に関わっていない名前がある事に気づく。

 

あの可愛くない後輩に恋愛相談?大丈夫か?ダメそうだな。絶対ダメだな。絶対にボロクソ言われて終わりだわ。

 

「部活行くか…………」

 

結局、重たい足を引きずって奉仕部の部室に向かうしかなかった。

 

 

「「「…………」」」

 

奉仕部の部室の中は当然、三人とも無言。気まずいなんてモンじゃ無い。

 

まず俺が少し遅れて部室に入ると、先に来ていた二人がちょっと不安げな顔で、しかし少しホッとした顔で俺を見てきた。多分、このまま来なくなるんじゃないかと言う不安があったんだろう。

 

挨拶もそこそこに俺が椅子に座ると、形だけは修学旅行前までの平和な時間が戻ってきた。俺が文庫本を開き、由比ヶ浜が携帯を弄り、雪ノ下がハードカバーの本を読む。

 

本当にいつも通りの時間。しかしただそれだけの筈なのに、部室の空気は酷く重たかった。誰が最初に口を開くかのチキンレースで、もしも口火を切れば間違いなくあの告白に関する話になる。こんな空気の中で文庫本を読もうにも、文章どころか一文字も頭に入って来ない。チラと二人を見れば、二人も同時にこちらを見て来て目線が合ってしまう。

 

(気まずい…………なんでこうなった?)

 

まさかこのまま部活時間が終わるまでこのままなのではと言う嫌な予感が背中に冷たいものを流したそのタイミングで、部室のドアがノックされた。

 

「どうぞ」

 

雪ノ下の声が僅かに上ずるが、この空気のままで良いわけがないのは三人とも共通の思考だったらしい。

 

「し、失礼しまーす」

「ってなんだ一色かよ…………」

「わ、悪かったですね!!って言うか物凄い重い空気感ですよここ!!なんか、部外者お断りのオーラが扉越しにも伝わって来たんですけど!?」

 

姿を見せた一色は見るからにプンスカと怒りながら依頼人席に座った。正直言って助かったが、素直に言うのは何となく悔しかったのでいつもの面倒くさい後輩を見る目で一色を見る。

 

「で?何の用だ?言っておくがお前の新しい可愛いアピールの審査ならやらんぞ」

「しませんよ!!バカにしてるんですか!?」

「ま、まぁまぁいろはちゃん。ヒッキー、まずは聞いてあげようよ」

「そうね。いくら一色さんだからと言って門前払いはしないわ」

 

なんやかんやで俺たちも一色の依頼は受ける前提で前のめりになる。それを察してか一色の顔も少し真面目な顔になる。

 

「今、ちょっと悩んでることがありましてね」

「悩み?」

「もうすぐ生徒会長の城廻先輩が引退して、生徒会選挙があるじゃないですか。実は私、その会長に推薦されちゃって」

「は?一年で?」

「…………なるほど。貴女のキャラクターならそう言う事をしそうな敵は多そうね」

「あ、あー」

 

こう言う私、可愛いアピールが過剰な奴は他の女子から嫌われやすい。勿論理由なんて他に幾つもあるんだろうが、一色の場合はその可愛いアピールを積極的に武器にしてきたから嫌われるのも当然っちゃ当然だろう。

 

そんなに目立ちたいなら生徒会長にでもなったら、みたいなノリで知らず知らずのうちに勝手に推薦されてしまったと言ったところか。

 

「自分で断りゃ良いじゃん」

「それも考えたんですけど、生徒会顧問の先生がこっちの話聞いてくれなくって。一年で推薦されるなんて滅多無い事だぞってテンション上がってるみたいで」

「…………生徒会顧問、ああ」

「確か文化祭の時に勝手に陽乃さん引き合いに出してお前に実行委員長やらせようとしてたあの先生か」

 

一色の僅かに疲れた顔と、心当たりのあった雪ノ下のうんざり顔に思わず同情する。そこまで詳しく話したことは無いが、自分の中でストーリーを決めてしまってその通りに周りが動くと信じているタイプなのは確からしい。

 

「なら依頼は、その先生を説得する手伝い?」

「あ、そう言う訳じゃないです。由比ヶ浜先輩、総武高校の生徒会長の条件って知ってますよね?」

「え?」

「一色、由比ヶ浜の記憶力を甘く見るなよ。どうでもいいと判断したら耳から耳へすり抜けていくからな」

「そ、そんな事ないし!!」

「…………それなら、生徒会長の条件は何か説明出来るかしら?」

「え?」

 

暫く無言の時間が続いた。一色のマジかこの人、と言う目から逃れる様に由比ヶ浜が愛想笑いしながら後退りしていく。まぁ分かりきっていた事実ではあるが、改めて由比ヶ浜の学力が心底心配になって来たな。

 

「…………まぁ、言いたい事はいくらでもあるが。総武高校はパートナーデジモンが居るテイマーを支援してるだろ。一部の学校行事にパートナー連れてきて良かったり、暴走デジモンの対処で遅れても申請さえすれば遅刻扱いにならなかったり」

「その一環で、明言こそされていないけど支援制度が導入されてから生徒会長はデジタルワールド帰りか、少なくとも完全体までは進化させられる選ばれし子供のみと言うルールが決まったのよ」

「いざって時に対処できる人材がって事らしいですよー。総武以外でも支援制度対象の学校の生徒会長は大体デジタルワールド帰りらしいですし、城廻先輩みたいにそのまま国からスカウトの声が掛かるパターンも多いらしいですね」

「へ、へー」

 

まるで分かってない顔で頷く由比ヶ浜。ツッコミを入れていては話が進まないのでここはスルーだ。

 

「その辺俺としてはどうなんだって話だけどな。パートナーデジモンの存在の有無で生徒会長のポストに挑戦できるかどうかが決まるのっておかしくないか?不平等だろ」

「…………一理あるわね。あくまで私たちは勉強に来ているのであって、デジモンとの付き合いは日常生活の範疇ではないかしら」

「ただ大人のテイマーがまだほとんど居ないんですし、学生の間でしか解決出来ないなら生徒会長にはそれなりの力が欲しいのは分かりますけどね。まぁ、その辺りは置いておいて。ここからが相談なんですけど、実は私…………生徒会長にチャレンジしてみるのも悪くないって気がしてるんですよ」

「え?マジで?」

「マジです」

「マジなの!?」

 

マジマジマジと連呼してるとそのままマジレンジャーと叫びたくなるが、それはこの際置いておいて。

 

「え?まさか生徒会長の椅子狙ってたのか?」

「狙ってた訳じゃないですけど…………まず一つ、推薦した子たちってどうせ落ちるか断るだろうって思って推薦した訳じゃないですか。そいつらの鼻を明かすにはもうなっちゃうのが一番かなってのがあって」

「つ、強い…………」

「その追い詰められた時の割り切りの良さは昔から感心するわ」

 

雪ノ下がしみじみとつぶやいた。

 

一色は普段は私、可愛いアピールがしつこい奴だし我儘な事も良く言っている。デジタルワールドを冒険していた頃も、あわよくば俺や葉山に甘えてなんとかして貰おうとしていた。

 

だが一度それが通じない事態に追い込まれたと気づくとこっちが驚くくらいにサッパリと割り切ってしまうのだ。かつてトノサマゲコモンの城に迷い込んだ時もそうだった。

 

それは城で我儘し放題に甘やかされて、その分の支払いとしてトノサマゲコモンと結婚させられそうになってしまった時の事。我儘のしっぺ返しだと半分俺たちに見捨てられかけてしまい、城に残った川崎もなんとも出来ないと諦めてしまった途端、一色は覚醒した。

 

ルナモンと一緒に我儘で壊した物や汚した部屋を全て片付け、食べさせてもらっていた食事を今度は自分でゲコモン達の分まで用意し始めた。我儘分を全て労働で返すと宣言しての行動だった。

 

しかしトノサマゲコモンは油断して最初はそれで良いと言ったが、覚醒した一色のあまりの働きぶりに焦り、約束を反故にして無理矢理一色と結婚しようとしたのだ。流石にそうとなれば俺たちも助けに行くしかなかったが、その時の一色のキャラの変わり様に俺たちは感心を通り越して普段のキャラで隠した一色の本性に若干恐怖した物だ。

 

「後、もう一個はアレですね。一年で生徒会長やり遂げたら凄いじゃないですか。誰も私には敵わないって思い知らせてやれますし」

「こえーよお前…………」

「前向き、と言って良いのかしら…………」

「ただ、やっぱりいざやろうと思うと自信がない部分もある訳ですよ。で、奉仕部に依頼なんですけど…………私の生徒会長としての仕事をサポートしてもらえませんか?」

 

一色はニコリと笑い、俺たちは思わず顔を見合わせた。

 

「え、ええと…………サポートと言っても何をさせるつもりかしら?返答次第では流石に断らさせてもらうわ」

「いや、別に一緒に生徒会やって下さいとか言いませんよ。ただ、手が足りないなーって時はせんぱい貸してもらったり、知恵が足りないなーって時は雪ノ下先輩に意見貰いに来たり、由比ヶ浜先輩…………うん。私、頑張ってるなーって気分に浸りたい時は会いに来ますね」

「お、おう…………」

「まぁ確かに、それくらいなら…………」

「あれ?これ、私っていろはちゃんに戦力外通告受けた?」

 

何気にショックを受けている様子の由比ヶ浜だが、正直言って一色視点の由比ヶ浜はそんな物だろうなとも思ってしまった。不満げな様子だが、雪ノ下すら否定しきれない様子であらぬ方向を見ていたので俺も視線を逸らしておく。

 

「あれ!?ゆきのん!?ヒッキー!?酷い!!私そこまでバカじゃないよ!!」

「ま、まぁまぁ。じゃあこの依頼を受けてくれるって事で大丈夫ですか?」

「ええ。勿論、あまり過度にサポートを要求されたら断らせて貰うけど」

「それで大丈夫です!じゃ、早速せんぱい借りますねー」

「え?」

 

それだけ言い残し、一色は俺の手をガシッと掴んだ。そしてあれよあれと言う間に無理矢理立たされて奉仕部から連れ出されてしまった。最後に見た二人の顔は、呆気に取られて無言でこちらを見ているものだった。

 

「せんぱいに頼みたいのは、推薦人集めを手伝いです。まぁ既に奉仕部三人分は集まってるし、せんぱいの残り少ないツテかき集めたら十人分くらいは集まらないかなーって」

「そんなツテはねえよ。葉山に頼めばいいだろ」

「そんな事言って、あそこから逃げ出す口実をあげたんですから感謝して下さいよ」

「ぐっ…………」

 

何もかも見透かした様な顔の一色。まぁそりゃあ入ってくる時の空気感で何かしらのトラブルを抱えている事は察しているんだろう。

 

「修学旅行で七大魔王と戦ったってのは聞いてますけど、それ以外にも何かあったんですか?それこそ、あのお二人から告白されたとか…………ないかー」

「ブフォッ!?」

「えっ…………?」

 

まさかの図星に思わずむせ返り、一色の表情が凍りつく。

 

「えっ…………えっ、えっ?まさか、嘘ですよね?そんな、せんぱいですよ?こんなダメダメなせんぱい…………」

「悪かったな…………」

「ゆ、雪ノ下先輩が子供の頃はせんぱいの事好きだったのは知ってましたけど…………由比ヶ浜先輩なんて自分から告白するタイプには見えなかったから安心してたのに…………」

「この状況のどこに安心する要素があるんだよ…………さっきトチ狂って葉山に相談して激しく後悔する羽目になったし…………」

 

今の俺から見ても分かるくらい激しく動揺している一色。一体どこにそこまで動揺する理由があるのかは分からないが、一色はブツブツと恨みがましい目で俺を睨みながら何かを呟き始めた。

 

「…………そう言う事ならもっと早く…………でも、仕方ないよね…………くぅぅ…………」

「お、おーい。一色?」

「今日はルナモンと一緒にやけ食いだなー…………ふう。とりあえずせんぱい!!」

「お、おう?」

「どっちから告白されたんですか!?」

「え、ええ?まぁ…………実は、二人同時に…………」

「はあぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

「とまぁ、こんな感じで一日が過ぎた」

 

夜。重い足取りで家に帰れば案の定小町が待ち構えていた。ブイモンとシャウトモンもニヤニヤ笑いながらその足元に控えており、味方などどこにも居ないことを悟って肩を落とす。

 

全部説明するまでは逃がさないと宣言され、既に用意されていた夕食のカレーを食べつつ今日一日の流れを話していく。葉山に相談した、と言った辺りでそこまで追い詰められてたかー、と小町が流石に可哀想な事したなって今更ながらに同情して来たりもしたが、それはとりあえず置いておこう。

 

「ホント、人間ってのはそう言うの?レンアイって奴が好きだよなー」

「俺たちデジモンはオスもメスも無いしなぁ。それっぽい外見してる奴はいるけど」

「クソ、やっぱり俺はデジモンに生まれるべきだったか」

「既にチューモンの居ないダメモンみたいなモンじゃん」

 

余りにも酷い小町の言種に涙が出てくるが、ブイモンもシャウトモンも気にせずカレーをお代わりしていた。本当にパートナーをなんだと思ってやがる。

 

「いやー、それにしてもいろは先輩何も言わなかった?」

「あ?まぁ二人同時に告白されたって言ったらため息ついて、さっさとどっちか選んで下さいよって言ってそれっきりだったな」

「あ、ああー…………」

 

俺の言葉に小町が頭を抱えた。どこに頭を抱える要素があったのかと聞きたいが、隣に座ったブイモンがカレーのスプーンを口に咥えたまま唸り始めた。

 

「八幡、多分だけどさぁ。いろはも昔は八幡の事好きだったと思うぞ」

「え?」

「今はどうなのか知らないけど、未練みたいなのはあったんじゃね?」

「え、ええー?」

「うわー。パートナーデジモンの方が人間の心に敏感って何だよー」

 

ブイモンとシャウトモンの二体に冷たく睨まれ居心地が悪くなってしまう。しかし小町は流石にこの話をそこまで掘り下げる気はないのか、ため息を吐きながらカレーの最後の一口を口に入れた。

 

「…………とりあえずさ。ごみぃちゃん。もーちょい女の子の気持ち察してあげなよー。中学の頃じゃないんだし、そこまで周りの人達はごみぃちゃんの事嫌いな人ばっかりじゃないよ」

「そうなのか。まぁ、そうなんだよなぁ…………」

 

小町の言う通り、俺はもうちょっと人間関係って奴を考えなくてはいけない立場になってしまったらしい。そこに一色まで混ざるとは思っても見なかったが。

 

ただ、やっぱり考える時間は欲しいよなぁ…………

 

 

一週間後。一色は無事に生徒会長に就任した。俺はその手伝いに駆り出されていたが、ようやくそれも終わった。

 

一色は表面上は今までとは変わらない。いつも通りあざとく、可愛らしいアピールを時折してきてはそのついでに俺をこき使おうとしてくる。俺としては一色との付き合い方も考えたかったのだが、その手の話をしようとすると一色は呆れた顔でもう良いですよ、とだけ言って話を終わらせてきた。

 

ありがたいっちゃありがたいし、おかげで少し頭も冷えた。今度一色に何か買ってやるか、と財布の中身を確認しながら心の中で決めつつ、俺は奉仕部の部室に足を踏み入れた。

 

「あ、ヒッキー…………」

「…………もう来ないかと思ったわ」

「文句は一色に言えよ。アイツ、放課後になると毎日真っ先に俺をこき使おうと呼び出しやがって。まぁ、ちょっと頭も冷えたけどな」

 

そう言うと俺はいつもの席じゃなくて、二人のすぐそばに立った。二人とも少し緊張した面持ちで姿勢を正すが、悪いけど少なくとも今はそんな話じゃ無い。

 

「悪いな。まだちょっと、考えがまとまりそうに無いんだ」

「そ、そう…………」

「…………私たちは急いでいないわ」

「ただいつまでも待てってのもアレだし…………もうちょい一色の方手伝って、考え纏めてくる。クリスマスまでには、答え出して戻ってくるわ」

 

二人に、と言うより自分に対してそう宣言する。二人は暫く黙っていたけど、やがて小さく頷いた。

 

「悪いな、ホント」

「良いわよ。昔の貴方ならこのまま何も言わずに逃げていたでしょうし」

「ヒッキー、待ってるから」

 

その言葉を背に、俺は一時的にだが奉仕部を離れたのだった。




あんまりデジモン関係なくなって来た…………実は、この話にどうやってデジモンを絡ませようかと試行錯誤したのが投稿が遅れた原因でして。

どこかで偶発的な暴走デジモン出現の展開も考えたんですが、本筋と全く関わらないと単に話の流れが止まるだけだったので…………
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