やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。 作:アルファ麻呂
クリスマス会編もどれだけ続くのか分かりませんが、とりあえず今回はこの作品オリジナルの設定が入ります
「せんぱい、おっそーい」
「あのな一色。俺はあくまでお前が助けて欲しいって言ったから、昔の腐れ縁のよしみで来てやったんだぞ?その辺り分かってるか?」
「は?奉仕部のお二人への返事を考える時間を作りたいんだって言ってたのはどこのどいつでしたっけ?」
「ぐっ…………」
「はぁー…………マジで無いですせんぱい。この可愛い後輩の心に傷がついちゃいましたー…………ところで、寒い中食べるハーゲンダッツって美味しいですよねー」
「…………一個でいいか?」
「五分以内で」
「…………はい」
奉仕部を一時的に離れて一色の生徒会を手伝う事になって早くも一週間。年下の後輩の女子に頭が上がらない生活は思いの外大きめの財布への追加ダメージと共に続いていた。
元々城廻政権から一色政権への引き継ぎがメインの一週間だったし、手伝うと言ってもせいぜい生徒会室の模様替えだったり新しく必要になった備品の調達とかだ。俺が学校の内や外で必死に駆け回っている中、一色は一色で各部活との顔合わせや詳しい仕事内容の確認で忙しくしていた事だろう。じゃなきゃこのハーゲンダッツを買いに走って戻ってくる俺が報われなさ過ぎる。
新しい生徒会メンバーからは基本的には会長のパシリとしてしか認識されていない。俺も一色も選ばれし子供達ちば組のメンバーだった事は学校中に知れ渡っているし、むしろ副会長の人からは年上だろうとこき使う気満々の一色になんやかんやで昔の事で弱みを握られているんだろう、と言う感じの同情の目つきで見られてすらいる。
「ゼェ、ハァ…………か、買って来たぞ!」
「おっそーい」
「無茶言うなっての…………」
俺から奪ったハーゲンダッツを早速食べ始める一色。副会長や書紀さんが可哀想に、みたいな目で頭を下げて来たのでこっちも頭を下げ返す。なんやかんやで社交的になったモンだと我ながら感心していると、一色が一枚のプリントを机の上に置いて来た。
「せんぱい、そう言えばお二人への返事ってクリスマスまでって話でしたよねー?」
「ぶっ!?な、なんでそれを!?」
「…………クリスマスまでは手伝わせてって言ってきたのせんぱいですよね?まぁいいや。ちょうど良いタイミングでクリスマスイベントの話が来てまして」
曰く、総武高校は毎年クリスマスに千葉コミュニティセンターで近隣の老人ホームのお年寄り達を対象にしたクリスマスイベントをやっているらしい。生徒会の毎年恒例の初対外イベントなのでやらなくてはならない。なので話を聞いた辺りでは普通に去年の内容に若干のアレンジをかけて終わらせる予定だったらしいのだが、なんでも近隣の他校がそのイベントの話を聞きつけて絡ませて欲しいと打診して来たとの事だった。
「イベントそのものはともかく、その他校の協力は断ったらどうだ?無駄にイベントの規模を広げてもリスクが大きいだけだろ」
「それが何故かわからないですけど、どうもウチに打診して来た時点で老人ホーム側にはもう話を通してたらしくって。おまけにその話を聞きつけた他の老人ホームも参加させてくれって言い出しまして」
「話を聞くだけでもカオスだな。一色、頑張れよ。応援してるぞ」
「は?」
「…………ごめんなさい手伝います手伝わせてくださいお願いします…………」
年下相手に土下座とは行かなくとも頭を下げるのにはスッカリと慣れてしまった俺。一瞬目を上げたら一色のマジで見下している感じの目が。俺は絶対にゾクゾクはしないが、多分ゾクゾクする奴は居るんだろうな。そんな奴は一色に良いようにこき使われるんだ、きっと。
喜んで協力してくれる人を是非とも探して欲しい所だが、今日のところは俺は一色に頭を下げて働かさせてもらっている身。早速打ち合わせの会場までのルートをスマホで検索し、バスや電車を使わずとも徒歩で行ける場所と分かった時点ですかさず荷物を預からせてもらう。一色に馬になれと命令されるよりも前に出発し、たどり着いたのは30分後。
「とりあえず今回は初回なんで顔合わせくらいで終わらせますから、せんぱいは今日のところは帰ってもらって大丈夫ですよ」
「ならなんでここまで付き合わせた…………」
「荷物持ちに決まってるじゃないですかー。それに、呼び出すときに場所の説明もしなくて済むし」
まぁなんて合理的なんでしょう。確かに急に必要なものが出来た時とかに呼び出したいだろうしな。それこそ会議に参加しろ、みたいなことまで言い出さない辺りは一色も成長したなとホロリ。
…………いや待ていかんいかん。当たり前のように一色にこき使われる前提で思考を進めてはいけない。コイツはその思考を利用して骨の髄まで利用し尽くす悪魔のような後輩だ。気を許してはいけない。
「そうか。まぁ今の一色なら余程のことが無い限りは大丈夫だろうしな」
「え?喉乾いたなーって時やお腹空いたなーって時には呼びますよ?」
「マジで可愛くねえ後輩だなお前…………」
「えー?今のセリフ、可愛い後輩の間違いですよねー?せ ん ぱ い?」
一色の瞳のハイライトがオフになりました。思わず無言で頭を下げて赦しを乞うが、口元は笑っているのに目が笑っていない一色が無言で自販機を指差した。ミルクティー買って来いよ、と言う意味だろう。
本日何度目かわからないが、泣く泣く財布を片手に自販機に走る。修学旅行の時のベルフェモン討伐時のバイト代が無ければ今頃破産していた事だろう。まぁそれでも新作のゲーミングパソコンが余裕で買えるくらいの余力は残しているが。
「いやまて、絶対に一色はベルフェモンの件は把握しているはず…………つまりこの俺への過剰なパシリ要求はどれだけ財布に余力を残しているかを調べる為の…………クソ、やっぱりアイツに頼るのは失敗だったな…………」
ぶつぶつ呟きながら自販機の前に立ち、一色が昔好きだって言っていたミルクティーのメーカーを探していく。確かアイツは砂糖多めの奴が好きだったハズ。お、あった…………
「あっ…………」
「ん…………?」
その時、ちょうど同じ自販機でミルクティーを買おうとしていた誰かと至近距離で鉢合わせた。一色のミルクティーの事が気になりすぎて他人がいる事に気がつかなかったのだ。
「っと、失礼。どうぞ先に」
「比企、谷…………?」
「え?」
とりあえず見知らぬ人相手に顔なんか見れないのがボッチの性根。まずは高めの女子の声、そして見覚えのない制服。だけど少し目線を上げていけば、呆気に取られたような、しかしどことなく恐怖心を感じる声音と共に見覚えのある顔が俺を見つめていた。
「…………折本?」
恐らくお互いに一番出会いたくない相手、中学生時代の同級生の折本かおりが凍り付いていた。
それは中学生の頃の話。選ばれし子供達ちば組はまだ解散しておらず、しかし学区がバラバラなので川崎以外とは学校内では会えなかったし、その川崎とは三年間一度も同じクラスにはならなかったから学校内で余り顔を合わせることは無かった。お互いに自分から話し相手を探したがるような対人スキルを持っていなかったからだろうか、と今更ながら思う。
当時は既にデジモンの存在は広く知らされていて、パートナーデジモンが居る中学生はかなり珍しかったが、居ないことは無かった。ただ総武高校の様にパートナーデジモン支援制度は中学には無いので、悪目立ちしたく無かった俺も川崎もわざわざ名乗り出ない限りはテイマーだとはバレなかった。
ただ殆どのテイマーは当然ながらクラスでは自慢して回っていたし、俺が居たクラスのトップカースト連中の中心もテイマーだった。デジタルワールド帰りでは無いが、パートナーのイビルモンを完全体のスカルサタモンに進化させられる事が自慢だったらしい。それが本当の事なのかどうかは今では確かめようも無いので分からないが。
そして折本はそんなトップカースト連中の中の一人で、クラスで一番人気のマドンナだった。誰にも優しく接している折本は特定の誰かと付き合っているわけでは無い事もあって他の女子とも仲良く出来ていて、俺は別に付き合いも無かったのでそんな彼女を腹黒く無い一色と評して、腹黒く無い一色ってもはや一色じゃ無いよなーって川崎に話したくらいだった。
当然ながら次の日に突撃してきた一色に締め上げられたがまぁそれはともかく。なんやかんやで顔面偏差値の高いちば組の女子達、そして陽乃さんとも知り合いじゃなければ思わず告白してフラれていただろうなーって思いながら、特に関わりなく中学時代を過ごしていた。
だけど、ある日。天気予報が思いっきり外れて降りしきる雨の中、折本が増水した川の上の橋で不意に立ち止まってジッと濁った川を眺めている現場に出くわした。同級生とは言え特に関わりの無い相手だし、声をかける事もなく立ち去ろうとしたのだが、デジタルワールドで何度も何度も感じた嫌な気配を感じてしまい足を止めた。
「お、おい?折本さん?」
「…………呼んでる」
「な、何が?」
「呼んでる」
周囲の雨が霧に変わり、折本は何かに取り憑かれた様な目で指していた折り畳み傘を取り落とす。そして橋の手すりを乗り越えようとし始めた。
「お、おい!!」
思わず咄嗟に折本の手を掴み、無理矢理橋の上に引き戻した。帰宅部のボッチに優しく抱き留めることなんて出来る訳もなく、そのまま二人まとめて雨の橋の上に転がってしまうが、その痛みと雨の冷たさが折本の意識を覚醒させた。
「え?え?」
「おい、大丈夫か!?」
「え、えっと…………比企谷君?」
「早く逃げろ!ヤバいデジモンが居る!」
「は?」
直後、橋の下の川が更に荒れ始めた。濁った水が渦を巻き、水嵩を増して迫ってくる。俺は慌てて折本の手を掴み走り出す。折本は何が起きたか分からない様子のままだったが、それでも素直に付いてきた。そうしなければ、突如噴き上がって橋を飲み込んだ鉄砲水に飲み込まれていただろう。
橋を渡りきり、灰色と薄茶色が混じった激流がついさっきまで立っていた橋を飲み込む様子を見て初めて恐怖に顔を引き攣らせた折本は腰を抜かし、何か言葉を呟こうにも喉が引き攣って声が出ない様子で俺を見て来た。
ここで何か一つ、安心させる様な言葉を言えれば良かったのかもしれない。だがそう言うのは葉山の仕事だと割り切っていた俺は、折本を置いて一歩前に出た。
濁流が引いてようやく足場が戻ってきた橋の上には、無数の触手を持つタコの様な悪魔がいつのまにか姿を見せていた。首には数珠を下げ、悪魔の翼を広げた様はまるでクトゥルフ神話に出てくる邪神の様だった。
「援護は期待出来ないが、まぁやれるだろ。ブイモン!」
「お、バトルかー?久しぶりにバトれるのか?」
D-3を構え、携帯からブイモンを呼び出す。そして霧の中からゆっくり姿を見せたその邪神を見て、ブイモンの顔つきがこわばった。
「お、おい八幡、あいつダゴモンだぞ!?」
「ダゴモン?」
「完全体だ!近くにみんなは居ないのかよ!?」
「みんなって言っても今の小町とシャウトモンは戦力外だしな。川崎は…………だめだ、アイツ携帯持ってない」
「じゃあ俺たちでやるしかない?」
「だな。全力で行くぞ!!」
D-3が金色に輝き、ダゴモンの霧が一瞬晴れる。奇跡のデジメンタルの力だ。
「デジメンタル、アップ!」
「ブイモン、アーマー進化!奇跡の輝き、マグナモン!!」
光と共にマグナモンにアーマー進化し、触手を伸ばしてくるダゴモンに向けて殴りかかっていく。ダゴモンの触手は本来ならマグナモンを拘束していた事だろうが、マグナモンは全身に光のエネルギーでバリアを貼りながら突撃して行っていた。その為ダゴモンの触手はマグナモンに触れるよりも先に焼き切れて行った。
接近してタックルを決めたマグナモン。ダゴモンは苦悶の叫びを上げて後退り、その叫び声を聞いて俺と折本は強烈な頭痛と吐き気に襲われた。
「くそ、相変わらずこれだから暗黒のデジモンは…………!」
「黙らせる!!」
マグナモンは強烈なアッパーでダゴモンの口を無理矢理塞ぎ、後ずさった所にプラズマシュートを叩き込む。全身を光で焼かれたダゴモンが苦しみながら川に逃げようとするが、俺は携帯を介して開いたデジタルゲートを橋の上に展開した。
「マグナモン、さっさと投げ込め!」
「了解!大人しくしてろー!!」
ダゴモンの翼を掴み、マグナモンがジャイアントスイングで振り回す。ブンブンと振り回したことでダゴモンの霧が再び薄れて行き、それどころか雨すら止んで青空が見え始めた。
「とっとと、デジタルワールドに帰れ!!どおりぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
マグナモンに投げ飛ばされ、そのままダゴモンはデジタルゲートに吸い込まれていく。やがてダゴモンの気配すら遠のいた頃には完全に雨が上がり、後に残されたのは俺とマグナモンと、そんな俺を遠目に見つめていた折本だけだった。
その後は役場の連中がおっとり刀で駆けつけて来て、ありえないくらいに汚れた橋を見て呆然としている一部の大人達を置いて俺達は警察に一通りの事情聴取を受けた。俺は何度か経験しているからすぐに終わったし、折本もただの目撃者なのでそこまで拘束はされず、それぞれ事情聴取が終わった頃には親が迎えに来ていたのでその日はもう話す事は無かった。
ただ、問題は翌日だった。
「ねえ比企谷君!君がデジタルワールド帰りの選ばれし子供ってのは本当なの!?」
「アーマー進化ってどう言う奴なの!?普通の進化と違うの!?」
「マグナモンって、確かロイヤルナイツだろ!?何で今まで黙ってたんだよ!!」
折本が当然ながらクラス連中にダゴモンとの戦いを全部話してしまったせいで、俺は一気にクラスの注目の的になってしまった。ボッチの俺には見知らぬクラスメイト達に一気に質問攻めにされてもまともな受け答えが出来るはずもなく、戸惑うことしかできなかった。
そのリアクションも最初は逆にヒーローっぽい、みたいな謎の感想を抱かれてしまった。その為に事あるごとにデジモン関連の武勇伝を聞かせろとクラスメイト達に迫られたりしていたが、俺は答えられなかった。そんな俺に失望したか、クラスメイト達の声かけは次第に減って行った。
しかしその声かけが減るにつれて、今度は悪意のある中傷が始まった。期待外れだとか、一発屋だとかから始まり、次第にある事無い事の作り話や誹謗中傷がクラスに広まったりし始めた。所謂、虐めという奴だ。
首謀者はすぐに分かった。選ばれし子供が中心になって形成されたクラスカースト最上位連中だった。ダゴモン事件の後に最初に俺に声をかけて来た奴が自称完全体までパートナーを進化させられるテイマーだった事には気がついていたが、ソイツが中心になって俺の事を必要以上に貶しめていたのだ。
「あんな奴が選ばれるなんて何かの間違いだろ。俺が本物の選ばれし子供って事じゃん?」
俺が教室に入ると聞こえるようにそう言い出したのを聞いて、生憎とその言葉そのものは全然悔しくは無かった。ただ、選ばれし子供だからと言って善人ばかりでは無いんだと実感出来た事がなんだか悲しかった。
川崎は何度か俺を助けようとしてくれたが、俺はそれを断った。あの調子では川崎が何かをしたところで下手にターゲットを増やされるだけだったし、俺としてはボッチとして外界をシャットアウトする術は完璧だから大丈夫だった。
だけど、どうしても選ばれし子供達ちば組の集まりに顔を出す事が嫌になってしまった。葉山を中心に小学生時代の関係性の維持が目的になってしまっていた事が気持ち悪かったのは事実だ。だが、選ばれし子供達と言う言葉に対してある種の嫌悪感を抱くようになってしまった為に、そんな想いを抱えてちば組のメンバーと顔を合わせる事に罪悪感を抱いてしまってもいた。
今にして思えば、もしかしたらアイツらと顔を合わせる事を逃げ場にしてしまいそうな自分に気づいてしまったのかもしれない。そんな勝手な理屈で解散を言い出した事は、正直言って悪かったと今でも思っている。
「へー。あの人がその折本さんだったんですねー」
「…………まぁアイツが悪い訳じゃ無いけどな。逆の立場なら俺やお前だって誰かに話すだろ」
「ま、確かに」
サイゼでドリンクバーだけを注文しつつ、初回の顔合わせを終わらせた一色と合流して事情を説明させられた。折本と再会し、お互いに固まっていた姿を一色に見られたのが運の尽き。
だが中学時代の黒歴史の大体の事情は既に知られているとは言え、余り語りたい話しでは無いので今まで誰にも言わなかったが、改めて振り返ると見えてくるものもある。
「せんぱい、そうは言ってもあの折本って人がトラブルの原因ってのは変わらないんでしょ?トラブった相手は総武も海浜総合も落ちたんでしたっけ」
「そっちは知らん。興味も無いしな」
「気にしても仕方ない話ではありますしねー。で、あの折本さんとどうするんですか?復讐するなら法に触れない範囲で手伝ってあげてもいいですよ?」
「するかっつの。恨んでる訳でも無いし、嫌いな訳でも無いからな。俺としてはこれから先、関わり合いにならないと思っていた相手ってだけの話で」
「ならいいですけど」
そう言いつつドリンクバーから持ってきたジュースを飲む一色。しかしその顔はいつもの生意気な後輩にしては憔悴している。たかが顔合わせを終わらせただけのはずだが、折本との遭遇で疲れたのだろうか。
「それで、一色の方はどうなんだ?無事に終わりそうか?」
「…………聞いてくれます?相当疲れますけど」
「まぁお前には最近借りを作りっぱなしだからな。クリスマスまでは出来るだけ手伝うつもりだ」
「なら聞いて下さいよ!」
バン、とテーブルを叩き、周囲がビクッと震える。周囲の目を木にする一色にしては珍しい光景だが、それくらい神経に触るような出来事があったのだろう。
「あそこの、海浜総合の生徒会長!!マジで話が通じないんですよ!!なーんか俺、頭良いでしょ、みたいな顔しちゃって!!」
「お、落ち着け落ち着け。ご近所迷惑だぞ」
「うぅー…………せんぱいはあの人の言撃を受けてないからそんな事言えるんですよー」
そうは言いつつもちゃんと声を落とす一色。偉いぞ、ドリンクバー代は出してやるかな。
「去年までは小規模な交流会だったんだから、まずはどのくらいの規模を想定して草案作れば良いですかって聞いただけなんですよー。なのにあそこの会長、やれるのならより多くの意見をブレインストリーミングして、とかなんとか意味不明な言葉を使い出しやがりまして」
「より多くの意見をブレインストリーミングって…………より多くの意見を求めるのがブレインストリーミングだぞ」
「あー、そうなんですかー…………ぶっちゃけそこはどうでもいいんですけど、一事が万事そんな様子で。去年まではパートナーデジモンの連れ込みは生徒会長だけってルールだったのに、パートナーデジモンをアンバサダーにして、とか選ばれしテイマーが増え続ける現代の結果にコミットして、とか…………」
「ライザップかよ」
「言わないで下さいよー、次の会議で笑っちゃうかも…………いや、笑えないわー」
そう言って崩れ落ちる一色。昔ならこのままお兄ちゃんスキルを発揮して頭を撫でてやる所だが、高校生の今にやられても不愉快なだけだろうと我慢しつつ新しいジュースを取ってきてやる。
「…………まぁ、次の会議は一緒に出てやるよ。少しくらいの援護射撃はしてやるから」
「ホントですかー?でも、折本さん居ますよ?」
「だから、折本の事は俺は特に気にしてないっての。あっちは知らんけど、元々話を無駄に大きくしたのは海浜の方だしな」
「じゃあ、お願いしますね、せんぱい」
少し安心した様子の一色は俺が持ってきたジュースを一気飲みし、気合を入れ直すのだった。
「とは言うものの、どうしたもんかなぁ」
「…………何とも言えないよなぁ」
夜のリビング。俺とブイモンはお互いに向かい合って唸り続けていた。夕食には少し遅れてしまったが、待っていてくれた小町とシャウトモン、そしてブイモンには今日起きた事は全部報告して、相談した。
「小町的には、あの折本さんはちょい許せないかなー。せっかくお兄ちゃんが色々と気を回してたの全部台無しにした癖にさ」
「うんうん。助けてやった恩を仇で返したんだろ?一発ガツンと言ってやったらどうだ?」
「バカ言え、今更だろ。それに俺は別に折本の事は怒っても無いって」
「好きの反対は無関心って奴か?まぁそうなるよなー」
一応議題としては、海浜との話し合いの際に折本とどう接するかだ。小町とシャウトモンは一度ガツンと言ってスッキリさせた方が良い、との事。しかし、俺としてはそんな事する理由が俺の中に無いのが正直な所だ。ブイモンもその気持ちは分かってくれている。
実際トラブった相手の方も同じなのだが、俺としては中学時代の事は丸々黒歴史として封印しておきたいのだ。無駄に思い出してほじくり返すほどの価値は無いし、その頃の人間関係なんて川崎達くらいしかこれから先の人生に関わってくる事は間違いなく無い。たまたま通りかかった先で折本と再会した事で、俺が特別何かをする理由は無いと思うんだが、現実問題として折本とはまともな会話が成立しなかった。これが会議中も続けばそれはそれで問題だろう。
なのでその事態が起きた時の対処方法を考えて欲しかったのだが、小町とシャウトモンとしては事態が起きる前に折本に引導を渡してほしいらしい。それって小町の私怨も混ざってないかとは思っちゃうのだが。
「お兄ちゃんとしては気にしてないんだろうけど、小町はやっぱり許せないって気持ちが一番かな。ただの私怨だからお兄ちゃんは気にしなくてもいいけど、もしもこのまま折本さんが何事もなかったかのような態度でお兄ちゃんと接してたら…………うん。シャウトモンと一緒に殴り込んじゃうかも」
「みんなに声かけて、久しぶりにX7になってもいいんだぜ!?」
「辞めろ。可愛い妹を犯罪者にしたく無いんだよ、俺は。そんな時は流石にこっちから一言は言っておくよ」
「それに、向こうも実は気にしてるってパターンもあるしな。とりあえず、出方を見たほうがいいんじゃないか?」
ブイモンの言う通り、ここは一度様子見をするしかない。小町はちょっと納得のいってない様子だったが、それでも最後は頷いた。
「…………はーあ。お兄ちゃんがさっさと雪乃さんか結衣さんに返事出してたら、小町達だけで話し合わなくても済むのにね」
「それ言うかよ!!」
ぶっちゃけ小学生時代にゆきのんとかと出会ってたら折本に告白はしないと思う…………