やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。   作:アルファ麻呂

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前回の私「玉縄って重い雰囲気の時に出て来なかったら完全にギャグキャラだよなー。よし、この作風ならギャグでいけるやろ」

今回の私「玉縄ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


第二十四話

一色の生徒会を手伝い初めて一ヶ月目。今日も今日とてクリスマスイベントの打ち合わせだ。今日は両校のイベント運営側として参加させるパートナーデジモンを決める話し合いで、なぜかここまで来たらもう運営側と認定されてしまった俺もブイモンを連れてくる話の流れになったのだ。

 

「いーやーだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!俺を巻き込むな八幡!!」

「五月蝿いぞブイモン。暴れて出禁になろうったってそうはいかないからな」

 

が、その会議が始まる5分前。周囲の好奇の視線を浴びつつ、俺はコミュニティセンターの入り口でベンチにしがみ付くブイモンの足を掴んでいた。

 

 

事の発端、と言うかクリスマスイベントについてのこれまでの流れを簡単に振り返る。まずは初日、折本と再会してお互いめっちゃ気まずくなった。俺個人としてはそこまでなのだが、一色は海浜総合の生徒会長のキャラに初日にしてノックアウト寸前まで追い詰められていた。

 

俺としては正直言って大袈裟だろうと考えていた。理由があるとは言え最近一色を甘やかし過ぎたし、一色の私今大変なんですアピールは大体大袈裟にやって俺に仕事を押し付ける前触れなのはとっくにお見通しだったからだ。

 

が、翌週の会議に参加した俺はまず自分の甘さと一色の心労の重さを思い知らされた。

 

「まずは今日のMTGで全体のスケジュールを決めたいと思うんだ。クリスマスイベントまで後一ヶ月半、マイルストーンを決めて着実に話を進めて行こう」

 

諸悪の根源、海浜総合の生徒会長の玉縄。自信満々な態度から繰り出される、それっぽいビジネス用語だけで構成された余りにも中身の無い演説の嵐は俺たちの労働意欲をへし折るには十分だった。

 

「え、えーっと。とりあえずはイベントの中身について決めますか。昨年までは…………」

「あー、それなんだけどね。初参加の僕らとしては前年までのメソッドは把握できていない訳だし、何より新しい参加者達も大勢居る。ここは全く新しいイベントを提案していきたいと思うんだ」

「いや、まぁ大規模化するなら去年通りと言う訳にはいかないってのは分かりますけど…………」

「その通りさ!勿論君たちの去年までのノウハウは存分に生かしてその上で僕らのフラットなアイデアをミックスさせていけば、より強固なシナジーが生まれると思うんだ」

「…………え?」

「まずはオリエンテーリングだね。細かい部分は後から幾らでも詰められるから、どんなイベントにしたいかみんなで考えて行こう。どんな意見もアグリーさ!!」

 

つまり、なんだ?何が言いたいんだコイツ。俺達がまず意味がわからず唖然としている間に、玉縄は一人で物凄い言い切った顔をしていた。

 

とりあえず総武側が誰一人として声を上げられないまま、海浜総合側の生徒会メンバーが少しずつ意見を出していき、その全てに玉縄がキメ顔でアグリーしてい、違う違う、良いねと言って書記がホワイトボードにメモを残していく。

 

「せんぱい、せんぱい。会議の流れがわかります?」

「…………多分だけど、クリスマスイベントでやってみたい事を募集してるんだと思うぞ」

「ですよねー…………」

「ん?なんだい?一色会長!君たちも積極的に意見を出してくれないかな!!」

 

自分達の意見を出し合っている空気に酔っている様な態度からは想像もつかないくらいに敏感に俺たちの私語に気づいて声をかけてくる玉縄。マジで心臓が冷えるかと思ったが、一色がなぜか俺に意見を出せと足を踏んできた。コイツ、玉縄とバトるのを避けやがったな。

 

まぁ確かにコイツと全面対決していたら時間の無駄に終わりそうだし、心労もハンパなさそうだ。ここは俺がなんとか丸め込んで見るか。

 

「なら早速一ついいか?」

「勿論さ!えーっと、特別枠?特別枠ってなんだろう…………まぁいいか。特別枠の比企谷君だね。何かアイデアはあるのかい?」

「まぁアイデアってか…………当日に具体的に何をするかを決める場だろ。ならとりあえず去年のタイムスケジュールを元に、採用出来るアイデアの数くらいは決めとくべきじゃね?」

「それはジャストアイデアではあるけど、今はより多くの自由なアイデアを集めるべきだ。この場で出たアイデアがどんなシナジーを起こすかはわからないだろう?」

「だからって当日に出来る事の目処を立ててからじゃ無いと…………」

 

本人はどこまで理解しているのかは怪しいが、ついさっきまで言ってたどんなアイデアをアグリーをひっくり返してまず開口一番俺のアイデアを否定してきた玉縄。そのくせキメ顔を崩そうとしないその姿に思わずイラッとして思わず微かに声が低くなる。

 

「…………っ!」

 

と、視線の端で折本が微かに表情をこわばらせて息を飲む音が聞こえてきた。本人としては悪気はないのだろうし、視線が合うと声には出さないがごめんなさい、と唇の形でそう伝えてきていた。

 

そんな事されては流石に頭も冷えるが、その一瞬で玉縄は俺の意見は終わったと判断してしまったらしく次のアイデアを求め始めていた。渋々座った俺の足を、一色が今度は強めに蹴ってきたのだった。

 

そしてそんな感じで会議は進む。そして終わる。

 

「「ああ"ぁーーーー…………」」

 

サイゼのファミリー席、俺と一色がぐったりとソファに背中を預けて唸る。特に一色の喉から出てこないと思っていた汚い音が出てきた時には流石に耳を疑いはしたが、それも仕方ないかと思うくらいには疲れ果てていた。

 

「なぁ、今日の会議で何か決まったところあるか?」

「…………一つとして無いですよーだ。とりあえず山のようなアイデアは出ましたけど、どれを採用するかの目処も立ってませんし」

 

物凄い仕事した感に満ち満ちた玉縄に渡されたアイデアの書かれたA4用紙を眺め、実現可能そうなリアリティのあるアイデアにはとりあえず丸を付けておきつつため息を吐く。クリスマスイベントとは言え老人ホームとの交流会なのだから、プレゼントを配って回るなんて出来るわけもないアイデアはメモする前に削除して欲しかったなと心の中で思わず愚痴る。一色はその間もう一枚の用紙の添削を進めていた。まぁこの短い会議の中でA4サイズの用紙二枚にびっしりのアイデアを出せるあたりは素直に凄いとは思うのだが。

 

「…………何でせんぱい、あの時言葉に詰まったんですか?」

「まぁ何となくは分かってるだろ?」

「あの折本さんですよね?せんぱいの声が低くなった辺りでビクビクしてましたし」

「わざとじゃないんだけどな」

 

俺も一色もお互いにため息を吐き、これから先の会議が不安で仕方なくなってしまった。

 

その後、週一で行われた会議は延々と踊り続けた。なんとか具体的に話を進めるように提案しては玉縄の訳の分からない謎トークで誤魔化され、しかしイベントの規模自体はどんどん大きくなっていく。玉縄がイベントの案をどんどん採用だけしていくせいだ。今では付近の老人ホームどころか幼稚園や小学校まで参加することになってしまっていた。

 

とりあえずなんとか大体のイベントの流れは俺たちで提案した案が採用になった。と言っても開会式、メインイベント、閉会式とその間にクリスマスケーキとスイーツを用意しておく程度。つまりはわざわざ決めるまでもない部分なのだが、せめて何か決めたと言う事実がないと俺たちが持たなかった。

 

本当ならどこかのタイミングで俺が出禁になるくらいの勢いで玉縄のあのロジックを叩きのめしてしまえば良かったのだろうが、どうも今回は上手く俺の口が回らない。玉縄と話しているとどうしても口調が僅かに苛立ってしまい、その声音を聞いた折本が怯えるのが視線の端に見えてしまうのだ。

 

毎回毎回会議が終わる度にサイゼで一色と魂が抜け切った顔で崩れ落ちるばかりの無意味な時間が繰り返される。このままでは不味い。

 

「せんぱい、早く来てくださいよー」

「ブイモン。ジュースあげるから」

「いやだぁ…………」

 

去年は城廻先輩とブイモンXだけが参加したのだが、玉縄達海浜総合側の意見で幼稚園や小学校も参加するにあたってパートナーデジモンが居る生徒は連れてくることが決まった。やけにこの件に関しては決めるのが早かった辺り、玉縄達が連れて来たかっただけじゃないかと疑いたくもなる。

 

なので仕方ない部屋の中で暇そうにしていたブイモンを連れて来たのだが、会議になんか出たくないと必死の抵抗の姿勢を見せられてはこっちも考えがある。

 

「…………えーっと。それが君のパートナーデジモン?」

「お気になさらず」

「え?」

 

ブイモンの首から下をカバンの中に詰め込み、逃げ出さないように机の上で監視する。逃げ出すにはカバンから脱走すると言うワンテンポが必要になるので、気がつけば居ないって展開にはならない筈だ。ルナモンがあげるって言ってたジュースを自分で飲んでいるのを恨めしげに見つつ、ブイモンは大人しくカバンの中で腕を組んで胡座を描いていた。

 

「ま、まぁパートナー関係は色々だよね?因みに僕のパートナーはコイツさ」

「…………どうもー」

「ネーモンか。現実世界じゃ初めて見たな」

「あー。昔、ボコモン博士の研究所で会いましたねー。別個体なのは分かってますけど」

 

モモヒキを履いた二足歩行の獣型デジモンのネーモン。いつも眠たそうな目をしているボーッとしたイメージのデジモンだが、玉縄のパートナーにしては意外だ。最も、このくらい玉縄の話をスルー出来る奴じゃなきゃ無理なのかもしれんが。

 

「…………私は特に何も言わないのでー」

「ネーモン、少しくらいはデジモン側としての意見を聞いておきたいんだけど」

「…………私が何も言わなくても大丈夫でしょー」

「そ、そうだね!わかったよ!!」

 

とりあえず一色達が海浜総合側にルナモンを紹介していくのを横目に、ネーモンのそばに立つ折本の足元にはパートナーデジモンがいない事に気づく。と言うか海浜総合側にパートナーデジモンが居るのが玉縄しか居ない。まぁテイマー支援制度のある総武高校が近くにあって、海浜総合に行くテイマーは少ないわな。

 

主に総武高校生徒会メンバーのパートナーデジモン紹介で話が進んでいく中で、俺とブイモンは若干の場違い感を感じていた。とりあえず軽い自己紹介は済ませたのだが、ブイモンを見てやっぱり折本が微かに顔を伏せた。

 

「じゃあこの感じならデジモン関連の話はこちらで進めておきますねー。元々この手の申請とかは私たちの得意分野なので」

「そ、そうかい?それならこの話は君たちにアサインだね!」

「…………ん?」

 

その時、やけにスムーズにこちらの意見に同調して来た玉縄に僅かな違和感を抱いた。これまでの玉縄なら、『そう言うわけにはいかないよ!リスクマネジメント的な観点から言っても、まずはより多くの意見を集めてからどちらがイニシアチブを取っていくかを決めようじゃないか!!』とか言い出すと警戒していたんだが。

 

一色も違和感を感じたのか、僅かに気色悪そうな顔をしていた。まぁ何度もこの手の申請はして来た俺たちに黙って任せてくれるのは正直言ってありがたいのだが。

 

ネーモンがそばに居るからか?いや、違うもしかしてこの感じは…………。

 

「あ、あのね、比企谷。それにブイモン」

「え?」

「お?」

 

玉縄の思考回路についてある種の閃きが走ったその時、不意に消え入りそうな声が俺の耳に入ってきた。振り向けば折本が微かに震えながら俺たちを真っ直ぐに見つめていた。

 

「話があるの。会議が終わったら、一緒に来て欲しい」

「…………そうか。分かった」

 

折本問題もそういえばあったな。確かにこのままじゃイベントの準備に支障が出てしまっている。その辺りは折本も分かっていたんだろう。ブイモンも一緒にいるし、良いタイミングなのかもしれない。

 

その後は結局、デジモン関連の仕事はこちらでやる事が決まった後はいつも通りの玉縄ブレイクダンス。一色のゲンナリした顔にはいい加減見飽きたが、俺としては僅かな光明は見えて来た。

 

「一色、来週には話進めるぞ。最終兵器投入する」

「え?もしかして…………」

「だけどその前に、折本と決着付けてくるわ。お互いケリ付けておかないとな」

「…………分かりました。ガツンと言って来てやってくださいよ。せんぱい」

「がんばれー」

 

ルナモンを抱きしめ、一色は微笑んだ。何度目かにはなるが、確かにコイツは可愛い後輩だとこの時は本気で思えた。

 

 

 

「ここでいいか?」

「…………え?サイゼ?」

「他に無いだろ?下手に誰かに聞かれる心配もなさそうだし」

「そ、そっかぁ。そうだよねー」

 

サイゼで折本とファミリー席に座る。いつもは一色と座っている席だが、折本とブイモンが居るだけでだいぶ違う印象を受ける。周囲は家族連れの騒がしさで、わざわざ聞こうとしない限りは俺たちの会話は聞こえないだろう。

 

とりあえずドリンクバーで三人分のアイスコーヒーを用意し、暫くは無言。ブイモンが待ちきれない様子でアイスコーヒーを飲み干し、ようやく折本が口を開いた。

 

「まずは、ごめん。ごめんなさい」

 

そりゃそうだろうなぁ、とは思う言葉だった。しかし折本としてはこの言葉を出すのにどれだけの時間と勇気が必要だったのかは、ポロポロと溢れる涙でなんとなくわかった。

 

「あの時、助けてもらったのは私なのに。貴方が何も言わなかったからってみんなに喋っちゃった。ああなるって分かってたから言わなかったんだって、ちょっと考えたら分かるのに」

「…………まぁ、その辺りは確かに。けど黙ってくれって頼んでもないしな。それにバレたらバレたで無難な対応が出来なかったのは俺の落ち度だしな」

「そんな事ない…………そんな事ないよ。始まったのも私のせいだし、私は止められる立場に居たのに何もしなかった」

「人間って面倒だなぁ…………」

 

中学時代の俺の立場って奴はかなり面倒だ。確かに折本があの時黙って居てくれたら、俺はただのボッチで終わって居ただろう。だけどあの場で折本に黙っていてくれと頼んだ訳ではないし、今から考えれば適度に話を合わせて自然にフェードアウトさせて行けば標的になることもなかっただろう。勿論、実行犯達が一番悪いが。

 

空のコップを弄ぶブイモン、半分くらいまで減ったアイスコーヒーを空にする俺。しかしテーブルを挟んだ向こうの折本のコップは減るどころか溶けた氷のせいで僅かに嵩が増していた。

 

「もう気にしてない…………いや、この場合は違うか?」

「俺に聞くなよー。八幡の問題だろ?」

「パートナーだろ」

「そのパートナーをカバンに詰め込んだのは誰だよ」

 

折本が目をハンカチで押さえている中で、俺とブイモンはどう声をかけるが正解なのかと頭を悩ませる。席のソファに背中をもたれかけさせ、頭の中でこう言う時の葉山の行動を思い浮かべる。それこそポケットから新しいハンカチを差し出して、背筋が凍るようなイケメン台詞を吐いてみせるんだろうか。

 

念のためにポケットを漁るが、出てきたハンカチは数週間は入れっぱなしのくしゃくしゃでとてもじゃないが泣いてる女子に渡せる物では無かったのでポケットに入れ直した。やはりここは俺の言葉で声をかけるべきなんだろう。

 

「…………そうだな。じゃああれか。うん。えーっと…………なんだ。そう、あれだ…………ゆ、許してる。とっくに」

「え?」

「ハッキリ言えよー」

「うるさいぞブイモン。誰かを許すなんて経験が無いんだ…………!!」

 

折本が困惑の表情を隠しきれていない様子で俺たちを見るが、困っているのは俺の方だ。

 

「謝られたからな、俺は許した。これで解決ってことになるんじゃ無いか?」

「え、でも、それじゃ…………」

「ここで終わりにしないと、収拾つかないだろ。折本が気がすむまで謝られたって俺が困るし、俺が何か要求したら折本も困るだろ」

「なに、それ…………それだけ?」

「それだけ。多分、仲直りってそう言うモンなんだろ?知らないけど」

「あ、あはは…………あはははは!なにそれ、ウケる」

「ウケるなって。対人経験が少ないんだよ」

「自業自得だよ」

 

ようやく折本の顔が綻び、ホッとしたのかアイスコーヒーを一気に飲み干した。そしてカランと氷が溶ける音がして、俺たちは改めてそれぞれ飲みたいドリンクを求めてドリンクバーに立ち上がった。

 

「正直言ってだけどな。俺は元々折本の事は特に恨んでも怒ってもなかったんだよな」

「え?」

「俺にとって折本は、まぁ別世界の住民みたいな感じだった。クラスの一番華やかな所で明るく笑ってる女子なんて、俺の人生には全く関わるはずが無い存在だったからな。クラスのマドンナ的存在って言ったって、外面が可愛いだけで棘だらけな奴らと一緒に冒険してたし」

「なにそれ」

「チクってやろ」

「やめろブイモン。まぁそんな感じで、俺としてはあの頃のクラスメイトなんて偶々一緒の教室にいるだけの他人でしか無かった。あの頃からずっと俺の仲間は、選ばれし子供達ちば組のアイツらだけだ」

 

軽食のフライドポテトを摘みながら、俺達はようやく普通の高校生らしい会話に花を咲かせていた。俺はちば組のメンバーについての話や、デジタルワールドを冒険していた頃の思い出話。そして折本は海浜総合に入学してからの思い出話。特に生徒会メンバーになってからの玉縄の面白エピソードなどだ。

 

「ま、そのせいで俺と葉山の二人で必死に土下座する羽目になったな。あの時の一色の蔑む視線は忘れられん。お二人とも、ずっと心の中で可愛い後輩を腹黒呼ばわりしてたって訳ですかー。へー。だってさ」

「あーウケる。やっぱりデジタルワールド帰りは思い出話が濃厚過ぎでしょ」

「笑える系のエピソードばっかだしな。八幡、この間の京都の話はしないのか?」

「え?あれか?」

「京都?確か、七大魔王が攻めてきて更地になりかけたのを現地に居たテイマー達が止めたって…………それ、比企谷達だったの!?」

「修学旅行でたまたまだな。デジモン関連の仕事には慣れてる訳だろ?」

「はー。納得…………ってヤバ、門限そろそろじゃん。比企谷、また来週ね」

「お、おお」

 

折本は最初に来た時とは違う、晴れ晴れとした顔で自分の分の会計だけを置いてサイゼを出て行った。ここは俺が出すつもりだったんだが、あそこまで慌てられては追いかけて金を返すわけにもいかんか。

 

「ま、これで良かっただろ?」

「だな。お前もこれで納得か?」

「…………まぁな」

 

本当なら返事が帰ってくる筈もないのだが、席を挟んだ向こうから予想通りの声が帰ってきた。

 

「い、いやー。予想外の修羅場に立ち合っちゃったかな?」

「だからスマホの録音機能を使えと言っただろう。翔」

「黙っててくんないかなー?」

「…………なるほどね。だから、隼人があそこまでフォローして回ってたんだ」

「壮絶な話だな」

「い、いやー。ちょっと興奮できない展開かなー。これは」

「あれ?予想より多いぞ?」

「俺が放課後に一人な訳が無いだろう?」

 

ドカドカとテーブルに入ってきたのは、葉山とワームモンだけでなく、戸部とコエモンに三浦とファンビーモンに海老名さんとリーフモンと中々に大所帯だった。

 

「いやあ、それにしても。あの頃からずっと仲間だって思って居てくれて嬉しいよ」

「少しは素直になったね、八幡」

「黙ってろ。別に仲間だってのは事実だろ。解散したのも含めてな」

「事実上の再結成状態じゃないか。新メンバーも含めて」

 

戸部と三浦に海老名さん、ついでにここには居ないが由比ヶ浜の事だろうか。葉山の満面の笑顔は正直言って物凄い腹立つので最後のポテトを口に入れるブイモンを抱えて立ち上がる。

 

「悪いが俺はやっぱりボッチが一番だって再確認出来た。これからもあんまり俺に関わるなよ、葉山」

「まぁ確かにまた修学旅行みたいなことが起きるとは思えないけどね」

「中々にそうはいかないのが世の中だよ!やはりこの世ははやはちの為に存在するんだよ!!また近いうちに二人がジョグレスする姿を私は見るのよぉっ!!」

「姫菜、擬態しろし」

「お、落ち着いてくれぇー!」

 

サイゼを赤く染める海老名さんから逃げるように、俺はブイモンと一緒に会計を済ませてその場を逃げ去るのだった。

 

「さてと。後は野となれ山となれ、か」

「んあ?そういえば最終兵器投入とか言ってたけど、なにするんだ?」

「そりゃ、最終兵器は最終兵器だろ」

 

 

 

翌日の放課後、俺は奉仕部の部室に居た。依頼人席座り、物凄い微妙な顔をしている二人を前に頭を下げる。

 

「すみません、クリスマスイベント手伝ってください…………」

「次に来るときは告白の返事をしに来る時だと思ってたよ…………」

 

由比ヶ浜の呆れ果てた声と、もはや言葉もないと言わんばかりにため息を吐く雪ノ下を前に、返す言葉も無い俺はただただ頭を下げ続ける事しか出来なかったのだった。




次回でクリスマス編決着予定。つまりはどちらかを選びます。
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