やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。   作:アルファ麻呂

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最終章第一章です。

言い訳ですが、スマホで執筆してるんですよね。で、そろそろ買い替えの時期が来てるんですが、この間偶然にも落としてしまったら画面がバキバキに割れてしまって。画面直すにももうすぐ買い替えだから待ったほうがいいと言われてバキバキの画面で執筆してるんですが、触ったはずのところに反応しないわ、文字が見にくいわでめちゃくちゃ面倒でした。

早めに買い替えようかなぁ


第二十六話

クリスマス翌日。それは冬休み初日と言う至福の時を噛み締めるべき日だ。

 

世のリア充どもは今頃ウェイウェイとターンアップする勢いで叫びながら今頃遊び歩いている頃だろう。しかしそれは間違いだと俺は確信している。何故なら冬休みは夏休みと比べて圧倒的に日数が短いからだ。

 

まだ学生の身分故に学校にも行かずに家に合法的に篭れる事がどれほど貴重な時間であるかを考えれば、冬休みと言う限りなく短い長期休暇を友達付き合いなどと言う幻想の為に無駄にするなんてもったいないお化けが出ると言うもの。

 

なので俺はスマホの朝を告げるアラームを切り、再び枕に頭を押し付ける。ブイモンが専用のデジモン用ベッドから起き上がって俺をみて、何やらため息に近い音を発して部屋を出ていくのを見送りつつ目を閉じた。

 

「こぉんのぉ!!ゴミぃちゃんがぁー!!」

「グアエェッ!?」

 

そして扉をこじ開けて入ってきた小町とシャウトモンのダブル地獄の断頭台が炸裂した。

 

 

「ゴミぃちゃんはさぁ。雪乃さんに由比ヶ浜さんの二人に告白されたんだよね?で、昨日色々あったけどそれは置いておくとして、由比ヶ浜さんの事好きだって本人に言ったんだよね?」

「…………はい」

「はいそこでブイモン睨まない。クリスマスまでに返事するって宣言したの知ってんだからね。つまりは由比ヶ浜さんと相思相愛。要するに今日は恋人同士になった次の日だよね?」

「いやまぁそれはそうだけどな」

 

とりあえず何かしらの言い訳をしようとしたが、小町が無言でアイコンタクトを送るとブイモンとシャウトモンが俺の頭にヘッドフォンを取り付けた。

 

「俺の魂のシャウトを聞けぇーー!!」

「うぇぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ただでさえ煩いシャウトモンの叫びを機械で増幅されたモノがヘッドフォンから耳に直接流し込まれて思わず絶叫する。我が妹よ、それは国際法で禁止されている拷問の一つではなかろうか。

 

耳がキンキンするせいでまともに正座する事も出来ずに蹲る俺を無理矢理また正座させるブイモン。この野郎、散々から思ってきたが本当にそれでも俺のパートナーか。

 

「それで?何かやらなきゃいけない事あるんじゃないの?」

「…………とりあえずこの拷問から回復する時間をくれ…………」

「シャウトモン。やれ」

「ちょっと待って!お願い小町ちゃん!!それお兄ちゃん的にポイント低い!!」

「小町的にはもはやポイント没収レベルなんだよね」

「八幡。いい加減に素直になれよ。これ以上拷問されたくないだろ?」

「俺のシャウトを拷問に使うなんて酷い事、これ以上させたくないだろ?なんやかんやで家族じゃねえか俺たち」

「なんだこの陥落させられるスパイみたいな展開…………」

 

普段は優しく接してくれる小町に冷たくされて、普段冷たいと言うか雑に扱ってくるブイモンとシャウトモンにちょっと優しくされて情緒がぐちゃぐちゃにされてしまう。しかもここで陥落しなければシャウトモンの最大音量を脳に叩き込む拷問が再開されてしまう。

 

「…………何をすれば良い?」

「とりあえずデートの約束取り付けなよ。ゴミぃちゃんの方からね」

「はい…………」

 

お兄ちゃんの尊厳もへったくれもないが、とりあえず小町の言う通り部屋までスマホを取りに戻る。が、その時家のインターフォンが鳴った。窓から外を見ると、由比ヶ浜がブルコモンと一緒に家のインターフォンを押している所だった。

 

「小町に殺されるな…………」

 

とりあえずパジャマは不味いかと慌てて外行き用の服に着替えてリビングに降りると、小町はリビングで腕を組んで半眼で睨んで待ち構えていた。その後ろの由比ヶ浜は曖昧な顔で微笑んでいて、シャウトモンとブイモンがさっきの拷問用のヘッドフォンを再調整していた。

 

「小町は由比ヶ浜さんが義姉ちゃんになってくれて嬉しい気持ちと、このゴミぃちゃんにこんないい彼女さん勿体ないって気持ちがごっちゃになってコントロール出来ないよ…………」

「返す言葉も御座いません…………」

「あ、あはは。私は良いよ。だって、そんなヒッキーの事が好きになったんだもん」

 

微かに顔を赤らめた由比ヶ浜の破壊力に小町が悶絶し、俺も釣られて赤くなった顔を背けて誤魔化した。

 

「と、とりあえず。その、だな。ここに居るのもアレだし…………その…………」

「デート?」

「あ、はい…………」

 

思ったよりグイグイ来る由比ヶ浜にちょっとたじろぎつつ、いつの間にやらブイモンが部屋から財布を持って来たのでこのまま家を出る事になった。小町のヘタを打てばまた拷問だぞ、と言う視線に負けて追い出された訳ではない。断じて違う。単に由比ヶ浜にエスコートされてしまっただけだ。余計情けない気はしなくもないが。

 

とりあえずららぽを目指して歩きつつ、無言の俺たちを見て俺の足元に着いてくるブイモンと、由比ヶ浜の胸の中のブルコモンがニヤニヤと笑っていた。

 

「良かったね、結衣。昨日ずーっとニコニコしてた!大好きな八幡にやっと振り向いてもらえたって!!」

「ぶ、ブルコモン!」

「こちとら布団の中で奇声を発して悶えまくってたんだぜ?可愛いモンだろ?」

「おいこらブイモン…………」

 

慌ててブルコモンの口を塞ぐ由比ヶ浜と、ブイモンの頭にアイアンクローを叩き込む俺。邪魔したいのかケツ叩きたいのかどっちだ。

 

「ったく。そう言えば前に一色が小町と一緒になって本命デートの時にパートナー連れてくかって雑誌の記事見てぼやいてたな…………連れてかないって方が多数派だったっけな。こうして茶化して来られると納得する」

「へー。そんな記事あったんだ。でも、連れて行かないって選択肢は無いと思うんだけどなぁ。ねー、ブルコモン」

「うん!結衣と一緒に居たいし、結衣が一緒に居たい人と僕も一緒に居たい!」

「俺は小町に報告義務あるしな」

「帰れ!!」

 

余りにもパートナー甲斐の無い言動に思わずブルコモンの爪の垢を煎じてそのままブイモンも一緒に煮込んでやろうかと思ってしまうが、ここでいきなりバイオレンスな方向に走っては世間体が悪すぎる。後でこっそりマッカンの布教も兼ねて冷蔵庫のブイモン用のペットボトルの中身をすり替えておくか。

 

しかしながらこのデート、今更ながら一体何をすれば良いのか全く分からん。ららぽを目指して居るのもあくまでとりあえずの行き先に過ぎず、こんな調子ではお互いにとって有意義な時間とは言えないのでは無いか。

 

「やっぱり俺に由比ヶ浜は不相応な気がして来た…………」

「あれ!?一瞬目を離したらヒッキーがネガティブモードになっちゃった!?」

 

別に身内贔屓と言うわけでは無いのだが、客観的に見て由比ヶ浜は総武高校二年の中でもトップクラスに可愛いと思う。と言うか総武高校自体が顔面偏差値高めなので必然的に千葉でもトップクラスの可愛さだ。そこに加えてかつての選ばれし子供達ちば組の様な苛烈なキャラでは無く、裏表の無い優しさまで持っている。

 

対して俺はパートナーのブイモンを連れていることを除けば、目の腐ったどんよりとしたオーラの比較的近寄り難いタイプのボッチ。顔はまぁ目の腐り具合を除けば悪く無いはずだが、由比ヶ浜と釣り合いが取れるレベルだなんて自惚れてはいない。

 

「とりあえずさ。今日のところは小町ちゃんにも頼まれたし、ヒッキーの外行き用の服見ようよ。丸々コーディネートとまでは言わないからさ」

「お、お手柔らかにお願いします…………」

「見ろよブルコモン。もう頭上がんないんだぜ。ああ言うのをなんて言うか知ってるか?」

「知ってる。確か…………ダメンズウォーカー!」

「ちょっと!!ブルコモン!!」

 

ららぽに到着と同時に大声でとんでも無い事言ってくるブルコモンに由比ヶ浜が腰に手を当てて叱り付ける。まぁあんな色々あってからのデート初日にダメンズウォーカー呼ばわりは…………うん。俺が世間一般的にはダメンズ扱いなのは何となく分かる。

 

しかしいつまでも恥ずかしがっていても仕方ない。世間からの冷たい視線や、初めて入るような服屋の店員の疑いの目線に耐えながら幾つかの服を買い、やがて春の時間にフードコートに辿り着く頃には俺の両腕はすっかり袋で塞がってしまっていた。

 

「あはは。買いすぎちゃったね。でもヒッキーほんとにお金持ってるねー」

「最近暴走デジモン案件めちゃくちゃ多かったからな。おまけに究極体ばっかりだったし、暫くはスカラシップ錬金術も必要ない」

「すから、湿布?」

「…………いや、ツッコミ入れるのは止そう」

 

スカラシップ錬金術の話は由比ヶ浜の目の前でしたと思うのだが、考えてみれば川崎のバイト騒動はもう半年近く前の話だ。更に言うなら行方不明になっていた戸塚のロップモンが究極体になって暴走して帰って来たのも同じくらい前の事。色々あり過ぎて随分と長く感じる。

 

「そー言えば八幡。前にもこの椅子座った気がするんだけど」

「え?あー…………アレだな。雪ノ下と由比ヶ浜の誕生日プレゼント買いに行った時にもここに座った気がする」

「ふ、ふーん。ゆきのんと…………」

 

微かにジト目になる由比ヶ浜。いや待てそんなロマンチックな話でもないし、そもそも由比ヶ浜の誕生日プレゼント買いに来ての話だってたった今言っただろ。

 

って、そう言えばその時は雪ノ下と買い物に行ったら、そこで陽乃さんと出くわして散々から絡まれたんだった。

 

「あれー?比企谷君じゃん!」

「げっ…………また陽乃さん…………」

「またって何?ってガハマちゃんじゃん。まさかデート?」

「あ、あはは。そんな感じです」

「え?…………冗談のつもりだったのに…………」

 

ここに来て陽乃さんの目がキラリと光り、ビクッと肩を震わせたブイモンが俺が止めようとするのを無視して陽乃さんに全部説明してしまった。当然、陽乃さんは暫く呆気に取られた顔をしていたが、やがてしたり顔で俺と由比ヶ浜の肩を軽く叩いて来た。

 

「成程ねぇ。まぁ良いんじゃ無いのー?おねーさんとしては可愛い可愛い雪乃ちゃんを選ばなかった比企谷君を二、三時間ほど問い詰めたい気持ちはあるけど、今の私は結構機嫌が良いから許してあげるよ」

「え、ええ?」

「機嫌が良いって…………凄い嫌な予感がするんですが…………」

「んー?聞きたい?しょーがないなー」

 

別に聞きたいとは一言も言っていないのだが、陽乃さんはニコニコ笑いながら上着の左裾を捲り上げる。そこには戸部や海老名さんと同じタイプのデジヴァイス、バイタルブレスが装着されていた。

 

「バイタルブレス?結衣、これアクティブ状態のデジヴァイスだ」

「って事は、陽乃さんもパートナーが出来たんですか?」

「そーそー。ようやくだよー。紹介するね?私のパートナーのリリスモン」

「宜しくね。坊や達」

「はいぃ!?」

 

陽乃さんがバイタルブレスを操作すると、透明化していたらしいリリスモンがいきなり姿を現した。

 

「な、七大魔王のリリスモン!?いやいやいや!!」

「京都に出たリリスモンは、川崎さんとガイオウモンが倒したって聞いたよ!?」

「私がそのリリスモンよ。あの子達に負けて、消えかけてた時に陽乃と出会ってね。力の殆どは無くしちゃったけど、デジタマにすら戻れずに消えるよりかはマシでしょ?」

「まぁ変な悪さは私のパートナーならさせないし、普段は余計なトラブル防止に透明化させてるしね」

 

言葉すら失って開いた口が塞がらない俺と由比ヶ浜を他所に、透明化したリリスモンをバックにニコニコ笑う陽乃さん。と言うか変な悪さはさせないと言っているが、変じゃない悪さはさせる気じゃないだろうか。割と密かに悪事を働かせたら最上位クラスのデジモンだぞ。

 

「うんうん。最高のリアクションありがとうね。これから雪乃ちゃんに会って紹介してあげようと思ってたんだけど、これは雪乃ちゃんのリアクションも期待できるかな?」

「…………ゆきのん、相当驚くと思います…………」

「お手柔らかに…………」

「昨日初恋破れて失恋したばっかりの雪乃ちゃんが元気になると良いなー」

 

心にもなさそうな事を言いながらも、それはそれとしていつの間にか用意していたドーナッツを空中に差し出した陽乃さん。するとドーナッツは透明化していたリリスモンが受け取ったらしくフッと消えてしまった。

 

「それにしても、良くあの雪ノ下家でパートナーが出来ましたね。特におばさんは雪ノ下が家出するくらいにはデジモン嫌いでしたよね?」

「そりゃー、出来ちゃったもん。仕方ないじゃない?」

「酷い言い方だ…………」

 

あっけらかんと言い放つ陽乃さんにドン引きする由比ヶ浜。ただ、雪ノ下家のデジモン嫌いを知る俺としては、陽乃さんのこの言い方からは想像もつかないくらいのトラブルになった事は想像に難くない。

 

しかしパートナーがリリスモンという事は、何かしらの洗脳じみた事をしている疑惑が俺の中では消えなかった。しかし深くは突っ込むまい。君子危うきに近寄らず、とはよく言ったものだ。

 

「まぁそれはともかく、デートの邪魔したお詫びもかねて、せっかくだからこれあげるね?」

 

そう言って陽乃さんは財布から千葉県にある日本有数の大型テーマパークのチケット、しかも一日フリーパスの奴を二枚机の上に置いて来た。

 

「え?これなんで持ってるんですか?」

「元々はお姉ちゃんにパートナーが出来た記念に雪乃ちゃんを誘ってあげるつもりだったんだけど、君たちに渡した方が有効活用出来そうだったからね」

 

そう言って可愛らしくウィンクし、陽乃さんはバイタルブレスを付けた手を振って立ち去っていった。これから恐らく雪ノ下を煽りに行くのだろう。

 

「…………ゆきのん、大丈夫かな?」

「まぁ胸とパートナーデジモンでマウント取り合って来た姉妹だからな。スサノオモンとリリスモンでどっちが上かで戦争するんじゃ無いか?」

「雪乃のマンションが跡形も無く壊滅するんじゃね?それ?」

「究極体って凄いんだね。僕もそろそろ成熟期に進化したいなあ」

 

ブルコモンだけがのほほんとしていたが、俺たち全員はこれから起きるであろう雪ノ下姉妹による最終戦争の勃発の予感に震えることしかできなかった。

 

 

「ふ、ふふふ。可愛い。にゃー、にゃー」

「かー君。逃げちゃダメ」

「我慢だ。もうちょっとだけだからな!」

 

八幡達がららぽで陽乃と遭遇した頃、雪乃は比企谷家に居た。八幡達が出掛けた後に雪乃に連絡を取り、カマクラで釣って雪乃を比企谷家に呼び出す事に成功したのだ。生贄にされてしまったカマクラの余りにも悲痛な顔は、普段はいがみ合ってばかりのシャウトモンすら励ますレベルだったが、雪乃は我関せずと言った様子でカマクラの全身を撫で回すばかりだった。

 

「カマクラちゃんかわいそー。雪ノ下先輩、そう言う時は猫ちゃんにストレスにならないよう適度に休憩を挟むとか…………」

「一色さん何を言っているのかしら?私はカマクラちゃんの体力を鑑みて、重点的に撫でる箇所を分ける事で対処しているわ」

「へ、へー」

「いろは、もう何を言っても無駄。カマクラはもう助からない…………」

 

そしてもう一組、いろはとルナモンも比企谷家に居た。八幡が暫くは戻ってこないので、この隙に結果的にではあるが恋心が成就しなかった二人に小町は声をかけていた。正直言って結構性格悪いやり方かもしれないが、一応はかつて一緒に冒険した仲。出来る事ならここから先も付き合って行きたい二人だ。これから先の関係性については出来れば話し合っておきたかった。

 

「まぁ小町ちゃんとしては気になるよね。私たちの気持ち」

「はい…………小町的にはこれからも仲良くさせて欲しいですし、あのごみぃちゃんとも友達で居てほしいって思ってはいるんですけど…………」

「大丈夫よ。私は由比ヶ浜さんの事は一番の友達だと思っているから」

「あ、せんぱいはこれから先も生徒会の仕事はどんどんやってもらう予定なのでー」

「あ、あれ?」

 

小町の中にあった不安、それはここから八幡と結衣の関係が深まっていくにつれて、雪乃といろはの二人が離れていく事だった。良くあるありふれた話だし、実際自分をフッた男が友達とイチャイチャラブラブしていれば良い思いはしないだろう。

 

だが、二人ともはそれはそれであっけらかんとした態度だった。既に半分諦めていたいろははともかく、雪乃すらも昨日フラれたばかりとは思えないくらいには落ち着いていた。

 

「小町さんが不安になるのは少し分かるわ。昔のちば組が解散した時、私たちは何も出来なかった。色々な理由が複雑に入り混じっていたけれど、最大の理由はやはり中学生に上がった事で…………私や一色さん、それに川崎さんもかしら。彼を異性として意識していたのに、そこから目を背けていた事よ」

「…………ですよね。関係が仲間から恋人になるって事を、私たちは嫌がっちゃってた。その癖、せんぱいへのアピールは気がつくとやっちゃってて。そりゃ、せんぱいも嫌になりますよ。そんなの、本物の関係じゃないですもん」

 

関係を変えたくないのに、変わりたい。それがあの頃のちば組に蔓延っていた。きっとどこかで八幡が三人の内の誰かに距離を詰めて来たら、そんなつもりは無かったみたいな言い訳をしてしまったかもしれない。

 

「きっと本物の関係って、誰と誰が付き合うとかみたいな程度の事で崩れる様な物じゃない。確かに私は彼に手を取ってもらえなかった。だけどそれを恨むような事もないし、由比ヶ浜さんを妬むような事もないわ」

「それに、なんやかんやで昔のちば組のメンバーから選ばれなかったのも良かったって気もするんだよね。なんか、ようやくちば組の解散式が終わったって感じがする。ここから新しい関係が始まるんだって思えるから」

 

最初に小町が淹れたコーヒーを飲みながら、本心からスッキリした顔で笑う雪乃といろは。その姿に小町も思う見惚れてしまい、この二人をフッてなお彼女を作れた兄の恵まれ具合に内心ちょっとイラッとしてしまった。

 

「…………ちょっと皆さんの絆を甘く見てましたね」

「この半年以上、本当に色々あったもの。デジタルワールドを冒険していた頃と同じくらいに」

「うん。今度は間違えずに新しい関係を作れたと思う」

 

ルナモンとシャウトモンがようやく雪乃の膝の上から救助されたカマクラにミルクを飲ませているのを遠目に眺めつつ、小町もようやく選ばれし子供達ちば組と言う枠組みから解放された様な気分になれた。

 

もうあの頃の思い出に頼らなくても、今ここにある絆は消えたりしないのだ。

 

「…………それはそれとして余り私達の前で不愉快な言動が多ければ比企谷君を粛清するけれど」

「ですね。ほんとどうしてくれようかなー。ルナモンと一緒にいざって時は死なない程度に痛めつける準備もしないとねー」

 

 

 

「だいぶ日が暮れて来たな…………」

 

ららぽの買い物を終え、とりあえずスマホをチェックして、デジモン同士の決闘で街が吹っ飛ぶと言うニュースは今のところ入っていない事を確認して全員で安堵のため息を吐きつつ薄暗くなって来た帰り道を並んで歩く。

 

両手に抱えた買い物袋の重みと慣れない一日仕事に足が棒になりそうだったが、これ以上情けない姿を見せるわけにもいかない。せめて由比ヶ浜を家まで送り届けるまでは足を止められないだろう。

 

由比ヶ浜はブルコモンを抱いていて、ブイモンは疲れた顔で俺の後ろをトボトボと着いてくる。

 

元々話題が少ない事もあって、ららぽを出た辺りからお互いに無言のままで非常に気まずい。これが一応は初デートになるのだろうが、間違いなく大失敗だろう。

 

「…………なんか、悪いな由比ヶ浜」

「え?」

「あんまり分からないんだよ。リア充みたいなこういうのは」

 

もう間も無く由比ヶ浜の家が見えてくるくらいで、俺はついに思わずそんな事を口にしてしまった。しかし、由比ヶ浜はキョトンとした顔で振り向いて来た。

 

「なんで謝るの?私は楽しかったよ?ヒッキーと一緒に居れて」

 

一才の誤魔化しやおべっかの色のない、本心からの言葉。しかしそれが余計に今の俺の情け無さを抉ってくる。ブイモンの目もずいぶん冷たいし、ブルコモンもどことなく腐った目つきだ。

 

「ねえヒッキー。ちょっと公園に寄らない?」

 

由比ヶ浜はそう言って、少しだけ広めの誰もいない無人の公園に足を向けた。ベンチにブルコモンを置いてその隣に座り、ブルコモンとは逆隣のスペースを開けた。ここに座ってほしいと言う事なのだろう。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。飲み物買ってくる」

「あ、うん。待ってる」

 

しかしすぐに座れるほどの度胸はない。とりあえず買い物袋を置いて自販機に走る。ホットミルクティーと、マッカンが無いのでホットの缶コーヒーを買う。

 

「なぁ八幡。人間同士のレンアイって奴はよくわからないけどさ。これってかなりのチャンスじゃね?」

「何のチャンス?チャンスってなんだよ?俺、どうすれば良いんだよ?」

「デジモンに聞くなよ」

「だよなぁ…………」

「まぁ、背中は押してやってるじゃないか。頑張れ八幡。あそこまでベタ惚れされてりゃ多少のミスは目を瞑ってくれるらしいしな」

「それ背中押してるって言わねーだろ」

 

ブイモンのいつも通りのパートナー甲斐のない言動にげんなりしつつも、ちょっとだけ平常心を取り戻せた。とりあえずブイモン用にリンゴジュースを買って投げ渡し、ブルコモン用に葡萄ジュースを買って由比ヶ浜のところに戻る。

 

「ほれ。買って来た」

「ありがとね、ヒッキー」

「ありがとー」

 

そして由比ヶ浜の隣に座り、二人と二体で飲み物を飲む。間違えてブラックコーヒーを買ってしまったが、今ばかりは味すら分からない。

 

「ねえヒッキー。私ね、今日本当に楽しかったよ。ドラマみたいなロマンチックなデートもしてみたいけど、一緒に居られるだけでも十分楽しいの」

「ほ、本当かそれ?」

「ヒッキーは楽しく無かった?」

「楽しいとか楽しくない以前に、どうすれば良いのかわからないんだよ」

「それなら、これから一緒に色々試していこうよ。私達で」

 

ブイモンもブルコモンも黙って俺たちの会話を聞いているらしいが、そんな事気にならないくらいには由比ヶ浜のはにかむ笑顔に吸い込まれそうになっていた。

 

由比ヶ浜は俺の手を取り、ちょっとだけ腰を浮かす。顔が近づいて来た事で一気に俺の顔が熱くなるのを感じてしまい、身動き一つ取れない俺を見て由比ヶ浜はやがて声を上げて笑い出した。

 

「あはは。ヒッキー顔真っ赤!」

「し、仕方ないだろ」

「ふふ。じゃあ今日はここまでにしよっかな。このチケット使う時は、続きまで出来たらいいな」

 

そう言って由比ヶ浜は唇に指を当てた。その仕草でようやく俺は、由比ヶ浜がキスをしようとしていた事に気がついた。

 

「わ、悪い!」

「大丈夫だよ。やっぱりヒッキーはこうじゃなきゃ、ね?」

 

マジで小悪魔な由比ヶ浜にノックアウト寸前の俺を見て、ブイモンとブルコモンがニヤニヤと笑う。もうこれ以上情けない姿を見せるわけにもいかない俺は、誤魔化すためにも陽乃さんから渡されたチケットを確認し始めた。

 

「…………どうする?俺はいつでも行けるから、由比ヶ浜の予定に合わせるわ」

「本当?なら、大晦日に観覧車のライトアップが特別仕様になるって聞いたし、その日に行こうよ!」

「…………混みそうだな」

「それが良いんだよ!じゃ、約束だよ。ヒッキー」

「ああ。大晦日だな」

 

こうして俺の初デートは終わり、由比ヶ浜を家の門の前まで送って帰宅した。その道中散々からブイモンに揶揄われ、家に帰れば小町に散々から叱られた。

 

後になって思えば、この時もう少し勇気を出せていれば、何かが変わったのかもしれない。しかしだからと言って発生確率一千億分の一以下の確率を引き当てている事など、神様ではない俺には分かるはずもなかった。

 

 

「うう…………」

「…………ブルコモン?」

 

夜、風呂から上がった結衣が部屋に戻るとブルコモンの様子がおかしかった。全身から微かに赤い光を放ち、デジヴァイスも振動を始めていた。

 

「もしかして、進化!?」

 

デジヴァイスの画面に1と0の数字が流れ始め、ブルコモンの身体を白いデジタマの様なデータが包む。しかしその時、1と0の数字の中にたった一つだけ2が混じっている事に、結衣もブルコモンも気がつかなかった。

 

「ブルコモン進化!!メイクーモン!!」

 

デジタマ型のデータの中から現れた成熟期デジモンは、氷属性の竜型デジモンであるブルコモンの進化形態としては不自然な、猫のような獣型デジモンのメイクーモンだった。




最終章はメイクーモン関係のお話。即ち、以前にも書いた通りの僕の考えたデジモンアドベンチャーtriを俺ガイルキャラでやる形になると思います。

もしかしたら普通にデジモンアドベンチャーの二次創作でやれよと言われるかもしれませんが、その辺りはご勘弁を。
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