やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。   作:アルファ麻呂

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まさか色が付くとは思ってもみませんでした。皆さん本当にありがとうございます。

と言う訳で続きです。


第三話

「そうか。やっぱり結衣がパートナーを手に入れたのは君達のお陰だったのか」

 

自販機の前、マックスコーヒーの缶を傾けつつ、訳知り顔の葉山を睨む。

放課後の部活時間、奉仕部に向かう前の最後の安らぎの時間を求めて自販機に向かうと、何故か今日も葉山が待ち構えていた。

露骨に嫌そうな顔をされても気にせず距離を詰めてくるこの感じは、小学生の頃は無かったなとふと不思議に思いつつ、空になったマックスコーヒーの缶をゴミ箱に投げ捨てる。

 

「別に俺は何もしてないぞ。パートナーの事はアイツ自身の問題だろ」

「でも、周りのみんなの影響で自分自身が成長する。それは俺たちが一番良く知ってる事じゃ無いか。君は今も、周りのみんなに影響を与えているんだよ」

「…………相変わらず気持ち悪いこと言う奴だな。そっち方面のケでもあるのか?」

「違うよ」

 

爽やかな笑顔に余計と嫌な予感を感じ、思わず後ずさる。葉山はその様子に首を傾げる。

 

「大体、今更お前が俺に付き纏う理由なんて何処にあるんだよ。もう一度言っとくけどな、選ばれし子供たちちば組はもうとっくの昔に解散したんだ。それを一々一々…………」

「そうさ。でも、雪乃ちゃんとは新しい関係を築いた訳じゃ無いか。なら、もう一度俺とも…………」

「一生あり得ないな」

 

それだけ言い残して部室へ向けて歩き出す。

葉山は肩を竦め、やがてグラウンドへ歩き出す。

 

そんな二人の様子を、金髪の女子が鋭い目つきで見つめていることに、二人は気付かなかった。

 

 

葉山に捕まっていたせいで部活時間が始まってからだいぶ経ち、また雪ノ下から嫌味を言われると思いげんなりしつつ奉仕部に向かう。

しかしだからと言って早足になる事は無い。ゆっくりと、自分のペースで歩いていく中で、やがて辿り着いた奉仕部に部室前で、雪ノ下と由比ヶ浜が部室の扉から中の様子を伺っていた。

 

「お前ら、何やってんの?」

「あ、ヒッキー!」

「遅いわよ。比企谷君、中に不審者がいるのだけれど」

「不審者?」

 

雪ノ下に促されて部室の中の様子を伺う。

そこに居たのは、まぁそれなりには見覚えのある輩だった。

もうそろそろ暖かい気温にも関わらず分厚いコートを羽織り、ただでさえ肥満の体がさらに肥大化して見える、もう近くだけでむさ苦しい男子。

そいつが部室の扉から様子を伺うこっちに気づいた。

 

「ふっふっふ。待っていたぞ!比企谷八幡!!」

「人違いです」

 

ピシャリと扉を閉め、部室に背を向けた。

 

「今日は部活休みにしようぜ。なんか知らない奴が部室使うみたいだし」

「え?でも、今ヒッキーの名前読んでたけど…………」

「ま、待って!待ってハチエモーン!!」

「…………比企谷君に依頼みたいね。比企谷君、彼を引き取ってもらえるかしら」

 

飛び出してきたデブがしがみ付いてくる。

それを見た雪ノ下と由比ヶ浜が露骨に距離を取る中、しかしこっちも逃すまいと二人を睨む。

 

「おい、材木座。お前、一応奉仕部に依頼に来たんだよな?」

「ケプコンケプコン。その通りだが、我はその様な名前では無く、我は剣豪将軍…………」

「依頼だよなぁ?材木座」

「はい…………」

 

やけにテンション高かったにも関わらず、多少凄まれただけで一気に腰が低くなる男、材木座義輝は、奉仕部の依頼人席に座る。

俺が露骨に嫌そうにしていると、雪ノ下は戸惑いと若干の怯えを滲ませ、そして由比ヶ浜は首を傾げていた。

 

「比企谷君。で、結局彼はなんなのかしら?」

「こいつは材木座義輝。見ての通りの厨二病で、まぁ不本意ながら知り合いだ」

「不本意ながらって…………」

「見損なったぞ八幡!我との宿命の戦いを忘れたとは言わせんぞ!」

「体育の授業で2人一組の時に組めるのが俺しか居ないだけだろ」

「げふぅっ!?」

 

ごく当たり前の事を言っただけなのだが、材木座は血を吐く様なリアクションを取って椅子から転げ落ちる。

 

「ちゅ、ちゅーにびょう?ゆきのん、ちゅーにびょうって何?」

「由比ヶ浜さん…………その、説明しづらいわね。まぁ、そこに居る彼みたいに現実が見えて居ない人の事、かしら」

「ごぶっ!!」

「あれだな。コイツは下の名前が義輝だから、実在した将軍の足利義輝に自分を投影してるんだろ。現実は見たまんまの暑苦しいデブだが」

「ギャフン!!」

「あ、ギャフンって言う人初めて見た!!」

「色々と珍しい人ね…………」

 

かと言って関わり合いになりたくは無い。

雪ノ下は流石にそれは口に出さなかったが、明らかに心のうちでそう言っていた。

そして暫く材木座が落ち着くまで待ち、俺達は材木座がカバンから出した原稿用紙の束をそれぞれ目の前に置いていた。

 

「依頼と言うのはだな、我が書いたこの小説の感想が聞きたいのだ!」

「嫌だよ。普通にネットに上げて不特定多数の評判聞けよ」

「無理だ。奴らは遠慮と言うモノを知らんからな。それこそ目も当てられない悪評が届いてみろ、我の心が死ぬぞ」

 

自信がないから、取り敢えず知り合いにオブラートに包んだ感じで評価して欲しいと言う事らしい。

ただ、雪ノ下は間違いなくオブラートには包んでくれないのは確かだが、残念なことに材木座はその事に気付いていない様子だった。

 

「この依頼、断っていいか?」

「ダメよ。曲がりなりにも奉仕部に持ち込まれた依頼だもの」

「だがなあ。もう最初の数行で目眩して来たぞ」

「私はこのタイトルの時点で、何故かしら、小説というものに対する冒涜を感じているわ」

「既に2人とも酷い!?」

 

由比ヶ浜のツッコミもそこそこに、一応は材木座の小説を読み始める俺と雪ノ下。

材木座も微かに不安げな顔ではあったが、また明日感想を聞きにくるとだけ言い残して部室を去っていった。

 

 

 

「でー?それがこの小説?」

 

げっそりした顔で机の前に座り、原稿用紙を破り捨てたい衝動を必死に堪える俺の頭の上によじ登りつつ、ブイモンが原稿用紙を覗き込み、やがて興味を失ったのかベッドの上に飛び降りた。

 

「奉仕部ってのも大変だなぁ。そんな事までしなきゃいけないなんてさぁ」

「そう思うんなら、代わりに読めよブイモン」

「やだ」

 

それだけ言い残してブイモンは丸まって目を閉じる。

当て付けかこの野郎と、睨むが、ブイモンを睨んだところでこの原稿用紙の束が減るわけでもなく。

文章を読んでいるつもりなのに、自然と目が滑る。

なので読み飛ばしてしまった文を読み直さなければならないので、必然的に時間がかかる。

残りの原稿用紙の枚数を数えれば、絶望的な気持ちになった。

果たして、今夜は眠ることが出来るのだろうか。

多分無理だな。

そう思いつつ、マックスコーヒーの缶に手を伸ばす。

 

そして、夜が明けた。ブイモンが目を開け、ベッドの上で大きく伸びをする。

 

「んんーっ!よく寝たぁ…………ってあれ?八幡?」

 

そして目を覚ましたブイモンが見たのは、ブイモンが寝る前と全く同じ体勢で原稿用紙を握り締める八幡だった。

 

「は、八幡?大丈夫か?おーい?」

 

返事は無い。ブイモンが机によじ登り、パートナーの顔を覗き込む。

そして、真っ赤に充血した目と、もはや生きているとは思えない程の蒼白な顔色に、思わずブイモンは悲鳴を上げた。

 

「ぎゃあああああああああああああああ!!ゾンビだぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

「おはよー…………って、うわ、ヒッキー…………凄い顔してるよ。なんか、まるで、ゾンビみたい」

「ブイモンと同じ事言うんじゃねえよ…………」

 

やっとの思いで登校して下駄箱で靴を履き替えていると、後ろからやけに元気な声が聞こえて来た。

若干うんざりしながら振り向くが、そんな俺の顔を見て、由比ヶ浜が思わず知らず一歩後ずさっていた。

そんなに酷い顔しているのか、と窓ガラスの反射で確認する。

別に、ちょっと顔色が悪いだけで普通だと思うんだが、ブイモンだけでなく、小町とシャウトモンまで悲鳴を上げて近寄らなかった辺り相当なのは何となく分かってはいた。だが…………

 

「お前、材木座の依頼の小説読んだのか?」

「え?小説?あ、あー…………」

 

完全に忘れてたらしき由比ヶ浜が、曖昧な顔で笑いながら足早に立ち去っていく。

逃げたな、とその背中を睨みつける。

 

「ねえ、ちょっとアンタ」

「あ?」

 

その時、聞き覚えの無い声が背後から声をかけて来た。

他に誰も居なさそうだし、と振り向いてみると、派手な金髪を縦ロールに纏めた気の強そうな女子がこちらを睨んでいた。

まぁ、こっちの顔を見て若干怯みはしたが。

 

「何?俺?」

「アンタに決まってんじゃん。アンタ、やけに最近結衣や隼人とつるんでるみたいだけど、あの2人の一体なんなの?」

「何って…………」

 

金髪縦ロールはキツそうなつり目を細めて睨んでくる。

しかし、そんな事される筋合いは無いのだが、まぁ向こうには関係無いのだろう。

思い返せば、教室で由比ヶ浜と一緒に居た様な気がする。

教室におけるトップカーストの中心人物だと思うが、名前までは知らない。

 

「言っとくけど、あんま結衣や隼人の優しさにつけ上がんなし。アンタみたいなのとあんまりつるんでると、2人が変な目で見られるの。それだけ」

 

言いたい事だけ言い残して足早に立ち去っていく金髪縦ロール。

その背中から窺い知れる苛立ちに、少なくとも葉山の事は逆にこっちから頼みたかったのだが、声をかけられる雰囲気では無かった。

そして、金髪縦ロールのカバンのベルトに固定されているオレンジ色のデジヴァイスに気が付き、ようやく彼女が由比ヶ浜が言っていた優美子なる人物だと分かった。

 

「そんな事、分かってるっての…………」

 

 

 

放課後。取り敢えず授業は全て可能な限り寝て過ごした。

教師全員が最初は注意はするのだが、ぐぐぐ、と音を立てて顔を上げると、みんな顔面蒼白になって諦めるのだ。

平塚先生すら本気で引いた顔をして引き下がった辺り相当なのだろう。

ただ、あんまり回復はしなかったが。

焼け石に水とはこの事か、と納得しつつ、奉仕部の扉を開く。

すると、部室の椅子に体を預けて、雪ノ下がうたた寝をしていた。

春の風で揺れるカーテンと、微かに赤くなった日の光に照らされて眠る雪ノ下は、一瞬見惚れる程美しかった。

しかし、それも目を覚ますまでの間の事。

俺が部室に足を踏み入れると、気配を感じてなのか、雪ノ下が目を覚まして俺の顔を見ると、一瞬確かにひっ、という悲鳴を上げた。

そして咳払いをして誤魔化し、椅子に座り直した。

 

「あら比企谷君。来ていたのね」

「誤魔化しても寝てたのバレバレだからな」

「…………そうね。でも凄いわ。貴方の顔を見ると一瞬で眠気が吹き飛んだの。本物のゾンビみたい」

「お前もブイモンと同じ事言うのかよ…………」

「今の貴方を見れば100人中100人が同じ事を言うのでしょうね」

 

確かに。口には出さなかったが、実例として全員が全員同じリアクションを取っているので反論できなかった。

 

「おはよー!あれ?ゆきのんも元気ないね?」

「由比ヶ浜さん…………逆に聞くけれど何故貴女はそんなにも…………」

「絶対読んでねえぞコイツ…………」

「え?あー、ちゅーにの小説!!」

 

カバンからいそいそと原稿用紙を取り出す由比ヶ浜だが、もう遅い。

既に材木座の荒い鼻息が部室の外から響いて来ていた。

 

「たのもーう!!」

 

材木座が現れ、俺と雪ノ下が露骨に肩を落とす。

しかし、材木座は気にしていないのか、もう小説の感想を聞きたいので頭がいっぱいなのか、依頼人席に座って目を輝かせている。

ただ、もう死にそうな顔の俺を見て諦めてくれれば、という俺と雪ノ下の共通の思いは届いていなかった。

 

「それで、我が小説の感想なのだが…………」

「そうね…………」

 

言い淀んでいる、と言うかどう伝えれば良いか頭の中で整理し始める雪ノ下。

それも一瞬の事だった。

 

「一言で言うと、つまらなかったわ」

「ゴファッ!?」

「物語の起承転結がハッキリしていないし、場面場面の繋がりもおかしいわ。ルビの振り方もおかしいし…………正直言って、読んでいてとても苦痛だったわ」

「ゲフォァッ!!」

 

雪ノ下の言葉を選ぶことすらしないこの酷評に、心をへし折られて崩れ落ちる材木座。

しかしそれでも、僅かな希望を持って、優しそうな由比ヶ浜に視線を向ける。

感想を期待されている事に気づいた由比ヶ浜は困った様に笑い、えーっと、と呟きながらようやく取り出した原稿用紙をめくる。

どうやら今の今まで一行たりとも読んでいなかったらしい。

 

「う、うん!難しい漢字沢山知ってるね!」

「アァーッ!!」

 

興味すら湧かなかったと言外に言われてしまった材木座が床に転がり痙攣を始める。

その姿は確かに哀れではあったが、同情はするまいと材木座の肩を叩く。

 

「は、八幡…………貴様は分かってくれるであろう?」

「なぁ材木座…………で、あれって何のパクリ?」

「…………グエェェ…………」

 

俺の言葉に止めを刺された材木座が動かなくなる。

その様子は流石の雪ノ下も少し可哀想な顔をしていた。

 

「ぱ、パクリ…………ちゃうわい…………我のオリジナル…………」

「アレでオリジナル書いてるつもりかよ…………」

「どう読み解いても、デジタルワールド冒険記シリーズのパクリとしか思えない描写の数々だったけれど…………」

「あ、それなら私も読んだことあるー」

 

材木座の小説の内容を簡単に要約すると、突然デジタルワールドに迷い込んだ材木座っぽい主人公が、6人の美少女ヒロインと一緒にデジタルワールドを冒険する。

その際、何故かヒロインたちにモテまくり、謎展開なラッキースケベイベントあり、と言った、ライトノベルの上っ面を真似た展開以外は大体が、雪ノ下の言う通りデジタルワールド冒険記シリーズなどを始めとする大ヒット小説の丸パクリだった。

 

「確かあのシリーズって、デジモンクライシス以前にデジタルワールドを冒険した選ばれし子供達の実体験を基にした小説だっけ?」

「らしいな」

「ええ。だからかしら。あのシリーズにはフィクションは混じっているけれどリアリティがあったわ。でもこの小説にはそんなもの欠片も無いわね」

「大体、お前デジタルワールド行った事も無いくせに良くデジタルワールドを舞台にしようと思ったな。せめて行った事ある奴に取材しろよ」

「そんな知り合い居らんのだぁ…………」

 

行ったことある2人が目の前に居るのだが、材木座は自分の交友関係の狭さを嘆き始めた。

 

「って言うか、何でこの小説、主人公以外全員女の子なの?バランス悪くない?」

「そ、それは…………その方が受けると言いますか…………」

「うーん。それ、絶対この男の子居心地悪いと思うなぁ…………」

 

由比ヶ浜がパラパラと小説を読み飛ばしながら感想を言うのだが、その感想を聞いて雪ノ下が微かに頬を緩めてこっちを横目で見つめる。

それを言うのなら今もなんだが、と少し居心地悪い思いを抱きつつマックスコーヒーを飲みつつ、昔の思い出を思い出す。

 

「実際、居心地悪かったな…………俺らの時は男女比2対4でも負けてたしな」

「ぬお!?は、八幡!?貴様、まさか…………」

「ええ。確か、貴方ずっと隅で肩身が狭そうにしていたものね」

「ええ?ゆきのんも!?」

 

遠い目をして昔の辛い日々を思い出してブルーになる。

そんな俺を楽しげに見つめつつ、雪ノ下が紅茶に口をつける。

だが、納得行かなそうな顔で由比ヶ浜と材木座がそれぞれ迫ってくる。

 

「ゆきのん、ホントにヒッキーと一緒に冒険してたの!?」

「ええ。五年前にね。ただ、三年前に彼が一方的にチーム解散を宣言してそれっきりだったのだけれど」

「は、はちまーん!!裏切ったのか!?我に先駆けてデジタルワールドを冒険していた上に、4人も女子を侍らせてだと!?」

「その内1人は雪ノ下だぞ。こんなんが男に侍るかっつの。おまけにさらにその内の1人は俺の妹だ。残り2人は…………まぁ、うん。どっちもヒロインって柄じゃねえし…………それに、一緒に居たもう1人の男子が、アレだったし…………」

 

どっちも納得の行ってない顔で口を尖らせるが、小学生時代のコミュニティで材木座が思うような関係性を築けるはずもなく、おまけに当時、主人公オーラ全開だったのは、もう1人の男子の葉山の方だった。

 

「むー…………なんか釈然としないなぁ…………」

「同じく…………」

「良いじゃ無い、別に。あの頃の関係なんて終わった話よ」

「だな」

 

自分では終わった話と言いつつ、どことなく含みを持たせた視線をこっちに向けて来る雪ノ下。

俺はその視線に気づいていないフリをした。

 

「でも確かに、リアリティを感じさせないのは事実ね。デジモンとの冒険で小説を書きたいなら、一度デジタルワールドに行ってみたらどうかしら。確か、デジタルワールドの見学ツアーくらいならそんなに料金もかからないだろうし、週末辺りに行ってみるくらいはするべきね」

「ま、まぁそれくらいならば…………」

「アレ?でも、ちゅーにってパートナーデジモン居るの?」

「由比ヶ浜さん…………」

「お前…………この小説の主人公のパートナーがハイブリッド体のブリッツモンだったろ。それくらい読め」

「あ、あはは…………」

 

材木座が眼鏡をピカリと輝かせて、懐から雪ノ下と同じタイプのデジヴァイス、ディースキャナを取り出し、雪ノ下が露骨に眉を潜めた。

 

「よかろう!!ならばこの剣豪将軍、選ばれし子供の1人であることを証明しようでは無いか!!スピリット…………」

「やめろデブ。猥褻物陳列罪で通報するぞ」

 

デジコードを手に浮かばせる材木座を蹴り飛ばし、嫌悪感を隠さず吐き捨てる。

その間、雪ノ下も微かに体を隠す様に自分の体を抱き締めた。

 

「ったく。おい、気が済んだか?」

 

涙目で蹲る材木座に原稿用紙を3人分纏めて突っ返す。

その原稿用紙の束を大事そうに抱き抱え、鞄にしまいながら材木座はそれでも微かに微笑んだ。

 

「また、書いたら読んで貰ってもいいか?」

「え?あれだけ言われてまだ持って来るのかよ」

「まぁ…………かなり心に傷を負ったが…………それでも、読んで感想を言って貰えると言うのは、嬉しいものだと思ってな…………」

 

それだけ言い残し、材木座は胸を張って堂々と部室を去って行く。

その背中を見届けて、俺達は微かに呆れつつも、その背中がほんの少しだけ、カッコよく見えてしまった。

例え下手の横好きでも、例えここまで罵倒しつつも、材木座は夢に向かって少しずつ歩いている。

その背中を馬鹿にする事は出来なかった。

 

「でも、またあのレベルの小説読まされるのかしら…………」

「次は断るぞ。絶対だ」




今後もちょっとずつですが書いていきますので、どうぞ宜しくお願いします。
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