やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。   作:アルファ麻呂

6 / 30
気がついたらもう六話、最後の選ばれし子供登場です。


第六話

「おー。お兄ちゃん、やっと新しい自転車買ったんだねぇ」

「まーな。久しぶりにバイト代入ったし」

 

日曜日、久しぶりに外出した俺が、パロットモンの騒動の際に壊れた奴に代わる、新品の自転車に乗って自宅に戻ると、何故か待ち構えていた小町がニヤニヤと笑っていた。

 

自転車の前カゴに乗っていたブイモン共々どことなく嫌な予感を感じつつも自転車を止め、電動アシスト付き自転車の乗り易さと快適さを思い返して思わずニヤつく。

 

色々と訳あって、暴走デジモンの処理に手を出した際には余り名乗り出ない主義なので、国からのバイト代は中々入って来ないのだが、チョコモン騒動の時は流石に手を出した事を誤魔化せる状況では無かった。その上、暴走したチョコモンは究極体だった為、危険度の高い案件の解決に貢献した、としてそれなりのバイト代が懐に入ったのだ。なので4月に壊れてしまった自転車の代わりをようやく買う決心がついた。

 

「いやー。これで小町も遅刻しそうになっても大丈夫!」

「いや待て小町。お兄ちゃんはそこまで便利な存在じゃ無いぞ」

「ぶーぶー。そう言うお兄ちゃんはいざとなったら進化したブイモンに乗って学校に行けるじゃん!シャウトモンは進化したって小町乗せて飛べないんだよ?可哀想と思わない?」

「俺がいつライドラモンやエクスブイモンに乗って学校に行ったんだよ…」

「そもそも、昔の八幡ならともかく、今の八幡乗せて飛んだり走ったりする自信ねーぞ」

 

アーマー進化体のライドラモンは四足歩行で素早く動ける為、小学生の頃はその背中に小町と一緒に乗って走り回ったこともあった。が、もう今では小町一人乗せても走れない可能性もあるし、そもそも成熟期のエクスブイモンは翼があるからと言って誰かを乗せて飛べる様な背中では無い。

 

「まーそれはともかく、コーヒー淹れたところだし。さっさと入ってね」

「お、おう…………」

 

小町に背中を押されて、嫌な予感が更に強くなる。そして玄関の靴の中に、見知らぬ女物の靴が混じっているのを見て、思わず回れ右をしようとして小町に阻止された。

 

「は、離せ小町。離してくれたら幾らでも自転車の後ろに乗せてやるから」

「うーん。それはそれで魅力的だけど、今日の所は交渉の余地も無いかな。だって、お兄ちゃん」

「一つ貸しって言いましたよね?」

 

不意に現れた、ニッコリと笑うあざとい笑顔。一色いろはが笑顔なのにものすごい冷たい目でこちらを睨んでいた。

 

「もー、本当に信じられないです。せんぱい、私に貸しがあるんですよ?なのにせんぱいの方から連絡して来ないってなんなんですか?普通、そっちから借りを返したいって言いにくるか、せめて電話してくるくらいしますよね?この1週間待ってたのに、全然来ないからもう直接殴り込むしか無かったじゃないですかー」

「じゃないですかーっ、じゃない。その前に殴り込むって単語と致命的に噛み合ってないからね。もうちょっと可愛げのある単語の後に続く言葉だからね。じゃないですかーって」

「え?今更せんぱい相手に可愛げなんて要らないですよ。だって…………」

「だって?」

「私に人前でディアナモンになれって強要したって、警察に言えばせんぱいの人生終わりじゃないですかー」

 

いつものぶりっ子演技を全面に、腹黒さを隠そうともしない一色に、俺の後ろで小町とシャウトモンが思いっきり吹き出す音がした。ブイモンはもう他人事全開の顔して一色について来たルナモンとゲームで遊び始めているし、味方なんて何処にもいやしない。

 

「わかった。分かったから、で?幾らだ?言っておくがこの間のバイト代はついさっき自転車に代わったばかりだぞ」

「は?今更せんぱいに金なんて要求しませんよ。大体この間の、ケルビモンの件でのバイト代なら私も貰ってますし」

 

むしろトドメを刺したのはマグナモンとディアナモンなので、俺と同額かそれ以上国から貰ってる可能性もあったか。金でなんとか丸く収めようと思ったのに。

 

「とりあえず、今日、私はサッカー部のマネージャーとしてひじょーに沢山の買い物があります。なので手伝ってくれる男の人が居てくれたら嬉しいんです」

「そうか。葉山に頼めばあの完璧な笑顔でOKしてくれるぞ」

「は?」

 

何言ってんだコイツ、みたいな目で睨まれた。何故だ、完璧な答えだった筈。

 

「葉山先輩は今日、実家の都合で雪ノ下先輩の実家に顔出してるらしいですよ」

「うわ、流石に同情するな…………」

「本当ですよ。この部活の買い物を理由して逃げられる様に私が調整してたんですけど、無理だったみたいで」

「そうか…………俺たちはせめて葉山の尊い犠牲は忘れない様に生きていくしかないな」

「流石に殺されはしないですよ。多分。で、頼れる男手が無くなっちゃうし。おまけに薄情なせんぱいがいつまで経っても借りを返そうとしてくれないので、いい機会なので少し返してもらおうかなって」

「少し?全部だろ」

「は?」

 

この定期的に襲ってくる、殺意すら漏れ出たこの冷たい眼差しは一体何なのか。一色は軽蔑と殺意の入り混じった目で睨みながら、足元に置いてあったバッグからメモ用紙を取り出し、突き出してくる。

 

渋々受け取り、中身を見れば、殆どの品はスポーツ用品店に行けばある様な奴ばかりだった。ただ、中には柔軟剤やら文房具など微妙にスポーツとは関係の無さそうな品も混じっているが、マネージャーに必要な奴なのかも知れない。

 

葉山とのデートのダシに使う為とは言え、仮にもマネージャーとしての仕事は全うする気はあるらしい。その辺りはまぁ、内心見直すというか、何というか。下手に口には出さないが。

 

「分かったよ。じゃ、ららぽか?」

「もーちょっと早く観念してくれたら時間も無駄にならずに済んだんですけどねー。ルナモン、行くよ」

「ちょっと待っていろは。今ブイモンやっつけてる所だから」

「ちょ、まっ、待って…………陰陽師カード辞めて…………お願い…………」

 

ブイモンの声にならない悲鳴と共に、次々と捨てられていくカードの音と、北海道行きのワープ駅に停車した音が俺たちの耳に遠く聞こえて来た。まぁ、流石は一色のパートナーデジモンだわ。腹黒い所がそっくり。

 

「せんぱい?」

「な、なんだよ。何も言ってないぞ」

「じゃ思ってたんですよね?」

「何を」

「私とルナモンの事、腹黒って思ってますよね?」

 

黙秘権を行使させて貰った。

 

 

 

「せんぱい、おっそーい」

「おま、お前なぁ…」

 

一色の何の感情も浮かんでいない冷たい眼差しを全身に浴びつつ、俺は両手の指全部と、両肘と、ついでに両肩に一色の荷物の紐がどんどん食い込んでいく痛みに呻いていた。おまけに一色の奴がビニール袋の持ち手をわざわざくねくねさせてより食い込む様に細くしていたせいで余計に痛い。畜生、結果が変わらないならもう直接口で腹黒って言ってやれば良かった。まぁその時は今以上の拷問が待っていたかもしれないが。

 

「すげー。人間ってここまで荷物持てるもんなんだなぁ」

「おいブイモン…今だけは頭の上に乗るんじゃねえ。パートナーのこの状況を見て何とも思わないのか?」

「楽ちんで良いな、って思ってるよ」

 

ブイモンは口ではそう言いつつも、頭の上で幼年期のチビモンに退化した。うん、パートナーの不器用な優しさに涙が出てくる。訳ねえだろ。降りろ。

 

頭を思いっきり揺らしてチビモンを振り払おうとする俺と、アホ毛にしがみついて離れようとしないチビモンの戦いは暫く続いたが、やがて俺もチビモンも気持ち悪くなって思わずベンチに座り込んだ。

 

「ちょっとせんぱい?何休んでるんですか?」

「文句はチビモンに言ってくれ。コイツが頭の上からな離れねえんだ」

「ふーん。酷いパートナーだねー、チビモン。おいでー」

 

そう言って一色がチビモンを胸に抱きとめ、チビモンが居心地良さそうにふうーっと息を吐いた。この野郎、どんどん陰獣に育ちやがって。雪ノ下の寂しい胸元で同じ顔出来るのかよ。

 

次に雪ノ下に会った時に殺されてもおかしくないことを心の中で呟きつつ、ららぽのベンチのすぐそばの自販機でマッカンを探すが、置いてないのでやむなく甘めのコーヒーと、仕方なくミルクティーを買って振り向く。一色はチビモン、そしてルナモンと一緒に買い物リストと買った物の確認をしていた。

 

「後どのくらいだ?いい加減帰りたいんだが」

「わっ、ちょっ、せんぱい!?いきなり投げないでくださいよ!!全くもう…………ありがとうございます」

 

俺のパスしたミルクティーの蓋を開けた一色が口をつけた。俺もコーヒーのプルタブを開けつつ、スマホを取り出すと、小町からの状況報告要求のメールが三件ほど届いていた。内容は、一色とのデートの様子を逐一報告しろ、だの、一色に変な冗談言って怒らせてないか心配している、だの。

 

そもそも俺と一色の関係は元仲間でしか無いから、この時間はデートでは無い。解消しそびれた、とっくに終わった腐れ縁の延長戦みたいなものだろうに。

 

「せんぱい、どうしてこの間のケルビモンとの戦いで、葉山先輩とジョグレスしなかったんですか?」

「あ?あー…………」

 

一色がふと、口を開く。ジョグレス進化、即ち二体の成熟期デジモンの合体進化。単独では完全体に進化出来ないブイモンと、葉山のワームモンがジョグレスする事で、完全体に進化出来る様になる。

 

「…………あんな人口密集地でジョグレスしたら過剰火力だろ。学校ごと吹っ飛ぶぞ」

「ま、それはそうですけど。でも葉山先輩、寂しそうでしたよ。昔みたいに一緒にやりたいのにって」

「昔は昔だろ。もう、コンビ解消して5年だぞ。ジョグレスに拘るんなら、他のD-3持ち探せば良いだろ」

「少なくとも、葉山先輩は今のところ探す気はなさそうですけどねー」

 

ベンチの隣でルナモン共々意味深な目で見てくる一色の視線から逃げ出す様に、コーヒーを一気に飲み干そうとして、むせた。

 

「あーあ。動揺しましたね、先輩」

「ちげーよ」

「違わないですよー。せんぱいは昔っから、もうちょっとでも良いから素直になったら良いのにって思ってるんですよ。特に葉山先輩との関係は」

「素直だろ。もう子供の頃の関係には戻れないんだし、お互い住む世界も違うだろ。ボッチとスクールカースト一位じゃ、接点すら無いのが自然だ。向こうから近寄られても、ボッチにしてみれば脅威でしかねーからな」

「へー」

 

俺の、どことなく言い訳がましい言葉にどんどん鬱陶しそうな顔になっていった一色が空になったミルクティーをゴミ箱に捨てた。その時、俺たちのデジヴァイスが何かに反応した。

 

「デジタルゲートが開く…………?」

「一色、とりあえず荷物纏めるぞ。逃げるにせよ戦うにせよ、邪魔が多い」

 

俺はもう一度一色の荷物を持てるだけ持って立ち上がる。そのタイミングでららぽの警戒警報が鳴り始め、デジタルゲート警報に他の客も気がつき始めた。

 

「せんぱい、ごめんなさい。ちょっと荷物多すぎました」

「だよな」

「この袋は自分で持ちます。私の服しか入ってないんで」

「おい」

 

何をちゃっかり部活と関係無い荷物持たせてるんだよこの後輩。だけどまぁ、それはともかく荷物を降ろせる場所を探して走る中で、家電量販店の店頭展示していたテレビにデジタルゲートが開き、緑の小鬼の様なデジモン、オーガモンが唸り声を上げながら飛び出して来た。

 

「は、八幡!」

「いろは、目の前だよ」

「逃げた先に来るとはな」

「流石に見過ごせないですね」

 

俺がD-3を、そして一色がアークを掲げて一枚のカードを取り出す。

 

「カードスラッシュ!!」

「ルナモン、進化!!レキスモン!!」

「チビモン、進化!!ブイモン!!」

 

成長期だったルナモンが成熟期のレキスモンに進化し、チビモンは幼年期から成長期のブイモンに進化し、俺は勇気のデジメンタルをロードしようとした。が、その時、どこからともなく見覚えのある制服を着た女子が駆け込んできて、オーガモンを思いっきりぶん殴った。

 

「ぐけっ!」

「あ、貴女は…………沙希先輩!」

「川崎…………」

 

青みの混じった髪をポニーテールに纏めた、鋭い目付きの女子、川崎沙希は、後ろから走って来た相棒の黒いアグモンと一緒に俺たちを見て驚いた顔をしていた。まぁ、その驚いた顔も、目つきが鋭いせいで睨まれた様に感じてしまうのだが、コイツはそんな奴では無い。

 

「あれ?八幡にいろはだ」

「アンタ達だったんだ。邪魔だった?」

「い、いえ。むしろ、荷物が邪魔で逃げられないとこだったんで」

「むしろ助かる。頼めるか、川崎」

「良いよ。じゃ、行くよ、アグモン」

「うん!」

 

川崎は懐からデジヴァイスicを取り出すと、全身からオレンジ色のオーラ、デジソウルを出現させた。

 

「デジソウル、チャージ!」

「アグモン進化!」

 

デジソウルをデジヴァイスicに注入し、そこから放たれたエネルギーを浴びた黒アグモンが頭から順に自身の体を再構築し始めた。そしてその体を青黒く、強靭な恐竜の姿に進化させた。

 

「グレイモン!」

 

最近では珍しい、ウィルス種の青黒いグレイモンは、オーガモンの棍棒の一撃を尻尾で弾き、そのまま突進してオーガモンに体当たりをした。吹き飛んだオーガモンがららぽのテラスの手すりを突き破って外の道路に落下し、怒った様に頭を振る。

 

グレイモンviを引き連れて追いかけた川崎が派手に壊れた手すりと、砕け散ったアスファルトの道路を見てかすかに顔を曇らせる。

 

「沙希、ごめん。派手に飛ばしすぎた」

「これくらい仕方ないでしょ。それよりゲート開くから、アイツを抑えてて」

「分かった!」

 

俺と一色がようやく川崎に追い付いた時には、川崎は既に改めてデジソウルを全身に漲らせていた。

 

「デジソウル、チャージ!フルバースト!!」

 

限界までデジソウルをデジヴァイスicに注入し、そのエネルギーを浴びたグレイモンviが再び全身をデジタルデータ化させ、再構築していく。グレイモンviの体が膨れ上がり、左腕にメタルアーム、そして機械のフェイスカバーが装着され、背中にボロボロの翼が生えた。

 

「グレイモン進化!メタルグレイモン!!」

 

ウィルス種の完全体デジモン、メタルグレイモンvi。完全体の中でもトップクラスのパワーを持つ、半分サイボーグの恐竜型デジモンだ。

 

オーガモンが完全体デジモンの登場に僅かに後退り、逃げようとするが、そんなオーガモンの背後にレキスモンが飛び降りて威嚇し、更にフレイドラモンも炎を放ってオーガモンを牽制する。

 

「やるよ、メタルグレイモン!!」

 

チャンスと見た川崎の声に応えて、メタルグレイモンviが耳をつんざく勢いで咆哮する。そしてその巨体でジャンプし、オーガモンに飛び掛かりながらメタルアームで殴りつけて叩きのめした。

 

「メタルグレイモン!こっち!!」

 

川崎がデジヴァイスicを掲げ、デジタルゲートが開く。メタルグレイモンviはもうグッタリとしているオーガモンを持ち上げ、投げ付ける。デジタルゲートに直接投げ込まれたオーガモンがデジタルワールドに帰還し、後に残されたのは荒れたららぽのテラスとそこに立ちすくむデジモン達だけだつた。

 

 

「アンタ、まさか日曜にいろはと一緒だったなんてね。意外」

「無理矢理だ、無理やり荷物持ちやらされてたんだよ」

 

役場前。もう何度目かわからないが、ここ一か月のデジモン関連の届出ですっかり通い慣れてしまった。俺としては不本意極まりないのだが、川崎は俺以上に通い慣れているらしく、職員とも顔見知りだった為に思っていたより早く手続きを終わらせる事が出来た。

 

まだ夕日が赤らみ始めた時間、一色が俺に背負わせていた荷物を、車で迎えに来た一色の親父さんに押し付けているのを遠くに見つつ、俺は随分と久しぶりに会話する川崎からの無言のプレッシャーに負けそうになっていた。何でだ。俺、川崎と最後に会った時になんか怒らせる様な事した記憶なんて無いぞ。

 

「アンタ、ここの所ずっと暴走デジモンの処理で名乗り出なかったの、何で?」

「あ?あー、まぁ、手続き面倒くさいからな」

「嘘でしょ。アンタ、私の分のバイト代の分け前が減ると思って逃げてたんじゃ無いの?」

「…………別に、そう言う訳じゃ無えよ。お前の家の懐事情は知ってるけどな。そこまでお人好しな訳があると思うか?このボッチが」

 

川崎の家は割りかし、余裕が無い。おまけに川崎と、その弟と妹もパートナーデジモンが居る。コイツらはまぁ、結構食う。我らが比企谷家もブイモンとシャウトモンの二体の食費は、外食中心の社畜である親父とお袋二人分よりちょっと高めだ。おまけに国からは、パートナーデジモンが居るからと言って何かしらの補填が入る訳では無い。その代わりに暴走デジモン鎮圧のバイト代やら何やらがある訳だが、それが安定収入になるかと言われれば首を傾げるしか無い。

 

「…………そ。なら良いけど、一応アンタが関わった案件の分け前は、葉山に預けてるから。私は絶対受け取らないから」

「よりにもよって葉山かよ…………つーか、別に俺は純粋に要らないから届出て無いだけだぞ。有効活用しろよ。あの金持ちのボンボンに預けるなんて無意味にも程があるだろ」

「だったら、アンタが自分で葉山に話し付けな」

 

それだけ言ってまた黙り込む川崎。なんだか、どいつもコイツも何で俺と葉山を話させたがるんだ。まさか、コイツらそっちの趣味が…………?

 

「川崎先輩ー!!」

「うわ、ちょっといろは…………」

 

するとそこに、親父さんと話をつけて来た一色が川崎に抱きついて来た。川崎が顔を赤らめて引き剥がそうとする中、隅っこの方で遊んでいたブイモンとアグモンとルナモンがトコトコと軽い足音をたてながら寄ってきた。

 

「このメンバーで集まるの、本当に久しぶりだよね。沙希」

「うんうん。八幡が嫌がるからね」

「そーそー。悪いな、俺のダメなパートナーのせいでさー」

 

ブイモンが当て擦りの様にこっちをチラチラ見ながら言い放つ。まぁ否定はしないが、だからと言ってまだ付き合いが残っている小町やシャウトモンと一緒に会いに行けば良いものを、俺と一緒に部屋で惰眠を貪っているのはどこのパートナーデジモンだ、全く。

 

「全くもー。川崎先輩、せんぱいが酷いんですよー。私とルナモンの事腹黒いって」

「…………」

「な、何か言って下さいよ!」

 

否定出来ないって顔で黙り込む川崎に、一色が微かにショックを受けた顔でこっちを睨んできた。

 

「別にお前らの言動を川崎に言った訳じゃ無いからな。川崎だってお前の本性知ってるってだけの話だろ」

「アンタが何かある度に一々いろはの事を腹黒いだのなんだの言うからでしょ。いろはだって、それに引き摺られてる所もあるんだし。本当のいろはがそんな酷い子じゃないって事くらい、アンタも知ってるはず」

「へいへい。相変わらず一色のオカンだな、川崎」

 

元々弟や妹の面倒を見ている川崎は、デジタルワールドを冒険していた頃から一色と小町の年下2人の事を気にかけていた。最初は一色の方はそれを鬱陶しそうにしていたが、デジタルワールドで様々な危機を乗り越えていく中で、次第に心を開いていった。今ではすっかり川崎のもう1人の妹みたいなポジションに落ち着いているが、川崎のオカンスキルの高さから、俺にはもはや親子関係にも見えてしまう。

 

しかし、一応本当の一色の両親が待っている以上、いつまでも川崎にくっついている訳にもいかない。

 

「じゃ、とりあえず今日の所は貸しは一つ帳消しって事で良いよな?」

「むー…………仕方ないですね。今日はまぁまぁ楽しかったですし。じゃ、また今度、宜しくお願いします。沙希先輩も、また明日」

「またねー」

 

一色がルナモンを抱いて車に乗り、俺たちも一色の両親に軽く挨拶する。そして一色家が帰宅していくのを見送りながら、俺はふと気づく。

 

「また今度って…………貸しはもう無い筈だぞ」

「そんなのいつもの事じゃない」

「言ったなブイモン。今日はもう歩いて帰れ」

 

頭の上に乗ろうとするブイモンの頭を掴み、ブイモンも意地でも乗っかって来ようとするのを阻止していると、川崎がアグモンの手を引いて歩き出した。

 

「バイト代の件、ちゃんと葉山と話しなよ」

「じゃあねー」

 

アグモンが手を振り、川崎はちょっと何か言いたそうな顔は見せつつも振り向かずに帰って行く。

 

「なぁブイモン。俺、あいつ怒らせる様な事したか?」

「いつもしてるよ」

「そうか…………なら仕方ないな」

 

この場に雪ノ下が居ないのが幸運だと思いつつ、俺たちも帰宅するのだった。




今回は前編、後半に続きます。

と言うか気がついたらブックマーク500に達してました。皆さん本当にありがとうございます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。