ゲートと加賀さん   作:奥の手

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続いちゃいました。


加賀と異世界

門を潜った加賀は驚愕せざるを得なかった。

目の前に広がるのは大地。抜けるような青空と白い雲。

どこまで続いているのかわからない青々とした草原。

 

「これは……流石に気分が落ち込みます」

 

誰も聞いていないところで独り言を言うような趣味はないが、それでも口を突いて出てくる言葉がそれだった。

出てきたところへ戻れば元の場所に帰れる。普通はそうである。

つまり今、加賀のおかれている状況は普通ではないということだった。

 

遠くの方に目を凝らすと、人影が見えた。

街を襲っていた鎧集団の敗残兵だろう。あれに見つかると厄介なので、しばらくどうするかはここで考える必要がある。

 

街へ戻るか?

 

「それはない、ですね」

 

あんな大都会の上空で艤装を解放した。爆撃までしている。警察や憲兵が黙っていないだろうし、そもそも街中で艤装をつけていること自体軍規違反だ。捕まればよくて除隊、悪くて営倉行きだろう。

 

そもそもあの街が加賀の住む日本だったかどうかも怪しい。この門はなんなのだろうか。

ただ遠い場所へワープするだけのものとは思えない。明らかに元いた世界ではあり得ない生物が、今、加賀がいる場所から門を通って街に現れていた。

あの街そのものが、そもそも加賀のいた世界の都市ではないとしたら————。

 

本格的に帰る方法がわからない。詰んでいる。

 

「これからどうしたら……」

 

とりあえずできることはなんだろうか。

元のあの街へ引き返すか。別世界なら、つまり、あまり信じたくはないが艦娘のいない世界なら、艤装云々の処罰は有耶無耶になるかもしれない。

 

あぁでも、街中で爆撃したことは確かだ。やっぱり戻ることはできない。

となると。

 

「この世界で、どうにかして生き延びるしかないと言うことでしょうか」

 

そういうことになる。

竜とか鎧兵士とかがいつ襲ってくるかわからない世界と、日本であることは分かっているがもしかすると異世界の日本かもしれない世界。

どっちで難を逃れるかと言えば後者の方がいいに決まっているが、なんせ爆撃してしまっている。言い訳が思いつかない。

艦娘が万が一いなかったら、自分はどう言う存在かを説明する必要もある。それは大変面倒臭いし、信じてもらえるかもわからない。

 

やはりこの世界で生きていくしかない。せめてほとぼりが冷めるまで。

この世界で生き延びつつ、元の世界へ帰る方法を探すしかない。

それしかない。

 

「ひとまず……どうしましょうか、妖精さん」

 

格納した零式艦上戦闘機の妖精さんに聞いてみる。

帰ってきた答えは、

 

『カガ、トベバイイ』

 

だった。

 

艦載機を実機サイズにして移動しろと。

加賀は考えた。それで万が一戦闘になったら逃げ切れる自信がない。

せいぜい自分の飛行技術は飛ばすことで精一杯。離着陸と鎮守府上空を旋回するくらいしかやったことがない。

 

とはいえ。

歩いてこの世界を見て回っていては、いつ帰れるかもわからない。

あまりにもこの世界に対しての情報がなさすぎる。

補給もままならないこの状況で、情報収集を悠長にやっていてはそれこそ本当に詰んでしまう。

 

いよいよダメになったら、もう一度門を潜ってあの街へ出よう。

警察に捕まろうが憲兵にしょっぴかれようが、生き伸びることはできる。

それまでの悪あがき。自分で元の世界へ帰る方法を探すという悪あがきに、一縷の望みをかけてみようと思った。

 

 

街で解き放った艦載機は全機無事に帰ってきてくれた。

おかげで矢を失わないで済んだので、また飛ばせることに加賀は胸を撫で下ろした。

 

零式艦戦52型を弓に番えて、ひょうと放つ。

瞬く間にミニチュアサイズの艦載機になり、そして一瞬光りながらそのサイズが大きくなる。

実機サイズとなった零戦が加賀の元へと降りてきて、妖精さんだけが加賀の格納庫へと姿を消す。

 

乗り込み、計器類をチェックし、どこにも損傷がないことを確かめてから、加賀はハッチを閉めた。

 

「ひとまず、飛んでみましょう。何かあった時には頼みます」

 

妖精さんへお願いをするような形でひとりごち、それから加賀は零戦を飛ばした。

 

 

「綺麗な景色ね……こんな状況じゃなければ楽しめたのに」

 

眼下に広がるのは緑と大地。土を踏み固めただけの細い道が草原を割るように伸びていて、加賀はそれに沿って低空飛行している。

晴れた大地は見通しもよく、また他に空を飛んでいるものも見当たらない。

フライトを開始して三十分ほどが経過していた。

 

道沿いに飛べば村か街があるのではと考え、加賀は零戦の進路を南の方角へ取った。

途中敗残兵を追い抜くような形で飛んだが、下の連中が何かをするような素振りはなし。

どちらかというと零戦を見て怯えているようにも見えた。

 

途中三叉路があり、加賀は南から南西の方角へ進路を取った。そろそろ村の一つくらい見つけたい。

 

「…………ん?」

 

地上を隈なく探していた加賀が、目を止めた。

集落だ。いくつかの家が寄せてたち、その周囲を囲むように柵が立っている。

お望み通りの集落である。

 

加賀は一度通り過ぎたのち、十分な距離をとって零戦を着陸させた。村の上を通り過ぎた時に何人かがこちらを見ていた。

零戦のサイズをミニチュアに戻したのち格納庫へ。

加賀は一度自分の姿に目を落とした。

 

艤装と和装。袴姿に弓矢を携えたその姿は、どこかの国の兵士のように見えなくもない。

あくまで敵ではないという姿勢を見せながら、接触を果たす必要がある。

しかし加賀は落ち着かない。表情こそ落ち着いているが、内心はドキドキである。

なんせ街を襲った世界の住人との初めての会合ということになる。問答無用でいきなり襲われるかもしれない。

弓の状態を確かめる。問題なし。いつでも使える。

矢の状態も確かめる。こちらも問題なし。戦闘機、艦爆、ともにいつでも発艦できる。

気を引き締め、いざ、村へと歩き出した。

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