少女歌劇レヴュースタァライト バロック・ザ・ジャム 作:桜椛
1場 聖翔の朝
「聖翔音楽学園第99期生出席番号1番、
高らかな宣言と共に白いレオタードに身を包んだ少女は、気を引き締めるように背筋をしゃんと伸ばして部屋の中央へ歩を進める。
「出席番号17番、
ぴょこぴょこと髪の毛を跳ねさせながら後へ続く。
「Bonjour、あら、華恋珍しく早いじゃない」
華恋達が一番乗り、と思いきや既に先約がいた。
2人の少女がストレッチをしていたのだが、華恋とまひるは思わず息を呑む。たったそれだけのことなのに、まるで絵画のような美しさでこの部屋を彩っていた。
「おはよう天堂さん! クロちゃん!」
「おはようございます愛城さん、露崎さん」
ピンクのレオタードにブロンドの綺麗な髪をしている
「華恋ちゃんいつもはお寝坊さんなのに今日は私より早かったんだよね」
えっへんと誇らしげに胸を張る華恋。言いながら信じられないけど何処か嬉しそうなまひる。
「
「桜吹雪!? 綺麗だよねぇ~!」
「そういうことじゃないよ華恋ちゃん……」
違うの!? と頭をポリポリかく華恋。
「ですが愛城さん、かなり大きな1歩と言えるでしょう。我々は3年生、これから羽ばたく未来のため、そして未来有望な後輩達の為にもスタァとはどういうものかを見せる必要があります」
天堂真矢はそう言うとにっこりと微笑みながら、膝を腰の高さまであげると、爪先を軸足の膝につけ両手を広げる。そして挙げていた足を後方へ伸ばし腰を反る。腕は真横と上へと伸ばす。ルティレ、アティテュードと呼ばれるポーズだ。
あまりにも綺麗なポージングに拍手が起こる。
「そうよ天堂真矢! あんたと私、どっちがスタァとしてキラめいているか見せる必要があるわ!」
対抗するようにポージングを取るクロディーヌ。
「すごいすっご~い! ねぇまひるちゃん! 私達もやろ!」
「う、うん! 負けないよ!」
そう言うと2人も負けじと色々なポージングを取る。
「どう天堂さん!」
「先程褒めたのは撤回した方が良いですかね? もっと背筋を伸ばす! 手足の爪先1つまで気を抜かない! 顎を引く!」
天堂真矢の厳しい声に懸命に応えようとする華恋。
「こう?」
「違いますこうです! もっと凛々しく!」
あーじゃないこーじゃないとポーズを取り合う2人。
「は! ねぇねぇ新しいポーズ思いついちゃった~」
華恋はそう言うと踵を落として肘を肩の位置まで挙げると手を真上へと伸ばす。
皆が疑問符を頭に浮かべていると。
「カニハニワのポーズ!」
思わずまひるは吹き出した。
「真面目にやりなさいよ……」
「出席番号25番、
と華恋がふざけ始めたところで、99期生の生徒達がぞろぞろと集まってくる。
聖翔音楽学園、100年の歴史を持つ国内有数の演劇学校。
舞台演劇の所謂裏方として勉強していく『舞台創造科』
舞台演劇の表に立つ役者として勉強する『俳優育成科』
この2つに分かれている。
愛城華恋らは舞台少女として生きる為、俳優育成科で2年間勉強をしてきた。
今は3年生の春。今年が、聖翔音楽学園で過ごす最後の年だ。
「はぁ、はぁ……ん~~~~! 遂に! 遂にっ! 来ちゃったわ……聖翔音楽学園!! どうも、よろしくお願いしますっ!!」
キャリーケースをガラガラと引きながら、聖翔音楽学園の正門前で、一人の少女が大きな声でお辞儀をしていた。
………………長いお辞儀である。
ガバッと顔を上げると大~~きく伸びをして1歩足を踏み出した。
求めていた新たなる世界への1歩。瞬間、
これから先、彼女は沢山の舞台少女に出逢うだろう。沢山の劇に触れ、沢山の役に触れ、そうして沢山の人を魅了するだろう。例えそれが、
彼女の瞳には、確かな情熱とキラめきが灯されていた。