不定期ではありますが、また続けていきますのでよろしくお願いします!
人気のない街に激しい衝撃と音が響く、その中心地にいるのは、拳と爪を何度もぶつけ合い周囲を破壊しながら戦う龍希とアルフだった。
なのはとユーノをフェイトの元へ向かわせて、アルフが二人を追わないよう、常に至近距離での格闘戦を仕掛けていた龍希だが、革命の書のサポートを受け、ボルッチの力を身に纏っていてもアルフに対して決定打を打てずにいた。
「ちょっと…まずいかな…これは」
『リミッターを掛けているとはいえ、ぶっつけ本番での戦闘ですからね。負担は抑えきれません』
革命の書の機能は魔法関連を除けば大きく分けて二つ、一つはクリーチャーの使役。もう一つは今龍希が使っているクリーチャーを身に纏いその能力を得るというものだ。一つ目の使役はただ魔力かマナを使いクリーチャーの召喚を行うだけの機能だが二つ目の機能は違う。魔力とマナ両方を使いクリーチャー纏うのだが、召喚とは比べ物にならない量を消費する上、本来そういう風に出来ていないクリーチャーと融合に近い状態に無理やり持っていくので、魔導師の体への負荷も激しい。無論、その分身体能力の向上、武装の追加、クリーチャーの能力を得る等、恩恵を得ることが出来るのだが、繊細な調整とそれを使う魔導師に合わせたシステムの最適化を終える事で得られるそれらを、まだ完了していない龍希は完全には受けられず、無理やり使っている状態だった。
(無理は承知!それでも使ったのは魔法戦より勝ち目があると判断したからだ!)
革命の書に魔法戦の訓練を受けたとはいえ、にわか仕込みの技術でどうにかなるような相手ではない。
勝つにしろ時間稼ぎをするにしても、今の状況を打開するためにこの手段を選んだ。そのおかげか先ほどよりも幾分か戦えてはいるが、攻めきれずじわじわと力を消費し負荷が増していくばかりの現状に焦りを感じていた。
「しつこいんだよアンタ!」
既に数えきれない程の打ち合いを得て、決して自分に届かない相手と確信したのにも関わらず、倒れない。倒せない。傷を負うたびに、より苛烈に攻め続ける龍希にアルフは苛立ちと共に微かな恐怖を感じ始めていた。打ち合う度に爪で切り裂かれ。打った拳を防ぎ、躱し魔力弾も悉く撃ち返した魔力弾に相殺されほとんどの攻撃を防がれてなお、攻撃の手を緩めず。それどころかますます激しくなっていく。
「まだ倒れるわけにはいかないんでね!」
なのは達の邪魔はさせないという思いだけが今の龍希を奮い立たせている。アルフが放った魔力弾を魔力弾で相殺し、拳を放つ。爪ではじかれ大きく体制を崩すが倒れるほうに魔力で足場を作り、逆立の様に地面に手をつき体を捻り、回し蹴りを放つ。体制が崩れた状態から反撃をされるとは思っていなかったのか、反応しきれずに直撃を受けたアルフはビルに激突する。
(ようやく一撃!畳みかける!)
確かな手ごたえを感じた龍希は追撃を加えようと加速。アルフの魔力を頼りに魔力弾を放ち、更に両籠手に魔力を集中させ魔力弾と共に接近する。魔力弾はアルフの周囲を囲むように着弾させ逃げ場をなくし、本命の拳を叩き込む……が……
「なめるんじゃないよぉぉぉぉ!」
凄まじい風が起こり煙が晴れると、そこに居たのは先ほどまでいた狼ではなく、狼の耳と尻尾を生やした人だった。狼の姿から人の姿へと変身したアルフが放った拳がぶつかり合い、今までの比にならない程の衝撃が迸る。
「その姿でも戦えるのかよ⁉」
「アンタなんかに時間を掛けてる暇はないんだよ!」
力比べは拮抗したものの、弾かれた瞬間に四肢をオレンジ色の鎖が拘束する。
「このタイミングでバインド⁉なんて器用な!」
すぐさま鎖を引き千切るが、壊したそばから新たな鎖が巻き付き身動きが取れない。そして次の瞬間には鎖に引っ張られ宙に舞う。見ればアルフが鎖を掴み地面に叩きつけようと振り回しているのだ。
「解析!」
『間に合いません!』
「とっとと落ちろぉぉぉぉぉ!」
付近のビルを破壊しながら振り回され、痛みと衝撃で気絶しそうな意識を無理やり繋ぎ止め何とか脱出する術を必死に考える。時間を稼ぐにしろまだ墜とされるわけには行かない。
(叩きつけられる瞬間に装備をパージしてその衝撃で脱出する!)
『無茶ですマスター!賭けにしても分が悪すぎる上に成功しても戦力が大幅に落ちます!』
(それでも虚をつくにはやるしかない!)
意識を今までよりも集中させる。地面に叩きつけられる瞬間その一瞬を使いアルフの虚をつかなければ確実に負ける。そう理解しているから無茶な手段でも躊躇なく行わなければならない。
革命の書はそんなマスターをサポートするために可能な限りの魔力をバリアジャケットに集中させ威力タイミングの微調整をする。
「カウント!」
『5…4…3…2…』
革命の書のカウントでタイミングを合わせ、衝撃に備えようと更に意識を集中しようとした瞬間。視界の外から眩い光が入って来た。
「⁉」
(意識がそれた!今ならいける!)
アルフの意識がそれた一瞬を使いバリアジャケットをパージし脱出する。パージしたバリアジャケットを炸裂させ目くらましをすると同時にすぐさま再構築、上昇し反撃に移ろうとするが、革命の書から制止される。
『マスター、なのは様の方から異常な魔力反応が発生しています』
さっきの光と衝撃はなのは達の方から発したものだった。そして革命の書が感知した異常を龍希もようやく認識する。なのはの魔法でもフェイトの魔法でもない、明らかな異常事態それの原因を理解するまでそう時間はかからなかった。
「フェイト?……っ!」
それを感じ取ったアルフは目の前にいる龍希に眼もくれずその発生源へと向かった。龍希もそれに続く様になのは達の方へ向かう。
「頼むから無事でいてくれよ……っ!」
緊張が解けて無視していた痛みに襲われるがそれを無視し先を急ぐ、ひたすらになのは達の無事を祈りながら。