幼馴染に出来ることは何か   作:チョコレートパスタ

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東雲絵名

莉緒が入院してから1週間。私は今日も病院に向かう。家族でも無いし、身内でも無い。でも、莉緒にはたくさんの思い出を私は貰っている。いつか私が莉緒にたくさんの思い出を返そうと思ってたのに、こんな事になった

 

私は病院に入り、莉緒が寝ている病室へと向かう。すると、向こう側からまふゆが歩いてくる。私はまふゆに近寄って聞いた

 

 

「まふゆ、今日も来てたんだ」

 

「うん。絵名も莉緒の所?」

 

「それ以外無いでしょ。それに、今日は沢山話をするつもり。本気で描いてくれたイラストの事もね

 

「それ前にも話してなかった?」

 

「莉緒が目を覚ますまで何回でも言ってやるのよ。全く。こんなに凄いイラストを描くだけ描いて倒れるなんて。許さない」

 

「そう」 

 

 

莉緒は私が本気で描いたイラストが欲しいって少し無茶振りを言ったのにも関わらず描いてくれたイラスト。このイラストを見て莉緒の凄さを改めて感じた。まぁ、感想を伝える前に莉緒は倒れて眠ってしまったから言えなくなったけど

 

 

「瑞希達は?」

 

「瑞希達はちょっと用事で今日は来れないみたい」

 

「そうなんだ」

 

 

少しまふゆの顔を見てみると悲しそうな感じがして、私は察する

 

 

「その様子だと莉緒はまだ目を覚ましてないみたいね」

 

「……」

 

「あんたが気にする必要はないからね。莉緒だってそれを望んでないと思うし」

 

「分かってる」

 

「分かってないわよ。表情、あまり変わってないけど少し落ち込んでるように見えるし」

 

「……」

 

「とりあえず、あんまり落ち込みすぎないようにね?もし、莉緒が目を覚ましてそんな顔のまふゆを見たら悲しむし」

 

「分かった」

 

「じゃ、私はこれから話をしに行くから。まふゆはこれから帰るの?」

 

「うん。莉緒の家に行って掃除をしてから帰る」

 

「そっか。頑張ってね」

 

「絵名もね」

 

「うん」

 

 

私はそう言って病室へ。まふゆは病院の外へと向かって歩き出す。きっと、誰よりも辛いのはまふゆだと思う。幼馴染の莉緒が自分のせいで苦しんでて辛い思いをしてたんだから。私に出来るのはそのまふゆの辛さと苦しさを半分背負う事だけ。莉緒に関わってる私の償いでもあるから

 

私はそう思いながら莉緒の病室へとやってくる。やはり莉緒は目を覚ましてなくて、死んだように眠っている。そして、小さいテーブルにはまふゆが置いたのだろう。紙袋が置かれてあった

 

 

「莉緒、本当にまふゆに愛されてるわよね。まふゆ、ずっと莉緒の事を気にしてたわよ?」

 

 

私は椅子に座って少し呆れたようにして話す

 

 

「それに、莉緒が倒れた時なんて驚いたりしないまふゆが驚いて、泣いてたんだからね?本当、目を覚ましたらまふゆに謝りなさいよ?」

 

「……」

 

「あと。イラストありがと。莉緒の本気が感じ取れた」

 

「……」

 

「って。もう毎日言ってるから聞き飽きてるよね」

 

「……」

 

「……ほんと。いつになったら目を覚ますのよ」

 

 

私はまふゆの前では泣かないと決めていたから泣かなかったけど。莉緒を前にして私は泣いてしまう。本当は誰よりも泣きたいのはまふゆのはずだから。我慢しないとって思うけど

 

 

「また笑ってよ。いつもみたいにさ」

 

「……」

 

「お願いだから……」

 

「……」

 

 

返事はしてくれない。ただ私の泣き声だけが病室に響く。莉緒に言いたいことが沢山ある。でも、それはまた今度でいいって思ってて。だけど、もうそれは出来ない。だって、莉緒は眠ってるんだから

 

 

「莉緒があの時言ってくれた言葉、今も私の心に生きてるよ」

 

「……」

 

「才能が欲しいのなら努力をすればいい。その努力がいつか才能に変わるから」

 

「……」

 

「私は才能がある莉緒をちょっと妬んでた。莉緒の絵は本当に凄くてさ。昔から知ってたからこそ、本当に凄いって思ってる。でも、それと同じくらい妬みがあった」

 

「……」

 

「でも、莉緒は才能じゃなくて努力をしてたんだよね。だから莉緒は絵を認めてもらって…………ううん。莉緒にとって認めてもらう事や評価される事ってどうでもいいんだよね」

 

「……」

 

 

莉緒は私が絵を描くことが嫌になって逃げた時に言ってくれた言葉がある。私はその時は何も分からない癖に言わないでって突き放しちゃったけど、今だったら痛い程に分かる

 

 

【なんでそんなに評価されたいって思うの?自分が描きたいから描いたらダメなの?絵名は才能って言ってるけどさ。じゃ、才能が無かったら絵を描いたらダメなの?才能って言葉に囚われたらダメ。凡人って言葉にも。好きで描きなよ。じゃないと絵が可哀想】

 

 

莉緒は過去に絵の事でトラブルがある。それは私よりも悲惨でとても聞くに絶えない過去。私達はそれを聞いて何も言えなくなった。なんて声をかけたらいいのか。励ましの言葉なんてかき消されるくらい辛い話だったから

 

でも、莉緒はそれを乗り越えて今の莉緒がある。ううん。もしかしたら乗り越えてないのかもしれない。どこかで我慢してる所があるんだ

 

 

「莉緒は本当に凄いよ」

 

「……」

 

「本当に」

 

「……」

 

「たからさ。目を覚ましてよ。私、莉緒に沢山褒めたい所があるんだから絵だけじゃない。料理とかもう色んな事」

 

「……」

 

「……でも、やっぱり無理だよね。まふゆの声にも反応しないのに私の声じゃ」

 

 

私は自分が嫌になる。莉緒には沢山助けられてきた。なのに私は莉緒を助ける事が出来ない。それに恩返しとかも出来ない。そんな自分が嫌だ。でも、こんな姿莉緒が見たら怒っちゃうからダメだよね

 

私はそう思ってる涙を拭いて眠っている莉緒の顔を見て言う

 

 

「って。こんな悲しい感じだと莉緒に怒られちゃうよね。ごめんごめん!」

 

「……」

 

「莉緒、私は莉緒が目を覚ますまで毎日来るから。そして、他愛のない話を沢山して。少しでも莉緒に楽しいって思われるようにするからね」

 

「……」

 

「覚悟しなさい?明日から私は瑞希や愛莉と出掛けることになってるのよ。だから、その時に莉緒の服とかメイク道具とか買ってあげるから楽しみにしておいてよね」

 

「……」

 

「もう目を覚ましたら着せ替え人形にしてあげるから」

 

 

私はそう言って笑う。莉緒の表情は変わらないけど、どこか嬉しそうにしてる感じがして私は嬉しくなる。きっと、莉緒はどこかで聞こえてるのかもしれない。でも、それに反応出来ないだけで目を覚ましたら聞こえてたよって笑ってくれるかもしれない

 

 

「それじゃ、明日は朝早くから来るから。その時、私が描いた絵を持ってくるね」

 

「……」

 

 

莉緒は本当にそう言ってくれることを祈って私は話し続ける。莉緒の為でもあるけど、私の為に。私は莉緒の手を握ってから病室から出る。そして、上を向いてから前を向いて歩き出す

 

それから私は家に帰り自分の部屋へ行こうとした時にリビングから彰人が出てきて目が合う

 

 

「また莉緒の所か?」

 

「うん」

 

「どうだった?」

 

「変わらずよ。莉緒はまだ目を覚まさない」

 

「そうか」

 

 

彰人も莉緒の事を心配している。それはそうだ。彰人も莉緒に助けられた事があるんだから。でも、彰人は素直になれないから………って。私が言う事じゃないか

 

 

「あんたは行かないの?」

 

「行けるわけないだろ。俺は莉緒の辛さに気づけなかった。そんな奴が会いに行けるわけないだろ。杏達ならまだしも」

 

「それを言ったら私もよ」

 

「お前は莉緒と沢山関わってきたじゃねえか。でも、俺は」

 

「莉緒が居たら怒られてるわよ?」

 

「あ?」

 

「仲良くなるのに沢山関わるとか必要じゃない。私は仲がいいと思ったら仲がいいのってさ」

 

「っ!」

 

 

莉緒が私達と会って、しばらくたった時に言ってくれた言葉。その時、私達は莉緒の才能に惚れ込んでいた。私は絵に。彰人は歌とダンス。そんな莉緒と仲良くなっていいのかな?って思ってた時に言われたから余計に嬉しかった

 

 

「……確かに言われたな。そんな事」

 

「だから、行ってあげなさいよ。じゃないと、目を覚ました莉緒に怒られるわよ?」

 

「分かったよ。さすがに怒られるのは嫌だからな」

 

「うん。じゃ、私は部屋に戻るから」

 

「おう。俺はちょっと出かけてくる」

 

「そう。気をつけて」

 

「分かってるよ」

 

 

彰人はそう言って少し悲しそうにして家を出ていく。彰人も彰人なりに莉緒との向き合い方を考えてるんだろう。一応、先生は莉緒と関わってくれた人達に全てを話す事を決めたらしくて莉緒と関わった人達は莉緒の過去を知っている……………もう1人の莉緒のこと以外は

 

とりあえず、私は彰人が出ていくのを見届けたあと部屋へと戻る。そして、部屋に飾っている莉緒からの絵を見てまた泣きそうになるが私はそれを堪える

 

 

「ふぅ。莉緒なら大丈夫。絶対に戻ってくる」

 

 

私は自分にそう言い聞かせて落ち着かせる。私達が暗い思いになってたら莉緒だって悲しむから。とりあえず、まだ残っている作業をする為にパソコンを起動しようとすると、パソコンの電源が急について画面にリンが現れる

 

 

「リン?」

 

 

しかし、そのミクは私達が知ってるリンではなくて。ロングヘアのリンだった。私は少し驚いて目を擦ってから画面を見る。やはり、私が知ってるリンじゃない

 

 

『はじめまして!』

 

「え!?」

 

 

すると、画面のリンが私に向かって手を振りながら話しかけてきた。急すぎて本当にびっくりした私は変な声が出てしまう

 

 

『あ、あれ?聞こえてないのかな?もしもし!!』

 

「き、聞こえてる」

 

『聞こえてた!それなら良かった!』

 

「え、えっと。リンよね?」

 

『うん!私はリンだよ!』

 

 

凄くいい笑顔で答えてくれるリン。だが、私はこのリンを知らないので少し怖さがあったがどこか莉緒の面影があったから怖さと同時に少し嬉しかった

 

すると、リンは私の表情を読んで話してくれる

 

 

『あ!私はマスターの想いで作られた鏡音リンだよ!そして、絵名ちゃんのパソコンに来れる理由はマスターと関わってくれた人だからだよ!』

 

「やっぱり。莉緒なんだよね」

 

『うん!マスターだよ!』

 

「でも、なんで私の所に」

 

『様子を見に来たんだ』

 

「え?」

 

『私達ね。マスターから言われてたの。もし、私に何かあったらこの人達に会いに行って様子を見てきて欲しいって』

 

 

リンはそう言って1枚の紙を取り出して私に見せてくる。その紙には私の名前や奏、まふゆ、瑞希。そして、彰人、愛莉。他にも名前が書かれてあった。多分、莉緒の知り合いの人だろう

 

 

「莉緒はこうなる事を予想してたの?」

 

『うん。マスター言ってた。そろそろあいつが出てくるかもしれないから、後のことは頼んだよって』

 

「待ってよ。後のことはって事は莉緒は」

 

『あ!違うからね!マスターは絶対に戻ってくるから、そこは安心してほしい』

 

「絶対に?」

 

『うん。これだけは私達が保証する。マスターはいつになるかは分からないけど、絶対に戻ってくるよ』

 

 

リンの言葉に確証は無いが、表情を見るだけで分かる。嘘をついてないって。私はそんなリンを見てやはり莉緒の面影が見える。莉緒も確証が無いのに出来るとか言うから。でも、そこに助けられてる部分もあるのも事実

 

 

「そう」

 

『あとね。また後でミクが来ると思うんだけど』

 

「ミクも居るんだ」

 

『うん。ミクから詳しい事を聞いて欲しいの。私じゃ話せないから』

 

「どうして?」

 

『そこも話すと長くなるんだけど。簡単に言うと、私達じゃマスターの想い全てを受け止めきれなかったの。だから、限度を超えちゃうと壊れるから』

 

「っ!?」

 

 

少しリンの表情が怖く感じた。莉緒が体調を壊して私達がお見舞いに行った時、私達に向けた目付きと表情。あの時、まふゆ以外は固まってしまって何も言わないまま莉緒の部屋を出てしまった。あの時は本当に悪い事をしたって思ってる。まぁ、莉緒は気にしないでいいよって言ってくれたけど

 

 

『でも、ミクならマスターの想い全てを受け止めきれたから話せるんだ。私達も話す事は出来るけど、少しだけから』

 

「も、もしかしてそれはもう1人の莉緒と関係が」

 

『……うん』

 

「そ、そうなんだ」

 

『怖い?』

 

「あ、それは大丈夫」

 

『え?』

 

「先生にも言われたけど、もう1人の莉緒が私達に危害を加えるかもしれない。でも、それくらい私は平気よ。まぁ、さすがにまふゆみたいに。殺されてもいいって思えるかって言われたら微妙だけどね」

 

 

先生に、莉緒とこれから向き合っていくにあたって注意されて事がある。もう1人の莉緒が出てきた時は逃げる事。そして、莉緒が離れてと言った時には離れる事。最後に、いつもと違うと思ったら逃げる事って

 

 

『だったら』

 

「でも、こんな事で怖がってたら莉緒と一緒に過ごせないし友達にもなれないってことでしょ?そっちの方が嫌」

 

『で、でも!』

 

「リンも莉緒の想いから生まれたのなら分かると思う。何があっても友達を裏切らない。見捨てたりしたくない。たとえそれで私が傷ついたとしても」

 

 

私がそう言うとリンは少し表情が曇った。それはそうだ。この言葉も莉緒が言ってた言葉なんだから。友達になった子とは何があっても…………でも、皮肉なものよね。それで莉緒は裏切られて、見捨てられて。辛い思いを。だからこそ私が

 

 

「莉緒はもしかしたら、いつか私達が裏切って、見捨てたりするかもって思ってるのかもしれないけど。そんな事ありえない。莉緒は私達の仲間なんだから」

 

『絵名ちゃん…』

 

「それに、先生にはダメだって言われてるけど。もう1人の莉緒と話してみたいし。1度、莉緒の本音を真っ向面から受け止めてあげたい。それはまふゆも、奏も、瑞希も同じことを思ってる」

 

『でも、それで絵名ちゃん達が』

 

「心配しないでよ。てか、莉緒だって私達のことを真っ向面からぶつかって受け止めてくれたんだから。今度は私達の番。ここで私達が逃げたら、莉緒を救えないし助けられない」

 

 

初めて莉緒と会った時ならこんな事は思わなかったと思う。でも、莉緒と出会って色々と考え方やイラストの描き方も変わった。奏達にも助けられたけど、莉緒もそれと同じくらい助けてもらった

 

すると、リンは笑ってから言ってくる

 

 

『そこまで本気でマスターを救いたい、助けたいって思ってるのなら。私達も絵名ちゃん達の手伝いをするね』

 

「うん」

 

『私達もマスターを救いたい、助けたいって思うけど。マスターの負の想いが強すぎるから私達じゃ難しいんだ…………それに黒化のせいで』

 

「黒化…」

 

 

莉緒の左腕に出てきた病気。先生にも分からない原因不明の病。莉緒が倒れた時に言われて私はびっくりした。なんでずっと長袖なのかが分からなかったけど、そういう事だったんだって思った

 

 

『先生から聞いた?』

 

「うん。元々ガンで、その腫瘍が黒い塊に変わって。左腕に黒化が出てきたんだよね」

 

『うん』

 

「全く。まふゆに話してたのはいいとしても、瑞希に話してるくせに私には話さないなんて。目を覚ましたら怒ってやる」

 

『あ、あはは』

 

 

瑞希も詳しくは聞いてないって言ってたけど、私は詳しくどころか全く聞いてなかった。ほんと、なんで言ってくれなかったのか

 

 

「まぁ、それは莉緒が戻ってきたら話してもらうとして。じゃ、早速リンに手伝って欲しい事があるの」

 

『何?』

 

「莉緒の想いのセカイに行かせて」

 

『え?』

 

「どうせ。そっちにもあるんでしょ?」

 

『う、うん』

 

「なら、お願い」

 

『いいけど。今はまふゆちゃんが居てるから無理なんだ』

 

「まふゆが?」

 

『うん。実は』

 

 

リンから話を聞くと。今、莉緒の精神状態が不安定で本来なら人数制限は無いらしいが。1人しかセカイに行けないらしい。そして、今まふゆが居るから無理だとの事

 

 

「じゃ、後でお願い」

 

『うん。その時はまたパソコンから出てくるね』

 

「……出てくる時はちょっと急にはやめて。怖いから」

 

『うん』

 

「じゃ、私は絵を描くのに集中するから」

 

『じゃ、私もここに居るね』

 

「え?」

 

『マスターが大好きって言ってた絵名ちゃんの絵を描いてる所を見たくて』

 

「ほんと。莉緒は何を言ってるのよ」

 

 

私はそう言って少しリンから手を逸らす。まさか、そんな事を言ってなんてね。それから私が絵を描いてる間、リンは莉緒の話をできる範囲でしてくれて。私はそれを聞いて絵を描いていく

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