幼馴染に出来ることは何か   作:チョコレートパスタ

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暁山瑞希

「まだ莉緒起きないんだ」

 

『うん。まだ莉緒は起きない』

 

「そっか」

 

『ねぇ。莉緒、このまま目を覚まさないとか無いよね』

 

 

莉緒が倒れてから2週間経った9月17日。ボクはナイトコードで先に通話に入っていた絵名から聞かれる。絵名の声は少し震えていたから、きっと怖いのかもしれない。それはボクも同じ。莉緒がこのまま目を覚まさなかったら

 

 

「ボク達がそんなんじゃ、莉緒が戻って来にくいじゃん。目を覚まさないとか考えないでさ、莉緒が戻ってきた時の事を考えようよ」

 

『でも、瑞希だって分かってるよね。このまま』

 

「分からないよ。でも、ボクは莉緒が目を覚ますって確信してるからね」

 

『……』

 

 

確信とは言ったけど、誰に言われた訳でも未来を知ってる訳では無い。でも、莉緒がこのまま目を覚まさないなんて事は絶対に無いって思える。なんでかは分からないけど

 

 

「てか、莉緒が今まで怪我して居なくなったことあった?無いでしょ?」

 

『でも、今回は怪我とかじゃ』

 

「もう。えななんはマイナス思考やめなよ」

 

『……分かってはいるけど』

 

「分かってないよ。でもさ、えななん1週間前から少し変わったよね」

 

『え?』

 

「そういうマイナス思考は変わってないけど、なんかどこか莉緒の話をする時声が明るくなるよね」

 

『…まぁ、色々あるのよ』

 

「色々?」

 

『Amiaにはまだ分からないかもね』

 

「何それ?」

 

 

ボクは少し笑いながら答える。しかし、絵名には何か莉緒について知ってるのかもしれない。ボクの知らない何かが。ふと、そう思いながらボクはある作業を進める

 

そして、しばらくボクと絵名は作業を進めていく。すると、絵名が話しかけてくる

 

 

『あ、そう言えば。今やってるのって、莉緒のイラストを繋げて動画にするってやつよね?』

 

「え?あ、うん。そうだよ。あ、まだ見せないよ?完成してないんだから」

 

『言われなくても見せてって言わないわよ。ただ、進捗を聞いてるだけ』

 

「そっか。進捗はいい感じだよ」

 

『そう』

 

 

ボクが今やっているのは、前に莉緒から送って貰っていたイラストを繋げて動画にする作業。すぐに終わるって思ってたけど、イラストが意外と多くて手こずっている

 

 

『完成したら私達に見せてよね?』

 

「もちろん。えななん達には最初に見せるよ」

 

『ありがと。それにしても、よく考えたわね。莉緒が描いたイラストを集めて繋げてPVっぽくするって』

 

「よく考えたよね。過去のボクを殴りたいくらいだよ」

 

『え?』

 

 

絵名には言っていないが、本当にこの作業が大変すぎて無謀だったかなって思ってしまう。我ながら馬鹿だと再認識するくらいだ。でも、莉緒が描いてくれたイラストだし、それに。莉緒の想いもこの絵にはあるから

 

 

「莉緒がいつ、目を覚ますか分からないから。早くしなきゃとは思うんだけどさ。意外と大変で」

 

『まぁ、大変そうね』

 

「あれ?絵名に枚数言ったっけ?」

 

『ううん。でも、莉緒が描いてきた絵くらいは知ってるから。それを繋げるってなると相当な枚数になるくらい馬鹿でも分かるわよ。だからこそ、どうなのかなってね』

 

「まぁ、何とかなるでしょ。ならなかったらボク、サークルから抜ける」

 

『やめなさい。そんな事したら奏達もそうだけど、私も怒るから。てか、何とかならないのなら私に言いなさい。これでも少しは手伝えると思うから』

 

「はーい」

 

 

少しばかりふざけてみるボクだけど、本当に何とかなるかどうか分からないのが今の現状。きっと、莉緒が居たら

 

 

何とかならないのなら私が手伝うよ!さぁ、何をすればいい?あ!先にご飯作ってくるね!

 

 

とか言ってくれそうだなぁ。ボクはそう言う莉緒を想像して少し笑ってしまう。それと同時にボクはやる気も出てきた。莉緒のイラストを繋げるにも順序がある。いつ描かれたのか、何をモチーフにして描かれたのか。色んな事を考えて繋げる必要がある

 

そんな事を考えながら作業をしているボクだけど。なかなか作業が進まない

 

 

『瑞希?』

 

 

なんで出来ないの。いつもなら出来るのに。ううん。いつもと違うからなのかな。これはいつも作ってるMVでは無くて、莉緒の想いのこもった絵を繋げる。ただ、絵を繋げるだけじゃないから出来ないのかな。ボクは少し悔しくもあり悲しくもあった

 

 

『瑞希?聞こえてるの?』

 

「……」

 

『瑞希!!』

 

「っ!?な、何!?」

 

 

急に大きな音を出された後、名前を呼ばれてボクは驚く

 

 

『あのね。さっきから人が呼んでるのに無視って何?喧嘩売ってるの?』

 

「ご、ごめん。ちょっと作業が進んで…………無いことなくて」

 

 

咄嗟にボクは本当の事を言おうとしてしまったから、何とか誤魔化す為に絵名に言ったが。さすがに誤魔化せずに絵名に作業が進んでいない事を話した

 

 

『はぁ。全く、1人で』

 

「説教は莉緒にしてよ」

 

『なんでよ!』

 

「莉緒のイラストに込めてる想いが強くて選べないんだもん。これどうしよう」

 

『どこまで行ってるの?』

 

「一応2割は終わってる」

 

『それって10割の内の2割よね?』

 

「ううん。100割の内の2割」

 

『……あんたと友達やめるわ。じゃあね』

 

「あぁ!!嘘嘘!冗談だって!10割の内の2割!!」

 

 

通話から落ちようとする絵名に冗談だと言うことを言って引き止める。さすがにこれで友達やめるは悲しすぎるよ!

 

 

『あのね。ふざける暇あるわけ?いつ、莉緒が目を覚ますか分からないのよ?目を覚ましてから出来てませんは』

 

「え、えっと。無かったことにしたら」

 

『は?』

 

「嘘です。ちゃんとやります」

 

『とりあえず、選ぶのは私に任せて。そして、繋げるのはAmiaに任せるから』

 

「いや、これはボクがやるって決めた事だから」

 

『うるさい。早くイラストを送りなさい』

 

「は、はい」

 

 

ボクは言われた通りに莉緒のイラスト全てを送る事に。結構、量があるから送るのに時間がかかったけど全て送れたあたりで絵名が言ってくる

 

 

『あ、これは無理なやつ。Amia1人で頑張って』

 

「待って待って!?見捨てないでよ!」

 

 

確かに量的に見たら嫌になるかもしれないけど、さすがにこれをボク1人でやるのは無理がある。やる前から無理かなって思ってたけど、やってみたら意外と行けるんじゃない?って思ったボクが馬鹿だったけど

 

何とかボクは絵名を説得して絵を選んで貰う事に。一応、絵名は昔から莉緒の絵のアカウントの事は知っていたからテキパキと絵を選んでいく。さすが、絵名

 

 

『ほんと。莉緒は凄いよ』

 

「え?」

 

 

ふと、絵名が呟くことにボクは反応してしまう。特に何も無いが、絵名の言葉に少し重みを感じたから気になってしまった

 

 

『莉緒の事よ。あんたも聞いたでしょ?昔、莉緒が絵の事でトラブルがあったって』

 

「あ、うん。劣等生の事だよね。それも、莉緒自信が気づいてない話」

 

『そう。そんな中描いてたこのイラスト。本当に莉緒は凄いと思う』

 

「ボクもそう思うよ」

 

 

病院の先生からボク達は莉緒の過去を話してもらった。その内容はとても残酷で、悲惨な話で。ボク達は何も言えなかった。それに、1番驚きなのがまふゆだ。感情を出さないまふゆが初めて怒ったり泣いたり。でも、まふゆにその事を聞いても分からないって答えるから。きっと、無意識で感情が出たんだと思う

 

 

『私達さ。莉緒に助けられてばかりで、何も莉緒の事知らなかったよね。ううん。知ろうとしなかった…………莉緒は私達の事を知ろうとして、向き合おうとしてくれたのに』

 

「……」

 

『それに、向き合ってくれた莉緒を私は突き放したりもしちゃった』

 

「絵の事だよね」

 

『うん。あの時、なんで突き放しちゃったんだろうって後悔してるの。でも、莉緒は気にしないでって』

 

「そうなんだ」

 

『いざ、こうやって莉緒が目を覚まさない時が来ると後悔が凄く襲ってくるのよね』

 

「きっと、ボク達莉緒に何も返せてないからだよね」

 

『そうね』

 

 

ボクも莉緒には助けられている。ボク自身の悩み、苦しみに気づいてくれて言葉をかけてくれた。ボクはその言葉に凄く助けられたし、支えられた

 

 

『だから、せめてこの作業だけは終わらせるわよ。ここから私達の反撃が』

 

「反撃って」

 

『反撃よ。いつも私達が助けられてるんだから、今度はこっちから助けの手をね』

 

「まぁ、そうだね。反撃かどうかは分からないけど、これを完成させて少しでも莉緒に恩返ししなきゃ」

 

『そうとなれば早く進めるわよ。もう選び終えたから』

 

「えななん、現実を見た方がいいよ。まだえななんが選んだのは100%のうちの20%だよ」

 

『……早くやるわよ』

 

「はい」

 

 

ボク達はそれから必死に作業を進めるのだが、いくらやってもなかなか終わらない作業にボク達は少し恐怖を覚えてしまった。結果から言うと、選ぶだけで朝になってしまった

 

途中、奏とまふゆが合流したけど2人とも3時に寝ると言ってナイトコードから落ちて。それでも、ボク達は寝ずに作業。もうしばらくはいいと思ったよ

 

 

『そっちは終わった?』

 

「終わったけど、えななんは?」

 

『一応、終わったわよ。ただ枚数多すぎない?もう朝なんだけど』

 

「まぁ、2年分らしいから」

 

『はぁ。とりあえず、ここからはAmiaの仕事だから任せるわよ?できる?』

 

「ボクを甘く見ないでよ。ここからならもう直ぐに……………ちょっと先に寝ていい?」

 

『そうね。作業する前に寝るのがいいわね』

 

「だよね」

 

 

さすがにボク達は睡魔には勝てなかった。それぞれナイトコードから落ちて眠りについた。きっと、起きたら作業になるんだろうけど莉緒への恩返しだと思ったら頑張れるかな

 

と思っていたんだけど

 

 

『あら?タイミング間違えちゃったかしら?』

 

「……え?」

 

 

パソコンの電源を消そうと、電源ボタンを押そうとした時にパソコンの画面にMEIKOが現れる。しかし、ボクが知ってるMEIKOじゃなくて。髪を束ねてポニーテールにしているMEIKOだった。

 

 

『見えてるとは思うけど、なんか驚いてるだけに見えるんだけれど。聞こえてる?』

 

「……う、うん」

 

『あ、聞こえてたのね。それなら良かった。でも、もしかしてタイミング悪かったかしら?』

 

「ま、まぁ。寝ようかなって思ってたところでは」

 

『そうなのね。それは申し訳ない事をしてしまったわね。じゃ、マスターの話はまた後日』

 

「ま、待って!!」

 

 

ボクはMEIKOを止める。なんで止めたのか分からないけど、何故かマスターと言う言葉が莉緒の事だと感じたから

 

 

『無理しないで。なんか眠そうな顔してるから、マスターの事はまた後日でいいのよ?』

 

「全然眠くないよ!!むしろこのまま走りに行こうかなって!」

 

『なんか無理してるように見えるのは』

 

「気の所為だから!ほら、マスターの話をお願い!」

 

『分かったわ』

 

 

MEIKOはそう言うとどこからか現れた椅子に座って話し始めた

 

 

『まずマスターの事なんだけど、その感じだとある程度は知ってるみたいね』

 

「うん。先生から莉緒の昔の話を聞いた」

 

『なら話が早いわね』

 

 

するとMEIKOは少し息を整えてからボクに聞いてくる

 

 

「じゃ、あなたに一つだけ質問」

 

「質問?」

 

『………マスターを助けたい?それがマスターを苦しめるとしても』

 

「え?」

 

 

ボクはMEIKOの言ってる意味が分からなかった。莉緒を苦しめる?莉緒を助ける事が莉緒にとって辛い事って。ボクはしばらく黙ってしまう。それを見たMEIKOが話し始める

 

 

『ミク達はマスターを救いたいって思ってるけど、私はそうは思わないの。何故か分かる?』

 

「分からない」

 

『マスターを助けるという事は、マスター自信が人を信用する必要がある。この意味が分かるかしら?』

 

「……」

 

『本当に先生から話を聞いたの?』

 

「も、もしかして」

 

 

ボクはやっとMEIKOの言ってる意味が分かった。莉緒をボク達は助けたいって思ってる。だけど、それは莉緒がボク達を少しは信用した上での話。莉緒がボク達を信用しなければ逆に莉緒を苦しめてしまう。だけど、ボク達を信用するって事は人間を信用するって事になる。それはつまり

 

 

「莉緒自信が今人間不信になってる所に、ボク達が介入したら辛くなるって事?」

 

『理解が早くて助かったわ。その通りよ。マスターは昔、信じてた人達から裏切られて心に傷を負った。それも何回も。そのマスターがまた信用をしようとした時、マスターは悩むかもしれない。昔みたいに裏切られたらどうしようって』

 

「でも、ボク達は」

 

『そんな軽々しく言わないくれる?』

 

「!?」

 

 

MEIKOは少し怒ったようにボクに言った。ボクはそんなMEIKOを見て怯えてしまう。あの表情、莉緒が体調を崩した時にボク達がお見舞いに行ったあの時の表情だ。目付きも同じ感じになってる

 

 

『その言葉がどれほどマスターを苦しめてるか分かる?マスターだって、あなた達の事を信じたいって気持ちはもちろんあるわ。でも、昔の事が邪魔をして信用出来ないマスター自信にもマスターは苦しんでる』

 

「でも」

 

『それに、これはあなたにも言えることよ』

 

「ボクにも?」

 

『あなた、まだあの子達に隠してる事があるわよね』

 

「……」

 

 

MEIKOにそう言われた時、ボクは少し怖くなる。奏達に隠している事………別に隠すつもりは無いけど、でも話したら奏達に

 

 

『あなたが別に話すか話さないかは今はどうでもいいわ。ただ、あなたが話さないのは信用してないからよ』

 

「そんな事ない!ボクはちゃんとみんなのことを信用」

 

『してるのならなんで言わないの?』

 

「それは」

 

『心の中で言ったら嫌われる。言ったら今のこの関係を壊してしまうとか思ってるんでしょうけど。言ってみないと分からないことに悩むなんて変よ?』

 

「……さい」

 

『それとも何?あなたは何があっても友達だからって言う言葉が欲しいの?何も壊れないよって言って欲しいの?それはただの自己満足じゃない。壊れたら壊れたらでその程度の関係だって事』

 

「うるさい!」

 

 

ボクは大きな声でMEIKOに言う。自分でも分かってる。奏達は他の子達とは違うって。だから、話しても受け入れてくれるって。でも、怖い。話せない自分が嫌になる

 

 

「ボクだって、奏達が他の子達とは違うのは分かってる!だけど」

 

『いつまで過去を引きずってるの?』

 

「引きずってる訳じゃ」

 

『前に進めてないのが過去を引きずってる証拠よ』

 

「何も知らないくせに言わないで!」

 

『……はぁ。これだから人って嫌いなのよ。自分達の事は棚に上げて言うのね。そんなんだからマスターはあなた達の事を信じれないのよ』

 

「え?」

 

『所詮、人はみんな自分自身が可愛いのよ。今のあなたにはマスターは救えないし助けられない。それに、マスターの事よりも先に自分自身の事を考えたら?』

 

 

MEIKOはそう言って消えていった。MEIKOが消えた後、パソコンの電源も消えて、画面には少し青ざめた表情をしているボクが映っていた

 

 

「あはは……そういう事なんだね」

 

 

ボクはMEIKOが言った意味を理解する。何も知らないくせに。ボクは初めて莉緒にボクの悩みが悟られた時、莉緒に言った言葉。その時は莉緒は、知らないかもしれないけど話くらいなら聞けるって言ってくれたけどボクはそれを無視した。今ではもう打ち解けているけど。今のボクの気持ちが今の莉緒の気持ち……

 

 

「何も知らないボク達が莉緒に……」

 

 

莉緒は虐められていたが、それで済まされるほど簡単な問題では無い。お母さん達も亡くなって頼れる人も居ない。信用していた人達からは裏切られ、劣等生という言葉に苦しめられて。先生から話を少し聞いただけでボクは耐えられなかった。もしかしたらもっと莉緒は酷い過去を経験してるかもしれない。ボクはこれからどうしたら

 

考えても分からないと思ったボクは大人しく寝る事にした。話を聞こうにも莉緒は眠ったまま。だから、今はとりあえずボクに出来ることをやるだけ。たとえ、それが莉緒を苦しめてしまうとしても。ボクは莉緒を見捨てたりはしない。寄り添ってくれた莉緒の為にも。それにボクの過去を話しても何も変わらずに接してくれてる莉緒へのおれ

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