幼馴染に出来ることは何か   作:チョコレートパスタ

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宵崎奏

莉緒が倒れてから1ヶ月後の9月27日。私は莉緒が入院している病院へと向かい、莉緒が眠っている病室の前へとやってくる。そして、私は一息ついてから扉に手をかけた

 

 

「失礼します」

 

 

そう言って私は扉を開く。すると、既に先客が居たみたいで女の子が私の方を振り向いて聞いてきた

 

 

「あれ?あなたは?」

 

「あ、えっと………朝日莉緒さんの友達の」

 

「あ!宵崎さんですね!先輩から話は聞いてます!」

 

「え?あ、そ、そうなんですね」

 

「先輩から聞いてた通り髪の毛綺麗ですね!触っていいですか!」

 

 

私が答えるよりも先に女の子は私の目の前までやってきて髪の毛を触ってくる。なんかこの感じ、莉緒と初めて会った時と同じで少し微笑ましく感じた

 

それから、女の子は私の髪を触るのをやめて自己紹介をしてくれた

 

 

「あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は白石藍って言います。先輩とは中学からの後輩で」

 

「中学から……」

 

「あ、その表情を見るに先生から話は聞いてるみたいですね」

 

 

白石さんは私の表情で察したのか眠っている莉緒を見てから私を見て、そして話をしてくれた

 

 

「自分は私、先輩を助けられなかった1人なんです。身近に居たにも関わらず。虐められていた事、苦しんでた事知らなかったんです。皮肉なものですよね。先輩からは助けられっぱなしなのに私は何一つ助ける事が出来なかった」

 

「……」

 

「だから、私は高校生になってから先輩の様子を見てきてたんです。もう二度と先輩にあんな思いをさせたくないので。と言っても学校の先輩しか見てないんですけどね」

 

「白石さん」

 

「あ、ごめんなさい。私の話はいいですよね。じゃ、私はもう用事は済んだのでこれで失礼しますね。それでは」

 

 

白石さんはそう言って病室から出ていく。その際、白石さんとすれ違う時に少し涙目になっていたのは気のせいでは無いと思ったけど、声をかけられなかった私

 

 

「莉緒」

 

 

私は白石さんが出ていった後、椅子に座って莉緒の隣へ。そして、持ってきていた紙袋を小さいテーブルに置いてから話し始める

 

 

「もう1ヶ月が経ったんだよね。莉緒の事だから私達の事を心配してると思うけど、そこは安心して。私の食事に関してはちょっとあれだけど」

 

 

さすがにカップラーメンばかりを食べてるとは言えない。でも、望月さんが来てくれた時はちゃんと食べてる…………それ以外はちょっと忘れよう

 

 

「あと、まふゆから聞いてると思うけど。まふゆが熱で倒れた時に私、看病をしてさ」

 

「……」

 

 

「その数日後にまふゆが歌詞を書いたんだ。それを聞いた私達はいつものまふゆの歌詞じゃないって思って、聞いてみたら昔の思い出を思い出したみたいで」

 

「……」

 

「まふゆ、少し前に進めたのかもしれない。まだ全てを取り戻した訳じゃないけど、少しづつでもまふゆは前に」

 

「……」

 

「莉緒?」

 

 

ふと、莉緒の顔を見ると少し微笑んでるように見えた。でも、もう一度見ると表情は変わっていなかった。私の幻?それとも、まふゆが少し前に進んだ事を話したから嬉しくて微笑んだのかな?

 

私はとりあえずニーゴの事について、私の事、まふゆ達の事を長い時間莉緒に話した。聞こえてないのかもしれないけど、聞こえてなかったとしても私は何回でも莉緒に言おうと決めた

 

結局、私は面会時間ギリギリまで話をした。今日はまふゆ達は来れないって言ってたから沢山話してしまったけど、今日くらいはいいかな

 

 

「また明日来るね」

 

 

そう言って私は椅子から立って扉の方まで歩く。そして、扉を開けようとした時に

 

 

「……ごめんね」

 

「っ!?」

 

 

莉緒の声が聞こえた。私は直ぐに莉緒の方を向いたが莉緒は眠ったままだった。確認の為に近くまで行くが、何も変わらずに眠ったままの莉緒が居るだけ

 

 

「き、気のせい?でも、今確かに」

 

 

私は莉緒の声を聞いた。あれは幻聴なんかじゃない。絶対に莉緒の声。でも、目の前には眠ったままの莉緒。私は何が何やら分からないまま病室を後にした

 

家に帰ってからも私は考えた。あの声はなんだったのだろうか。莉緒の声なのか、それとも私の幻聴なのか。とりあえず、私は部屋に来てパソコンを起動する

 

 

「一体、あの声は」

 

 

その時、パソコンの画面が急に真っ黒になり。数秒後、画面が戻ったと思ったら画面に私が知らないルカが立っていた。ルカは私に気づくと手を振ってくる。そして、話しかけてきた

 

 

『初めまして。宵崎奏さん』

 

「る、ルカなの?」

 

『そうね。ルカはルカだけど、私はあなたが知っているルカでは無くて。マスターの想いから作られたルカよ』

 

「マスター?………それって」

 

『えぇ。朝日莉緒。あなた達が今気にしている女の子よ』

 

「莉緒の」

 

 

私はあまり驚かなかった。前にミクが言っていた、他にもセカイはあるからもしかしたら他の私達にも出会えるかもしれない。って言葉があったからだ。でも、現に目の前にすると表情には出ないが少し驚いてしまう

 

 

『あら?驚かないのね。絵名さんの時は驚いてたってリンが言ってたから今回も驚かれるのかしらって期待してたのに』

 

「なんかごめん」

 

『別にいいわ。驚かれて話が進まない方が嫌だから』

 

「話?」

 

『えぇ。大事な話よ。今後のあなた達の』

 

 

ルカが話す途中で、ルカの体にノイズが入り始める。私はそれには驚いてしまいルカを心配するがルカはそれを知っていたのか気にしないで話を進める

 

 

『まぁ、こうなるわよね』

 

「こうなる?」

 

『ねぇ。マスターの事はどう思ってるの?』

 

「え?」

 

『考えなくていい。素直に思った事を言って』

 

「莉緒は」

 

 

私は言葉が上手く出なかった。急に莉緒の事を聞かれると何を言えばいいか分からなくなってしまう。そんな私を見たルカが少し笑ってから言ってくる

 

 

『さすがに難しい質問だったわね。じゃ、マスターを救いたいって思って』

 

「それは思ってる」

 

『あら、早いわね』

 

「莉緒は私達を救ってくれた。だから、今度は私達が救う番」

 

『救ってくれたから?』

 

「そう。莉緒は」

 

『つまり、恩返しのつもりってことね』

 

「別にそんなんじゃ」

 

『まぁ、恩返しだとしてもしなくてもひとつ忠告……………マスターを救いたいって思ってるなら今すぐやめておきなさい。じゃないと怪我するわよ』

 

「!?」

 

 

ルカの表情が急に怖くなる。前に莉緒のお見舞いに行った時に莉緒が私達に見せたあの表情、目付き。だけど、莉緒よりは怖くはなかった。だとしても私はそんなルカを見て怯えてしまう

 

 

「…怪我って」

 

『そのままの意味よ』

 

「そのままの意味」

 

『マスターを救いたいって思うのなら、命を差し出さないと無理だから。きっと、マスターの過去を聞いたと思うから尚更知ってると思うけど。マスターは人を殺してる』

 

「……」

 

『それも、あなた達が想像してる殺しとは違う。精神的に追い込んで自殺を促す方法。残念ながらマスターの想いで作られた私でもその方法は分からない。恐らくミクなら知ってるかもしれないけど』

 

 

ルカの話に私は少し恐怖を覚える。莉緒に対しての恐怖もあるのだろう。しかし、それよりも私が怖いのはその話を少し笑いながら言っているルカだった。私は恐怖を堪えてルカに聞いてみる

 

 

「なんで笑って」

 

『え?だって、おかしいと思わない?』

 

「おかしい?」

 

『虐めていた人達は何も言われず、自殺を促したマスターは人殺し扱い。それに、仮に虐めでマスターが死んだとしても虐めてた人達は何も言われない。こんな世の中おかしいと』

 

「それは、ちゃんと話してくれなかったら」

 

『話せば楽になるのかしら?…………話したら虐めは無くなるのかしら?』

 

 

ルカの言葉に私は何も言えなかった。確かに話しだからと言って絶対虐めが無くなる保証はない。試してないのに何を言ってるんだ。と言われたらそこまでだが、それはあくまでも私達(傍観者)だからだ。本人(当事者)からしたら話す事も怖いのだろう

 

 

『それに全ての人が話せるのなら、この世から悩みは生まれないし。そもそも、人間関係の悩みすらも生まれない』

 

「だとしても、話してくれなきゃ」

 

『分かった後はどうするの?』

 

「え?」

 

『話して、理解してくれた後の事よ。何か出来る?』

 

「……それは」

 

『こう言うのは客観的に見てるあなた達には分からない問題なのよ。仮に同じ体験をしたとしても人には感情がある。だから、感じる事も違う。それすらも分からないのに、人は分かった気になる…………愚かな生き物よね』

 

 

ルカはそう言って急に笑いだした。その笑い方はどこか不気味だったけど、どこか悲しそうだった。それと同時に莉緒が無理して笑ってる時の事を思い出す。莉緒も無理して笑う時、楽しそうに笑うけど、どこか悲しそうだった。私は思い出したおかげである答えにたどり着く

 

 

「……だとしても私は莉緒を救いたい」

 

『私の話聞いてた?』

 

「うん。確かに私には莉緒の気持ちは理解出来ないし、分かった気にもなれない。寄り添う事も出来ないし、慰める事も出来ない」

 

『自分自身で分かってるならもう』

 

「だからこそ。私はそんな莉緒を救いたい」

 

『何を言って』

 

「莉緒の苦しみ、悲しみ、憎しみ、怒り、痛み。私は少しは背負ってあげたい。たとえそれが莉緒を傷つけてしまうとしても。私は莉緒を見捨てたくない。だって、私達が莉緒を見捨てたら誰が莉緒を守るの?誰が莉緒を救うの?誰が莉緒を認めてあげるの?」

 

 

私はルカに向かって全力の思いで答える。まふゆをまだ救えてない私が莉緒を救おうだなんて甘い考えをしてるのは分かってる。だとしても、私は莉緒を諦めたくない。ここで諦めたら、私自身が許せなくなる

 

 

『……本当にその覚悟があるみたいね』

 

「え?」

 

 

ルカは少しため息をつきながら言ってくれた。その表情はどこか諦めた感じがあった。恐らく呆れてるのだろう

 

 

『はぁ。まぁ、いいわ。それにあなたの目を見たら分かる。本気でマスターを救いたいって思ってる事が』

 

「本気で思ってる。莉緒を救いたいって」

 

『そこまで本気なら頑張ればいいと思うわ。あなた達が耐えられればだけど』

 

「耐える?」

 

『あなた達にマスターを受け入れる事が。受け止める事が出来るのか見物ね…………あと、1つアドバイス。必ずしも寄り添う事が正しいとは限らないわよ』

 

 

ルカがそう言うと画面が消えて、次に画面がついた時にはルカは居なかった。パソコンを操作しても特に何も無かったから、多分ルカが直接私に会いに来たんだろう。でも、最後の言葉はどういう意味なんだろう?

 

私はとりあえず椅子に座ってナイトコードを開いてまふゆ達が居るのかを確認してみる。だが、さすがにまだ居ないみたい。だから、私は先に作業をしながらみんなを待つことに

 

 

『あ、K先に来てたんだ』

 

「えななん、うん。先に作業してた」

 

 

あれから作業をしていると絵名がナイトコードに入ってきた。そして、絵名はある動画を送ってくる。私は直ぐにその動画を確認

 

 

「これって莉緒の?」

 

『うん。Amiaが莉緒が描いた絵を繋げてPVっぽくしたやつ。音楽は莉緒の後輩の白石さんに作って貰ったの』

 

「白石さん?」

 

 

確か、白石さんって今日莉緒の病室にいた女の子だよね

 

 

『うん。莉緒のお見舞いに行った時にたまたま白石さんが居て、Amiaがお願いしたみたいよ。白石さんって音楽とかを作れるみたいで、それに莉緒の過去を唯一昔から知ってる人でもあって』

 

「そうなんだ」

 

『どうかな?』

 

「うん。イラストと音楽がとても合っていていいと思う」

 

 

繋げて動画を作った瑞希ももちろん凄いんだけど。このイラスト達に音楽がとても合っていて私はびっくりしてしまう。それにこの音楽、どこか暗い感じがあって。でも、暗すぎない感じで

 

 

「白石さんって莉緒の過去を身近で知ってるんだよね」

 

『うん。白石さんの話だと、助けようとしたらしいんだけど。莉緒が私を助けたらお前に行くからやめろって言ったみたいで』

 

「確かに莉緒なら言いそう」

 

『だから、白石さん何も出来なかったって言ってた』

 

「そうなんだ」

 

『私達も同じだよね。莉緒がこうなるまで気づけなかった』

 

「うん」

 

 

多分、誰よりも責任を感じてるのはまふゆだと思う。だって、莉緒の幼馴染で。まふゆの事でトラブルがあったんだから。でも、まふゆは表に出さない。もしかしたら分からないのかもしれないけど

 

私は送られてきた動画を見ていると、瑞希が慌てながらナイトコードに入ってきた

 

 

『み、みんな!大変!』

 

『何よ。急に入ってきて』

 

「Amia、何かあったの?」

 

『り、莉緒が!』

 

『莉緒が?』

 

「まさか!目を」

 

『そう!目を覚ましたって!』

 

『っ!?』

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