エンティティ様が異世界を侵略するようです   作:碧眼の黒猫

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4年も更新していないのに帰ってきました。


リメンバー・ミー

 教会を出て火の手が上がる街へ飛び出した2人は逃げ惑う人々を目の当たりにし、どっちへ逃げるか考えていると大きな音を立てる機械を手に人々を追い掛ける大男を目にする。

 

 男は興奮気味に機械を振り回して人々を追い回し、逃げ遅れた人の背中を次々と切り裂いて、その周囲を血で汚していく。

 

「こっちへ!」

 

 男の子を背負ったフレンがフィリアの手を掴んで走り出し、2人は全力で阿鼻叫喚となった街の中を走った。

 

「フレン!何処へ逃げれば!?」

 

「とにかく門へ!街の外に出ましょう!ここからならそう遠くはありません!」

 

 フレン達の周りを走る人々の目的も同じなのか、門がある方向へ多くの人が走っていた。

 

 後ろから悲鳴が聞こえる中、馬車が走る音を聞いてフィリアは振り返る。

 

 人が乗っていない馬車が必死に走っている人を轢きながらフィリア達の横を横切り、轢かれた人々がボロ雑巾のように車輪に巻き込まれて飛んでいく。馬車に轢かれた人の悲鳴が周りに響き渡り、痛みで助けを呼ぶものも居た。

 

「フレン!」

 

「くっ…」

 

 フレンは走る速度を緩め、後ろを振り返った。

 

「化け物は…来ていませんね。生きている人の手当てに行きます。フィリアさんはこの子を!」

 

「なるべく早く来て、フレン」

 

 フィリアの言葉に頷いて返したフレンは馬車に轢かれた人の手当てを行うためにフィリアに子供を預けて助けを呼ぶ人の元へと向かった。

 

「お姉さん、シスターが…」

 

「大丈夫、後で必ず来るから」

 

「本当?」

 

「ええ、お姉さんがおぶってあげるから。門に行きましょう」

 

「うん…」

 

 なるべく笑顔を作って子供と接し、不安にならないように話すフィリアの耳に微かな子供の歌声のようなものが聞こえてくる。

 

「なに…歌?」

 

「お姉さん…なんだか眠くなってきた」

 

 子供が目をこすって眠そうにしているのを見て、すぐに歌の元凶に気付いた。フィリアの脳裏に赤と緑のセーターを来た男が思い浮かび、笑顔を一瞬で青ざめた表情に変えて子供の肩を掴む。

 

「ダメ!ごめんね、こんなこと言いたくないけど寝ちゃダメ!いい!?」

 

「でも…」

 

「ダメ!我慢して!寝ちゃうと怖い夢を見ちゃうわよ!」

 

 子供が寝ないようにと子供の肩を強く掴んで揺らし、その必死さに子供は恐怖を感じたのか、フィリアの手を払って走り出してしまう。

 

「あっ!待って!」

 

 逃げた子供を追い掛けようとした時、門の方から大勢の悲鳴が聞こえ、そちらに目を向けたフィリアは驚いて目を見開いた。

 

 フィリアが目を向けた先、門の近くで馬車から降りてきたと思わしき肥満体型のピエロ男が、笑い声を上げながら人々にガス瓶を投げつけ、ナイフで次々と切り倒している光景がそこにあった。

 

「な、なに…あれ」

 

 驚いて固まるフィリアの肩に誰かの手が置かれ、驚いた彼女は後ろへ振り返る。

 

「君!ここは危ない、早く避難するんだ!」

 

「王立軍…!?」

 

「進め!奴らを捕らえろ!殺してでも構わん!止めろ!」

 

 全身を鎧で固めた重装備の王国軍が隊長の指揮に従って大盾と槍を手に暴れる化け物の制圧に当たろうとする。

 

 続々と来る兵士達の波に飲まれないように道の端へ避難したフィリアはフレンと男の子の姿を探して周りを見渡し、走る兵士達の向こう側にいるフレンを見つけ、フィリアは走る兵士達を避けながらフレンの元へ向かった。

 

「フレン、フレン!」

 

『One, two, Freddy's coming for you.』

(1・2 フレディがやってくる)

 

「な、なに…?」

 

『Three, four, better lock your door.』

(3・4 ドアに鍵をかけて)

 

「子供の…歌声?」

 

『Five, six, grab your crucifix.』

(5・6 十字架を握りしめて)

 

(なんなのこの歌…急に眠気が…)

 

『Seven, eight, gonna stay up late.』

(7・8 しっかり目を覚まして)

 

「寝ちゃ…ダメ……眠ったら…」

 

『Nine, ten, never sleep again...』

(9・10 眠りにおちないように)

 

 歌が聞こえなくなり、重い瞼が急に軽くなったフィリアはしっかり目を開ける。周りの様子が一変して不気味な鉄の臭いと蒸気で満たされた空間に立っていたフィリアは、背筋が凍るような感覚を覚える。

 

「来たのね…、フィリア」

 

「その声…ローズ?」

 

 聞き馴染みのある声にフィリアは振り返り、後ろを見るとそこにはローズが立っていた。あちこち服に傷が付けられ、胸元が爪で引き裂かれたような破れ方をしている服を着ているローズにフィリアは息を飲む。

 

「私、アイクのこと…好きだった。けど、アイクは貴女を選んだ…。貴女は良い友達だったし、アイクとも上手くやっていけるだろうなって…そう思ってたの。でも、今の貴女は…情けないわ」

 

「ローズ…」

 

「今の貴女が…私は許せない。ホント、情けなくて私は身を引いた自分を憎んだし…貴女も憎んだ。だから、貴女のためにって売ろうとしてた道具屋を借金を使ってまで維持するようにさせたの…。貴女には苦しんで欲しかったから…」

 

「……ごめんなさい」

 

「謝らないでよ、本当に情けない女。私の手で殺せるなら殺してやるところだけど、私は貴女に手を出せなかった。だって、アイクが好きだったんだから…」

 

『あぁ…お前は男のこともお友達のことも好きな子だったな』

 

「あの男の声…!?」

 

 フィリアはフレディの声に反応して徐々に下げていた顔を上げて周りを見る。男の姿を探し、そして見付けたフィリアはローズの背後に立つ男に視線を向ける。

 

「ローズ!危ない!」

 

 フィリアはローズを助けようと駆け出して手を伸ばした。

 

「あぁ…私、貴女のせいで死ぬのね。フィリア、貴女は私のこと…覚えていてね。貴女を陥れようとした…馬鹿な女を…私を忘れないでね」

 

「ローズ!!」

 

 ローズがフィリアに笑顔を見せた瞬間、その表情は胸を貫かれたことで笑顔から一瞬で驚愕した顔へ変わり、目の前でそれを見てしまったフィリアは大量の血を浴びて、手を伸ばしたまま足を止めてしまう。

 

「あ…あぁ…ああああっ!!そんな…そんなっ!」

 

 ローズの胸を貫いたナイフ付きグローブが引き抜かれ、ローズの死体が地面に横たわる。

 

「なん…で……。私から…何もかも奪うの?私が…何をしたのよ……」

 

 血濡れのナイフ付きグローブを鳴らしながら近付いてくるフレディから、後退りしながらフィリアは締め付けられるような胸の痛みを両手で押さえる。

 

「こんなの…おかしい。私は…私はっ!」

 

 フィリアの鼓動が徐々に速くなっていき、彼女は胸を押さえながら振り返って走り出す。

 

『そうだ…逃げろ。必死になってな』

 

「夢…本当に悪趣味…」

 

『走る時はちゃんと前を見ることだ。危ないだろ?』

 

 フィリアは金属を引っ掻くような音に足を止め、突然前に現れパイプに爪を当てて火花を散らしながら歩いてくるフレディを睨む。

 

「ここは貴方の世界でしょ?逃げ場なんてない、逃げ惑う私を見て楽しんでるんでしょ!?」

 

 笑みを浮かべたフレディの姿が燃えるようにして消え、後退りしていたフィリアは周りを見てフレディの姿を探したが、何かにぶつかり足を止める。

 

 フィリアが振り返るとそこには木の壁があった。そして、異変を感じた彼女は周りを見て自分の道具屋にいることに気付く。

 

「ここはお前のお気に入りだったな、フィリア」

 

 フレディの声が聞こえたカウンターへ目を向けたフィリアは、そこで雑談をする馴染みのある三人の姿を見る。

 

「アイク…フリック……ローズ…」

 

「お前もすぐ、あの中に入れる」

 

「うぐっ!?」

 

 急に体がロープで縛られたかのように動かなくなり、目の前で爪を鳴らすフレディが迫ってくる。笑みを浮かべたフレディが右手のグローブを振り上げた瞬間にフィリアは目を閉じた。

 

 そして、激しい痛みで再び目を開ける。

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 

「落ち着け!もう大丈夫だ」

 

 過呼吸になりながら暴れたフィリアは自分の体を力強く押さえる男の声を聞いて抵抗を止め、周りを見るとすぐ傍に屈んで心配そうな表情でフィリアを見ていたフレンの姿を見つける。

 

「クリスさん!本当にこれ以外の方法は無かったんですか!?」

 

「フレディの夢に落ちれば、無理矢理覚醒させるしか他に方法がない。すまない、だが目を覚まして良かった」

 

 灰色のシャツに緑のベストを来た男が血の付いたナイフを片手に言い、その男に刺されたことを悟ったフィリアは痛む傷を押さえながら、上半身を男に助けてもらいつつ起こした。

 

「貴方は?」

 

「俺はクリス、クリス・レッドフィールドだ」

 

 クリスと名乗った男にフィリアは少し彼の顔を見た後、夢の世界から抜け出せたことを安心して笑みを浮かべた。

 

「ありがとう…。危ないところだった」

 

「本当にすまない、叩いても起きなかったからナイフで刺してしまった。今手当てを…」

 

「必要ない、自分でできるわ」

 

 そう言ってフィリアは肩の傷に手を当て、回復魔法による光で傷を癒した。

 

「驚いたな、魔法という奴か。傷口がもう塞がっている」

 

「ええ、助けてくれてありがとう。クリス」

 

 魔法で傷を治したフィリアの手をクリスは掴み、2人は挨拶の握手を交わした。

 

「うわぁぁぁっ!!」

「化け物だ!化け物が来たっ!!」

「来るぞ!盾を構えろ!!」

 

 兵士の悲鳴と怒号が混じった声に三人は人の壁を作り、守りを固めている王立軍兵士達の背中に目を向ける。

 

「マズイ、奴が来る…!立つんだ!」

 

「な、なに!?」

 

 クリスが焦った表情でフィリアを引き起こし、兵士達から離れようとした瞬間に兵士達の壁が爆発によって吹き飛ぶ。

 

「「うわあぁぁぁっ!!」」

 

「S.T.A.R.S…」

 

 兵士達を吹き飛ばしたと思われる化け物を見たフィリアは、その醜い顔に恐怖を感じた。常に歯茎を剥き出し、人間とは思えないような顔と体をした化け物は持っていた筒を投げ捨て、一直線にフィリア達の元へとズッシリとした足音を立てながら走ってきた。




久しぶりに書くと楽しい。書ける時間があったら頑張って書きます。
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