エンティティ様が異世界を侵略するようです   作:碧眼の黒猫

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借金取りの魂はそこそこ

 次の日、フィリアはローズと一緒に棚に道具を置いていた。二人は雑談をしながら店に回復剤や爆発瓶など冒険に使える道具を棚に並べていき、着々と開店準備を進めていった。

 

「ローズ、解毒剤が無いみたいだけど」

 

「あれ?もしかして昨日売れちゃったので最後かな?」

 

「倉庫から取ってきて、まだ残ってるはずだから」

 

「うん、わかった」

 

 ローズが階段を上って倉庫に品を取りに行っている間、フィリアは在庫の数が書かれた紙を見て在庫の確認をしていると開店していない店の中へと男三人組が入ってきた。

 

「フィリアちゃ〜ん、元気になったみたいだねぇ?」

 

「店に入ってくるなら扉を叩いてくださいって、いつもお願いしていますよね?」

 

「叩いても開けないくせによく言うねぇ。借金、どんどん増え続けてるんだから早めに返してくれないと〜」

 

「……まだ待っててもらえませんか」

 

「もう半年も滞納してるけど?フィリアちゃん、これ以上は待ってられないなぁ〜?」

 

 男の一人が借金額が書かれた紙をカウンターに置き、フィリアに見せると借金額を見たフィリアは驚きの表情を浮かべる。

 

「い、1億3000万!?そんなに借りた覚えはありません!」

 

「覚えてないって言われてもねぇ。このお店の維持の為に払ってきた額だからねぇ」

 

 明らかにおかしい額にフィリアは男の顔を睨んだ時、男達が入ってきた扉の隙間から黒い霧が漏れていることに気が付いた。

 

「ねぇ、フィリアちゃん。俺達も流石に優しくできねぇよ。だって、こんなに借りてんだからさ。体を使うでも何でもして、金を返してくれないと困るなぁ?」

 

 カウンターに立つフィリアの髪を触りながら笑う男達に、フィリアは拳を作りながら睨みつける。

 

「最低ですね。貴方達」

 

「フィリアちゃんも同じようなもんでしょ。ねぇ?」

 

「死んでも貴方達と同じにはされたくない!」

 

 拳でカウンターを叩くと男がナイフを取り出してフィリアの喉元に突き付ける。喉元にナイフを突きつけられたフィリアは下がって離れようとするが、カウンターを超えてきた男がフィリアを床に抑え込んで彼女の体に跨る。

 

「へへっ、同じだって。これから売女になるんだから」

 

「な、なにを言って……」

 

「計算ができねぇやつでもわかる。道具屋の収入で1億超えの金を支払うなんて無理ってことがな。だからさ、フィリアちゃんは体を売るしかなくなるわけ」

 

「ちゃ、ちゃんと……払う…から……」

 

「払えるわけねぇだろ!!」

 

 男の怒号にフィリアは身がすくみ、それを見た男はフィリアの服に手を伸ばす。

 

「や、やめて……」

 

「どうせ回されちまうなら俺が先にしてやるよ。優しくな」

 

 目の前の男に襲われる恐怖で助けを呼ぶことも忘れて目を閉じたフィリアは、今にも泣きそうになっていた。こんな時に二人がいてくれれば、そう思っていた時だった。

 

「な、なんだよ!おい!」

 

「お、おいお前、浮いてるぞ!?」

 

「何かに掴まれてるみてぇだ!おい!助けろ!」

 

 フィリアは男達が騒ぎ出したことに目を開けると、自分の上で跨っていた男が魔法ではない力で浮き上がっていることに目を疑った。

 

 フィリアは上半身を起こして男の様子をよく見ていると、男の襟元を掴み上げている何かがそこにいることに気が付いた。男を掴み上げている何かがいる場所は空間が歪んでいるように見え、完全では無いものの透明だった。

 

 掴まれている男が騒いでいると棚にぶつからないようにして男は投げられ、床に叩きつけられる。男達もやっと空間に歪みがあることに気付いたらしく、その存在に目を向けていた。

 

「誰だテメェ!姿を見せろ!」

 

 仲間の一人がナイフを取り出して脅すように言うと、その存在は男の要求に答えるように鐘の音と共にゆっくりと姿を表した。

 

 姿を表したそれは男達よりも背の高い、人間に近い姿をした怪物だった。

 

 その姿を見た男達はナイフを落とし、体を震わせながら逃げるように店の扉へ向かって走り始める。二人の男が店の扉を開けて霧の中へと飛び込んでいき、床で座り込んでいた男も立ち上がって怪物から逃げるようにして霧の中へと走っていった。

 

 それを見送った私は怪物を見ると、怪物は扉へ向かって歩きながら鐘を鳴らし、扉の前で姿が見えなくなると勢い良く扉が閉まった。

 

 扉の隙間から漏れていた霧が消え、いつも通りになった店内でフィリアはため息を吐き出し、その場に座り込んだ。

 

「なにあれ……あの怪物も……」

 

「レイスだ。妾が渡した悲哀の鐘で透明になって獲物を狩る」

 

 突然の声にフィリアは震え上がり、声がした方を見上げるとカウンターの向こう側からエンティティがフィリアのことを覗き込むようにして見ていた。

 

「なかなか美味そうな魂だったが、レイスに怯えて少し輝きを失っていたな。あれでは吊るされただけで不味くなってしまいそうだ」

 

「助けて…くれたわけじゃなさそう……」

 

「結果的に見れば、助けたであろう」

 

「結果的にでしょ……それより、ローズはどうしたのかしら……」

 

「うん?あぁ……ローズも霧の中だ。妾の邪魔になりそうだったのでな」

 

「霧の中って……どういうこと!?」

 

 フィリアは立ち上がり、エンティティのローブを掴むと強く引いた。しかし、彼女の力ではエンティティの体を引き寄せることなどできず、エンティティは腰を曲げたまま微動だにしなかった。

 

「あの男達が霧の中へと飛び込んで行ったのは見ただろう?ローズも同じように霧の中に誘い込んだ」

 

「うそ……そんな……」

 

 エンティティの言葉にローブを掴む手から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになるフィリアをエンティティは地面に霧を出して蜘蛛の足でフィリアの体を支える。

 

「妾は邪魔されるのが嫌いだ。ローズのように良からぬ企みをする輩も嫌いだ」

 

「良からぬ企みって……ローズはそんなことするような子じゃない」

 

「輝きも無い、嫉妬と復讐心だけで生きているような人間の魂など美味しくないのだが……」

 

「……どういうこと?」

 

 エンティティの呟きにフィリアが聞くとエンティティは不機嫌な顔で階段へ向かい、フィリアには見向きもせず、階段を上って二階に行ってしまった。

 

 フィリアはエンティティの呟きが引っ掛かり、開店までの間、ローズのことを考えていたが答えを出すことは叶わず、開店時間を迎えた。

 

 エンティティの呟きを気にしながらフィリアは仕事を進め、解毒剤を取ってきていないことに気付いて棚を確認すると、いつの間にか解毒剤が棚に置かれていた。

 

 

 〜霧の世界で〜

 

 廃車の山があり、ガレージや木製の小屋がある場所でローズは一人、小屋の中でよく分からない機械を手探りで修理していた。

 

 適当に触っているだけでも機械が勝手に動き始め、何がなんだか分からない中でローズは恐怖に身を震わせながら機械を直し続ける。機械を直し続けるローズは遠くから誰かの叫び声を聞き、一瞬だけ動きを止めるがすぐに修理に戻った。

 

 機械に付いている6つの筒状の部品が激しく動き始め、あと2つが動き始めたところで何処からか男の悲鳴が聞こえてきた。ローズは焦る気持ちを抑えながら修理を続ける。

 

 そして、激しい音と共に小屋に明かりが灯され、修理が終わったことを告げた。ローズはその光見て不思議と自信が湧き、不思議な感覚に息をゆっくりと吐き出した。

 

「私ならできる…」

 

 ローズは小屋を飛び出し、小屋にあった機械と同じような物を探し始める。その途中で、ローズは地面にある扉のような物を見つけた。

 

 その扉を開けようとするも鍵がかかっていて開かず、扉はびくともしなかった。

 

 ローズは何とか開かないか引っ張ったり押してみたりと試すが、扉が開くことはなかった。仕方なく、諦めてその場を離れようとした時、開かなかった扉が突然開き、突然開いた扉にローズは恐る恐る近付いていくと、扉は来た時と同じように向こう側が黒い霧で何も見えなかった。

 

 ローズが扉に飛び込もうか、彼女は左腕を撫でながら迷っていると背後から鐘の音が聞こえ、振り返るとそこには目を光らせた怪物が彼女に向かって走って来ているのが見えた。

 

 それを見たローズはすぐに決心し、目を閉じて扉の中へ飛び込むと少しの間、自分の体が落ちていく感覚を感じ続け、その感覚が無くなってから目を開けると、いつの間にかローズは自分が住んでいる家のベッドで横になっていた。

 

「夢…?」

 

 見慣れない世界で見慣れない機械を直していたのが、夢だったのかと疑うローズだったが、ベッドから出て自分の手を見たローズは自分の手にベッタリと着いた血を見て背筋を凍らせた。

 

 手に着いた血はあの見慣れない世界に、彼女が確かに居たことを示すものだった。

 

 あの世界にあった謎の機械から溢れていた液体は、人間の血だったのだから。




ホラー描写難しい
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