エンティティ様が異世界を侵略するようです   作:碧眼の黒猫

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リージョンと道具屋

 森の事件から半年後、急に街から人が消える事件が多発し、ギルドでは幹部達が会議を開いて問題への対処を急いで考えていた。

 

 集まった幹部達5人とギルドマスターによる会議で情報の整理などが行われ、続いて対策についての会議を行われようとしていたが、現在ある情報に驚きを隠せない者達が多く、なかなか話が先に進むことは無かった。

 

「注意喚起で減れば良いが、注意喚起を聞いてくれる者が裏路地や人気のない場所に入るはずも無い。何か、もっと効果的な案を出すべきでは?」

 

「それを今考えようとしているのだろう。ユードリック、君は少し焦りすぎだ。落ち着いて考えなければ被害は広がるばかりだぞ」

 

「昨日、裏社会の組織が丸ごと消えたそうじゃないか。建物の中には使われていた備品や消耗品が大量に残っていて、逃げたにしてはおかしいところが多いと」

 

「一体どういうことなんだ。こんな説明がつかない事を誰ができる。魔族の仕業でもない、かと言って人間でもない」

 

「もしかしたら魔族かもしれんだろう。判断を早まっては、正しい判断ができなくなる」

 

「魔族に一日の間で数百人と攫う魔法でもあると?馬鹿な。そんな話は聞いたことがない」

 

「みな落ち着け、私としては例の森の一件が関係していると見ている。これまで行方が分からなくなった者たちは皆、忽然と姿を消している。森で起こっている事件と同じだ」

 

 ギルドマスターの発言で幹部達は静まり、お互いに顔を見合わせていると一人の幹部が口を開く。

 

「しかし、あの一件以来森には誰も立ち入らせていません。それから特になんの被害もなく、半年過ぎているのです。今更、何か関係が?」

 

「門番から背の高い女が街へ入ったとの報告があったのだ。その女、聞くところによると道具屋に入って行ったそうだ」

 

「道具屋?もしや、森から帰ってきたフィリアという少女が営んでいる?」

 

「うむ、その女が街に来てから人が消える事件が多発している。何か関係があるとは思うのだが…」

 

 ギルドマスターは腕を組んで悩み、幹部達がギルドマスターの言葉を待っているとギルドマスターが大きくため息を吐き出す。

 

「情報が欲しい。マルチネス、彼女の店は確か経営が苦しくなっているようだったな?ギルドから支援を受けないか、聞きに行ってくれ」

 

「わかりました」

 

「ユードリック、彼女の店を監視してほしい。何か動きがあれば、すぐ報告するように」

 

「お任せください」

 

「残りの皆は引き続き、行方不明になった者達についての情報を集めて欲しい。何か分かれば報告をするように」

 

「ギルドマスター、監視に気付かれた場合の対処はどうするつもりですか?今回の件、なんだか嫌な予感がします。慎重に考えた方が良いと思うのですが…」

 

「うぅむ、君がそう言うのは珍しいな。何か気になる点があるのかね?」

 

「彼女、フィリアさんが言っていた怪物。それが気になるのです。相手は、我々が想像している以上に強大な力を持っているかもしれませんから」

 

 一人の幹部の言葉にギルドマスターは少しの間、目を閉じて考えると息を吐き出して立ち上がる。

 

「恐れていては何もわからない。国が些細な問題だと決めて動かない以上、我々で情報を掴んで国に報告するしかない。皆、今回のことは今まで以上に危険な仕事になるかもしれない。気を引き締めて取り掛かるようにして欲しい。今日の会議はここまでだ。各自、仕事に取り掛かってくれ」

 

「「はい!」」

 

 幹部達は立ち上がり、返事を返すと各々の仕事をする為に会議室から続々と出ていき、誰も居なくなった会議室でギルドマスターは椅子に腰を下ろし、窓の外を見る。

 

「今日も雨か……。まったく、気分が沈んでしまうな…」

 

 朝から降り続けている雨を見ているギルドマスターは、空に不自然な黒いモヤを見つけ、その部分を注視する。黒いモヤは周りの雲とは違い、明らかに雨を降らせている雲とは違ったものだった。

 

「嫌な予感…か。元王宮魔術師のシャイエルンが、珍しく何かを感じるとは……一体、この街で何が起ころうとしているのだ」

 

 ギルドマスターが不穏な空気を感じ取っている時、道具屋ではフィリアが店を開けていつも通り冒険者や住民に商品を売っていた。

 

 いつもならフィリアが一人居るだけのカウンターに仮面を着けた少女が立ち、フィリアの隣で商品の値段やレジの仕方などを教えてもらいながら、カウンターの向かい側に立つ同じく仮面を着けた仲間を相手にレジの練習をしていた。

 

「スージー、また値段間違えてる」

 

「えっ?なにか間違えちゃった?」

 

「回復薬と解毒薬の値段が一緒。回復薬が40ゼニで、解毒薬が30ゼニ」

 

「あ、本当だ。ジュリーがお客さん役じゃなかったら大変だったよ」

 

「……やっぱり私がやった方が良いんじゃない?スージーだと危なかっしい」

 

 ジュリーと呼ばれた少女がスージーの隣に立つフィリアに提案するとフィリアは顎に手を当てて少し考えるような仕草をする。

 

「ジュリーさん、商品の名前と値段を覚えるのが早いから。スージーさんには商品作りを手伝って貰おうかな」

 

「ジュリーで良いよ。名前の後ろに何か付けられるの慣れてないの」

 

「私のこともスージーで良いよ。フランク達も名前だけでいいと思う」

 

「店主、棚がボロでグラついてるけど大丈夫か?」

 

「えっ?本当ですか?」

 

「あぁ、ほら」

 

 フランクが指を指した方へフィリアが目を向けると右側の棚をジョーイが揺らしていた。フィリアはカウンターから出て棚の確認をすると手を顎に当てる。

 

「うぅん、確かに揺れますね…」

 

「これ反対側も棚になってるから崩れたらマズいだろ?早めに直したほうがいいぜ」

 

「俺が直してやるよ。工作は得意だからな」

 

「ジョーイのお手製はネジ一本で崩れるから止めた方が良い」

 

「おいジュリー!噓つくんじゃねぇよ!ネジ一本で崩れるわけねぇだろ!」

 

「缶ジュースで壊れたテーブルを作った癖によく言うね」

 

 ジュリーとジョーイが口喧嘩を始めるとフィリアは止めようか、止めないか迷っていると店の扉に付けられた鈴が鳴り、全員の視線が扉に集まる。

 

「こんにちわ〜」

 

「お客さんが来たみたいですね。じゃあ…」

 

「私がやるよ。スージー、お金は私が戻しておくからそれ戻してきて」

 

「は~い」

 

 スージーと代わり、ジュリーがレジ係りになって客がカウンターに来るのを待っていると店の扉が開いてもう一人、またもう一人と客が入ってきた。

 

 客が段々と入ってきたことでフランク達は一旦、二階に避難することに決め、三人が二階へ上がっていくとフィリアがジュリーの隣に立って紙を取り出した。

 

「紙なんか出して何するの?」

 

「売れた商品の数を書いているんです。あれ?説明してませんでしたっけ?」

 

「……私の記憶が正しければね。スージーも同じようなことをよくするよ」

 

「スージーさ…スージーほどボケてませんから。売れた商品はここに書くようにお願いしますね」

 

「わかった。でも、それ私にやらせないと意味ないよ」

 

「えっ?」

 

「私が初めてだからって手伝おうとするのは良いけど、それだと成長しないから。全部やらせてくれた方が覚えるし、分からないことがあれば聞くから、それに答えてくれればいい」

 

「は、はい…わかりました。ジュリーって、しっかりとしてるね」

 

「しっかりしてるなら、ここには居ないけどね」

 

 ジュリーの一言にフィリアが首を傾げているとそこへ商品を持った客がカウンターに来た。ジュリーは客の対応して商品の値段を言い、代金を貰って紙に売れたその隣で見守っていたフィリアはジュリーの手際の良さに感心する。

 

「あ、ありがとう。フィリアちゃん、また来るね」

 

「えぇ、また来てね」

 

 フィリアが手を振って見送ると受け取った硬貨を袋に入れながらフィリアに顔を向けているジュリーと顔が合った。

 

「仮面、外した方がいい?」

 

「う、うん…できれば外してもらえると嬉しいかな」

 

 客が明らかに引いていたのを見てジュリーは仮面のことを聞いた後、ゆっくりと仮面を外す。ジュリーの素顔を見たフィリアは思わず、小さく声を出した。

 

「綺麗…」

 

「……普通だと思うけど、あんまりじっと見ないで。なんか恥ずかしい」

 

「綺麗な顔なのに隠しちゃうなんて勿体無い。顔がちょっと汚れてるし、今日は一緒にお風呂に行きませんか?」

 

「別に良いけど…ここで言う必要ある?」

 

 仮面外した途端に元気になったフィリアに困惑するジュリーだったが、フィリアにとっては怪物ではない普通の人間の素顔を知れて嬉しかったことと、話ができることが重なって安心を得たことで普段通りのことをしているだけだった。

 

 その後は夜になって店を閉める時間になるまでジュリーはレジの仕事をしながら、フィリアに質問したり雑談をしたりと親交を深めていった。

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