問題児と完全無欠の主人公が異世界に来たそうですゾ〜   作:遺憾千万

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新編突入です


第十二話 ユン・カーファイ

 

 

 

〜何処かの部屋〜

 

男は意識を取り戻した

辺りを身回そうとするが暗闇で何も視えない

直ぐに自分の目が閉じられていることに気付くが、頭痛が酷く目を開けることができない

 

 

 

ピチャン・・・ ピチャン・・・

 

水の滴り落ちる音が聴こえてくるが男は未だ目を開けられない

 

その音は定期的に落ちているようで時たま落ちる量が多いように感じる

 

頭痛が少し治まり目が開けることができた

どうやら男は椅子に縛られ座らされているらしい

 

目の前にもう一つ椅子があった

部屋は暗く見通しが悪かったが、窓から差し込む月明りが目の前の椅子の状況を確認させてくれた

 

 

椅子に座っているのは11、2歳程の少女であった

男と違うところといえば口に猿轡が填められていることであろうか

しかし彼が何より驚いたのは

 

彼女には両腕の肘から先が無かった事だ

先程から聴こえる水の音は、彼女の腕の切り口から垂れる血液であろう

どれほどの間出血していたのだろうか椅子の側には小さな水溜りができていた

もしかしたら彼女は死んでいるのかもしれない

自分の脳裏に浮かんだ「死」という単語で男は唐突に不安になった

男は自分の拳に力を入れ思いきり握り締め自分の腕がまだあることを確認した

 

男は安心したが、水の音が血液の音と分かった今、不安が取り消される訳ではない

 

 

水の音だけが響く静寂

 

 

暫くしてコツンコツンと靴音が近づいてきた

それを呼応したかのように彼女の呼吸が荒くなり、脚をバタつかせる

 

良かった 生きていた

 

男は彼女を無事に心から喜んだが、彼女の様子から決していい事が起きることはないだろう

 

おそらくは彼女の腕を切り落とした人間の足音なのだろうと男は確信した

 

思考する間にも足音は徐々に大きくなっていく

 

 

扉が開く音がした

 

現れたのは白衣を着た初老の男性だった

 

男性は男を一瞥すると直ぐに少女に近づいていった

 

男は白衣にしか目がいかなかったが、どうやら手に何か機械のようなモノを持っているようだ

 

暴れる彼女に注射器の針を刺すと男性は彼女の両腕にその機械を結合させた

 

彼女は時折小さな呻き声をあげていたが抵抗は諦めたのか

男性が自分の腕に機械を取り付けるのを見つめていた

 

やがて取り付け終わると男性は右腕の機械のスイッチを押した

 

電気モーターの音と共に電子音が鳴り始めた

 

平静を取り戻した男はやっと口を開いた

 

「お前は、誰だ?」

「ユン・カーファイ」

 

男性はユン・カーファイと名乗った

男は質問を続ける

 

「彼女は?」

「サンドラ=ドルトレイク」

彼女はサンドラというらしい

 

「何故こんな事をする」

ユン・カーファイは笑ったように見えたが、

月明りの届かない此処では彼の表示までは読み取れなかった

 

 

 

その直後、鈍い衝撃音と共に男は意識を失った

ユン・カーファイは男を椅子ごと引きずり部屋を出た

 

部屋には水の滴る音の代わりに無機質な電子音が鳴り響くだけになった

 

 

 

 

 

〜サウザンドアイズ〜

 

白夜叉に勝利した樹たちはサウザンドアイズと同盟を組んだ

 

これによりノーネームは大きな後ろ盾を得たことになる

 

樹たちはサウザンドアイズを出ると東に向かった

白夜叉の情報では東には彼女よりも強く権力を持つ者がいるという

広大な土地を持つ彼ならば土地を少し分け与えてくれるだろうという算段だ

 

樹たちはノーネームの依り代を得るため旅立った

 

 

 

 

 

 

 

 

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