四割の男   作:かりん2022

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覚醒

 

 ホイッスルが鳴る。

 

「■■、的中率が5割を切った! 二軍落ち!」

「そんなっ 監督! 俺はまだやれます! 監督!!」

 

 俺は、監督に縋る。

 でも、監督は無情にも首を振って……。

 

「ドーピングしてたろ。お前の本当の的中率は4割。二軍で我慢しろ」

 

 絶望の言葉を囁かれた。

 

「ハッ」

 

 目が 覚めた。

 

「俺……高校生になったんだった」

 

 俺の名前は虎杖 悠仁。

 ごく普通の男子高生。

 この世界には、超能力なんてない、はずだ。

 

 あまりにも鮮明な夢に戸惑う。

 周囲を見回す。保健室だった。

 

「虎杖君、大丈夫? 倒れていたって話よ」

「あ、その……疲れてたみたいで」

「そう?」

 

 俺は、宿儺の指の入った箱を取る。

 俺はとても勘がいい。テストとかも、事前に大体の問題がわかるし、目の試験も黙ってたって全問正解できる。

 宿儺の指を手に入れたときも、何気なく「視た」。

 そして、信じがたいような怒涛の未来が見えた。

 こんなファンタジーな未来、あるはずない。

 そもそも、願望と妄想の混じった、未熟な、幼児みたいな能力暴走。

 俺はとても恥じた。

 

 それでも。それでも。

 

「……調べてみるか」

 

 俺はパソコン室で、東京都立呪術高等専門学校を見る。

 

「あんのかよ!」

 

 ため息を吐いて、上を見る。

 俺は歯車の一つにしかなれない。プレコグとはそういうものだ。

 悪用することがないよう、悪用されることがないよう。厳重に守られて、籠の中で生活する。そうして、カナリアのごとく警告を発する。権力者は対処する。終了。

 ここは、俺を閉じ込める籠がない。ここは、俺を守る籠がない。

 悪用しようと思えばいくらでも出来るけど、逃げ込む先がない。

 呪術界は身を寄せるには中々に腐っていそうだ。ただし、俺はデザインベイビーらしい。毒親から身を守る為にも、呪術界にいくしかなさそう。

 その為に五条先生の所に身を寄せるのも、必要だ。あの人封印されるけど。

 今の世界じゃ、予知した結果を映像化するシステムもないだろう。

 

「俺、テレパス凄く弱いんだよな……」

 

 伝えるには額同士をくっつけて、しばし時間も必要である。

 今も使えるかわからないし、そんな事を信じてさせてくれるのか、という疑問がある。

 

 試しにいくつか予知を走らせてみる。

 どの予知でも、宿儺の指を使うことは確定。というか、抗えば抗うほど酷いことになる。

 

 祖父の死が些細なこととなってしまうくらいインパクトのある予知だ。東京壊滅。

 災害を予知したときのように、あるいは大規模犯罪を予知したときのように、目が座る。俺だって、それなりの修羅場はくぐってきたさ。必ず防いで見せる。

 ひとまず、今日は早退して、ずっと祖父についていよう。

 それから、一人で宿儺の指を開放して、食べよう。

 ふと、先輩達を救うことで信頼を得ていたことに思い至る。

 死んでしまうのなら、死んでしまうので構わない。いや、むしろ救いの手は必ず入るはずだ。

 何せ、恐らく我が母は上層部に伝手があるので。

 

 1つ2つ指を取り込んで、後は有用性を示してみるか。

 

 犯罪(前世での話なら)をいとわないなら、賭け事で稼ぎに稼いで護衛依頼を出すという手もある、か。でも雇えるのか? 五条先生が? 目立ってしまうというデメリットも有る。予知能力はできるだけばれないほうが……いや、でもバレないようにするのは出来るのか?

 

 ぐちゃぐちゃと考えがまとまらない。

 考えることは苦手だ。

 今は、爺ちゃんのことだけ考えよう。

 

 

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