腸相は末弟を心配していた。
受肉したと思ったら、血で繋がった相手が死ぬと術式が訴えかけてきた。
そして、まさかの弟が増えたという大事件である。
しかも、自ら死を望んだという。とても許容できるものではない。
原因は、またしてもあの継ぎ接ぎ野郎である。
とても破廉恥な方法で無理矢理子作りさせるのだという。弟もそれは絶望するだろう。
かわいそうに。
未だ魘されている弟を撫でる。
映像が断続的に頭に流れ込んでいく。悠仁の見る未来や、悪夢の映像だ。
未来は碌でもない物が多い。
かわいそうに。
悠仁が、ぼんやり目を開けた。
「……来る……俺を、殺すもの」
「何!?」
唐突に、ベッドの上に小さな刺客が現れて小刀を振るう。
咄嗟に捕獲したのは、未だ幼い子供。ミニマムな弟だった。
「クッソ!」
「悠仁のミニマムサイズだと……」
「こんにちは、子孫」
「……よお。ご先祖様」
あいさつだけかわして、寝てしまう悠仁。
かわいい弟のため、俺がしっかりしないといけない。
「お前の目的はなんだ」
「こいつがいるせいで、俺達が、超能力者が存在しちゃったんだ……! 俺の目的はザ・ファーストを子作り前に殺す事だ!」
「その場合、お前も消えるのではないか」
「望む所だ! 俺なんて、俺なんて消えたほうが……!」
叫ぶ少年に唸る。どうすべきなのだろう。弟の子孫ならば、よくしてやりたいが。
弟自身を殺させるというのは当然ながら却下だ。
子供としばし見つめあったのち、子供が腹の音をさせた。
「ひとまず、食事を用意する」
俺は、伊地知に連絡をした。
「それでは、未来情報を聞かせていただきます」
ピシッとしたスーツの男が少年に事情聴取をする。
なんでも、呪術師ではないから、日本政府の領分らしい。
ようやく毒を解毒し切った悠仁が、困った様子でそれを見ている。
「うん、悠仁! こうなったら、拷問だけは防ぐ方向でいこう!」
「どうやって?」
「君の精子をあちこちに売れば、相対的に君が狙われる可能性は減るよ」
「で、でも……」
「君の遺伝子情報を守り切るのは無理だよ。この子達が未来から来ている時点で、未来は確定していると言っってもいいんじゃないかな」
「でも……」
「その代わり、縛りを結んで、子供達を大事にしてもらうっていうのはどうかな」
「わかった。先生を信じる」
「うん、信じて」
「この兄も、陰ながら力を貸そう。何か問題があれば、俺達で子供達を引き取る」
望まれない子供ほど悲しいものはないからな!
その言葉を吐き出した途端、少年は消えてしまった。
担当者さんが悲鳴をあげる。
「せんせーとお兄ちゃんの決意で、未来が、変わったんだ」
「うーん、なかなかホラーな現象だね」
「せんせー。あれから、三日経つし、プレコグ、してみるよ」
そうして、悠仁ははるか未来を見る。
どうやら、超能力者の子供達が穏やかな毎日を送る姿を予知できたらしい。
納得した悠仁は、自らの遺伝子情報を関係各所に提供することとした。
「で、僕の未来は?」
「封印される」
「僕の未来、硬っ 一応、呪詛師達も追ったり、生徒達を鍛えたり、頑張ってるんだけどなぁ、僕!?」
五条の言っていることは事実である。メカ丸いや幸吉の証言、未来情報から渋谷駅など徹底的に罠の排除をしているし、呪詛師も捕らえている。生徒達も鍛えているし、真希という女などは何かを掴んだと晴々とした顔をしていた。
それでも、捕まらないのだ、我が父であり弟の母であるものは。
だがまあ、弟が無事ならば、目の前の教師がどうなろうと知ったことではないのだが。
「お前の未来はどうなんだ」
「ん、いつも通り。マシになったかな」
「いつも通り、とは」
「政府に捕まって延々と予知」
「大丈夫ではないではないか」
「先生って庇護者がいなくなれば、こんなもんだろ」
「なんとしても五条 悟を助けねば!!」
とはいえ、本当に我が父は小賢しい。どうにか探す方法はないものか。