アニメ三期も終わりました記念で、今回はほんのちょっとだけ、史実の子たちの名前が出ます。
本人登場は、相変わらず今後も一切しません。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
一年の計は金杯にあり。
トゥインクル・シリーズで開かれる重賞のうち、その年最初の週末に開かれる中山金杯と、京都金杯。このレースの勝者の応援チケットを握りしめ、ウイニングライブの優先入場権を手に入れることができたファンは、それからの一年間、幸運に恵まれると言われている。熱心なレースファンにとっては、お正月の最も熱いイベントのひとつだ。
とはいうものの——。
「ただいま」
「おう」
一週間ぶりの寮の部屋は、いつもと何も変わらない雰囲気だった。
「休めたかい」
「アンタこそ」
どさりと荷物をおろして、コートを脱いだ。
「あっついね部屋」
「外が寒いんだろ。寒波も来てるって言ってた」
今年の冬が特別寒いのはその通り。でもそれ以上に、ガンガンに暖房を焚かれた寮の中はまるで春の陽気かと思うほど温かい。特に新しい方のここ美浦寮は、断熱性能がものすごくいいらしく、ラウンジには普段見かけない栗東寮の子がたくさん遊びに来ていた。
「あ、そうだ」
そんなラウンジの光景を思い出して、あたしはハンガーにかけたばかりのコートのポケットへ手を突っ込んだ。
「ホープ、これもらった?」
ベッドの上であぐらをかきながら本を読んでいるルームメイトにそう言って、あたしは取り出したポケットティッシュをぽんと投げて渡した。
「なにこれ」
「寮の入口で配ってた、金杯祭りの引き出物」
「そういうの、ボクが受け取ると思う?」
知ってた。ただでさえ馴れ合わないホープが、あんな賑やかな場所に自分から寄っていくわけないよね。
ただ、いまいち乗り切れないのは、あたしも一緒だった。
「なんか、外野ばっかり盛り上がってる感、あるよね」
今日は一年最初の重賞ということもあって、学園のストリートから、道路を挟んだ寮のエントランスまで「金杯祭り」と称してずらりと出店が並んでいた。さっき見てきた限りでは、外部からのお客さんもたくさん来ていて、聖蹄祭のミニバージョンみたいに賑わっている。聞いた話だと、学園関係者も運営に協力しているんだとか。
だけど、学生のあたしたちにとっては、この時期は別のことが気になる頃合いでもある。
「で、実力テストは大丈夫なの」
「だーから、お祭りよりそっちやんなきゃマズいなって話」
ちょうど、持ち帰って来た荷物からさっそく教科書類を取り出しているところだった。金杯直後の週明けには、学期始めの実力テストが待っている。もちろん走る方じゃなくて、勉強の方のテストだ。おかげで、金杯のお祭り気分を味わっている心の余裕なんてなかった。
「で、それ、家で一回でも開いたの。ずいぶんきれーいに仕舞ってあったみたいだけど」
ホープはニヤついた様子で茶々入れをしてくる。お察しの通り、鞄の中の教科書たちは、先週この部屋で入れた時とそっくりそのまま、同じ向きと順番で並んでいる。これじゃ往復ニ十キロ程度の距離を、本六冊分の錘を持ち運んだだけ。筋トレにもなってない。
「やる気はあったから」
ありきたりすぎる言い訳を広げながら、あたしはとりあえず苦手な英語の単語帳をめくった。
「だいたい範囲広すぎてさ、どっから手を付けていいかわかんないじゃん。そうでしょ?」
「ボクは日ごろの積み重ねがあるんで」
これだからコツコツタイプとは話が合わない。
今回は、中等部最後の実力テストになる。中間や期末と違って、範囲が学期内のことに限定されていないから、実質中等部の三年間で学んだ全部が試験範囲だ。手にした単語帳の厚みは、あたしがこのトレセン学園で過ごしてきた時間の長さを教えてくれる。と同時に、試験対策のつらさも教えてくれる。ある意味、涙ものだ。
「別に、焦んなくたっていいんじゃないの。追試くらったって、キミの次走には影響しないだろ」
「そういう問題じゃないんだよ」
最後だから、いい点を取りたい……っていうのももちろんあるけど、あたしにはそれ以上に、今回の試験で追試を受けたくない理由があった。
「来週、遠征でしょ」
あたしがそう言うと、ホープは一瞬、ピクリと耳を動かした。何か驚くことでも言っただろうかと思っていると、ホープはごろんと横になって、ぼそりと答えた。
「ああ、そうだっけ」
「そのリアクション、忘れてたな」
一週間後、テンダーが京都レース場で開かれる日経新春杯に出走する。頼まれていたわけじゃないけど、この遠征には是非とも同行しておきたかった。
「追試になったらさ、日程被るじゃん」
去年の年末、ショコラの阪神遠征を見て以来、あたしは今後、可能な限りチームメイトの遠征に同行しようと思っていた。あたしももうすぐ高等部の生徒になる。新しくなったチーム〈プルート〉の最上級生として、チームを引っ張る存在になっていきたい。それなら、支えてもらうばかりじゃなくて、支えてあげる側に回ることも覚えなきゃいけない。
「ついてったからと言って、何ができるってわけでもないんだけどね」
「ふうん」
ホープは興味なさげに頷いた。あたしとは逆に、指示がない限りは行かないつもりなんだろう。もともと群れるのが嫌いだし、それどころか忘れてたくらいだもの。まあ、仕方ないか。
「アンタはまたお留守番だよね。まあ精々——」
「いや、行くけど」
「……え?」
意外な言葉に思わず単語帳を閉じて、ホープの方へ振り返る。
「忘れてたんじゃなかったの?」
ホープはすぐに答えなかった。しばらくきょろきょろと耳を動かしてから、ふうっと息を吐きだして「いいだろ別に」と小さくこぼす。
どういうことなのかわからなくて、あたしはそのまましばらくホープを見つめていた。
「……なんだよ」
何か文句でも? とでも言いたげにホープは読んでいた本を下ろして、あたしをギロリと睨みつけた。そしてすぐにもう一度、本で顔を隠してしまった。
(あれ、それでおしまい?)
おかしいな、と思った。いつものホープなら、もうひと言ふた言、何か付け加えてくるかと思ったのに。例えば「ボクが行ったら、ダメなのかよ」とか、そんな感じの言葉を。態度だって、照れくさそうな、気まずそうな表情のひとつくらい見せてくれるはずだ。
なんか、変だな。そう思うと、またあのむず痒い感覚がやって来た。
「ホープ?」
耳の裏をかきながら、あたしはそっと呼びかけた。だけど、ホープは答えてくれない。目も合わせてくれない。それどころか、あたしの声なんて聞こえてないみたいに、表情の変化も、身体の仕草も、反応らしい反応を何一つ返してくれない。
——やっぱり、変だ。この間から、どうもホープの行動がつかめない。
ホープも一緒に、遠征に来てくれる。それは本来あたしにとってポジティブな話のはずだ。あたしたちに心を開いてくれるようになったんだと、喜んだっていいくらい。だのに今あたしは、その反対に妙な胸騒ぎを覚えている。
「……どういう、風の吹きまわし?」
聞かずにはいられなかった。腹の中を探られるのは、一番ホープが嫌がること。それはわかってる。わかってるけど、不確かなものに心を振り回されるのは嫌だ。あたしは、そんなに強くないから。
ホープはやっぱり黙りこくったまま、何も答えない。この感じ、出会ったばかりの頃と似ている。
(あ……)
そうだ。似てるんだ。ホープが初めてここに来た頃の、あのすべてを拒絶するような感じに。……でも、どうして? 少なくとも、今日あたしが家から戻ってきたときは、そんなんじゃなかった。様子が変わったのは、遠征の話が出てからだ。
「何か、気に障ったの?」
「……別に」
ああ、やだな。その言葉、嫌いだ。以前のアンタに戻っちゃったみたいで。
「ねえ——」
「ラウンジに行くよ」
聞きたくない、とでも言いたげにホープはそう言って、むくりとベッドから起き上がった。
「な、なんで」
「キミの勉強の邪魔になってるみたいだから。遠征、行きたいんだろ。なら、ちゃんと勉強しなよ。ボクに構ってないで」
そうして逃げるように、出て行ってしまった。
……まただ。これは、年末のあのときと同じ。
やっぱりホープは、何かを隠してる。あたしの知らないところで、何かが起きている。疑いは、ますます確信に近くなった。
結局その日、ホープは消灯時間ギリギリまで部屋に戻ってはこなかった。あたしの方はというと、こんな状態で勉強に集中できるわけもなく、ひとりでソワソワして、無駄な時間を過ごすだけになってしまった。
明日、トレーナーに聞いてみよう。本人が教えてくれないのなら、別のところを攻めるまでだ。ホープに何があったのか、どうして様子がおかしくなったのか、トレーナーならきっと心当たりがあるはずだから。そんなことを考えながら、ぎゅっと目を閉じた。
○
翌朝、あたしはルームメイトが眠っているうちに、部屋を抜け出した。早起きしたというより、ほとんど眠れなかっただけだけど。
日曜早朝の学園は、昨日のお祭りの雰囲気が嘘みたいにひっそりしている。あたしは真冬のまだ薄暗いメインストリートを、忍び足で駆け抜けた。門限はちゃんと守っているし、悪いことをしているわけじゃないのだけど。それでも誰にも見つからないように、慎重に動いた。
照明がまだ点いていない校舎の中を行き、トレーナー室と部室の扉を確かめる。思った通り、どちらも鍵がかかっていた。チームの仲間たちは、まだ誰も動き出していないみたい。
あたしは意を決して、普段は決して向かうことのない第三の目的地へと向かった。そこは学園の敷地内の端にある、トレーナー専用の寮棟だった。
(たしか、ここだ)
プルートの名簿票に書いてあった棟番号。その出入り口の横に立って、あたしは待った。多分、あと一時間もしないうちに、トレーナーたちは出勤しはじめる。土日と祝日はレースが開催される日。出走当日は朝早くから色々準備することも多いから、担当に出走予定がないトレーナーでも、日ごろの習慣として早く動き出すようにしている人は多い。
(寒っ……!)
予報で言っていた通り、昨日の深夜から、強い寒波が降りて来ている。おかげで風が吹くと、コートを着込んでいても身体が震えるほど冷たい空気が、身体に叩きつけられる。
早く来ないかな。そう思っていると、突然背後から声が聞こえてきた。
「何をしている」
「えっ」
慌てて振り返ると、そこにいたのは意外な人物だった。
「お前は……?」
「フォーミュラ!」
それは、去年の有マ記念を勝って無事三つ目のGⅠタイトルを手にしていた、レイアフォーミュラだった。
「ここで何をしているんだ」
「いや、その、トレーナーの、出待ち、かな。あはは……」
やば。あたし、めちゃくちゃ気持ち悪いこと言ってる。
「あの、誤解、しないでよ。そんなんじゃないから。別に、何にも、ないから!」
「……何を言っているんだ」
あたしが釈明しようとすればするほど、フォーミュラは眉間に皺を寄せた。本当に、何にも察していないなら、それでいいんだけど。
「ふぉ、フォーミュラこそ、何でこんなとこ、いんの」
話を逸らして、逆に言い返してやることにした。ところが、フォーミュラはなんてことはないといった具合に、あたしの顔をちらとも見ずに答えた。
「私も待っているんだ。私のトレーナーは、五分後に出てくる。トラックでの朝トレに同行していただくことになっている」
「……こんな時間から?」
「サイレンススズカ、トウカイテイオーやメジロマックイーン、ナリタトップロードに、ドゥラメンテ。数々の名ウマ娘たちが、みなそうしてきた。朝はウマ娘にとって、最も運動にふさわしい時間と言われている。私もその系譜に名を連ねる身。であれば当然、これくらいの始動の速さは義務だろう」
「……へえ。すごいね」
こう聞くと、ものすごく理知的に聞こえる。実際、ことレースにかけては、フォーミュラはあたしたちの中で誰よりも真摯だし、ストイックと言えるかもしれない。
……ただ、それ以外に関しては酷いなんてもんじゃない。
「で、明後日からの実力テストは?」
「…………」
長い沈黙の後、フォーミュラはぼそりと呟いた。
「なんとか、なる」
絶対なんともならないやつだ、これ。
「アンタって、変だよね」
「変?」
「レースに関わることならさっきみたいにペラペラしゃべれるのに、他のことだとてんでダメでしょ」
「そんなことはないぞ」
「じゃあ、動詞の活用形、全部言ってみてよ」
「……終止」
「そっから始めてる時点でダメじゃん」
「あと、命令だ」
これはひどい。
「よくそれで毎回赤点回避してるよね」
「私も不思議だ」
噂では、試験の点数に随分下駄を履かせてもらってるって言われてるけど……。ありえないとは言えないな。
「アンタってほんと、変な奴」
走ること以外、勝つこと以外ほとんど興味を持たないウマ娘。友達も、慕っている先輩も、可愛がってる後輩もいない。同じ家に生まれたクレセントとも、おしゃべりしている所なんてほとんど見かけたことがない。
「……寂しくないの?」
「ああ」
ふと思って問いかけたことには、間髪入れず返事が来た。
「何か、勝つこと以外の夢とか、目標とか、無いの?」
「無い」
「じゃあ、じゃあ、勝って、どうしたいの?」
「どうしたい……?」
フォーミュラは分からないといった感じに首を傾げた。
あたしはじれったくなって、つい、声が少し大きくなった。
「あたしは、勝って、母さんの力を証明したい。ヒト生まれでも勝てるって、証明したい。そういう、勝つことの先にある目標みたいなものって、アンタには無いわけ?」
「……」
フォーミュラは神妙な顔でじっと前を見つめたまま、動かない。考えているんだろうか。それとも、いつだったかホープが言ってたみたいに、何にも考えていないんだろうか。
沈黙に耐え切れなくなったあたしが、もう一度聞こうと口を開きかけたところで、フォーミュラはようやく、短い言葉で答えた。
「無いな」
「そんなわけ——」
「トレーナー」
あたしが何か言おうとしたのを無視して、フォーミュラが声を上げた。
見れば〈カペラ〉のチーフトレーナーが、朝もやの向こうから歩いてくるのがわかった。
礼儀正しく、深々と一礼した後、フォーミュラはやっぱりあたしの方を見ずに言った。
「そういう考え方を知らないわけではない。私も、先輩方が叶えてきた数々の素晴らしい夢や目標をたくさん聞かされてきた。サトノのジンクスの話くらいは、お前も知っているだろう?」
「う、うん」
「だが、私は先輩方とは違う。母や、トレーナーたちが与えてくれる次の課題を、指示されたとおりに、期待されたとおりにこなしたい。それがすべてだ」
「そんなの……!」
何が楽しいの、と言いかけて、慌てて口をつぐんだ。よく分からないけど、なんだかこれは、フォーミュラに対して絶対に言っちゃいけない言葉に思えたから。
「菊花賞の私はどうかしていた。今は負けたことよりも、あの時トレーナーから指示されたとおりの動きができなかったことが、悔しい」
そして、あたしへちらと目をやると、低く力のこもった声で、付け加えた。
「同じ失敗は、二度と繰り返さん」
そうして、やってきたカペラのチーフトレーナーの元へと駆けだしていった。
トラックコースへ向かいながら二人の話し合う声が、かすかに耳に届いてくる。
『珍しいな。友達でも出来たのか』
『いえ、同級生のルピナストレジャーです』
『ああ、あのヒト生まれの。……参ったな、すっかり目が弱って見えねえや。こりゃもう引退かな』
『トレーナーはまだ、定年まで三年と三ヶ月ありますが』
『そういうこと言ってんじゃ……はは、お前は本当にバカ真面目くんだなあ』
『バカ真面目くん?』
『可愛いって言ってんだよ』
『そうなのですか? 私は可愛いよりも格好いいを目指せと言われて……』
その先は、さすがに良く聞こえなかった。
もしかしたら、あたしたちが思っているフォーミュラと、本当のフォーミュラは、随分違っているのかもしれない。思わぬところで、思わぬものと出会ってしまった。……あれ? あたし、何しにここに来てたんだっけ?
「ルピナス?」
「おわぁ! びっくりした!」
急に名前を呼ばれて、外ラチくらいなら軽く飛び越せそうなくらい飛び上がってしまった。トレーナーだ。寝起きにシャワーを浴びたばかりなのか、身体からホカホカとした熱気が漂ってくるのがわかる。
「あけましておめでとう」
「お、おめでとう」
そういえば、今年会ったのはこれが初めてだった。
「なーにしてるのこんなとこで。まさか、私の部屋に突撃しようとしてたんじゃないでしょうね」
「えーと」
にやりとしながら顔を近づけてくるトレーナーの言葉で、あたしはここに来たワケを一気に思い出した。
「聞きたいことが、あってさ」
「何? 本気で突撃しようとしてたの? 冗談のつもりだったのに」
こわ、とおどけてみせるトレーナーに、目一杯、真面目な顔で尋ねた。
「ホープのことなの」
瞬間、トレーナーの顔色が変わった。
「どうしたの。……まさか、またパニックを起こしたり、した?」
去年の梅雨時のことを思い出す。寮でのことは誰にも言っていないけど、ロッカールームでの騒動は、トレーナーもボンから報告を受けて知っているはずだ。
あたしは黙って首を横に振った。それを見て安堵の表情を浮かべたトレーナーだったけど、あたしの不安はかえって大きくなった。だって「ホープのこと」としか言っていないはずなのに、いきなりこんなことを確認してくるなんて、そうなってもおかしくないと思うほどのことが、起きているってことだ。
「トレーナー、何か知ってるんでしょ。ホープが今年、施設に帰らなかった理由。それから来週の遠征に——むぐっ!?」
「しっ。ルピナス黙って」
言いかけたあたしの口を、トレーナーが両手で塞いだ。そしてそのまま、あたりを警戒するように見回している。
あたしはというと、予想外の行動に目を白黒させるばかりだった。ハッと気を取り直して、すぐさま振りほどこうとトレーナーの手首をつかんだけれど、それを許さない勢いで、トレーナーはあたしの目を真っすぐ見つめてきた。
「ルピナス、ダメ」
トレーナーの言葉と表情に、身が竦んで動かなくなる。怖いくらいに真剣な顔だった。
「ごめんね、急にこんなことして。すぐ手を放すから、今の話、続けないで。絶対。わかった?」
早口でそう囁くトレーナーに、あたしはブンブンと首を縦に動かした。さすがに、言うことを聞かなきゃいけない雰囲気だ。
解放されたあたしは、一旦深呼吸をはさんで、それから尋ねた。とてもじゃないけど、声を発することは出来なかったから、目で。
(トレーナー? あたし、どうしたらいいの?)
トレーナーはそんなあたしの肩に手をやると、こわばった表情のまま、言った。
「……おいで」
そしてあたしの手を取ると、急ぎ足で学園の校舎へと歩き出した。