旧ポーランド領
グダンスク基地
「呆れるしかないな…」
「うん…たった半日でここまで…」
「西側にはこんなにも余力があるのか」
「少ない戦術機でBETAと斬り合ってるのが馬鹿馬鹿しくなるわね」
テオドール、呆れるのも無理はない
リィズがシュタージだっていう事は既に把握している
アネット、ここでは近接格闘が得意な衛士は少ないと思うな
「あ。リィズさんありがとうございます。あの時助けてもらってなければ今頃…」
「同じ中隊の仲間だもの。当然だよ」
カティアはまだ知らない……
「…よくやってくれたなリィズ」
「ううん…そんな…」
「だがBETAとの近接戦闘はなるべく避けろよ。リスクが高すぎる」
義兄妹らしい会話だ、普通の義兄妹のまま振る舞ってくれると僕としては何も言わない。
「最初に切り込む奴が偉そうに」
アネットはテオドールを揶揄う
「あぁいたいた。こんな所に集まってたのね」
ん?この軍服、東ドイツとは違う。西ドイツの軍人か?
僕は蝶の飾りを付けてる少女が突然現れたことにより少し驚いた。
東西共同……。
「(あの女は…)」
「役立たずのテロ国家の皆さん」
「(西側の連中だ。偉そうな態度を……余裕があるな)」
とても信じられない。
「アンタ達は?」
アネットは西ドイツの衛士に話しかける
「ドイツ連邦軍第51戦術機甲大隊・フッケバイン、キルケ・シュタインホフ少尉」
西ドイツの衛士の一人はキルケと名乗り、明らかにアネットやテオドール、カティア、リィズ、僕を見下している。
「(キルケ・シュタインホフ……尻軽そうな女だな。仮に僕が殴りかかれば国際問題に…しかし、この女…一体何しようと!?)」
僕は身構える
「東ドイツ最強なんだっけ?まぁどうせプロパガンダなんだろうけど」
「さっきから喧嘩売ってるの?」
キルケがアネットに喧嘩を売り挑発した。
拙いな……。
「謝罪をしてもらえるかしら。貴方達を救出するために必要ない損害を被ったの。謝りなさい。無能な自分達のせいで迷惑をかけましたって」
なんとキルケは666中隊に向け謝罪要求してきた
僕達が何したというんだ!
BETAと戦ってただけだぞ。
「(此奴、馬鹿にしてるのか…僕達が無能だと…!?)……」
僕は怒りを堪え
「はぁ?こっちはあんた達の砲撃で死にかけたのよ?」
リィズが死にかけたのは事実だしな
「勝手に突っ込んだだけでしょ?あんなの面制圧だけで殲滅できた。パレオロゴス作戦から何一つ変わってないのね。死にたいなら自分達だけで勝手に死になさいよ。私達を巻き込まないで」
………。
「ふざけんな!あたしらが盾になってるからあんたら西の連中は生きてられんのよ!」
「(やめろ、やめてくれ)」
「偉そうな事言ってんじゃ…」
アネットは『偉そうな事言ってんじゃないわよ』と言いかけたところキルケに鉄拳制裁を喰らう
「犯罪国家の分際で…」
「(ビシッと言うしかないか)僕は…」
アネットは怒りの頂点に立ったかキルケに殴る
「キャンキャンと吠えてんじゃねぇよアメリカの犬の分際で!」
キルケとアネットが揉め合いになりカティアがそれを制止しようとするが
「やめてください!私達の敵はBETAの筈です!」
制止できず
小動物みたいな体格は制止できない
テオドールが割り入る
「とっととお家に帰りなさいよ犬っころ!」
「おいやめろ、アネット!」
「あんたらが全滅したらそうするわアカの手先!」
「……」
醜く争っている
「どうして喧嘩しなくちゃいけないんですか!私達は同じドイツ人なんですよ!」
「「こいつと一緒にしないで!!」」
初対面なのに、結構慣れ合ってる、のか?
いやあれはただの喧嘩だ。
喧嘩するほど仲がいい
違いない。
「それくらいにしとけよ」
キルケの上官らしき屈強な肉体を持ちフレンドリーな性格を持つ男がアネットとキルケの尻を触り仲裁
「ひゃ!」
「あぁん!」
「……」
「しょ…少佐…」
誰だって驚くさ
尻触られたら、うん
「ったく…何やってんだお前は…フッケバインの隊長、ヨアヒム・バルクだ。うちのキルケが失礼した。喧嘩したのも何かの縁だ。これからも仲良くしてやってくれ。同じドイツ人としてな」
キルケの上官はヨアヒム・バルクと名乗り両手でアネットとキルケの肩を触りポンと叩いた。
そう、これが真の馴れ合いというものだ。
シルヴィアだったら拒絶するだろう。
クリューガー中尉と僕以外は慣れ合わない
僕は、誰を愛せばいいんだ……?
ベアトリクスか?シルヴィアか?
誰か、教えてくれ……。
数時間後、グダンスク基地のブリーフィングルームで第666戦術機中隊は次の作戦会議をしていた
「BETA梯団第二波の形成確認。敵総数およそ4万。我々ワルシャワ条約機構軍は南部沿岸で侵攻を真正面から受け止める。我が軍を中央として右翼にアメリカ軍、左翼に欧州連合軍が展開。我々がBETAを遅滞させてる間に重金属雲を展開し面制圧で一気に包囲・殲滅」
クリューガー中尉は、真摯と説明する。
聞き逃したら駄目だ。
「これが対BETA包囲戦ドクトリン、アクティブディフェンスだ」
アクティヴディフェンス。
これが東側諸国の戦術……!
シルヴィアが挙手しアイリスディーナに問いかける
「西側が面制圧にこだわる理由は?」
「可能な限り安全にBETAを減らすためだ」
可能な限り減らす…か。
アイリスディーナはそう解説する。
「他に理由があるんじゃない?」
「西の衛士はBETAとの近接戦経験が少ない。できるだけ安全策をとりたいのだろう」
最もだ。
西側は近接格闘の経験は少ない。
……負け犬だな、西側の連中は。
自分は巻き込みたくないから守りに入るのか
臆病者がやることだよ、そんなの。
「じゃあ面制圧に失敗したら?」
とシルヴィアはアイリスディーナに問い返すが
「失敗など許されん!我が国の威信をかけて成功させねばならない!」
イェッケルン中尉のプライドをかけてまで戦うんだな
党と盾の忠誠……。
「…うまくいくといいわね」
ホント、上手くいくといいな。
僕は少し期待感を高めた。
戦術機揚陸艦 ペーネミュンデ
甲板
テオドールとリィズは不満愚痴りつつリィズと会話していた。
「アクティブディフェンスか…」
「酷い作戦だよね…私達を囮にするってことでしょ」
不安がるリィズ
「危険なのはどこも一緒だ」
冷静に振舞いながら話すテオドールはリィズの事を気にかけた。
「冷静だね。昨日だって酷い事言われたのに我慢してたし…西の人間と話すなんてよくないよ。また密告されたら…」
「シュタージに怯えてるだけじゃ何もできない。BETAと戦うには西の戦力が不可欠だ…」
テオドールはシュタージと戦う事を決意する。が
「もしかしてお兄ちゃんはシュタージと戦うつもりなの…?」
「なんでそんなこと…」
「だってシュタージを怖がるなだなんて…」
「俺はそこまで無謀じゃない。祖国を守るためにも潰されるわけにはいかない。ただそれだけのことだ」
「信じていいの?」
「あぁ」
「うん…わかった…」
BETA梯団第二波確認
次々と接近してくるBETA群
国家人民軍もBETAに向け面制圧
《この規模の包囲殲滅戦を成立させるなんて…》
アネットが西側の戦術機の実力を見て驚いてる
《これが俺達と西側の差か…あいつらが怒るのも当然だ》
「(東側だけではあんな多数のBETAには勝てない…イェッケルン中尉は悔しそうな顔してるのも分かる…)」
《戦力も戦術も俺達と違いすぎる。西側の連中に俺達の力なんて必要なのか…?》
支援砲撃隊は光線級に撃激された模様、重金属雲濃度も低下
《同志中尉。我々が何を成すべきか最早口にするまでもないな?》
《まさか…!?》
アイリスディーナ、何をする気なんだ?
僕は黙り込む
《私達の任務は予備兵力としての待機よ!他の命令は出ていない!》
本来ならそうだ、が状況が変わることもある
何か模索してるのか?
《我々は常により多くの命を選択してきた。今選ぶべきは欧州連合軍の命だ!》
《だが重金属雲濃度が低いままでは…》
………西側の力を、借りると言うのか?
《海上の全艦艇による集中砲撃があれば光線級の陽動は十分可能…それにフェニックスミサイルを装備するジョリー・ロジャース。彼らがいればより成功率は上がるだろう》
《西側の力を借りろと…?》
《逆だ。我々が西に手を貸してやるのだ》
そうきたか、流石東ドイツ最強の戦術機中隊の長だな。
賢明な判断だ。
《そんなの許されるわけ…》
ない。とでも言いたいのか?イェッケルン中尉
もうそんな事言ってる場合じゃないぞ!
《国連軍司令部よりワルシャワ条約機構軍第666中隊へ。機体状況を確認したし》
国連軍司令部から通信が来た
アイリスディーナはそう急な対応し国連軍司令部と連絡を取る
《こちら第666戦術機中隊…》
アイリスディーナが国連軍司令部のCPとやり取りしてる次の瞬間、政治将校らしき将校が割り込んできた
歳は50代~60代だろう
イェッケルン中尉と同じく眼鏡をかけている
《応答する必要はない!666中隊は引き続き待機!分かったな、イェッケルン中尉!本作戦失敗の責任は西側にある!連中に対価を支払わせろ!》
何を呑気なことを言ってるんだ!状況を把握してくれ!
ここで待機したら犬死になることぐらい分からないのか!?
《第666中隊より国連軍司令部。我が隊は損傷機なし。コンディションも良好だ。この状況を打ち破れるのは我々のような光線級吶喊に長けた戦術機部隊のみ》
《だ…黙れ!私の命令は党の命令だぞ!》
自分の事しか考えない…不埒な政治将校だな!
《イェッケルン中尉!この女から指揮権を剥奪しろ!今すぐだ!》
《い…いけません同志少佐!我が隊が東ドイツ最強であるのは同志大尉の指揮・統率があってこそ!それが失われれば我が隊は壊滅しかねません!》
《構わん!戦術機中隊の存亡より党の政治的威信の方がはるかに重要だ!》
ふざけるな!僕達はアンタの人形じゃない!
BETA梯団と交戦中の部隊の通信音声が聞こえる
《うああああああああああ。た、助け》
《此方戦車師団、BETAに…ぐあああああ》
《壊滅…!撤退を!》
兵士たちの断末魔だ
聞いても悲しくなる
テオドールがイェッケルン中尉に魂の叫びで訴えかけた
《同志中尉!あんたこれでいいのか!このままじゃみんなBETAに磨り潰されるだけだ!》
テオドール……。
アンタもただ戦ってる訳ではなく、大事な人を守りたいために。
僕も分かるよ
愛すべき人は僕もいたんだ。
《より多くの命を救うために俺達はここにいる。そんなこと666中隊の一員ならわかってるはずだ。あんたはどうしたいんだ!グレーテル・イェッケルン中尉!自分が何をすべきなのか、本当は何が正しいのか、少しは自分の頭で考えやがれ!》
………。
《政治将校にその口の利き方…後で後悔するなよ》
《同志中尉!?》
テオドールが驚き、アイリスディーナが小さく微笑み……そしてイェッケルン中尉は大きく息を吸い込み、第666戦術機中隊付政治将校として裂帛な号令をかけた
《同志少佐。後は私にお任せください》
《な…何だ…》
《さぁ行くぞ!同志諸君!我々は東ドイツ最強の第666戦術機中隊、シュヴァルツェスマーケンだ!不埒な異星起源種に!頼りない西側の連中に!我々の力を見せてやれ!》
僕は少し笑みを浮かんだ。
「政治将校も伊達じゃないんだな」
《総員跳躍開始!我に続け!》
アイリスディーナの号令で666中隊は西側の戦術機部隊の援護に向かった。
光線級吶喊成功後砲撃による国連軍による面制圧の作戦
次々と来る突撃級を回避し前へ進む。
《総員傾注!我々はこれより光線級吶喊を敢行する!相討ち覚悟の特攻作戦だ。そこでクシャシンスカ少尉・ヴァルトハイム少尉を予備機として後方に残す》
ここで決めるんだな
なら、気を緩められないな!
《ど…どういうことですか?》
カティアは疑問抱く
《中隊全滅だけは避けねばならない。カティア。お前には成すべきことがあるのだろう》
《必ず生きて帰るさ》
《テオドールさん…》
《これで我々は一蓮托生だな》
《馴れ合うつもりはない!私は自分が信じることをしたまでだ!》
《やっぱり同志中尉はそれぐらいでないと張り合いがないよね》
ジョリーロジャースと合流
《ガッデム!あれが旧世代機の動きだって?》
《クレイジーだぜビーストナンバー!》
アメリカ軍も驚愕している。
いやアメリカ海軍衛士だ。
《いたぞ!ジョリー・ロジャース!光線級だ!》
光線級発見!
《了解。先導を感謝する》
《全機フェニックスのロック解除!撃ち尽くせ!!》
フェニックスミサイル発射
光線級BETAほぼ撃破
しかし
《ぐが!》
要塞級の攻撃によって米軍機1機撃墜された
《フォ…要塞級…》
《ジーザス…》
近くで見るとデカいな……。
下手に近づけられない。
《突っ込むぞ!テオドール!》
《了解!》
生き残ってた要撃級がテオドール機に飛びつくが撃墜
《しまった!》
要塞級の攻撃に当たりかけるがアイリスディーナがテオドールを庇い多目的装甲で
死ぬ気か!?
《テオドール…貴様が掴むんだ…未来を…》
《アイリスディーナ!!》
「(ここで死ぬ訳にはいかない!)!」
僕はテオドールの援護をし要塞級の脚を突撃砲で発砲し弾がなくなる迄撃ち尽くした。
「行け!テオドール」
光線級残りわずか
アイリスディーナは無事だ。
光線級にテオドール機の腕が撃ち抜かれる。
残った片腕でナイフ装備
《舐めるなぁ!!》
光線級がレーザー照射する寸前にナイフで刺し込み
そして………僕達は無事生き残った。
次は祝賀会です!