第666戦術機中隊……シュヴァルツェスマーケン
光線級吶喊(レーザーヤークト)を得意とした歴戦を誇る東ドイツ最強と謳う戦術機中隊だ。
僕はその中隊の任務を終えた
そして同時にリィズもだ。
666中隊はイェッケルン中尉、テオドール、カティア以外全員拘束
アネット、ファム、シルヴィア、クリューガー中尉は占拠したベーバーゼー基地の地下に軟禁。
アイリスディーナはシュタージ本部へ連行された。
漸く封印を解く時が来た。
クスィーガンダムを
大隊長執務室にて僕とリィズはベアトリクスに呼び出しがありそこで今までの経緯をすべて報告した。
「リィズ・ホーエンシュタイン中尉、現時点を以て戦術機大隊『ヴェアヴォルフ』に原隊復帰します」
「同じくハサウェイ・ノア少尉、原隊復帰します」
下級少尉から少尉に昇格
僕とリィズはベアトリクスに向け敬礼する。
「特別任務ご苦労だったな」
ベアトリクスは労いの言葉をかける
「ありがとうございます、少佐」
「申し訳ありません、2名を取り逃がしてしまいました」
リィズは真顔でベアトリクスに報告
「あの2名を取り逃がしたことについては気にしなくていい」
ベアトリクスはリィズと淡々と会話しニコラは冷や汗かきながら会話を聞いてるだけだ。
僕は黙って聞いた
「それより貴女には666中隊の尋問をお願いする」
ベアトリクスはリィズにアネット、ファム、シルヴィア、ヴァルターの尋問を担当をお願いした
丁重に扱わないのは確かだ。
リィズ、アンタは……!
「気心が知れた仲間だからやりやすいでしょう?」
しかし選択肢は正解に近い。
ニコラの顔を見ると、そこには明らかにリィズの事を嫌い睨んで軽蔑してる表情だ。
「…了解」
反対する意思がない
「私は反対です!」
ニコラ、アンタがやろうと言うのか?
「同志大尉」
ベアトリクスはニコラに向け凛とした表情でこう言い放つ
「口出し厳禁よ。ホーエンシュタイン中尉が666中隊の4人を尋問するのが適任よ」
「しかし!」
僕は勇気出してはっきりとベアトリクスに言葉をぶつけた
「僕も反対です、何故ホーエンシュタイン中尉が適任だと思うのですか?」
「同志少尉、不満あるのかしら?」
「尋問ではなく拷問ですよね?そんなことしたら国連人権委員会が訴えられます!」
リィズは冷めた目で僕に向けアイリスディーナを侮辱し軽蔑した
「ハサウェイ、貴様はあの女の肩を持つ気なのか?あんな女はお…エーベルバッハ少尉に相応しくない。他の女もだ!今頃他の男と咥えてるわ」
「何が言いたいんだ?」
「あんな淫乱女!お兄ちゃんに相応しくないのよ!」
そうかい、そういう事だったのか!
私利私欲の為に、義兄を手にしたいがために666中隊の衛士達を傷付ける
此奴、信用できない
だが、ここで殺したら戦力が削ってしまう。
クスィーガンダムを封印解かれる時はリィズは用済みだ。
盲目的な愛情だな
「……そうですか、これは失礼しました同志中尉。ですが貴女のやり方が不満を持つ人はいる事は確かなのでそこはご了承ください」
僕はリィズに畏まった言葉を返す。
少尉の階級では、助けることは出来ない
ベアトリクスは真顔でリィズを退室するよう求める
「下がっていいわ」
「ハッ!では」
リィズは大隊長執務室から退室した。
「ハサウェイ・ノア少尉、貴様が最初に乗ってきた機体の封印を解く時が来たわ。お疲れ様、よく頑張ったわね」
と言ってベアトリクスは僕に近づき頭を撫でる
その場を見たニコラも羨ましそうな表情で僕を見ている
ニコラ、やっぱりアンタはベアトリクスの事好きなんだな。
「そういえばドミニオンに収容したブロニコフスキー少尉は何処に」
「衛士として復活し今は資料室で書類整理しているわ」
そうか、生き延びたんだな。
「機体とパイロットスーツは返却する。あとで自室に置いておくわね」
封印解かれた
これで僕はマフティーとして戦える
「機体は事前にこの基地に配備したわ。あとで格納庫に行って確認しなさい」
「了解しました」
ベアトリクスは不敵な笑みを浮かべ僕の顔に近づき頬に触る
その目は、愛しい人と再会できて歓喜してる目だ。
「やはり貴方は似ている……」
「?」
「似ているわ……ユルゲンに」
アイリスディーナの実兄の事か……。
僕が何処が似ていると言うんだ?
「何処に似ています?」
甘く漂う美しい声で話すベアトリクスは僕の耳元でこう囁く
「そうね……神みたいに悪魔的な判断を下すところかしらね」
成る程
僕が神みたいな悪魔的な判断を下す男か。
そしてベアトリクスは僕の顔を豊満な胸で埋める
「待っていたわ……」
「!」
ニコラも驚くのも無理はない
「き、貴様!少佐から離れろ!」
「あらあら?羨ましい?」
ニコラは泣きながらベアトリクスの背後に抱き着き腕を回す
「うぅ…少佐……私は少佐の事が大好きなのに……いなくなると寂しいです!」
ニコラが号泣しベアトリクスは僕の顔を豊満な胸で埋めたまま困惑する。
「泣かないで、ニコラも私の傍にいていいわよ」
慈悲なる母……。
温かい…。
ベアトリクス、本当に温かい
その温もりを僕は感じている
もっと温もりを感じさせたいか、僕はベアトリクスを強く抱き着く
「…いいわ、気が済むまでそのままでいなさい」
ベアトリクスはクスっと笑みを浮かび、ニコラもベアトリクスを抱き着いたまま優しい笑みを浮かんだ。
リィズは2名の兵士と共にファムを尋問拷問し部下にファムをバケツで水攻めした。
この時点でのファムは憔悴しきっていた
何時間も尋問拷問受けてるだろう
「もう一度お尋ねします。カティアちゃんの正体を教えてください。あの子がただの亡命者じゃないことはわかっています」
リィズはこう淡々と話す。
ファムは勿論仮にカティアの正体が知っていても易々と吐かないだろう。
「もうやめてリィズちゃん…今ならまだ引き返せるわ…」
ファムは涙を流しそうな表情でリィズを訴えかける。
しかし
「話聞いてました?」
リィズはそれを切り捨てる
それでもファムは優しき言葉でリィズを訴えかける
「貴女はまだ心を捨てきったわけじゃない…だからあの時ベルンハルト大尉を殺さなかった…そうでしょう…?」
その言葉で心を動かせる。と言うのはなかった。
リィズは部下に合図しファムの頭を机に強打させ憔悴したファムを蹴り上げる
「いい気にならないでね」
後ろにいてる兵士もドン引きしている。
「あとは貴様らに任せる。生まれてきたことを後悔させてやりなさい」
「「りょ、了解」」
罪無き衛士を地獄へ落とし自らの願望で欲を暴走している
そう、リィズの顔は目障りだから消えてほしいと自己中心的に願う悪魔みたいな顔だ。
そして悪魔みたいな表情で笑みを浮かべるリィズはシルヴィア、ヴァルターがいる拷問部屋に入り、ヴァルターを麻酔注射で眠らせ、シルヴィアは……リィズを心の底から憎み般若みたいに怒りを表し睨んでいた。
シルヴィアが拷問受け悲鳴上げてるのを聞いたアネットは営倉でただ涙を流し聞くしかなかった。
数分後
ベーバーゼー基地の応接室でベアトリクス含むヴェアヴォルフ大隊衛士達が待機していた
僕もここにいる。
ベアトリクス、ニコラ、カタリーナ、ロザリンデは衛士強化装備を身に纏っているが僕だけは黄色と黒のパイロットスーツだ
いよいよだ、クスィーガンダムに乗れる
「ブレーメ少佐、すぐさま前線出撃とは戦況芳しくないのでしょうか?」
前線と言うのは恐らくBETAでの防衛線だろう。
カタリーナはそれを気にしていたが
「貴女が気にする事?」
と、ベアトリクスは即答する。
「申し訳ありません!」
僕は何処に任務就くかベアトリクスに問いだす
「ブレーメ少佐…」
ニコラが立ち塞がる
「出撃前だぞ」
「ニコラ、良いのよ」
話、付き合ってくれるのか?
「僕は何処に任務就けばいいんだ?」
「貴様はBETA駆逐任務だ」
ニコラが割り入る
「ニコラ」
ベアトリクスは優しき声でニコラに向け笑みを浮かべる
そしてベアトリクスは僕の顔を見てこう言った。
「……貴方は、基地の保守に当たりなさい」
この基地の守備はファルカとリィズが就く
そして僕もだ。
リィズが漸くここに
「ヴェアヴォルフ大隊出撃する。貴様達分隊は基地の保守に当たれ」
「了解」
ゼーロウ要塞陣地でのBETA駆逐任務へと出撃に向かった。
不安を募らせる
ファム、シルヴィア、アネット……僕は。
「シルヴィア…ごめんね…私誰も守れなかった…」
営倉で壁が響き渡るほどの悲鳴を聞いたアネットは悲しき表情になり涙を流し後悔していた。
足音が聞こえた途端、営倉の鍵を解除し誰かが入ってきた
リィズだ、先程の2人の兵士も同行している。
「出て下さい」
リィズはアネットを営倉へ出し部下2人が抵抗できないよう抑える
ジト目で冷静に装い誇らしげな顔だ。
「シルヴィアは…ファム姉は生きてるの!?無事なの!?」
アネットはファム、シルヴィアの心配していた。
長く一緒にいたから仲間意識を感じただろう
「今のところは。でもかわいい後輩が同じ目にあえばどんな反応をするかしら」
リィズはアネットを煽る。
「アンタ…自分が何をしてるかわかってるの!?テオドールはアンタをシュタージから救うためにずっと戦ってきたんだよ!ベルンハルト大尉と一緒に!」
泣きながらリィズに訴えかけるがリィズはアネットに往復ビンタを食らわせる。
アネットはリィズに睨み付けた。
ただ睨みつけただけで何も解決はしない
リィズはアネットを見下して外道たる外道みたいに醜悪な表情になり、彼女を営倉に放り込んだ。
一方その頃、ゼーロウ要塞陣地は国家人民軍のバラライカや戦車、その他諸々で進撃してくるBETA群との戦闘を励んでいた。
上空に見慣れないモノが飛行しゼーロウ要塞陣地にやってきた
ドミニオンだ。
ドミニオンはモビルスーツ……デュエル、バスター、フォビドゥン、レイダー、カラミティ、ストライクダガー10機で国家人民軍兵士達を支援砲撃。
そのパイロットたちは個性的過ぎる3人
緑色の髪型で目隠れの少年
金髪オールバックの少年
薄赤髪の如何にもゲーム好きな少年
「アレやるよ」
「さっさとやろうぜ」
「ですね」
その3人はシャニ、オルガ、クロトだ。
シャニのフォビドゥンは重刎首鎌で接近してくる戦車級BETAに向け一振りし切り刻む
「……うざい」
別方向から来るも一振りで切り刻む
「オラオラオラァ!」
オルガのカラミティは125mm 2連装高エネルギー長射程ビーム砲、337mmプラズマサボット・バズーカ砲と同時に戦車級BETAに照準を合わせ連射
「そいやーーーっ、撃滅!」
クロトが乗るレイダーは突撃級BETAの背後に回り接近、瞬時にMSに変形して破砕球で打撃を与え駆逐
要撃級、光線級、重光線級が襲来
3人もBETAの物量により苛立ちが見えてきた
「数、多くね?」
「ぶっ殺せばいいだろ」
オルガは580mm複列位相エネルギー砲で要撃級BETAを駆逐した。が乱入する形でシャニがオルガの背後から光線級がレーザー照射しようとするのを目視し誘導プラズマ砲で撃破
「邪魔すんな、シャニ」
「後ろががら空きだよ」
クロトが2連装52mm超高初速防盾砲でシャニに向け砲撃
シャニはそれを躱し、戦車級BETAを撃破
「クロト、お前!」
シャニはクロトに向け88mmレールガンで照射
戦車級BETAを撃破
「シャニ、てめぇ!」
シャニは鼻で笑う
3人は仲間割れしながらBETAを次々と駆逐している
それを見ていた国家人民軍の戦車兵や砲兵、衛士達も驚愕
「あれ、仲間割れじゃないか」
「いや、しかし次々とBETAを駆逐してるぞ」
《変わった戦法だな……あれが別世界から来た戦術機とは思えない動きだ》
《いや、あれは戦術機ではない。あんな機体見たことない》
《データベースに載ってない……こりゃあ頼もしいぞ!》
《聞こえるか?こちらドミニオン所属のルドルフ・シュタイナー大尉だ。援護に回る》
ルドルフと名乗った地球軍のパイロットはストライクダガー率いり一斉にM703 57mmビームライフルで戦車級BETA、要撃級BETAに向け砲撃
ドミニオンはゼーロウ要塞陣地上空に飛行しており、艦橋にいるアズラエルはオブサーバー席に座り秘匿回線でシャニ、オルガ、クロトを連絡
「あー、皆さん。紅い機体と緑色の機体複数来ても撃ってはいけません。分かりますね?」
《撃たなきゃいいでしょ?》
《うぜぇ》
《ですね》
「くれぐれも勝手な行動をしないように。君達はブレーメ少佐の保護下になっていますからね」
光線級が次々と増え襲来
《クソ!キリがねぇ》
ストライクダガー部隊もBETAの物量に苦戦
《大尉、エネルギーがもう限界です!》
《駄目だ!我々はブレーメ少佐の保護下でありこの防衛線は死守しなければならない》
《ですが、もう持ち堪えません》
上空に紅い戦術機と深緑色の戦術機が支援に来た。
ベアトリクス率いるヴェアヴォルフだ
「ふーん、あれが、戦術機という機体」
「おっさんが味方だって力説してたからね」
「知らねぇ、とにかく撃って撃って撃ちまくればいいだろ!」
光線級がシャニに向けレーザー照射、バックパック両側に装備されている可動式のシールド、エネルギー偏向装甲「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」によりレーザーを跳ね返す
「フンッ」
そろそろエネルギーが切れる
「チィッ、時間切れか!」
3人は仕方なくドミニオンに帰投
ストライクダガー部隊は戦闘継続するが、次々と撃墜され残りは1機となった。
「ここでもダメか……」
と言って、ルドルフはもう駄目だと悟り戦車級が機体にしがみ付きつつ自爆装置を作動し自決
《ドミニオン、聞こえるかしら?》
艦長席に座ってるナタルは慌てて無線機の受話器を取る
「はい、バジルールです」
《あとは我々に任せて引きなさい》
受話器を奪い取るアズラエルはベアトリクスに反発
「生憎、そうはいかない状況になってしまいましてね…僕の提案を受け入れて貰えないでしょうか?」
《引きなさいと言った筈よ、提案とは何かしら?》
「そうですね……反乱軍の拠点地に行って貴女の知人であるアクスマン中佐と話がしたい」
「アズラエル理事、何を企んでいるのですか?」
「如何でしょうか?」
…………。
《……貴方がそこに行くとしても何も変わらないわ》
アズラエルは苛立ちが見える
《よって、貴方の提案は却下よ》
「僕は貴女の為に行動を示したいのです。この世界に来てとても満足している所存です」
しつこく粘るアズラエルはベアトリクスに交渉する。
「悪くない提案だと思いますが、如何でしょうか?」
アズラエルはナタルの顔を伺い、シャニ、オルガ、クロトが帰投したことを確認し再出撃を要請を試みる
「艦長さん、フォビドゥン、レイダー、カラミティの再出撃を」
「帰投したばかりですので今すぐは無理です」
「……貴女方は一撃離脱戦法しながらBETAを駆逐。そうですね?」
《……良く喋る男は嫌いよ。通信切るわ》
ブツ!
通信終了
「高度を下げてBETAに照準し、そのまま待機してください。これは命令ではなくお願いです」
「光線級に撃墜されてしまいます」
「シュタイナー隊、シグナルロスト!反応がありません」
「デュエル、バスター双方シグナルロスト!」
アズラエルはニヒルな顔で肘を曲げつつ掌を曲げる
「……本艦は高度を下げBETA群に向け攻撃態勢しつつ待機。宜しいですね?」
「流石艦長さん、明確な判断で良いです」
アズラエルの文字通り、ヴェアヴォルフは1時間経たず、戦車級BETAを数体駆逐してから離脱。
ベーバーゼー基地に帰投した。
僕はファム、シルヴィア、アネットは救えない
救えないんだ。
そんなこと思いつつ僕はベーバーゼー基地の資料室にあるパソコンで反体制派の情報知る為に詮索していた
マウスを左クリックし漁ってたら……。
「!」
新聞の記事だろうか?
最近の情報が掲載している
第666戦術機中隊、人類の勝利を導く
……他のも調べたが何処も黒い線で見えなくなっている。
「だとしても、今の体制の毒を浄化しなければならない」
資料室の扉が開き誰か入ってきた
「あの……マフティーさん?ですよね」
イングヒルトだ。
シュタージ制服を身に纏っている
「イングヒルト、少し聞きたい事あるけど」
「はい」
「ファム、シルヴィア、アネット、クリューガー中尉は反体制派に関与してると思うか?」
…………。
「分かりません……」
「そうか、僕は関与してないと思う。ベルンハルト大尉は前々から関与してた事は確かだ」
イングヒルトは悲しげな表情で僕の顔を見る
「マフティーさん、本当の事聞かせて貰えないでしょうか?」
?
僕の正体か。
「私はニコラ大尉の事好きになって一緒に幸せな生活を送ってます。がどうしてもマフティーさんの事が知りたいのです」
アイリスディーナは何処かの収容所にいる。
その何処かは分からない
あとでベアトリクスに聞くか
「すまない、イングヒルトには言ってなかったな。僕の本名はハサウェイ、ハサウェイ・ノアだ」
イングヒルトは寂しい表情になる
「そうだったんですね……」
突如、僕はイングヒルトに抱き締められる
「アネットとファムお姉さん…シルヴィアにクリューガー中尉を失ったら666中隊は壊滅です!」
それは確実になるだろう。
メリットがあるのはリィズだ
リィズは666中隊の壊滅、アイリスディーナ含めアネット、ファム、シルヴィア、ヴァルター、カティアの死を望んでいる。
そう考えると戦死扱いになったイングヒルトが悲しくなるのも無理はない
僕はイングヒルトを抱き締める
「僕が何とかするよ」
「え?」
「僕だって失いたくない!ただ、今の東ドイツでは腐った連中が多い。粛清しなければならない」
僕はイングヒルトの顔に近づける
「だ、駄目ですよ。私はニコラ大尉が…」
「……どうやって救い出すか…。悩んでいるんだ。だからアンタの力が必要なんだ」
せめて、勇気だけを分けてくれ
イングヒルトは無言で目を瞑り僕の頬に軽くキスした。
「大尉には内緒ですよ」
「すまないな。巻き込んでしまって」
「良いですよ。これが大尉の役に立てるのなら私は」
イングヒルトが言いかけようとした時、ファルカが資料室に入る
その顔は軽蔑している表情だ。
「何やってるんです?2人共」
ファルカなら知ってるかもしれん
「ファル……いやミューレンカンプ少尉、聞きたい事がある」
「何ですか?」
疑ってるな……リィズに言い包めたのだろうか
マフティーを信用してはいけない
「ベルンハルト大尉が収容されてる場所だが、何処の収容所なのか知りたい」
「……」
口を割らない、か。
「何の為に?」
「尋問だ」
「ベルンハルト大尉は国家反逆罪で拘束。収容された場所は」
監視カメラや盗聴器を気になったかファルカは僕の手を引っ張り基地の外へ連れ出す
「来てください。私も聞きたいことあるので…ブロニコフスキー少尉も一緒に来てください」
「はい」
イングヒルトも連れて基地の外へ出た
基地の外へ連れ出した僕とイングヒルトはファルカにアイリスディーナが何故反体制派に関与してるかリィズの目的と真意を聞き出す。
「外なら盗聴されることはないでしょう」
基地の周りを見渡しファルカは僕の顔を見る
「マフティー……ハサウェイ・ノア」
ファルカは咳込みし口調を変え話し始める
「貴様は何の為にここにいる?何故ベルンハルト大尉の居場所を聞くの?そして愛しきリィズ先輩の恋路を邪魔するつもりですか?」
ファルカ、アンタはリィズに過信し過ぎだ。
その過信こそ自分を破滅に導くってことが分からないのか?
「恋路……?他人を痛みつけて誹謗中傷してまでテオドールを奪う事が恋路だっていうのか!?」
イングヒルトはドン引きしている
ファルカは真剣な眼差しで僕の顔を見て話し続ける。
「貴様がそう解釈するなら別に構わない。私はリィズ先輩の斜め後ろでその恋路を見守るだけ……ただ、それだけ」
………。
「でも私もリィズ先輩が好きなんです!リィズ先輩の為ならどんな手段選ばず何だってやります!貴様は分かっていない。リィズ先輩がどんな思いで残酷で悲しい日々を送っていたかを!」
3年前のリィズか
純粋な少女に戻ることは無理だろう。
「リィズは暴走している。何しでかすか分からない!」
「だったら黙ってリィズ先輩の恋路を見守ればいいのよ!」
何だ……まさかリィズを崇拝してるのか?
黙っていたイングヒルトは口を開き黒い笑みで本音を言い放つ
「それは、本当の恋路とは言えません。ただの盲目的な愛です」
イングヒルト……アンタも戦おうとしているんだな。
「リィズ・ホーエンシュタインを早く止めるべきです!ファムお姉さんとアネット、シルヴィアが死ぬ姿なんて見たくない」
号泣したイングヒルトは悲しき表情でファルカに嘆願する
その一粒の涙は早く助けてほしい、救いたいという意味だ。
外道たる行動をとるリィズを放置しておくわけにはいかない
「ハサウェイ、貴方はどうなんですか?」
イングヒルトは涙目で僕の顔を見る
「………ファルカ」
「貴様……リィズ先輩を」
「悪いがリィズは粛清する」
ファルカはこの言葉を聞いて怒り爆発し僕の胸倉を掴む
「!リィズ先輩は何も悪くない!貴様はリィズ先輩を…先輩を……先輩を思いやる気持ちはないのか!」
般若な顔だ
ファルカはそこまでリィズの事を想ってたんだな。
「リィズ先輩を救うべきです!貴様は……」
次第に泣き崩れ地面に膝をついた。
「うぅ……私に優しく接したのはリィズ先輩です。私だって死ぬのは嫌です!何とか救う方法ないんですか!?」
…………。
「リィズ先輩……うぅ…先輩……もう、嫌だ。こんなの…」
「ファルカ……アンタのリィズに対する想いは確かに受け取った。が酷なこと言うがリィズはこの国の毒であり浄化しなければならない。アンタはそれでいいのか?」
僕はファルカに怒りを向け咆哮する
「アンタはそれでいいのか!?リィズは亡命者殺しやってまでまた犠牲を生み出そうとしている!それを阻止する…アンタの協力が必要だ!」
「え?」
「リィズを止めてくれ!アンタがそう想っているなら出来る筈だ!」
そうだ、アンタなら止められる
本当にそう想ってるなら、リィズを止められる筈だ
僕は信じることにした
「ハサウェイさん……」
イングヒルト、アンタは分かってくれるよな
ファム、シルヴィア、アネット、ヴァルターを救いたいと。
「……分かったわ。マフティー・ナビーユ・エリン……そこまで言うなら協力するわ。ベルンハルト大尉が収容されてる場所はカウルスドルフ収容所です。そこにベルンハルト大尉がいる筈です」
「ありがとうファルカ」
ジト目で僕の顔を伺う
「何か僕の顔に付いてるのかい?」
「いえ何も」
その時だ
僕の直感に何かが接近してくる
武装した民兵と戦車、戦術機……。
これはまさか……!?
近付いてくる!
「ファルカ、急いで戦術機に乗れ。僕も機体に乗って待機する」
血相な顔をした僕はファルカに言い向ける
「マフティー……リィズ先輩を」
「善処するさ」
イングヒルトは自分を忘れていないかと問いだそうとするが、ファルカはこう言い放つ
「ブロニコフスキー少尉、貴女は大尉と合流してください」
「分かりました」
ファム、シルヴィア、アネット……これが最後の救いの手だ。
テオドールに…心のケアをしてくれ。
僕はクスィーガンダムに乗り込み反体制派がこの基地乗り込むまで待機する
ファルカは急いで強化装備に着替え自分が乗るチボラシュカの管制ユニットに座りそのまま待機
イングヒルトは基地の屋上に行きヴェアヴォルフが戻ってくるのを待ち続けていた。
反体制派が基地に襲撃してきた
損害はチボラシュカ5機
僕はクスィーガンダムのコクピットの中で反体制派がこの基地からいなくなるのを待つ
ん?秘匿回線……。
モニターを表示し秘匿回線を繋ぐ
《マフティー、周りを見てください》
「ん?」
基地内は反体制派の構成員と兵士、666の整備兵がシュタージ兵士、将校、寝返った666の整備兵1人を鉄パイプで薙ぎ倒している。
逃げる準備してるのか?
《どうしますか?》
「整備兵に罪はない。見逃してやれ」
《了解》
もう一つ秘匿回線繋がれた。
誰なんだ?
《マフティー、ここにいたのか?》
この声は、聞き覚えがある。
「ガウマン?」
マフティーのメンバーの一人、ガウマンだ。
エメラルダや他のメンバーまでいる。
皆、整備兵の恰好している
「この世界に転生したのか?」
《おうよ、シュプレーヴァルトからここまで来るの苦労したぜ》
ファルカが割り入る
《誰です、その人達は?》
「僕の仲間さ」
《ハサウェイ、詳しい説明は後よ。とにかく…》
「ああ、まずは救わなければいけない人達がいるんだ」
救わないと……。
《俺達は反体制派の拠点地に潜り込む。死ぬなよマフティー》
ガウマンはそう言い残し、秘匿回線は終了した
ファルカの秘匿回線は繋がったままだ
《羨ましいですね、貴方の仲間達は…皆楽しそうな人達ばかりです》
ファルカは少し笑みを浮かべ穏やかな表情だ。
「アンタも迎え入れてやるよ。来るか?」
《いえ、私はシュタージとしての衛士の役割があるので》
ファルカ機はゆっくりと基地の外へ移動する
《リィズ先輩を止めに行ってきます》
僕はモニターに表示してるファルカに向け笑顔を振る舞った。
そこで秘匿回線は終了
切断した
周囲モニターを見ると、基地の外に出ようとしているファムがいた
そこには武器が色々散らばっている
ファムはRPGバズーカを拾おうとするが、僕はコクピットから降りファムに近づく
「ファム!」
僕は叫んだ。
「ハサウェイ君、その恰好は…」
僕はファムの両肩を両手で掴む
「そんな装備じゃ無理だ!」
「でも、リィズちゃんが」
ボロボロじゃないか!
どうやって戦うと言うんだ……。
「やられるだけだぞ!」
僕はファムを説得する
「アンタは死んではいけない!必要とされてる衛士だ!」
そう言って僕はファムをお姫様抱っこをしながら走る
「ひゃぁっ、ちょ、ハサウェイ君!?」
「クスィーガンダムの中に入れば……」
ファムをクスィーガンダムのコクピットの中に入れ僕は操縦桿を握り機体を動かす
ゆっくりと歩く
「何するつもり!?」
「機体を無力化させます!管制ユニットは避けますから!」
リィズの機体を発見
バラライカ……それに乗ってるのは。
僕は盗聴器で音を拾い上げる
《お兄ちゃん》
無理強いでもテオドールを手に入れるつもりか?
《逃げろ!テオドール…!》
「テオドール君…」
ファムが大声出そうとした瞬間、僕は手で口を塞いだ
「すみません、お静かに願います(イェッケルン中尉、アンタは人殺しには向いてない)」
《あの女はもういない。お兄ちゃん達に希望なんて残ってないよ》
あの女……アイリスディーナの事か!
そこまでしてテオドールと一緒になりたいのか!?アンタは!
《リィズ…アイリスディーナはどこだ!?本当はわかってるんだろ!?この国を変えるためにはあいつが…!》
テオドールはリィズに説得するが、目の前が見えないのかリィズは頭部、下半身が欠如している戦術機に乗ってるグレーテルに向け威嚇射撃する。
最低な裏切り行為だ。
僕は違う!
彼奴は卑怯者だ!
《今すぐ投降しなければこの女を殺す。他の仲間も全員殺す。基地も何もかも破壊する。お願いお兄ちゃん。もう諦めて。この国の事なんてどうでもいいの。お願いだから私の所に来て…》
リィズは脅迫まがいの事を言い包めて意地でもテオドールを手にしたい思いだろう
テオドールは焦っていた。早くアイリスディーナを助けないとだけの思いがあった。
リィズはテオドールの盲目的な愛情を語る
《これまでずっと頑張ってきたんだよ。お兄ちゃんのために…亡命者だって何人も殺してきた!仲間だって何度も密告した!上層部をたらしこむために体も汚した!アクスマンに抱かれ犬にもなった!》
「リィズちゃん……貴女は」
ファムはポツリと悲しい表情で呟く
僕は睨んだ
《ふふ、私は、シュタージの犬になっただけじゃなくて、アクスマンの犬にもなったんだよ。
ねぇ、お兄ちゃん、犬にされた私がアクスマンにどんなことをされたか、知りたい?
いいえ、例え知りたくなくてもお兄ちゃんは知るべきだよ。
私があの変態野郎のアクスマンにどんなことをされたのか。
そうじゃないと、お兄ちゃんは私のことを決して本当には理解できないよ。
あいつはねぇ、本当に私を犬のように、全裸にしてから、首輪をつけて鎖に繋いだのよ。
そして、そのまま私を放置した。
だから、私は、衆人環視の中で、排尿し、排便まですることになった。
ねぇ、お兄ちゃん、女の子にとってそれがどれほどの屈辱か分かる?》
同情を誘ってるのか?
例えそうだとしても人の過ちを犯した時点でリィズ、アンタは同情できない
毒は抜かないといけない
《リィズ、そんな酷い目に合わされていたなんて…。すまない》
《でもお兄ちゃん、そんなのはまだ序の口。
更に私は全裸で首に鎖をつけられ格好のままシュタージの基地内を散歩させられた。
性器がよく見えるように尻を高く上げるように強要され、疲れと羞恥で腰を落とすと鞭で容赦なく叩かれた。
私のおしりは鞭の跡で真っ赤になったわ。
散歩の後は、食事が与えられた。
でも、それは犬の食事だった。
私は地面に置かれた皿に盛られた食事を這いつくばったまま食べさせられた。
そして、食事の後は、ご主人様へのご奉仕。
アクスマンは…》
これ以上聞いてられないので自重し一旦盗聴器を止める
「ファム、僕はやはり許せない!リィズを…」
「やめて!ハサウェイ君。リィズちゃんにも事情がある筈よ」
「そんな事情あるものか!心が病んでいる……」
僕は周囲モニターだけでリィズが乗るチボラシュカとテオドールが乗るバラライカの動きの様子を見る
リィズ機がCIWSナイフを握り構えテオドール機に突っ込む
テオドールもCIWSナイフを握り構え白兵戦に
リィズは怒りを任せテオドールに向け攻撃する
猛攻撃の際、テオドールが握り構えてるナイフを弾き飛ばし
リィズは管制ユニットを的確的に攻撃
ファルカ機がリィズ機の動きを止める
「先輩止めてください!一次優先権剥奪されたいのですか!?」
《煩い!お兄ちゃんは私と一緒に行くべきなのよ!どうして私を選ばないの!》
リィズは我儘で涙を流し駄々捏ねている
僕はリィズ機に近づき頭部バルカン砲で射撃
「リィズーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
それを驚いたリィズは攻撃を躱す
「義兄を手玉にしてかつての仲間を傷つけることしか出来ない、情けない女だな!」
《マフティー……貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!》
ナイフから突撃砲に握り構え僕が乗るクスィーガンダムに向け砲撃
だが、この世界にある機体の動きは容易い。
動きは読める!
それを躱し、ビームサーベルでリィズ機に向けフライト・フォーム展開し高速飛行で両脚を切断し、無力化する
これで動けまい
しかしリィズ機は完全に無力化したわけではなく砲台代わりに突撃砲で射撃するが僕はそれを躱す
ビームサーベルで突撃砲を切り刻む
これでリィズ機は完全に無力化した
動けなくなったリィズ機にビームサーベルで管制ユニットに向ける
「死にたくなければ降りろ!」
《貴様、何のつもりだ!》
「降りろと言った筈だ」
《あの女が……あの女がいけないのよ!お前が、お前がいなければ!お前がいなければ!お兄ちゃんは私と一緒にいられたのに!》
醜悪で目障りな表情したリィズはその怒りはファムに向ける
《お兄ちゃんを誑かした!酷い女!悪女が!雌豚!淫乱女!お兄ちゃん以外に他の男を咥えてるでしょ⁈そうなんでしょ!!!?この阿婆擦れ女!!アンタなんかお兄ちゃんに相応しくないからいなくなればいいのよ!!ベトナム人が!!》
ファムを侮辱したリィズ
「そんな…リィズちゃん…私は貴女の事を…うぅぅ…うぅぅ…」
ファムはリィズの身勝手な発言を聞いて号泣してしまった。
この場で粛清したい。
リィズの言動を聞いたテオドールは怒りを表し怒号をかける
《何故だ!?何故ファム姉を侮辱した!?ファム姉はお前を助けようとしたんだぞ!それを!それを!》
リィズ機は無力化した
最早行動不能だ。
観念したリィズは管制ユニットから降りる
「テオドール、ファムを頼む」
僕とファムはクスィーガンダムのコクピットから降ろし機体から降りたテオドールはファムを抱える
「アンタ…何で俺とファムを」
「アンタなら守り切れる。僕は最後の手伝いをしたまでだ」
最後の手伝い……この中隊に思い残すことは何もない
「シルヴィアとアネットは先に反体制派と合流している」
「ハサウェイ君は?」
「僕はシュタージ側の人間だ。ベアトリクスとついていくと決めたんだ。だからアンタ達と一緒に歩めない」
「そんな……」
ファムは落ち込む
「ハサウェイは自分の道へ進んでいるんだ。無理に連れて行くことはない」
「理解が早くて助かる。もしまた会う時は……その時は敵同士だ」
僕はテオドールにこう言い向けた
「そうか、もうアンタと一緒に戦えないんだな」
僕は頷く
「次会う時は俺もアンタを倒す」
「倒せるかな?僕の機体は特注機体だよ」
「じゃあな、次会う時は戦場だ」
とテオドールはファムを抱え去ろうとしたが僕は呼び止める
「テオドール、アイリスディーナを探してるんだろ?」
真剣な眼差しで話す
「……ああ」
「彼女はカウルスドルフにいる。そこに行けば彼女を救える」
「アンタ、何でアイリスディーナの居場所を…」
「アンタの義妹の後輩に聞いただけだ。行け!テオドール・エーベルバッハ」
テオドールはファムを抱え管制ユニットに乗り機体を動かしつつ基地から撤退し反体制派の拠点地へと飛び去って行った
僕は見送った。
去る際のファムはどこか寂しい顔していた
何を伝えたかったのだろうか
分からないが、僕はこう解釈している
無理はしないで。と
そうに違いない。
南方からヴェアヴォルフ大隊が帰投した。
次回、市街地で反体制派戦術機部隊と交戦します!