「・・ なぁ、あの赤ん坊、今会うことはできるか・・?」
部屋の中を蔓延していた濃密な殺気が消え、警官がようやく呼吸を再開した部屋で、マザーは保護した赤ん坊に会えないか聞きだした。
「え、えぇ。検査はほぼ終わってますので、赤ちゃんの容態が問題なければ大丈夫だと思いますが…。」
「じゃあ会いに行ってもいいな、行ってくる。」
マザーは突然立ち上がり保護された赤ん坊のところへ行こうとするが、いきなり会うと言ってもまだ病院側から面会の許可はおりていない。それ以前に調書のための聞き取りもまだ終わっていないのだ。
「ちょっ!!待ってください!まず病院側に確認をとってからでないと被害者には会えませんよ!!それにまだ聞き取りも済んでません!!」
「そんなもんそこの爺ィに聞け。とりあえず顔見るだけだ、それぐらいなら検査中でも出来んだろ。」
「イヤ、だからですね!!まず医師の許可がなければ会えませんしそもそも病院側からまだ何も言われてないんですよ!!そんな中行っても病室に入れてもらえませんよ!!」
警官はマザーを止めようとするがマザーは聞く耳を持たない。そもそも警官とマザーでは体格が違いすぎる。おまけに昨日まで現役のヒーローだった人物だ、いくら日々訓練を行なっている警官でも止めようがないのだ。
「・・・おい、少し落ち着け。腑が煮えくりかえってるのは俺も、そしてそいつもそうさ。だがよ、今ここで俺らが感情的になっても事態はなんにも好転しねぇ・・。ひとまずは俺らがやるべきことやるぞ、まずは調書の聞き取り終わらせようや。」
警官を引きずりながらもドアを開けようとしたマザーだが、グラントリノの言葉に動きが止まる。警官もマザーが止まったとこに安堵し、一先ずは調書を終わらせることを提案するとマザーも椅子に座った。しかしマザーは腕を組み一言も喋らなくなってしまい、それでいて殺気が漏れ出しているので威圧感がすごい、正直逃げ出したい。ホオジロザメが泳いでいる水槽に放り込まれた気分だ。ジョーズの主人公の気持ちがよくわかる。
「・・・落ち着けと言ったろうが、とっとと殺気を引っ込めろ・・。しかもお前時折『脅かしの気』まで発動させてんぞ、建物まで軋んでじゃねぇか、いい加減にしとけ・・!」
「・・すいません、私からもお願いします。聞き取りもあと少しで終わりますからもう少しだけご協力をお願いします・・・。」
マザーから溢れる殺気もそうだが時折感じる強大な「なにか」に意識が持っていかれそうになる。もうヤダ、もうホントに帰りたい。明日は何がなんでも有給を消化してやる、一日中不貞寝してやる。警官は心に誓った。
十分後、一分が一時間に感じる地獄の時間がようやく終わり警官は
「・・はい、これで聞き取りは終了です。ご協力ありがとうございます。」
「・・・じゃあもういいな?あの赤ん坊はどこにいる?…あぁやっぱいい、あっちだな。」
「・・しれっと『視える気』使ってんじゃねぇ・・。まずは許可もらってくるのが先だ。なぁ、立て続けで申し訳ねぇが・・」
「あぁ、許可なら大丈夫ですよグラントリノ。聞き取り中に医師へ許可もらってます。警察同伴であれば構わないそうなので、私が案内しますね。」
「・・あんな殺気剥き出しの中そんなことしてたのか・・。お前さんやるな・・・。」
「・・伊達に警部までやってませんよ。・・まぁ、今回のような聞き取りは暫くやりたくありませんが・・・。」
「これを暫くでいいのは素直にすげえよ、お前さん大物になるぜ・・。」
「あたしの殺気耐えてる時点で十分大物だよ。じゃあ案内しな、ほら行くよ。」
マザーは立ち上がり部屋を出ていく。グラントリノも後を追おうとするが、警官は呆けた表情で座ったままだ。
「・・どうした、病室まで案内してくれんだろ?」
「・・・あぁ!すいません、すぐ行きますね・・。」
廊下に出るとマザーが待っており「早よ行くぞ」と我先に歩き出した。グラントリノと警官は苦笑しながら後を追う。
その途中、警官はグラントリノに気になっていたことを質問した。
「・・・グラントリノ、ひとつお聞きしたいことがあるのですが。」
「どうした、急に?」
「先程のマザーの発言、あれは私を褒めてくださったんですかね・・?それとも何かの冗談なのでしょうか・・?」
「・・あぁ、そういうことか。」
先ほどマザーは警官に向けて「あたしの殺気耐えてる時点で十分大物だ」と言った。あまりに急だったため理解が追いつかなかったが、これはマザーに認めてもらったということなのだろうか。
「・・あいつの殺気は並のヴィランなら失神してもおかしくねぇからな、お前さんはよく耐えられたよ。誇っていいと思うぜ。」
グラントリノの言葉に警官は驚くも、年甲斐もなく表情を綻ばせる。№2ヒーローから見込みがあるといわれているのだ、嬉しくないわけがない。
「・・・・まぁ、そんな殺気を一般人に向けたあいつは問題だがな・・・。」
グラントリノの言う通りである。警官は浮かれているが、並とはいえヴィランが失神してしまうものをぶつけられたのだ。一般人がプロボクサーのパンチを食らった様なものだ、傍から見たら大問題である。
しばらく歩くと産婦人科のエリアに到着した。その中の一室の前で三人は立ち止ったのだが、何やら部屋の中の様子がおかしい。
「・・・!!」「・・!!!!!!!」「・・!?!?!?!?!?」
「今はこの処置室で赤ちゃんのお世話をされているとのことなんですが・・・?」
「・・・なんかずいぶん騒がしいな・・?泣き声以外に悲鳴も聞こえるんだが・・?」
「・・・なんで悲鳴が混じってんのか気になるが、とりあえず開けていいんだよな?」
マザーがそっと扉を開けるといきなり足に何かがぶつかった。視線を下に向けてみると、なぜかあの赤ん坊がいるではないか。
グラントリノと警官も目が点になっている。それはそうだ、赤ん坊が床を転がってマザーの足にぶつかっているのだから。
するとマザーにぶつかったことで動きが止まった赤ん坊の元へ3人の看護師が息を切らしてやって来た。
「やっと止まった!!なんなのこの子!!!」
「いい加減おとなしくしなさい!!あなたまだ首もすわってないのよ!!!」
「お願いだからミルクを飲んで!!!産まれてから何も口にしてないじゃない!!!」
「んんんんんんんにゅいあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
看護師たちが赤ん坊を抱こうとするが赤ん坊は泣きながら転がって逃げて行っている。あまりの光景にさすがのマザーも動けないでいた。
「・・・たしかあの赤ちゃんは生後一日って言いましたよね・・?」
「・・・そうだな、俺たちはお前さんからそう聞いたな・・。」
「・・・私の記憶が正しければ、赤ちゃんの寝返りは生後4ヵ月ぐらいからだったと思うんですが・・・。」
「・・・そうだな、俺の
目の前の光景があまりにも信じられない二人は若干の現実逃避をしている状態になってしまっていた。それもそうだ、生後一日で捨てられた余りに可哀そうな赤ん坊だと思っていたのに、いざ会ってみると看護師から転がりながら逃走しオムツを投げ捨て哺乳瓶を振り回しているのだ。もう数分前の耐え難い怒りの感情などはるか彼方に吹き飛んでしまった。
そんな中、再起動したマザーが赤ちゃんのところへ歩み寄り、看護師と格闘中の赤ちゃんと目線を合わせて話しかけた。
「よ!!元気そうじゃんか、心配して損したぞ!!」
「あぁぁうぅぅ??(こいつは確か・・・、俺がこの世界で初めて会った女・・・?)」
笑顔で赤ちゃんカタクリと目線を合わせるマザー、カタクリもマザーをじっと見つめて目を離さない。
ついさっきまで暴れていた赤ちゃんがおとなしくなりマザーから目線を外さない光景に、先ほどまで奮闘していた看護師たちは信じられない表情でこの光景を見つめている。グラントリノと警官も急におとなしくなった赤ちゃんから視線を外せないでいた。
数分後、マザーは何かを決意した表情になり赤ちゃんカタクリを抱き上げた。そして、はじけるような笑顔でとんでもないことを宣言したのだ。
「決めた!!この子は私が育てる!!!」
「「「「・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」」」」
「うぁい!!!!!!(なにぃぃぃぃぃぃ!!!!!)」
~某屋敷 その一室~
「・・・『グレート・マザー』が休業・・・!!」
「・・・復帰時期は未定・・・!!!」
「・・・巫山戯るな・・!!・・巫山戯るなぁぁ!!!!!」
「・・やっとだ・・!!・・やっと産まれたんだぞ・・!!!!」
「・・お前たちを越える・・!!・・最高傑作ができたんだぞ・・!!!」
「・・勝ち逃げなど・・!!そんなこと・・・!!!」
「・・許さんぞぉぉぉ!!!あの女ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
カタクリと一緒に強くなるライバル、この中で誰が相応しい?(緑谷、爆豪、轟は除く)
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飯田天哉
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尾白猿夫
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上鳴電気
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切島鋭児郎
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障子目蔵
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砂糖力道
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峰田実
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鉄哲徹鐵