レユニオン幹部が1人、アルサシアン!   作:調味のみりん

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すごく元気なります。ありがとうございます。

ではでは。



operation 1-◻️ 『雷撃』

 ──死体が残らない。

 

 

 それがどんなに心細いことか。

 

 

 みんなが私を忘れてしまえば本当に綺麗さっぱり世界から消えてしまう。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 ロドスはドクターの救出に成功した。

 残るはドクター、並びに作戦に参加しているオペレーター全員でロドスへ帰還するのみとなった。

 

 ロドスは事前にチェルノボーグにて入念に調査とシュミレーションを繰り返した。『救出作戦』に失敗はなく、待っているのは本艦までの帰り道だけの()()()()

 

 

 

「レユニオンの狂人共めッ! 何故このタイミングなんだ!」

 

 

 

 事態は変わった。レユニオンが蜂起したのだ。瞬く間にチェルノボーグの街は混乱に包まれ、火の手があちらこちらで上がった。

 レユニオンの構成員は数が多く、何度か交戦することはあったものの殆どはチェルノボーグに恨みのあるチンピラのようなもの。(ドーベルマン曰く)そのため対処は大きな問題ではなかったのだが、明らかに雰囲気の違う者達も中には紛れ込んでいた。

 

 霧と共に現れた練度の違う素早い部隊。

 人をチェスの駒のように巧みに動かし、足止めをしてくる白髪の少年。

 何処からともなく強力な狙撃を行ってくる、正体不明の狙撃手。

 

 それらは死者こそ出ていないものの、多少の被害と、潜入作戦に於いては貴重である時間を消費した。これはひとえに、『ドクター』による指揮のお陰だろう。記憶を失っていながらもその冴えは衰えて居なかった。その事に、胸を撫で下ろすものも居れば、複雑な顔をしている者も居る。

 

 

 

「あ……空の色が……焦げた匂いも混じってきて」

 

 アーミヤがつぶやくように小声を出す。

 つられるようにニアールが空を見上げると、端の方から段々と赤みを帯びていた。

 

 空が近づいてくる。それは厳しい環境のテラにおいて最も悪名高く、恐れられている自然現象──天災が近づいてきていることを意味していた。

 

 ◆

 

 天災は確実にチェルノボーグへと近づいてきている。残された時間を考慮し天災を避けるためには多少強引でもレユニオンの占領区画を突っ切り突破することが必要であった。

 何度目かの戦闘の後、ロドスはついに目の前の大路を抜ければ占領区画外だという地点にたどり着いた。周囲に喧騒はなく、風が吹いている。警戒しつつその大路に足を踏み入れた瞬間、()()()()()()()()()に入り込んだのだと全員が理解した。

 

「ッこれは……」

 

「アーミヤ、下がってくれ。何かが居る。それも強力な」

 

 ニアールの警告にアーミヤは素直に下がった。そしてドクターの側に寄ると、いつでも守れるよう目線を周囲に向けた。

 

「一体この感覚は何なんでしょうか……。空気が電気をおびているような……?」

 

 医療オペレーターが不安げな声を出す。それに答えようとして、コータスの耳が風切り音を捉えた。反射的に音がした方向へ視線を向ける。

 

 そこで目にしたのは──鎚をいままさにへたり込んでいる男に向かって振り下ろさんとしている、何者かの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーミヤは決して甘いだけの少女ではない。現実も理解している。時には代表者と交渉もし、その時は清濁を呑み込み、理解して、それに流されることなく決断を下すことができる。それがいかに困難なことか。

 

 だが、彼女は同時に冷酷な人間でもなかった。

 彼女には、目の前で失われようとしている命を見捨てることなど許せなかった。

 

「アーミヤ!?」

 

 驚いたような声が上がる。それでも構わない。

 彼女は戦場に躍り出た。

 

「──そうは、させません」

 

 ◆

 

 

 最初に動いたのはアルサシアンであった。

 アーミヤのアーツによって弾かれた腕を強引に引き戻すと同時、踏み込み。弾丸のような速度で突撃しながらアーミヤへと鎚を振り上げ──

 

「させん」

 

 その一撃を一瞬で間に割って入ったニアールが盾で受け止めた。

 金属同士のぶつかり合う高音が空気を揺らす。

 

「ア゛ア゛ッ!」

 

 防がれたと分かると即座にアルサシアンは鎚を握る力を緩める。そして身体を内側に畳むようにたわめ蹴りを放った。狙いはニアールの盾の横、外側から抉り込むような軌道だ。

 

「甘いッ!」

 

 それに対しニアールは器用に盾をスライドさせ、蹴りの起点を抑えそそのまま押さえ込もうと右足に力を込めた。勢いのまま更に押し込む。だが──毛が逆立った。比喩でも、勘違いでも無い。本当に視界の端に入った己の髪の毛先が重力に逆らって宙に浮かんでいたのだ。

 

「アーミヤ!」

 

 咄嗟に叫ぶ。この感覚は何度も味わった、嫌な感覚だ。その直感はすぐさま肯定される事となる。瞬間、爆音と共に網膜を白い光が焼いた。

 

「ぐっ……」

 

 咄嗟に構えた盾で後方への衝撃をできる限り殺し、視界の回復を急ぐ。音も正常に拾えていないようで、代わりに意識を研ぎ澄ませる。何度も目を瞬かせ、お陰で段々と世界に色が戻って来てくれた。前を見据えれば少し離れた位置に奴が苦しそうに呼吸を繰り返している。恐らく奴も消耗なしでは使えない類の技なのだろう。

 チラリと横目で後ろを伺えば、アーミヤやドクター。その他のオペレーターの無事も確認出来た。ひとまずの安堵と共に意識を前へと向ける。

 

 

 奴は背中を丸め、荒い息を吐いている。

 背中に刺さったボルトは既にバチバチと音を立て、次撃に備えているのか。

 

 ニアールは冷静に、正確に観察を続ける。

 

 

(武器はヘッドが小さい金属の鎚。背中のボルトと奴が動いた後の地面に広がる液体から恐らくは重症だ。アーツは雷撃で広範囲を薙ぎ払うものか? であるならばドクターからは離れた位置に誘導しなければ)

 

 

 

 

 

 ──なんにせよ、此処は押し通らなければならない。

 

 

 

 

 

 他の道を選んでいる時間も、装備の余裕も無いのだ。

 ニアールは武器を構え、そう告げた。聞こえていようがいまいが関係ない。それは相手がたとえ正気を失っていようと変わらない、彼女の相手に対するある種の敬意なのかもしれない。

 

 それに応えるように荒い呼吸を繰り返していたアルサシアンも構えなおす。そうして再び双方が──カジミエーシュの騎士が、レユニオンの幹部が──衝突した。

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AL

    Alsatian・昏迷

攻撃方法 近距離

アルサシアン、レユニオンの強襲部隊幹部。幹部といっても彼女はそのアーツの特性上、単独行動を主とする。身軽な挙動と不規則に変化する鎚の軌道、一定時間で周囲を薙ぎ払う雷撃で白兵戦では無類の強さを発揮する。しかし今はその身軽さも、戦闘の技巧も理性と共に失われているようだ。

 

耐久  攻撃力  防御力  術耐性

B    ㅤㅤㅤㅤA    ㅤㅤㅤㅤㅤC ㅤㅤㅤㅤㅤ   C

一定時間で周囲8マスを薙ぎ払う雷撃を放つ。

HPが徐々に減少する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 戦闘は尚も続いていた。が、変化が訪れていた。

 それは少し離れた場所でドクターと、医療オペレーターの防御をしているアーミヤにも分かった。実際に戦っているニアールは確実に気が付いているだろう。

 あれほど苛烈に攻めたて続けていた相手が防御をし出したのだ。加えて動作が少しぎこちなく、力が段々と抜けていっているのような、一撃に重さが乗らなくなっていた。

 

『オオ!』

 

 ニアールが隙を突き、大きく振りかぶる。相手の体勢はニアールによって崩されている。そして上段から振り落とされた一撃を鎚で、斜め下に傾けて威力を殺しながら防御を行った。

 アーミヤにはその姿からは確かに“理性“が感じられた。

 

(まさか、意識が戻って──)

 

 そうして戦闘は唐突に終わりを告げた。弾けるような金属特有の高音が鳴ったあと、相手の手には鎚が握られていなかった。ニアールが弾き飛ばしたのだ。

 武装を解除して、姿勢を崩している相手にも油断なくニアールが武器を向ける。相手は膝立ちの状態で背中を丸めて動くことは無かった。

 

 

 ◆

 

 

「何故、最後に雷撃を使わなかった。何を躊躇った」

 

 単純な疑問だった。遅かれ早かれ決着は付いてたのは確かだが、こんなに早くに付くはずは無かった。それは相手が明らかに最後の場面で電撃を出し渋ったからだ。そのお陰で隙が出来、武装を解除する事が出来た。

 

 目の前で俯いている相手は、先程までの苛烈な炎のような様から一転、ちろちろと燃え残った火種のように静かだった。

 

「何故だ」

 

 再度、問いかける。視界の端にはこちらに走り寄ってくるドクターやアーミヤ、それに慌てて追従するオペレーターの姿が見えた。

 

 相手は答えない。しかし、ゆっくりと仮面のついた顔だけをニアールの方へと上げた。

 

 すると仮面は度重なる衝撃に耐えかねてか、ぴしりと異音を響かせた。罅はどんどんと広がって行き、そうして遂に仮面はばらばらに割れた。フードは仮面と留め具で繋がっていたのかばさりと後方へ流れて外れる。

 

 

 

 

 血の赤色と、装備の雨雲のような灰色と対をなすかのような蒼い髪が、ふわりと広がった。

 

「ッ……」

 

 ニアールは思わず息を呑んだ。露わになった少女の顔は何条もの火傷の傷が走り、痛々しい様相を作り出していた。しかしそれよりも、その少女が浮かべる表情だった。

 

 

 

 

 

 

 穏やかな笑顔だった。

 透き通った蒼い目で、ニアールを見上げ満足げな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

「ゴホッ、ゴホッ……。強いね。私は……ダメだったか」

 

 

 静かな声が響く。

 幾分か掠れていたが、それでも柔らかい声色をしていた。

 

 

「ほら、やりなよ。直ぐ先を急ぐんだろ?」

 

 穏やかな、問いかけている口調ではあるが答えを確信しているような。

 ニアールは何も答えられなかった。

 

 

 ◆

 

 

 ふふ、此処で終わりか。

 

 エレノアは愉快そうに心の中で呟いた。

 見上げれば、黄金色の意志の強そうな瞳が少し戸惑ったようにこちらを見つめていた。きっと厳しくて、それでいて優しい人の瞳だ。

 

「さあ、早く。ゲホッ……私だって長引かされると辛いんだ。……あぁ、敢えて放置して長引かすなら、それも良いよ」

 

 エレノアは現状を受け入れた。自分が消えることを是とした。

 力ない希望は、希望たりえない。力がないまま掲げる目標は、達成されることなんて無い。それがどんなに当人が素晴らしいものだと思っていても、結局は力が無ければ意味を持たないのだ。

 

 そして、エレノアは負けた。

 確かに心残りはある。レユニオンを間違いの方向に進ませまいだとか、またみんなでご飯が食べたかっただとか、チェルノボーグまで運転してくれた人のことだとか。

 

 

 

 

 だが、それは力がなかった言い訳にはならないのだ。

 

 

 

 

「ほら、早く」

 

 いま見下ろしている彼女らはレユニオンと戦っていた。きっと最後は何らかの形でレユニオンを止めてくれるだろう。いや、もしかしたらそれは私の都合のいい想像かもしれないが。

 

 兎にも角にも、もうここでエレノアは終わりだ。終わりなのだ。悔やむべきは自分の力不足。悔しくない。悔しくなんかない。

 

 

(──顔は引き攣ってないかな?)

 

 

 もはや手足は動かない。首と口だけがしっかりと神経の命令を伝達してくれた。そんな中でエレノアはただひたすら、数瞬後に訪れるだろう己よりも力を持った者による裁きを待っていた。

 

 

 

 

 

「いいえ、その様なことはしません」

 

 

 

 

 果たして裁きは、訪れ無かった。

 ギロチンの紐を持っていた者はコータスの少女だった。

 そして彼女はその紐を手放すことはしなかった。

 

 

 ◆

 

「──は?」

 

「私達は武器を下ろした貴女を手にかける理由はありません。それにこれは、私達の理念にも反します」  

 

「私達……。君たちは一体どこの……」

 

 アーミヤは短く、しかし伝えるべき情報はしっかりと伝えた。自分達は製薬会社のロドスアイランドであること。鉱石病の治療を行っていること。そしてここへはとある作戦のために赴いたこと、その内容は伝えられないこと。それらを淀みなく話した。

 

「…………理念?」

 

「この大地から悲しみを取り除くこと。鉱石病を根絶すること。──それは感染者、非感染者関係なくです」

 

 それは言外に、『貴女もそこから決して外れて居ない』のだと訴えていた。真っ直ぐな目で、エレノアの瞳を見つめていた。

 

 そしてその言葉は、血液が失われぼんやりとして居たエレノアの思考を急速にクリアにしていった。炉に火をくべるように、わけのわからない感情が押し寄せてきた。エレノアは思わず上げていた頭を下げ、俯いた。

 

 

 

 見逃すのか? 私を? 

 斃さないのか? 敵を? 

 

 

『此処に簡易的ですが治療の道具が……』

『このままでは失血で貴女は……』

 

 

 目の前のコータスの少女が訴えてくる。その言葉はぼんやりと聞こえ、意味を理解できなかった。理解するだけの余裕がエレノアには無かった。

 

 

 

『よう、リーダー! なーに辛気臭ぇつらしんてんだよ!』

『リーダー、マズイことになった』

『俺たちはアンタの事を信じてるぜ。なんてったって俺らのリーダーだろ?』

 

『それじゃあ、行ってくるよリーダー。いい子にしてろよー?』

 

 

 

 

 

『彼らのことは、残念だった。君の家族は優秀で、誇り高い戦士だった』

 

 

 

 

「ふざ……けるな」

 

 

 それは、他の人から見ればどうでもいい事かも知れなかったが、エレノアにとっては何よりも大事なことだった。

 甘さなど、何になる。敵対したものを砕く覚悟がなくて何を変えられる。それはエレノアが大切なものを無理やり支払わされて得た教訓であり、彼女の方針でもあった。

 

 

 

 

 ふざけんなよ、甘ったれが。

 わたしを殺してみろよ。

 力のない分際で、偉そうな事を言うなよ。

 話し合えばきっといつか分かり合えるだなんて思い上がりを、抱くなよ。

 どんなに言葉を並べて立てたところで私達は──

 

 ──私達(家畜)は! 

 

 

 

「お前ら家畜が! 甘さを一丁前に振りかざすなよ……!」

 

 

 そこで“私達“ではなく“お前ら“と言い換えたのは、エレノアの無意識の意地だろうか。

 

 

「ッテメェ!」

 

 突然の暴言にロドスの前衛オペレーターが色めき立つ。既に腰から武器を抜いており、臨戦態勢に入っていた。それをアーミヤは手で諌める。

 

 エレノアの伏せた顔の下では、唇を噛み、懸命に泣くのを堪えていた。迫り上がってくるモノを必死で抑え、声を出してしまわないように更に歯を食いしばった。頭の上ではまだ男の怒る声が聞こえてくる。

 

 だからエレノアはその表情を消して、ゆっくりと顔を上げた。ロドスを睨みつけるように。

 

 

 

「私は、お前らにだけは、斃されない」

 

 

 

 そう呟くと同時、エレノアは大きく口を開けて、()()()()()にアーツを展開。

 勢いのまま、ガチンと噛み合わせた。

 

「なッ!? 下がれ!」

 

 咄嗟にニアールが防御を展開する。

 幸いにもニアールの類い稀な反応速度とアーツの練度により被害は出なかった。しかし小規模ながら周囲を薙いだ雷撃は、瓦礫を巻き上げ視界を塞いだ。

 

 

 衝撃と土煙が消えた先には、誰もいなかった。

 

 

 

 

 ◆

 

「な、何だったんでしょうか」

 

 医療オペレーターが困惑したような声を出す。蒼髪の少女が去った後は、静けさだけが残されていた。

 

「分からん。だが、これで脅威が無くなったのは確かだ。E1小隊は周囲の警戒、E2小隊は防御を固めろ! ここで一気に進むぞ、急げ!」

 

 ドーベルマンが声を張り上げる。指示に対応してロドスの職員が素早く移動を開始した。

 

「まったく、とんだ災難でしたよ」

「無駄口を叩くな。我々が居るのは依然として戦場だという事を忘れるな」

「あ、すいません。隊長……」

 

 移動を開始する職員に続いて、アーミヤも動き出す。だが一つの考えがぐるぐると頭を回っていた。

 

「どうして、どうして彼女はあんなにも苦しそうに……」

 

 その小さな独り言は、近くにいたドクターだけが聞き取ることが出来た。

 

 

 ◆

 

 

 ロドスの職員も去った後。瓦礫の隙間から顔を覗かせるウルサスの姉弟がいた。彼女らは街の混乱から、瓦礫に隠れることによって逃れていたのだ。

 

 

「なぁ、姉ちゃん、もう行ったみたいだぜ。アイツら」

 

「ホントね……。はぁー、あんな近くで戦闘が始まるなんて、一時はどうなる事かと」

 

「早くいこう」

 

「そうね」

 

 

 先に体の小さな弟が瓦礫から抜け出し、隙間を広げる。姉は小さくありがとう、と言ってするりとその穴から身を躍らせた。そのまま少し周囲を警戒したあと、駆け足でチェルノボーグの街を進んで行く。後には無人となった瓦礫がしずかに、残されているのみだった。

 

 

 

 

 

 

 余談だが。

 姉弟が隠れていた場所は、丁度エレノアとニアールが最後にぶつかった場所の近くだった。

 

 

 

 

 

 




甘いのは、どちらだったか。



個人的に言えばアーミヤも,二アールさんもロドスのモブオペ君も大好きです。ウッ……ミンナ穏やかにクラシテ……
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