レユニオン幹部が1人、アルサシアン!   作:調味のみりん

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生きていますよ。
前回から少し空いてしまって、ちょっと時間が取れなかったんですね。次回からはまたいつものように上げていきますよー。
いつも見てくださってるみなさん、ありがとうございます。またよろしくお願いしますね!

では。




そして彼女のフィナーレへ
オン・ステージ Eleanor!


 ──イヌ、犬、狗。

 学名 Canis lupus familiaris

 

 

 警察犬、軍用犬、または盲導犬に始まる介護犬。

 犬は嗅覚が非常に優れている種族であることは、言わずと知れた周知の事実だろう。

 その理由についても詳しく知っている者は少ないが。

 

 それは、匂いを感じ取る部分である嗅上皮(きゅうじょうひ)の面積が大きく、またその細胞の数も多い為と言われている。(それらの情報を処理する脳の部位も発達している)

 この特徴により、人が感じ取れる限界まで薄まった匂いの更に百万倍薄まったとしても探知することが出来る。

 

 

 

 

 

 だからなんだと言うわけでは無いが、ペッローは総じて匂いに敏感だ。それは種族柄によるものが大きい。

 

 

 もちろん例外があることは重々承知の上だが、大部分が()()であるから匂いに敏感だと言って構わないだろう。

 エレノアもまた例外では無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──だが、いつからだろうか。鼻をすん、と鳴らしてみても、焦げ臭い匂いが取れなくなったのは。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 薄暗い路地の中、やけに静かな場所でエレノアは空き箱を腰掛けに落ち着いていた。

 

 

 

 いぇい、私です。

 大都市、龍門に居る立派なしてぃがーるですよ。

 

 

 シラクーザからタルラちゃんの情報を聞き、車を飛ばしてチェルノボーグに。

 そしてチェルノボーグから治療所に担ぎ込まれ、それを抜け出しここ、龍門へ。

 

 

 そもそも何故こんな龍門の街外れのスラムにいるかと言うと、情報が耳に入ったからである。

 窓からスタイリッシュな(主観)退院を決めたあと、エレノアは彷徨っていた。装備はチェルノボーグで失ってしまったし、タルラのいる場所の心当たりもない。取り敢えず予備の装備を取りに、一番近くの龍門に寄った折に、レユニオンの構成員を見つけて話を聞いたのだった。

 

 

 

《スカルシュレッダーが龍門を》

 

 

 無論、エレノアはこれを手助けするつもりである。

 誰が発案者であろうと、レユニオンが関わる事ならば手を貸そうと思っていた。それは皆んなが“獣“になってしまわないよう止めるストッパーとして参加するのと同時、敵対した者を砕くためでもあった。

 それに加えて、今回は仲が良かった幹部の一人、スカルシュレッダーの家族に関わること。それを聞いてエレノアは俄然参加してやるつもりだった。もちろん、それだけが理由ではないが。

 大規模な都市である龍門が舞台ということは()()()()()()()()都合がよかったのだ。

 

 

 ちなみにスカルシュレッダーの許可は取っていない。無断参加である。

 

 

「よっ」

 

 右手を上げて脇の下を通して器用に包帯を巻きつけてゆく。ぐるぐると袈裟懸けに巻けたら包帯を一度切る。指で引っ張ってみれば体全体が引っ張られるような感覚とゴムのような抵抗感。それを確認すると今度は脚にも手際良く巻いてゆく。

 

「そいっと」

 

 脚については、踏み込みの度に響くような鈍痛がするので気休め程度の添木も一緒にぐるぐると。しっかりしたモノでは無かったので所々凹んでいたり、節くれだっていたり。そのせいで巻き終わった脚は随分不恰好な状態になっていた。

 龍門に着く前に巻いたお腹の部分からは赤色に僅かに染み出している。見えないがきっと背中の方はもっとひどいのだろう。

 

「うへぇ……」

 

 側には草臥れたいつもの装備。

 自身も巻き込む雷を巧みに操る(暴発させている)エレノアにとって装備の有無が死活問題になる。それゆえに各地に予備の簡易的な装備を預けていた。ある時は銀行に、ある時は廃屋に。とにかく勝手に見つからないような所へ。

 

「んー、よし!」

 

 そして包帯を巻き終わったエレノアはポンと軽く巻いた箇所を叩くと、慣れた手つきで装備を着ようとして──

 

 

「あ、あの……」

 

 目の前のフェリーンの子が戸惑ったような声を上げる。つい目の前のことに夢中になりすぎて失念していた。

 

 この子は隠し場所から私の装備を持ってきてくれたのだ。私が取りに行かなかった理由はいくつかあるがそれについては割愛しよう。

 彼女が言わんとしている事を察したエレノアは、腰掛けている木箱とは別の木箱に袋に入ったお金を置いた。すると彼女は少し安心したような顔つきへと表情を変化させた。

 しかしそれっきりで、置かれたお金をなかなか手に取ろうとしない。なのでずいっと木箱を目の前に押してやれば、驚いたあと、おずおずと手を伸ばし始めた。その間も一度たりとも私から視線は外していない。

 

 

 

 その様に思わず苦笑いが溢れる。

 

 

 

 警戒しているのだ。

 小さな彼女にとっては十分に脅威となりうる部外者のエレノアを。そんな彼女がここまで近づいているのはひとえに報酬を受け取るため。

 びくびくと警戒した目でこちらを見つめる瞳。それでいてこの子がちゃんと生きているということは、逞しくこのスラムに適応して生き残ってみせた証明に他ならないだろう。

 

 

 そんな彼女を更に怖がらせないよう、勤めて穏やかに声を出す。そしてこれまた自分の傍にあった木製の小さな足場のようなところに、雑に紙で包まれたパンを置いた。

 

 

「はい、これから辛いことあるだろうけど、頑張るんだよ」

 

 

 フェリーンの少女は、その報酬の内に含まれていなかった追加の報酬(パン)に目を白黒させている。

 

 

 

 この子は多分孤児だろう。誰かに保護されることなんて稀で、この先の困難は想像にかたくない。

 だからこれはエールだ。必死に生き抜く彼女に対してのエレノアが出来る精一杯の励ましだ。

 

 

「負けちゃダメだよ。どうしてもって時は、誰かに縋るんだ。もしかしたら酷い目に遭うかもしれないけど、いい人に会えたら助かるかもしれない」

 

 

 彼女は未だ状況を飲み込めていないようで固まったままだ。それでも構わずエレノアは言葉を送り続ける。 

 それが自己満足と分かっていても、彼女にとってはほんの些細な手助けにしかならないと知っていても。それでもエレノアは続けた。

 どうか彼女の未来に光が訪れますように、と願いながら。

 

 

 

「じゃ、バイバイ!」

 

 

 

 さあて。

 

 やる事は決まった。計画は出来る限り綿密に立てた。

 これから始めるのは楽しい楽しい

 

 ──殴り込みだ! 

 

 

 

 ◆

 

 

 2:00 p.m. 晴天

 龍門 スラム近郊

 

 

 

「追え! 奴らからミーシャを奪い返せ!」

 

「っ! こっちです!」

 

 

【面倒ごとには関わらない】

 

 それが庇護者のいない者たちの身を守る術であり、生き抜くの上での金科玉条だった。そんな彼らが見たら一目で逃げ出したくなる様な状況。アーツの飛び交う追いかけっこが龍門の外周にて繰り広げられていた。

 

「随分と必死なのねー」

 

「フランカ! いいから走って!」

 

 追っているのは白い仮面をつけたもの、黒いローブを纏っているもの。様々な格好の中でレユニオンのマークが統一性を示していた。

 片や逃げるのはロドスのロゴを掲げた者たち。中には二人ほどペンギンの配達業のマークを身につけている者も居るが、ロドスと協力関係にあることは見て明らかだった。

 

「次は右だよ!」

 

「分かりました……っ! 反対方向から!」

 

 赤い髪を揺らしながら先導するサンクタの少女が声を上げる。アーミヤはその声に従い道を曲がろうとするが、T字路となっている反対方向からもレユニオンの追手が迫ってきていた。

 

「裏切り者どもが、逃げられると思うなよ!」

 

 その中の一人がナイフを投擲する。足元を狙ったそれは、発せられる罵倒とは裏腹に正確に狙いを付けられたものだった。アーミヤは自らに飛んできたそれに対しアーツで防ごうと迎撃の姿勢を取るが──

 ここで予想外なことが起こった。

 

「っ! ミーシャさん!」

 

 ナイフを放った相手とアーミヤとの間にあった民家で小規模な爆発が起きたのだ。おそらくは中にあったガスのような可燃物がこの騒ぎで引火したのだろう。幸いにも離れた位置だった為にその爆発には誰も巻き込まれなかった。だが、ナイフの軌道には影響を及ぼした。

 空気を裂いて飛ぶナイフは空気の振動で僅かに逸れ、しかしこの距離に於いてはそれは最終的に大きなズレとなる。結果として乱れたナイフは白髪のウルサスの少女の方向へと向かっていった。

 

「あ……」

 

 あまりに突然の出来事にアーミヤは狙いを変えるのに僅かに手間取る。そしてその数瞬は十分過ぎるものだった。きらりと光を反射する刃は少女の白く細い脚に吸い込まれていき──

 

「ふっ!」

 

 空から降る剣によって弾かれた。

 

「テキサスさん! ありがとうございます」

 

「礼はいい。これも私達の仕事だ」

 

 そのぶっきらぼうとも取れる、頼もしい返事にアーミヤは頬を緩めた。

 

 

 ◆

 

 

 

 

「一先ずは撒くことが出来ましたね。ここからは慎重に進みましょう。エクシアさん、お願い出来ますか?」

 

 周囲の気配が消えたことを感じ取り、アーミヤは徐々に足を緩めていった。ここは建物と建物の間のようで、唯一開けた空からは青々とした色が見ることが出来る。

 ロドスの面々も、多少傷を負ったものもいるが即座の治療の必要はない程度で済んでいた。

 

「オッケー! 任せてよ!」

 

 サンクタの少女は元気よく答えると、ひらりと身軽に身を捩った。ルートを確認するのだろうとアーミヤは隣に居るミーシャを見やった。

 

「大丈夫ですか? ミーシャさん」

 

「アーミヤ……うん、まだ脚が少し震えてるけど、大丈夫」 

 

 そう言ってウルサスの少女は気丈に前を見据えた。声が震えていたが、敢えて触れるものはこの場には居なかった。

 

「突然危ない場面に直面する事になったんだ。仕方がない」

 

 いつの間にやら近くに来ていたのか、テキサスが辺りを見渡しながらわずかに気遣うように言った。その発言に少し顔が硬っていたミーシャも若干表情を緩めた。

 

「でもアイツら、あのナイフ投げた奴に向かって相当怒ってたわよ。仲間割れかしら。やあねぇ」

 

「状況から察するに彼らもミーシャさんを傷つけたくは無いのでしょう。……信じがたい事ですが」

 

 その雰囲気を感じ取ったのか否か、フランカは気楽そうにおどけて言ってみせる。

 それに返したのは彼女とよく行動を共にしてる頼もしい重装オペレーターのリスカムだった。彼女は生真面目そうに分析をし、フランカは軽く肩をすくめた。

 

 すると途切れたその会話にいつの間にやら戻ってきて来ていたのか、エクシアが軽い調子で返した。

 

「やー、凄い怖い感染者だったね。 ……あいて! 何すんのさテキサス!」

 

 いきなりな暴挙にエクシアが涙目でテキサスを見れば、彼女はわずかに咎めるように言った。

 

「ここに居るのは私たちだけじゃないんだ」

 

「いえ、エクシアさんの発言に他意はないことは分かっています。そこまで気にしていただかなくても大丈夫ですよ」

 

 受けた注意にバツの悪そうな表情を浮かべていたエクシアは、それを聞いてぱあっと笑顔になった。アーミヤはそれを見て少し微笑むと、彼女の偵察の成果を尋ねた。

 

「あーうん、大丈夫そうだよ! これなら見つからずに合流地点に──」

 

 そうエクシアが説明をしようとした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 ──閃光が辺り一体を包み込んだ。

 

 

「──っ!」

 

 ほんの少し遅れてやってくる、生木をへし折るような独特の音。

 半ば反射で空を見上げれば断続的に雷光が昼の空を照らしていた。敢えて言うが、空は晴れている。それなのに雷が発生するという異常な事態にこの場にいる全員が目を見張っていた。

 

 

「あの……雷は……チェルノボーグの……」

 

 アーミヤが呆然と呟けば耳を押さえていたフランカがぎょっとした顔をした。

 

「ねぇ、あんなのがチェルノボーグに出たって言うの?」

 

「出たどころか、交戦しました」  

 

「うっそ!? あんなバケモノと!?」 

 

 目を見開いて驚くフランカを横目に、顎に手を当てて考えるリスカム。そうして合点がいったのか信じ難いと言った様子で疑問を口にした。

 

「もしかしてですが、報告にあった……」

 

 そしてその予測は当たっていたようだ。リスカムの疑問にアーミヤは一つ頷きを返すと、重々しい口ぶりで肯定してみせた。

 

「ええ、そうです。『雷獣』。…………でもなぜ彼女がここに? それにあんな怪我で動ける筈が……」 

 

「アーミヤ? どうしたの? ぶつぶつ言って」

 

「……いえ、何でもありません。とにかく更に気をつけながら合流地点へ向かいましょう」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ──

 ──

 ────

 

 

 

『へぇ、ミーシャ(小熊)ちゃん! かわいい名前だねー!』

 

『会えると良いね。──いや、きっと会えるよ! 大丈夫!』

 

 

 

 

 ────

 ──

 ──

 

 

 ◆

 

 

「チェンさん、遅いですね……。先程の件もありますし何かあったんでしょうか」

 

 先に合流地点に到着したアーミヤ達は、未だ到着していない龍門近衛局をじっと待っていた。

 彼らに限って何かある訳では無いが、突然の雷光という不安要素は既に出揃っていた。

 

 

「どっかで道草でも食ってるんじゃないかしら? まったく、あたしたちを使いっぱしりみたいに使っていいご身分だわ」

 

 呆れた、と言わんばかりのフランカにリスカムは目線だけで咎める。もちろん彼女とて本気でそんな事を思っている訳ではない。任務に関してはどこまでも真摯にあたる。それをリスカムも分かっていたからこそ目線だけで声には出さなかったのだった。

 

 

「龍門近衛局は任務目標に関する具体的な資料を何も提示していませんし……。あくまで私たちは駒として扱うと言うことなのでしょうか」

 

 リスカムが言えばアーミヤはすこし考えこんだように、言葉を選びながら自らの考えを口にした。

 

「どうでしょうか。少なくともウェイさんの態度からは私たちにそこまで重要な情報を渡すつもりは無いようですが」

 

「まあー、そんなのはあの可愛い隊長が来た時に突きながら聞けばいいのよ」

 

「……そうですね。チェンさんも話せばきっと分かってくれる筈です」

 

 この場に居ない人のことを、不揃いな情報だけで推察することは無駄では無いだろうが、これといった益もないだろう。そう思考に区切りをつけてアーミヤは別のことに思考を傾けた。

 と、その時。壁に寄りかかるように周囲を窺っていたテキサスが耳をピクリと動かした。

 

「来たようだ」

「噂をすれば、って奴かしら」

 

 

 その言葉の通り、アーミヤ達の待つ合流地点にもすぐに装備の鳴らす音が聞こえ始めた。そうして角から顔を出したチェンにアーミヤは驚きを隠すことが出来なかった。

 

 

「すまない、少々遅れた」

 

「あっ、チェンさ……どうしたんですか!? その怪我は!」

 

 

 チェンは少し前に会った時よりも砂ぼこりと、僅かな赤色で汚れており後ろに続く近衛局の職員もまた疲れたような様子を出している。見れば装備の所々が凹んで変形していて、人数も想定より少ないようだった。

 

「レユニオンの幹部と思われる者と交戦した。傷はそこまで深くはないので作戦行動に支障は出ない」

「それは……よくご無事で」

 

 あまりの事態にアーミヤは咄嗟にそんな言葉しか発することが出来ない。別段彼女に落ち度がある訳ではなく、この状況でも落ち着いて見えるチェンの方が異常なのである。

 ちなみにこの場合の『ご無事』とは言うまでもなく“生きている“ことを指している。

 

「ああ。だが死者こそ出ていないものの、部隊の半数以上が負傷で今回の作戦から離れざるを得なくなった。──信じ難い程戦闘の技巧に優れた奴だった」

 

 チェンが少し疲労を滲ませながらそうぼやく。手早く自身の装備を点検して簡単に整えると改めてアーミヤへと向き直った。

 

「まあ、それはいい。追加の人員は既に特別督察隊に要請している。護送隊と同様の動きをしているから合流にはそこまで時間は掛からない筈だ」

 

 そんなチェンの態度にアーミヤもすぐさま落ち着きを取り戻し、頭を回転させ始める。今後の行動、そしてそれに関わる必要な情報を整理して取捨選択を──そこでふと疑問に思った。

 

 

 レユニオン幹部と交戦して、チェンがここに居るということは。

『信じ難い程戦闘の技巧に優れて()()』と言うことは。

 

 

 

『私は、お前らにだけは、斃されない』

 

 

 

 アーミヤの頭の中でチェルノボーグでの光景が再生される。アーミヤはあの時の苦しそうな顔も、声も、全てをよく覚えていた。

 

 

「隊長さんが苦戦するってことは、相当な人数がそっちに行ったのねー。お疲れ様って言えばいいのかしら」

「ああ、その言葉は受け取っておこう。だが、一つ訂正がある」

 

 フランカは先を促すように目線を向ける。釣られるようにミーシャもまたチェンの方を見上げるようにして目を向けていた。

 

 そうして多少呼吸を置いて、正確に情報を伝えるように。

 チェンはその事実を話した。

 

 

 

 

「相手の数は多くは無かった。いや、それどころか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──敵は単騎だった」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

「あの、チェンさん。交戦した相手についての情報は──」

 

「む、そうか。それについてはこの場で共有しておこう」

 

 そうしてほら、とでも言いたげにチェンが取り出したものに誰もが言葉を失った。それは、チェンが持つ()()が刺激の強かった為だが、アーミヤ、そしてドクターだけは別の意味での衝撃を味わっていた。

 

 

 

「ひっ」

 

 その声は誰のものだったか。今や気にする事も後回しになっていた。

 

 

 

 

 

 見覚えがある。

 

 ごく最近、見たことがある。

 

 アーミヤは先程、このタイミングであの瞬間が脳裏で再生されたことに疑問を持ったが、それは目の前の光景によりたちまち氷解することとなった。

 

 

 

 

 

「それ……は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チェンが掲げたモノは、人の手首の形をしていた。

 

 

 アーミヤにも見覚えのある、アルサシアンの手首だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 灯火は、尚も燃えて

 

 

 

 

 

 

 燃えて

 

 

 

 

 

 

 燃え尽き──

 

 

 

 

 






(バッドエンドでは)ないです。
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