レユニオン幹部が1人、アルサシアン!   作:調味のみりん

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簡潔なあらすじ

レユニオンが龍門襲撃、近衛局占拠済み
エレノア < ケルシーさんと“交渉“したよ!


では。



クソのような、四葉のクローバー

 

 

 

 ある智者は言いました。

 

 

『沈む船からは真っ先にネズミが逃げます』、と。

 

 

 なにも別に私は逃げるひとを責めたりはしない。

 それこそ本人が生きるためだろうから。これを批判しちゃ生きることを責めるのと同じだ。少なくとも私はそんなふうに考えていた。

 

 で、そんな中でも私に声をかけてくれる人も居た。そう、イーサン! 彼はレユニオンを抜ける時に『あんたも行くか?』なんて声をかけてくれた。びっくりしたし、それ以上に嬉しかった。でもそんな事(抜けること)を仮にも幹部の私に言っちゃいけないと思う。

 

 結局、丁重にお断りしたけど、今までのお礼としてなんと紙に包まれたハンバーガーをくれた。あの、広告でしか見たことのないハンバーガーを! なんでもこれがイーサンの抜ける理由らしい。

 

 慣れてないから食べるには少し手間取ったけどあのトマトとパティの組み合わせは天才的だった。齧るたびに口の中でバンズと中のパティとトマトが合わさって味のハーモニーが奏でられて……

 

 閑話休題(話がそれた)

 

 ただ、もう逃げようにも道がないことがあるなんて往々にして、ある。

 

 組織の終わりは、なんとなく感じ取れるもので。それらは随分と呆気なく、急激で、抗い難い流れのようだ。

 

 

 ◆

 

 

 

『偵察三号小隊、通信が途絶しました!』

『きょ、強襲担当の者たちの信号が全て消失……』

 

 

 

 

 

 

『外周支援小隊との連絡回路も、次々に切断されていきます!』

『クソッ、畜生!』

 

 

 

 

 

 

『正面から戦ってみましたが、レユニオンは意外と脆弱なものなのですね。チェルノボーグを陥落させ、いくつかの小隊を壊滅に追い込んだということで、もう少し強大な軍事力を有しているものと思ってました』

 

 

 

 

 

 

『各地に散らばったレユニオンの処理はどうする』

『まだこちらには気づいてないようですね。近衛局が完全に包囲していることも知らないでしょう』

 

 

 

 

 

 

『そういえば、周囲のレユニオンはみな総崩れになっているとの報告がありました。予め配置しておいたチームが引き続き敵を掃討しています』

 

 

 

 

 

 

 これは一つの終わり。

 やがて記憶の砂に攫われて、誰からも思い出されることなく消えてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──だから私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

通信記録♯024

 

            ……

 

……

 

……     

 

 

 

 

 

 

 

Rcn: 偵察隊。レユニオンの銅鐸の通過を確認しました。以上

 

AU7: 下環エリアにも同じようなレユニオンのアジトがあり、敵は部隊の再編中のようです。AU7より以上です

 

AO3: こちらAO3小隊。既に前港エリアのレユニオンを掃討完了しております。残存勢力を近衛局の方向に押し上げているところです。以上。

 

AL1: こちらはタイケツ宮のレユニオンを掃討しました。チャールズ大道へ向けて撤退中。規定ポイントで合流します。AL1からは以上

 

 

 

──各部隊からレユニオンの動向と作戦の進捗が届いております。各エリアの作戦は順調に進行中

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

報告は以上になります

 

 

 

 ◆

 

 

 

 p.m. 11:50 天気/曇天

 龍門アップタウン、近衛局展望デッキ前

 目標:[要員-Ch'en、展望デッキに布陣するレユニオンの状況把握」

 

 

 

「隊長お一人で威力偵察なんて無茶すぎます。どうか我々もお供させてください」

 

「お前たちの能力や戦闘力は信じている。しかし今回は私も全力で戦う必要があるかもしれん」

 

 展望デッキへの階段がある普段よりも薄暗い空間で、チェンと近衛局の職員たちが問答をしていた。

 引き止める職員に対し、チェンの目はすでに覚悟を決めたかのような光を湛えているようだ。

 

「敵指揮官との戦いに後顧の憂いを断つためにも、展望デッキの制圧は必須事項だ」

 

 決して大きくはない声で。それでいて重さを持ったソレは彼女の意識はすでに戦闘に入っており、変える意思は無いことを否応なく職員へと伝えた。

 

「──了解いたしました。それでは我々は最上階のフロアを一刻も早く制圧して隊長を支援いたします。隊長、龍門をどうか救って下さい」

「違うぞ。龍門を救うのは私だけではない」

 

 こちらも決心をし、チェンと別れようと行動を始める職員に声がかかる。職員が振り返るようにチェンへと顔を向ければ、彼女は僅かに口の端を持ち上げ、告げた。

 

 

「『我々』だ」

 

「はっ!」

 

「それでは行動開始だ。行け!」

 

 

 

 ◆

 

 風は高いところほど強くなる。

 地を擦らない分、エネルギーは保たれ空を駆ける。

 そうではあるが、こと今日に限ってはそれほど強い風は吹いていないようだった。

 

 

「やぁ、来たね。歓迎するよ。隊長さん」

 

 展望デッキの奥で、白髪の少年が手を広げ戯けたように言葉を口にする。彼の周りには数多くのレユニオンの構成員がおり、周囲を睨んでいた。

 

「一人で僕の罠に飛び込んでくるなんて、勇敢なのか愚かなのか、どちらなのかな?」

 

「お前が指揮官か、もう逃げ場はないぞ」

 

 まるで聞く耳を持たないといったようにチェンが警告をした。彼女にとっては龍門こそ守る街であり、その守護の象徴たる近衛局、ひいては龍門の街を襲ったレユニオンこそ明確な打ち倒すべき敵であった。

 

 

「本当にそうかな? 僕から見れば、隊長さんの方が逃げ場がないように見えるけどね。すぐに僕の同胞たちが君を飲み込んでオシマイさ」

「お喋りはいい、来い」

 

 彼女にも怒りはある。

 だが、それが刃を鈍らせるのなら御して見せるのが彼女という存在だった。それは誰よりも人を想うからこそ。

 

「ここは貴様らレユニオンが居て良い場所ではない!」

 

 

 

 

 ◆

 

 結果から述べれば、それは無茶だったのだろう。

 ──近衛局が、ではない。

 

 メフィストや、ファウストが。である。

 

 ◆

 

「ぐ、う……」

「脆いな」

 

 苦しげに息を荒げ、膝をつく少年。

 彼を守るように周囲にいたレユニオンの構成員達はすでに殆どが倒れ、地に伏していた。

 

「ファウスト!」

 

 息を荒らげて裂帛する。

 それに合わせ、想像を絶する力が込められたボルトが飛んでくる。メフィストの正面で構えるチェン、その半身を狙って。

 

「──フッ!」

 

 だが防がれた。軽々とまではいかないが危なげなく、完璧に弾いてみせた。最初こそは有効だった攻撃も、彼女が傷を負いながら覚え今や効果のほどは牽制程度しか発揮できていない。

 

「まだ自分の置かれた状況が分からないか?」

 

 少年はこちらを睨みつける。だが、言ってしまえばそれしか出来なかった。チェンは油断なく、今回の事件の大きな役割を担った彼を見ていた。

 

 

 

 

「…………メフィスト」

 

 呻くような小さな声が上がる。それは少年のすぐそばで倒れているレユニオンの構成員の声だった。その構成員の仮面は割れ、血走った目が覗いている。彼の声はきっと、少年にしか届いていないだろう。しかし、それで十分だった。

 

 

 

 

「やれ」

 

 

 

 

「……エレノアに怒られても、恨まないでよ」

 

 そう一言呟くと、白髪の少年は腕を軽く振るった。

 攻撃か、と警戒したチェンだが何も飛んでくることは無い。だが別の箇所で変化は劇的だった。

 

「う、うう、うがあああ!!」

 

「貴様! 何をっ!?」

 

 チェンは突如として苦しみ出したレユニオンの構成員から距離を取る。

 

 

「奴らの身体の源石が……成長している?」

「源石により刺し貫かれた身体は再構築され、新たな対価となる」

 

 少年は薄らと笑みを浮かべ、余裕の笑みを演じた。

 

「さあ隊長さん、よく見ておくといい。僕の護衛隊、不死身の衛兵たちを」

 

「オォォォォォ!!」

 

 

「隊長! 緊急事態です!」

「敵の……か、身体が変形していきます。もう倒したはずなのに、あの粉が掛かるだけで……」

「ウワァァァァ、復活してこちらに向かってくる。畜生!」

 

「おい、復活した敵の数はどれほどいる?」 

 

 混乱を極めるなか、冷静にチェンが尋ねた。

 

「ぜ、全員です!」

 

「──!」

 

 

 

 

「彼らは死なない。僕が彼らの痛みを全て治すからね」

「こんなものを使うなど、お前はもう人としての道を踏み外しているな」

「そもそも君らは感染者を人として扱ってないじゃないか。僕たちはね、理想のためなら何にでもなるって決めたんだよ」

 

 今、この間すらも狂ったレユニオンが押し寄せてくる。垂れる汗を気にする余裕もなくチェンは己の武器を正面に構えた。

 

「ハッ! レユニオンでもあの蒼いのとは随分とやり方が違うらしい」

「……何だって? 何でお前がそれを……?」

 

 チェンは自らを鼓舞するように、まるで挑発のようなセリフを口にした。するとその瞬間、白髪の少年から笑みが消える。代わりに浮かんだのは疑念、僅かな不安、そして怒り。

 

「答えろ──」

「集中砲火だ! 目標は敵指揮官! 撃てッ!」

 

 少年が眉を寄せ、詰問するように手を伸ばした時。丁度近衛局の職員による一斉射撃が行われた。今襲われている狂ったレユニオン兵は、操る頭を押さえてしまえば止まるとの判断からだった。

 

 しかしながらそれは、少々甘い考えだった。

 

 

「なっ、防がれた……?」

「傷口はすぐに塞がるし、そこはより厚く硬い皮になる。言いなよ、隊長さん。どうして君が彼女のことを知っているんだ?」

 

「答える義理はないな」

 

「なら、無理矢理にでも言わせてあげるよ」

 

 

 チェンを睨みつけたまま、腕を広げる。

 展望デッキに場違いな、まるで雪が舞うように粉が吹き荒んだ。それに合わせて源石が体から突き出した者達はさらに猛る。

 

「チェン隊長、レユニオンが波状攻撃を仕掛けてきます! 我々の武器では倒せそうにありません!」

「くそ、こいつら痛みや苦しみを一切感じないのか!」

 

 

「敵の……敵の攻勢が増しています。これ以上は支えきれません。どうかすぐに決着を!」

 

 

「くッ──!」

 

 ◆

 

「本当にすごい武器だよ。溢れたアーツだけで、全ての弾を切り落とし、僕の衛兵を三人も行動不能にするなんて。──でも君の方もタダじゃすまなかったみたいだね?」

 

「ハアッ、ハアッ……」

 

「さあ、隊長さん。僕の手を取るか、このまま続けるか。君の運命は君自身で決めてよ」

 

「……仕方がない、か。この場でお前を殺すために、この命を捧げる必要があるなら……」

 

 

 

 

 そう呟くチェンの目には諦めの色はなく。

 

 

 

「価値があるとは思えんが、やってやってもいい」

 

 

 

 ひたすらに前を見つめていた。

 

 

 

「言ってくれるね」

 

 その物言いにメフィストの声に苛立ちが混じった。

 そもそもがこの戦場ではレユニオンが圧倒しているようで、実際は危機的な状況だ。すでに包囲され、退路はあるのか。後退する意味はあるのか。何度問いただしても分からなかった。

 

「どちらにせよ、ここで終わりだ。さよなら、隊長さん。 ──ファウスト!」

 

「命令、射──」

 

 メフィストの声に合わせてファウストが指示を出す。

 それに応じて迷彩狙撃兵も照準を定めた。

 

「チッ」

 

 どうしようもない終わりに。龍門を襲った不届き者の手にかかる事に。チェンはただ舌打ちをこぼした。

 

 

 

 

 

 

「その必要はありません、チェンさん!」

 

 

 どれだけ余裕に振る舞おうと、追い詰められているのはレユニオンで。

 いくら個人の力が強く、余力があるように繕っても龍門という“都市“には勝てるはずがない。

 悪人は退治されて然るべきだ。

 

 先に噛みついたのはレユニオンなのだから。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「申し訳ありません、遅くなりました」

「協定に基づき、今よりロドスが近衛局を支援します!」 

 

 

 空から降りて来たコータスの少女が宣言する。

 

 

 ──それは近衛局や龍門市民。無辜の人々にとっての福音で

 

 ──街を襲う悪人(レユニオン)にとっての死刑宣告だった。

 

 

 

 ◆

 

 

「ゴホッ、ゴホッ……、お、お前ら!」

 

 状況は180度回転した。

 追い詰めていたはずのレユニオンはいつの間にか追い詰められ、メフィストは膝をついている。

 

 

「あら? どこへ逃げるつもり?」

 

 完敗だった。

 まずファウストの迷彩がロドスの猫によって剥がされた。これによりアドバンテージだった狙撃は『どこから来るか分かっている』攻撃に成り下がった。

 次にメフィストのアーツで狂化していた者達の動きが阻害された。ロドスの少女の手によるものだ。

 もはや戦場はそこには無く。メフィストはただの処刑場が広がっているようにしか思えなかった。

 

「武器を下ろしなさい。もうあんたの手の内は分かってるから、ウロコの坊や」

 

「クソッ、どうして! ファウストッ!」

 

「メフィスト、潮時だ。敵の援軍がこちらの残存部隊を掃討している」

 

 理性を宿した目でファウストが告げる。

 その言葉にメフィストは信じたくたい、というように首を振る。

 

「その中に見たことのない部隊もある。計画が変わった。俺たちは敵にはめられた」

 

「……レユニオンの二十個小隊、二個本隊はどうしてまだ来ない? 

 クラウンスレイヤーたちはどうしたんだ? それに、エレノアだってずっと連絡がない」

 

「メフィスト……」

 

「どうしてみんな、まだここに来ない? どうして誰も連絡をくれないんだ? どうして……どうしてッ!」

 

 メフィストが叫ぶ。

 そして項垂れたように地面に視線を落としたかと思うと、バッと顔を上げ余裕のなくなった顔で腕を振った。

 

「クソッ、行け、行けッ! アイツらを近づけさせるな!」

 

「なっ、また動き出しただと?」

 

 それをきっかけに沈黙していたレユニオンの構成員達が再び立ち上がる。手当たり次第に、まずは一番近いやつから。

 別の相手の警戒をしていた近衛局職員へ覆い被さるようにして攻撃する。まさか再び、一度ならず二度も倒した相手が立ち上がるとは思わず職員は対応が追いつかない。

 

 しかし、それは阻まれる。

 

「赤霄──!」

 

 彼女の手によって。

 

「な……一太刀で……? いったい何を……?」

 

 

 

 

「──ッ! 避けろ!」

 

 呆然とするメフィスト、それを押しやるようにファウストが叫んだ。

 

「させん!」

 

 

「ぐっ……!」

「ファウスト、ファウスト! きっ、傷が! だ、ダメだ、ダメだよ……ファウスト!」

 

 とうとう虚勢の怒りすら剥がれ、メフィストは取り乱すことしか出来なかった。倒れるファウストを泣きそうになりながら抱える今ならば、どれほどの人間が『彼があのレユニオンのメフィスト』だと言って信じるだろうか。

 

 

「ここまでだ」

 

 

 それを確認し、剣を突きつける。

 それは勧告のようでいて、実際は“もう終わり“という事実を述べただけだ。

 チェンのその宣言を以って、いまこの場での戦いの勝者は決まった。後に残されたのはアーツに狂ったレユニオンと、現実から目を背けようとする少年だけだった。

 

 

 そこで終わる──

 

 

 その筈だった。

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 ガキン、と鈍色の鎚が。

 チェンとメフィストの間に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

数時間前 ロドス第一会議室

 

「それじゃあ私は()()()()()()()()()。それで良いでしょ?」

 

「君が我々と協力関係にあると明示しなければ、保護してほしいと要求した幹部の身柄も確保することが難しくなるが」

 

 十数分におよぶ、細かな話し合いの末。

 アルサシアンとケルシーは薄暗い会議室で最後の確認をしていた。

 

「だってそうじゃないともし私がレユニオンの三人を無力化出来なかったら疑われるのはロドスだよ? 『お前達は敵と通じていたのか』ってさ。感染者の立場ってそんなもんでしょ?」

 

 

「ふむ。それには一応の筋が通っているが──それだけではないだろう」 

 

「いや、えーと、どうだろ……」

 

「作戦を遂行する前段階において不確定要素を出来る限り0に近づけることはそのまま作戦成功の要因へと繋がる。つまり、もし君が何か別の案を持っていて、それを実行に移すつもりならば今ここである程度共有する方が賢明だと考えるが」

 

「わかった、わかったから!」

 

 

 

 ◆

 

 

 

「──レユニオンってさ。けっこうボロボロなんだよ。

 

 チェルノボーグを落としたかもしれないけど、その中身はもう随分と寂しいことになってるんだよね。だから今回みたいな無茶をすればきっと引こうにも、もう都市からも無事に出られない」

 

 

 思考に耽るように。アルサシアンは視線を空中に彷徨わせる。

 

「たとえ撤退できたとしても龍門は、脅威とみなしたレユニオンを野放しにはしておかない。また牙をむかないように、市民を守るために。今度こそ徹底的に狩られる。もしそうなったら、ただでさえ龍門から出るのに消耗してるのに耐え切れるはずがない」

 

 部屋に設置されたモニターが規則的な電子音を立てている。

 この場において音はアルサシアンの声だけだ。

 

「そうなれば待ってる未来は、すり潰されて終わる結末だけ。それは断言できる」

 

 

 きっと、燃える瞳というのはこの様な目を指したのだろう。

 アルサシアンはどこまでも真っ直ぐにケルシーを見つめた。

 

 

 

「だから、私が()()()

 

 

 

「目立って、暴れて。龍門中の注目を私に集めて! 私こそがレユニオンに於ける強大な脅威と認識してもらって」

 

 

 

「そして、後は時間をかけて倒されればいい」

 

 そしてその脅威である私が倒されたのなら。

 他のレユニオンに対する目が緩む。生き残れる可能性が上がる。

『残ったレユニオンに脅威なし』ってね。

 

 そう言ってアルサシアンは話を締めくくった。

 

 

「だからこの話は私とケルシーさん。その間だけの話だよ」

 

「君はそれでいいのか」

 

「私がそうしたいからね」

 

 

 ◆

 

 再び一人となった部屋で、ケルシーは目を細めた。

 

 

 画面には受信を知らせる印が光っている。そこに表示されているのは幾つかの、決して“偶然”という言葉では片付けられない件数の、レユニオンによる()()()()

 ある移動都市を襲った際は、感染者を解放したあと略奪などせずに感染者の解放と回収を行っただけだという。そこには組織的な規律と規範が見てとれた。

 

 

 

 故に彼女は行くのだろう。

 それだけの意思をもっているのなら。

 

 

 

 

 ◆

 

[現在 龍門 近衛局展望デッキ]

 

 

 ガキン、と金属のぶつかる音がする。

 

 

 展望デッキに突き刺さった鎚は、無数のアーツを纏わり付かせてやってきた。

 高速で擦れ合わさった空気の粒たちは周囲の空気を歪ませる。

 

 次の瞬間、電場はたやすく閾値を超えた。

 止めろと叫ぶ、空気の絶縁抵抗を振り切って。

 恐るべき雷は産声を上げた。

 

 対応など出来るものか。人が大空の神威に抗えるものか。

 光が弾け、轟音は耳を貫く。電撃が空気を灼いてのたうち回る。

 

 

 そして、その光が収まったとき。そこに立っていたのは──

 

 

 

 

「なぜ……」

 

 

 

 

 

「なぜ此処に居る……、アルサシアンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OPERATION6-�

あらしのなかで

 

 

 

 

 

 

 

AL

 Alsatian

攻撃方法 近距離

アルサシアン、レユニオンの強襲部隊幹部。なぜ彼女がこの場所に現れたのか。その疑念はやがて怒りへと変化するだろう。彼女は語らない。雷獣は装備を纏い雷鳴を引き連れやって来た。その鎚は此方へ向けられ、その目はきっとあなたに向けられている。恐ろしいまでの技巧を有した白兵戦の名手は静かに立ち塞がった。

 

耐久  攻撃力  防御力  術耐性

A +   ㅤㅤㅤS   ㅤㅤㅤㅤ B    ㅤㅤㅤㅤC

一定時間で周囲8マスを薙ぎ払う雷撃を放つ。

自身の攻撃時にHPが減少する。

 

 

 

 世界を呪った少女は、それでも人の暖かさを忘れられなかった。

 それゆえに、自らの身を捧ぐことを決めた。世界への叛逆のために。

 

 初めは恨みだったかもしれない。怒りだったかもしれない。呪いですらあったと思う。

 でも、彼女の原点(オリジン)はいつだって人に対する暖かさからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

『居るん、ですよね。ロドスに』

『現在医療部で治療を受けている』

『ああ、それなら良かった。でもたぶんすぐに抜け出しますよ』

 

『それで? 何をするつもりだ?』

 

『ひとつ、アイツに分からせてやろうと思って』

『分からせる?』

 

 

 

『──“人の心配を少しは受け取れ“ってね』

 

 

 

 そう言って青年は笑った。

 

 





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