源王は玉座を譲らない 作:青牛
皆さん、拙作を読んでくださるだけでなくこうして評価まで下さってありがとうございます。
ではゼウス戦、開幕です。
世宇子中との試合当日。
帝国学園サッカー部がスタジアム前に停まったバスに集まっている中、キャプテンである鬼道の姿はいつまで待っても現れなかった。
「時間もないし、鬼道なら最悪ここに直接来れるはずだからとバスを動かしたが……来ないな」
万丈が近くの道路を走る車を何度も見回して確認しながら言う。
本来帝国学園に全員が集合して、そこからバスでスタジアムへ向かう手筈だったが、何故か鬼道が来なかったのでギリギリまで待ったものの試合の時間が迫っているため出発したのだ。
そしてスタジアムに着いた今も、鬼道がやって来る気配はない。
「もう、行くしかないな」
「源田……」
「鬼道が来られないのは、恐らく何かがあったからだろう。相手は影山、何が起こってもおかしくない」
「だが、鬼道さんは必ず来る!」
「落ち着け佐久間、俺達だって同じ思いだ。鬼道は必ず来る。だが、それを待ってこのまま試合に不戦敗となればあらゆる全てが水の泡だ」
「そうだ。鬼道は絶対に来る。……佐久間、鬼道が急いで来た時に、圧倒的な点差をつけて驚かせてやろうぜ? お前が居なくたって俺達も戦えるってよ」
「……そう、だな。源田。寺門。帝国は、鬼道さんだけじゃない……!」
帝国学園の面々は、ついにスタジアムへ足を踏み入れた。
王者の試合を見ようと今も続々と入ってくる観客達からの注目を受けながら、彼らは控え室へ向かっていった。
しかし、いつも自分達を導いていた司令塔の不在には不安を隠しきれない。
皆、どこか落ち着かない様子で試合前の練習時間に入る。
帝国イレブンがグラウンドに出ていこうとすると、1人の少年の姿があった。
古代ギリシアの衣装を思わせる独特なユニフォームを身に纏った、少女と見紛いかねない美少年。
彼は源田達を見つけると、赤い瞳を細め、薄い笑みを浮かべながら近づいてくる。
「キミ達が、帝国学園。キミは源田幸次郎くんだね?」
「……そうだ。お前は、世宇子中の選手か」
「ああ、いかにも。ボクが世宇子中サッカー部のキャプテンさ。“アフロディ”と呼んでくれたまえ。はじめまして、キング・オブ・ゴールキーパー」
長い金髪を手でかき揚げる美しい所作を交えながら少年
源田はそれに対し、ただ無表情で見つめるのみだ。帝国の選手達も皆警戒の視線を向けている。
それに気づいたアフロディは苦笑いしながら言葉を繋ぐ。
「嫌だなぁ、そんなに怖い顔をしないでほしいね。ボクはキミ達のためを想って忠告に来たのだから」
「忠告だと?」
「――キミ達、帝国学園に棄権を勧めに来た」
「――ふざけたことを言うなよ、アフロディ」
源田が言われた瞬間に拒絶の言葉を返す。
いきなり来て、戦う前から勝ちを譲れというろくでもない物言いに帝国の面々もいきり立った。
「ふざけやがって、何様のつもりだ!?」
大野が怒りに巨体を震わせながら怒鳴りつける。
だが、アフロディは彼の怒りなどどこ吹く風だ。
「これはキミ達のためだ。愚かにも影山総帥に逆らった、キミ達への最大限の慈悲でもある」
「影山だと!?」
「やはりか……」
「慈悲ってどういう意味なんですかねえ、影山の手先さん」
「だって、キミ達は負けるからね。人は神には敵わない。絶対に不可能なことを、そうと知らずに挑んでしまって悲惨な結末を迎えてしまうのはあまりに哀れだ。だから教えてあげようと思ったのさ」
「負けるだと……! 俺達が勝てないだと……!?」
「てめえ、自分が神だとでも言いたいのか?」
辺見がその嫌悪感を隠しもせずに言う。
アフロディの傲慢な態度は、目に余るどころの話ではない。
「さあ、どうだろうね? 忠告はしたよ。試合では覚悟しておくことだ。神の前に平伏す覚悟を」
はぐらかすような笑みで、アフロディは辺見の問いに答えなかった。
彼はそのまま背を向けてグラウンドへ優雅に歩いていく。
「ハン、平伏すのはお前らだ、世宇子!」
「どうどう、咲山、後は試合でだ」
アフロディの背に罵声を浴びせる咲山を源田が諌めた。
憤懣やる方ないのは咲山だけに限らず、他のメンバーも今のやり取りだけでアフロディ、ひいては世宇子中への印象は最悪となり敵意が剥き出しだった。
「あんな奴に、俺達帝国が負ける訳にはいかない……!」
「鬼道さんが出るまでもねえ。奴ら、試合では吠え面かかせてやるぜ」
佐久間が固い決意を表明した。それに辺見が同意する。
その後、練習時間にも世宇子は姿を現さず、ますます帝国は憤って試合時間を迎えることとなった。
「奴ら、どこまでも舐めやがって……! 後悔させてやる!」
「落ち着け咲山……」
帝国でも不良じみていて気性の荒い咲山が、マスクの下からでもわかるほど激しく口を動かし怒りを
先ほどから誰かが世宇子に対して爆発しそうになるのを抑えてばかりで、源田も試合前から精神的に少し疲れてきた。
「とうとう鬼道は間に合わなかったか。あいつを欠いて試合を始めるのは痛いな……後半には来てくれるといいんだが」
この中では冷静な寺門が、司令塔である鬼道不在のリスクを分析しながら語る。何せ、忌々しい相手ではあるが、先のやり取りからして世宇子の背後に影山がいることはもはや明らかだ。
地区大会では勝利のためだけに雷門の命を奪いに動いた影山が裏に居るチーム、どのような隠し珠があるかわかったものではない。
強さも戦術も未知数の相手だ。
それと戦うに当たって、こちらが最大戦力で臨めないというのは、不安要素が大きい。
だが居ないことを嘆いている暇はなく、抜けた穴は埋めなければならないのだ。
「
「確かに、いつもと同じでは少し乱れが出そうだな」
普段の帝国の“デスゾーン”を主軸とした5ー3ー2のフォーメーションは、トップ下の鬼道が攻撃と防御を随時指示して臨機応変に敵に対応できる陣形だ。
その中央の鬼道は替えの利かない天才ゲームメーカーである以上、ただそこに人を置くだけでは意味がない。
「ここは成神と辺見を上げて、攻撃に参加する機会を増やそう。代わりにDFには――兵藤、頼めるか」
「わかった」
参謀役の佐久間の言葉を、控え選手の
帝国においては源田に次ぐGKである彼だが、優れた身のこなしからDFとしても大野達と遜色ない能力を持つ。
普段は後衛でディフェンス中心に動くMFの成神と辺見を前に上げた代わりの守備力の補強としては十分な人材であった。
「よし、今回はこのフォーメーションで行くぞ。“デスゾーン”と“皇帝ペンギン2号”、どちらも積極的に狙っていく」
「了解!」
帝国学園が意思統一を終えたその瞬間、彼らに突風が襲い掛かった。
「なんだ!?」
髪を振り乱されながら、佐久間が風の出所に目を向けるとそこには、ベンチの前に集まっている世宇子イレブンの姿があった。
キーパーを除けば、皆先ほど出会ったアフロディと同じ白いユニフォームに身を包んでいる。
「あいつらが世宇子中……」
「何か運んできたぞ。スポーツドリンクか?」
彼らは、学校の関係者らしいスタッフが台車で運んできた半透明のドリンクを手に取る。
台車を取り囲むように円となり、彼らは各々持ったコップを掲げた。
「――さあ、神の力の御披露目といこう。乾杯だ。ボクらの勝利に」
『勝利に!』
アフロディが音頭を取って、チーム全員がそのドリンクを飲み干した。
一息でコップの中身が彼らの口に吸い込まれていく。
その様子に、辺見が忌々しげに吐き捨てる。
「随分とリラックスしてやがるな。余裕ぶってられるのも今の内だぜ」
「待て、奴らいつ来やがったんだ。影も形もなかったぞ?」
万丈が、先程までグラウンドにも居なかった彼らが突如現れたことへの言い知れない不自然さを口にする。
「ククク…いつ、どこから来ていようと関係ありませんよ。私達は敵同士」
「そッスよ万丈先輩。連中、時間ギリギリなんで急いで来ただけでしょ」
五条と成神がそう言うが、表情の読めない五条はともかく、成神の顔色も優れない。
他の者も、垣間見えた彼らの底知れなさをうっすらと感じ始めていた。
「皆、緊張しすぎるな。奴らも同じ人間だ。どれだけ強いかは始まるまでわからんが、絶対に敵わない相手などではない筈だ」
「源田の言う通りだ、あんなパフォーマンスに動じるなよ。俺達は王者帝国、どんな相手でも勝利あるのみだ」
源田と寺門、帝国の守護神とエースストライカーが毅然とした態度でその不安を吹き飛ばす。
やがて、試合開始時間となり、両者が整列して向かい合う。
『さあ、先日の雷門中学と戦国伊賀島中学の対戦から引き続きFF全国大会第1回戦です。絶対王者帝国学園と相対するのは、ここまで一切がベールに包まれていた推薦招待校世宇子中学! ついにベールが剥がれ、披露される彼らの実力は如何程か!? 王者の前にどのような戦いを見せるのか!? 注目の一戦です!』
「フフ……忠告した筈だよ。棄権した方がいいと。天才と名高いキミ達の司令塔もなしに戦えるとでも?」
「鬼道は必ずここに来る。二度も言わせるな、ふざけたことを言うなと」
先の言葉を繰り返すアフロディに、源田が同じ言葉を返す。
帝国の面々も世宇子を睨み付ける中、アフロディが妖しい笑みを浮かべて源田を見つめた。
「キミならそう言うと思っていたよ。ただ――
――慈悲というのは、誰よりもキミに向けてのものだったのだけれどね」
コイントスが行われ、キックオフは世宇子中からとなった。
世宇子イレブンが自陣のポジションに就こうとする中、アフロディは背を向けながらそう呟いた。
『皆さんお待たせしました! いよいよ運命の一戦の火蓋が切られます!』
帝国は鬼道不在から、多くのチームが採用する攻守共にバランスのいい4ー4ー2の陣形を採用した。
対する世宇子はFWの
そして審判の吹き鳴らしたホイッスルで、ついに試合が始まる。
『さあ始まりました、帝国VS世宇子! ボールは早速キャプテン、アフロディへ! 優雅なドリブルで帝国ゴールを目指します!』
「さて、では教えてあげよう。キミ達の力は何一つ、ボク達に通用しないとね」
ゆっくりと歩くような速さのドリブルで帝国のゴールへ向かうアフロディ。
それを黙って見ている帝国ではない。
成神と兵藤が素早くアフロディへと距離を詰めていく。
「そんなとろい動きで源田さんの所まで行かせるかよ! キラースライド改!」
「ここは通さん! ホーントレイン!」
2人がボールを奪おうと必殺技を使ってアフロディに襲い掛かる。
だが、彼はなんら動じることはなく、ゆっくりとその左手を天高く掲げた。
「ヘブンズタイム」
「――は?」
「いつの間に――」
パチンと指が乾いた音を鳴らしたかと思えば、アフロディの姿は既に彼らの後ろにあった。
振り向いた彼らは理解が追い付くより早く、巻き起こった突風によって吹き飛ばされる。
「うああ!」
「ぐっ……」
「成神! 兵藤! よくも……!」
突然の事に反応できず地面に叩きつけられた彼らに、今すぐにアフロディを追う力はなかった。
その一連の出来事を見ていた大野が2人の仇を取ろうと駆け出した。
「行かせねえぞ!」
「神の歩みには、キミ達の通す、通さないなんて意思は関係ないんだよ。ヘブンズタイム」
「――ぬああ!?」
あっという間に守備陣が突破され、アフロディがペナルティエリアに到達した。
向かい合うのは、帝国の守護神である源田一人。
「……来い」
「天使の羽ばたきを聞いたことがあるかい?」
そう問うたアフロディの背からは3対の純白の翼が姿を現した。
ボールと共に、ふわりと柔らかく空へ舞い上がっていくアフロディ。
「真――」
白く神々しい稲妻がボールを覆っていく。彼は大きく羽ばたいて、上から思い切りそれを蹴り飛ばした。
「――ゴッドノウズ!」
凄まじい力を帯びたシュートがゴールへ迫り来る。
迎え撃つ源田も、一目でその威力を悟り本気の守りを展開した。
「フルパワーシールド!」
巨大な衝撃波の壁は神のシュートの行く手を阻む。
しかし一瞬の拮抗の後に呆気なく粉砕され、脇を通り抜けたボールは余波で源田を吹き飛ばしながら、ゴールネットを限界まで千切れんばかりに引っ張った。
『なっ、なんとーーー! 源田の守りが、容易く突破されたーー!? 決めたのは世宇子キャプテンアフロディ! 世宇子中はこれ程の力を秘めていたというのか!?』
「なん……だと……」
「これが、神の力だ」
世宇子は容赦なく、その実力を見せつけ始める。
源田幸次郎
アフロディに正面から守りを破られた。
通常技で最強なのはフルパワーシールド。
ビーストファングは使用に100の体力の70を持っていく技で、フルパワーシールドが常に体力の3割を持っていく技みたいなイメージ。
消耗の基準が違う。
アフロディ
強化。真・神のアクアキメてる。
ちょっと帝国のヘイト高まっちゃってるけど別に嫌いなわけではない。
鬼道有人
だいたい影山のせい