源王は玉座を譲らない   作:青牛

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帝国は神に屈しない

 早々に点が取られた異例の事態に、帝国は動揺を隠せない。

 地区予選で雷門に点を奪われた時とは訳が違う。

 染岡の、予想を越える成長で放たれた新必殺技には、源田も初見こそ対応しきれずに不覚を取ったが2度目はなかった。

 だが今の失点は、彼が持ちえる中でも上位の必殺技を正面からぶつけて押し負けたのだ。

 

「源田、大丈夫か!?」

 

「っ……大丈夫だ、問題ない」

 

 技を破ってきたアフロディのシュートの余波に吹き飛ばされた源田に呼び掛けながら佐久間達が駆け寄る。

 源田も、少しよろめきながら立ち上がった。

 

「すまない、皆……!」

 

「気にするな、俺達が取り返す。どっしり構えてろよ、源田」

 

「だが、あんな奴らに勝てるのか……」

 

「弱気になるな、まだ試合は始まったばかりだぞ!」

 

 気に病む様子の源田に寺門がそう言って励ますが、あの凄まじいシュートを見せつけられた咲山が弱音を溢してしまった。

 それに大野が渇を入れる。

 

「源田以上のキーパーなんぞ居るもんか。必ず付け入る隙はある!」

 

「ああ、俺達なら勝てる!」

 

「いくぞ!」

 

 奮起した帝国イレブンがポジションに就いて試合を再開する。

 

「神の力の前には無駄だというのに、馬鹿な連中だ」

 

 デメテルが帝国の様子を見ながら言う。仲間の失敗を補おうとする彼らの姿勢になんら感じるものはない。

 人間を超越した世宇子イレブンが信奉するのは、力と勝利のみだ。

 

「どうやら、彼らはまだわからないらしい。もう少し見せてあげるとしようか」

 

 アフロディが余裕の表情で、チームメイトにそう呼び掛けた。

 世宇子の面々がその言葉にニヤリと笑って頷く。

 

『先制点を取られた帝国、反撃で世宇子陣へと切り込んで――ああっと! どうしたことだ!?』

 

 佐久間と寺門を筆頭に攻め込んでいく帝国学園。

 しかし、早速異常が発生した。

 

『世宇子動かない! 帝国がゴールに迫るのを眺めながら、全くディフェンスをしません!』

 

 それは、自分達も覚えのある戦術。

 以前の帝国では、弱小及び情報の少ない相手と戦う際、始めはあえてシュートを撃たせていた。

 それを完璧に源田が止め、その後じっくりと圧倒的な攻撃を行い、実力差を思い知らせる。

 挑む者達を徹底的にねじ伏せる王者の戦いだ。

 

 問題は、世宇子が自分達をその戦術でどうにでもできる相手だと思っているということ。

 

「舐めやがって……後悔させてやる!」

 

「おう、あれだな!」

 

「行くぞ、寺門! 咲山!」

 

 ドリブルしていた佐久間が立ち止まり、指笛を吹く。

 足下から現れる5匹のペンギン。

 雷門戦後、鬼道以外のメンバーも加えた特訓の末、MF陣はこの技に参加できるようになっているのだ。

 

皇帝ペンギン――」

 

 

 

 

 

「――2号!!」

 

 走り込んだ寺門と咲山が息を合わせて蹴り出した。

 更に勢いを増したペンギン達が、ボールと共に世宇子のゴールを目指す。

 それを余裕の表情で眺めていた“海神”の異名を取るGK歩星(ぽせい) 呑一(どんいち)/ポセイドンが、ニヤリと笑ってその両腕を振り上げた。

 シュートにタイミングを合わせ、両手の平を地面に叩きつける。

 

ツナミウォールV2!」

 

 その途端、ポセイドンの前で津波の壁が吹き上がり、飛来したペンギンを受け止める。

 ペンギンは津波に呑み込まれ、勢いの死んだボールがポセイドンの手に収まった。

 

「馬鹿な!」

 

「“皇帝ペンギン2号”が……!?」

 

 帝国自慢のシュートがあまりにもあっさりと止められてしまったことに動揺する佐久間達。

 ポセイドンは当然のことだと笑い、そしてボールを彼らの下へ転がした。

 

『な、なんと! 世宇子キーパーポセイドン、王者帝国へシュートを撃ってこいと挑発ーー!?』

 

「帝国は皇帝ペンギンだけじゃない…! 見せてやる、寺門!」

 

 世宇子の守備陣は相変わらず動く気配を見せない。 

 ならば望み通りにしてやると、寺門にボールを渡して共に前に出る。

 寺門が上げたボールを佐久間が打ち落とし、再び寺門がシュートを放つ。

 

「うおおぉぉぉ!!」

 

 だが、特訓を経た寺門がかけるブーストは以前のものよりボールの芯を捉えた鋭いもので、重かった。

 

ツインブースト改!」

 

ツナミウォールV2!」

 

 しかしそれも、ポセイドンの起こした津波の壁に呑み込まれてしまう。

 彼は受け止めたボールを再び佐久間達に渡す。

 

「くっ……くそぉ!」

 

「落ち着け佐久間、2度撃って駄目なら3度目だ。来い洞面!」

 

 荒ぶる佐久間に寺門がそう諭し、洞面と共に飛び上がる。

 それは3人が回転して生み出したエネルギーをボールに込めて放つ帝国伝統の必殺シュート。

 

デスゾーン!」

 

 その必殺技を見てもなお、ポセイドンの余裕の笑みは崩れず、彼はただその身に力を込めた。

 元々中学生離れしていた巨体が、さらにそのサイズを増していく。

 古代ギリシアの神々が戦ったという巨人のような大きさになり、その巨腕を振りかぶった。

 

真ギガントウォール!」

 

 拳で殴りつけて、ボールを地面に叩きつける。

 フィールドに地割れが広がっていき、地面に埋め込まれたシュートは完全に威力を殺されていた。

 

『なんということでしょう! 帝国の誇る必殺技の数々が、悉く海神の前に止められました!』

 

「こんなもんじゃウォーミングアップにもならねえな…!」

 

「そんな、馬鹿な……」

 

 佐久間が眼帯に隠れていない左目を動揺に震わせる。

 渾身のシュートの数々が相手のゴールを揺るがせることもできなかった事実に、自分達への無力感が襲い掛かった。

 彼らを他所に、遊びは終わりだとばかりにポセイドンがようやく世宇子の選手へボールを渡した。

 ボールを受け取ったのは平良(へら) (ただし)/ヘラだ。

 ギリシャの主神の嫉妬深い妻の名を冠する、額に傷を持ったMFはゴールを見据えてボールを宙に蹴り上げる。

 

ディバインアロー改!」

 

トリプルパワーシールド!」

 

 ヘラは浮き上がったボールにすかさず連続蹴りを叩き込み、フィニッシュの回し後ろ蹴りでシュートを放った。

 それを迎え撃つ源田が、3重の壁を展開。

 吹き上げる橙色の衝撃波の壁が、神の矢と化したボールを防ごうとする。

 

「止められるものか!」

 

 ヘラが、自分のシュートへの自信を叫ぶ。

 彼の言葉通り、ボールは3枚の壁を1枚ずつ砕いて進み、程なくして突破した。

 

「これ以上はやらせん!」

 

 しかし、勢いが削られたそれを源田が直接キャッチして止めてみせる。

 

「なんだと……!?」

 

「ナイスセーブだ源田!」

 

 防いだボールを兵藤が受け取り前線へ運ぼうとするが、彼に容赦ない世宇子のディフェンスが襲い掛かる。

 

裁きの鉄槌!」

 

「なん――ぐおぉ!」

 

 DF部灰(へばい) (えん)/ヘパイスが気で上空に造りだし、振り下ろした巨大な足が兵藤を踏み潰した。

 そのまま彼はボールを奪い、それをデメテルに渡す。

 

「させるか!」

 

「くっ……今度こそ!」

 

「「ダブルサイクロン!!」」

 

 向かい来るデメテルの行く手に、万丈と成神が並んで立ち塞がる。

 2人は彼に狙いをつけて風を纏わせた足を振り抜く。

 対するデメテルも、走るスピードを上げて対抗した。

 

「無駄だ。ダッシュストームV2!」

 

「おわぁぁ!?」

 

「ぐぁぁ!」

 

 両腕を広げて走ることで周囲の空気を捉え、起こした強い追い風で襲い掛かった風を掻き消してしまった。

 それだけに留まらず、そのまま2人を吹き飛ばした。

 邪魔を排除してペナルティエリアに辿り着いたデメテルが、周囲に気を放出する。

 

「ハァァァ…! リフレクトバスターV2!」

 

 浮き上がらせた岩石に蹴り飛ばしたボールを反射させる。

 跳弾のような現象だが、何故かぶつかる毎に勢いを増していくシュートがゴールへ迫った。

 

ビーストファング! ――う、おお……!」

 

 それを獣の牙が迎え撃つ。

 僅かに押されながらも、シュートを噛み潰して止めてみせた。

 絶大な力がある筈のシュートを止められ、デメテルが目を見開く。

 

「馬鹿な……」

 

 源田からボールを受け取った五条がそれを辺見へ、そして辺見が佐久間へ渡した。

 佐久間が、周囲とのパスを交えながら攻め上がっていく。

 その前に世宇子の巨漢DF手魚(でいお) (げき)/ディオが立ち塞がった。

 

「どけぇ!」

 

「神には通用しない。メガクェイクV2!」

 

 嘲るように笑ったディオが飛び上がり、着地で思い切り地面に衝撃を走らせた。

 それは大野の得意技のアースクェイクと似た動作だが、威力は桁違いだった。

 この技のそれは、衝撃では収まらずに佐久間達の周囲の大地を隆起させて襲い掛かったのである。

 

「ぐああぁ!」

 

「うわぁーー!」

 

「ぎゃあ!」

 

「佐久間! 洞面! 辺見!」

 

『世宇子中ディオの強烈な必殺技が炸裂ーーッ! 帝国ボールを奪われる! このような実力者達がなぜこれまで無名だったのか!?』

 

 佐久間達は対応しきれずに吹き飛ばされて悲鳴を上げてしまう。

 ディオは、確保したボールを迷わずアフロディへ渡す。

 

「どうやら、ボク以外はキミを破るには不足らしいね。源田くん、キミはボクが直々に潰そう」

 

「これ以上好き勝手させるかよ!」

 

「ゴールへは行かせん!」

 

 そう言ってアフロディが再び帝国ゴールへ向けて歩き出した。

 当然、大野や兵藤、帝国守備陣もそれを阻止しようと動き出した。

 源田ならば今度は止めてみせるだろうという信頼はもちろんある。

 だがアフロディのシュートはこれまでに見たことがないほど強力なのも明らかだ。それを止めるならば消耗も相当のものになるだろう。

 この試合中、その負担を彼一人に押し付けるようでは、DF(自分達)の存在意義などない。

 

アースクェイク改!」

 

災害(それ)(ボクら)の領分だ。神がそれを受けるとでも?」

 

 大野が飛び上がり、着地の衝撃で大地を揺るがすが、アフロディはそのタイミングを完璧に読んでジャンプし、震動をかわしてしまった。

 

「何!?」

 

「まだだ、キラースライド改!」

 

「どうしてわからないのかな――ヘブンズタイム

 

 かわされながらもアフロディの背を追う大野に続き、兵藤がスライディングしながらの機関銃のような連続蹴りを仕掛けた。

 それにアフロディは煩わし気に左手を掲げて指を鳴らした。

 

「――おわぁ!」

 

「ぐお!」

 

「さあ、キミも神の前に跪くがいい!」

 

 アフロディが羽ばたき、ボールにその力を纏わせる。

 そしてゴール目掛けて、またあのシュートを放った。

 

――ゴッドノウズ!」

 

「ゴールは割らせん!」

 

 対する源田も、不退転の決意と共に、リスクを承知の正真正銘の全力で神の一撃を止めにかかる。

 作り出すのは最強の盾。形作られた百獣の王の装飾は吼えるような姿で勇ましい。

 

キングシールド!」

 

 ボールは開けられた獅子の大口に飛び込むようにして盾と激突し、激しい衝撃波を周囲に撒き散らす。

 凄まじい圧で、ボールは源田ごとゴールへ突き進もうとする。

 ズルズルとシューズが擦れてフィールドの地面を抉っていく。

 

「まだだ…! 負けられるか…!!」

 

 源田は、翳していた両手を更に盾へ近づくように突き出した。身体の中に残るエネルギーを、もっとこの盾に注ぎ込むように。

 否、近づけるだけでなく、両手を盾の中へ突っ込んだ。

 

「ぐうぅぅああああ!!!」

 

 圧縮されたエネルギーの中に無理に入れた手は痛みを訴えるが構わずに動かし、盾のライオンの牙と挟み込む両手の2重の守りで神の一撃の力を殺し切る。

 

「馬鹿な!? 神の力が、止められた……?」

 

 目の前で起こった完全に予想外な事態に動揺し、アフロディの動きが止まった。

 世宇子の他の選手も同じく、キャプテンのシュートが止まった事実に放心してしまっている。

 

「源田が守ったぞ!」

 

「このまま反撃を……!」

 

「――――」

 

 このフィールドで唯一湧いた帝国だったが、彼らもすぐにその感情は消えることになる。

 

『おっと源田、シュートを防ぎながら試合を止めたーー! どういうつもり――』

 

 源田が、フィールドの外へボールを投げ飛ばしたからだ。

 一瞬何をしたのかわからなかったが、同時に駆け出した彼の向かう先に、その意図に気付くことになった。

 

「辺見、洞面! 大丈夫か!?」

 

『あーっと、帝国負傷か!? 辺見、洞面、動けません!』

 

「ぐっ……くそ……」

 

 先ほどディオの必殺技を受けた3人の内、佐久間は辛うじて受け身を取れたが洞面と辺見は激しく体を打ったため痛みに悶えて立てずにいたのだ。

 源田に続き仲間達も彼らに駆け寄り助け起こす。

 だが、試合を続行できる状態ではないと判断し、控え選手から帝国一軍の数少ない3年生の渋木(しぶき)翔大(しょうだい)と、成神、洞面らと同じ1年生椋本(むくもと) (けい)が交代してフィールドに入った。

 

「すんません、渋木さん、お願いします……」

 

「任せろ。たまには先輩らしいとこ見せてやらないとな…!」

 

「椋本、成神、後をお願い……」

 

「任せろ洞面。無理すんなよ」

 

「兵藤、お前は大丈夫か? お前も結構必殺技食らってただろう」

 

「大丈夫だ。まだいける……!」

 

 パーマがかかった髪にサングラスという厳つい見た目だが、彼は先達として頼もしい所を見せる所だとこの場面で奮起していた。椋本も同級生に託された試合に奮い立っている。

 2人共気合いは十分。途方もない数がいる帝国学園サッカー部の中でベンチに入ることが許されるというだけで実力は折り紙付きだ。

 そして、世宇子のスローインから試合が再開された。

 

「よし、いくぞ!」

 

「ああ!」

 

 寺門と佐久間が、まだ動揺から抜けきれていない世宇子からボールを奪い、守備陣も突破した。

 それでも身体能力は優れていたが、技術ならば彼ら帝国学園も負けてはない。

 無事にペナルティエリアに到達し、シュート体勢に入る。

 

「――っ。何をしている、止めろ!」

 

ツインブースト改!!」

 

「つ、ツナミウォールV2!」

 

 我に返ったポセイドンがゴール前に津波を出現させ、それでもシュートを容易く止めてしまう。

 

「くそ……!」

 

 寺門が、源田があのアフロディのシュートを止めてみせた後でそれを勝機に繋げられない不甲斐なさに歯噛みした。

 動きを取り戻した世宇子は、再び荒ぶる神々の如き圧倒的な力を振るい始める。

 

ダッシュストームV2!」

 

 世宇子は帝国のディフェンスを前にして一歩も止まることなく、ひたすらにシュートを放つ。

 

リフレクトバスターV2!」

 

ディバインアロー改!」

 

フルパワーシールド!

 

ビーストファング!!」

 

 襲い来るシュートを源田は全力で止め切るが、攻撃が通らない。

 

裁きの鉄槌!」

 

メガクェイクV2!」

 

 

 

ヘブンズタイム

 

 数々の必殺技が帝国を襲い、彼らにもダメージが蓄積していった。

 

「ぐぅ……」

 

「兵藤!」

 

 その猛攻に、必死に耐えていた者達の1人である兵藤が倒れた。

 倒れ伏した彼に見向きもせず、アフロディが3度羽ばたいてゴールに狙いを定める。

 

「あんなものはまぐれだと教えてあげよう……!

 

 

 

 ――真ゴッドノウズ!」

 

キングシールド!」

 

 それでも、ゴールだけは源田が許さなかった。

 神の一撃と王の盾の激突は、先ほどの焼き直しのような結果となった。

 だが取ったボールを、仲間の負傷を理由にやはり投げてしまう源田。

 試合が止まったのはちょうど世宇子側にも都合がいいタイミングで、選手達がベンチへ呼び戻される。

 しかし現状一方的な試合をしている彼らの表情は優れない。

 

「馬鹿な……神のシュートが止められるなんて……」

 

 アフロディには0ー1という今のスコアが信じられなかった。

 自分達は影山に見出だされ、人間を超越する力を与えられたサッカーの神だ。

 それが、影山に完璧な勝利を捧げねばならない自分達が、容易く潰す筈だった帝国学園を相手に失点は論外としてまだ一点しか取れていないのである。

 

 なんとしても源田を突破しなければならない。

 

 その一点にのみ思考を回して、アフロディはベンチに向かう源田が歩きながら腕を(さす)っているのに気がついた。

 

「皆、ここからはボクにボールを集めろ」

 

 “真・神のアクア”を補給しながら、アフロディは酷薄な笑みを浮かべてそう言った。

 

 

 

 

 

「すまん、皆……」

 

 倒れた兵藤が腕に包帯を巻かれながら謝る。

 帝国ベンチでは重い空気が流れていた。

 彼の代わりに、今度は2年生大楠(おおくす) 星士(せいじ)が入ることが決まるが、それが試合を劇的に変えるわけではない。

 むしろ、他のメンバーもいつ決定的なダメージを負ってもおかしくないのだ。

 追加点こそ源田が防いでいるが、何人も仲間に負傷者が出た状況で現状世宇子のGKポセイドンの守りを抜く手立てが彼らにはなかった。

 

「……聞いてくれ」

 

 源田がその中で口を開いた。何か覚悟の決まったその顔に誰もが注目する。

 

「世宇子の守りを突破できるのは、今の俺達にはおそらく“大帝ペンギン”だけだ」

 

「だが源田、鬼道さんが居ないとあれは不可能だ」

 

 源田の言葉に佐久間がそう反論する。

 皇帝ペンギンとデスゾーンの合わせ技。それは天才司令塔である鬼道の指示があって初めて成立するものなのだから。

 影山の謀略なのかこの場に鬼道が不在な以上、帝国にはどうやっても不可能なのだ。

 だが源田は話を続ける。

 

「それはわかっている。だからこそだ。これからオフェンス陣は全員、奴らの攻撃に対応せずに攻撃のみを考えてくれ」

 

「そんなことしたら守備が……まさか」

 

「鬼道は必ず来る。あいつが来さえすれば点を取る目も生まれるが、この調子で奴らの攻撃に対応していたら佐久間達が持たない。それでは駄目なんだ」

 

 源田の考えは大帝ペンギンに参加する佐久間達にかかる負担を全力で減らして鬼道が到着するまで持ちこたえるというものだった。

 理解はできたものの、佐久間達もすぐに承諾はできない。

 成神や咲山等の守備にも回る人員(MF)の負担を減らすということは、その分をDF達、そして誰よりも源田が負うことになるのだ。

 

「大野達には負担をかけてしまうが……勝つために、俺は他の方法が思い付かない。皆、頼む!」

 

「源田……」

 

「へっ、一番負担がかかるお前が頭下げてんじゃねえよ」

 

「ボールをそっちまで通しちまう不甲斐ねえDFだが、居ないよかましだろう。最後まで付き合ってやるさ」

 

「ククク…その程度負担にもなりませんよ。私達も見くびられたものです」

 

 しかし、佐久間達が躊躇う策に、誰よりも真っ先にDF達が了解の意を示した。

 アフロディを始めとした世宇子の必殺技を受けていながら皆、迷い一つもありはしなかった。

 その様子に佐久間も、止めるのを諦めて頷く。

 

「……わかった。守りはお前らに任せる。俺達は極力ボールから距離を取る。絶対に鬼道さんが来るまで持ちこたえるぞ!」

 

『応ッ!』

 

 誰もが大なり小なり傷を負った帝国だが、未だ誰一人勝利を諦めずにフィールドに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

「間に合ってくれ……!」

 

 スタジアムへ駆ける仲間の到着を信じて。

 




源田幸次郎
ゴッドノウズ以外は安全に止められる。
逆転の目を残すため自分とDF達に負担を集中させる策に出る。
キングシールドが捨て身の影響で、パンチングからキャッチに変化。

世宇子中
真・神のアクアをキメてる。
アフロディが止められたことにやや動揺。
現在の彼らは薬の力頼りなので、その力の絶対性が揺らぐと精神的に弱い。
潰しに来る。

影山零治
試合を生で見てはいない。
中継をチラ見してる。


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