源王は玉座を譲らない   作:青牛

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お待たせしました。

今回は中々難産でした。


源王は選択を選べない

 北海道では、寒空の下行われていた白恋中と雷門中の練習試合が1ー1のまま前半を終えた所で、瞳子によって終了が宣言された。

 

「吹雪兄弟……噂以上ね。これ程とは思わなかったわ」

 

「くそっ……1点しか、取れねえなんて」

 

「すげーシュートだった……」

 

「アツヤもそうだが、(士郎)もかなり上手かったね。1点目以降は染岡に一度もシュートを打たせなかった」

 

 円堂と一之瀬が、冷や汗をかきながら白恋中の2人のプレーを評価した。

 吹雪兄弟の力は雷門中の誰の予想も超えるものだったのである。

 開始早々に攻め込んだ染岡が“ワイバーンクラッシュ”を決めたが、お返しとばかりにアツヤは雷門イレブンを必殺技も使わずにごぼう抜きして、一人でシュートまで持っていったのだ。

 

『吹き荒れろ…! エターナルブリザード!』

 

『くっ、速い――ゴッドハンド!』

 

 グラウンドを凄まじい冷気が覆い、放たれたシュートを円堂が迎え撃ったが、光輝く神の手は程なくして凍りつき、砕け散った。

 そうして一瞬で同点にされた雷門イレブンが再び点を奪うべく攻めるが、今度は士郎がその力を見せつけた。

 

『ちぃっ、すぐに取り返して――』

 

『行かせないよ――アイスグランド!』

 

 士郎は駆け出した染岡を一瞬で氷漬けにして、ボールを容易く奪い去る。

 そして、再びボールを受け取ったアツヤが2発目の“エターナルブリザード”を放つが、流石にたった1人にされるがままになることなど、雷門イレブンのサッカープレイヤーとしてのプライドが許さない。

 

『やらせないッス! ザ・ウォール!』

 

ザ・タワー!』

 

 壁山と塔子の2人がかりのシュートブロックで、荒れ狂う吹雪を押し留める。

 それですらも届かずにボールはゴールへ向かうが、その頃には雷門の守護神も迎撃態勢を整えていた。

 

マジン・ザ・ハンド!』

 

『へぇ……』

 

 そして円堂は今度こそアツヤのシュートをその手で受け止めてみせた。

 以降はお互い一歩も退かず、得点が動くことなく前半の時間が過ぎ去ることとなる。

 こうして試合は同点で終わったのだが、雷門イレブンの顔色は優れない。

 

「あの2人……俺より速かった」

 

 大きく呼吸をして空気を取り込みながら、風丸は俯いて呟いた。

 元陸上部で、足の速さを売りにしていた彼は純粋な走力で負けた事実に衝撃を隠せない。

 吹雪兄弟の動きは、まさに彼らが風になっていたかのようだったのだ。

 

「くそっ……」

 

 染岡も、彼らの実力を直に感じていた。

 認めるしかない。吹雪アツヤのストライカーとしての力を。

 そのアツヤに、シュートを受け止めた、試合の興奮がまだ冷めていない円堂が駆け寄っていく。

 

「アツヤ、お前のシュート凄かったぜ! 士郎のディフェンスもな!」

 

「うん、ありがとう」

 

「……ま、お前らも日本一は伊達じゃねえんだな。3人がかりとはいえ、エターナルブリザードを止める奴は久しぶりだぜ」

 

「これで、雷門中の力はわかってもらえたかしら? 彼らはエイリア学園に勝つために、日々進化しているということを」

 

 円堂の称賛に士郎が笑顔で礼を言い、アツヤも言葉を控えめにしながら、円堂のことを認めた。

 そこに瞳子が歩み寄り、アツヤに試合前の発言を指して尋ねる。

 

「……ああ、お前らも中々強いってことはわかったよ」

 

「アツヤ」

 

「わかったよ! わかったからその顔やめろ兄貴! ……悪かったな、いらねえなんて言ってよ」

 

「いいよ、もう過ぎたことだ。それより俺、お前らと一緒に戦うのが楽しみになってきたぜ!」

 

「吹雪アツヤくん。そして吹雪士郎くん。あなた達に、正式にイナズマキャラバンへの参加を要請するわ」

 

「ああ、乗ってやろうじゃねえか。宇宙人なんて蹴散らしてやる!」

 

「アツヤは一人にしておくと危なっかしいので……皆、よろしくね」

 

「よろしくな、吹雪達!」

 

「くっ……」

 

「あっ、染岡!」

 

 確かな実力を示した吹雪兄弟の加入を認める雷門イレブンだったが、染岡は悔しそうにしてその輪から飛び出してしまう。

 それを追いかけ、豪炎寺を想い吹雪兄弟の加入を認められない彼に説得を終えた円堂。

 彼は夕陽に染まり始めた空を見上げて思う。

 

(源田の奴も、もう怪我を治してサッカーやってるのかな。早くエイリア学園を倒して、皆でサッカーできるようにしなくちゃな!)

 

 また彼と戦うためにも、この事態を早く終わらせようと改めて決意する円堂だった。

 

 

 

 

 

 そう円堂に思われていた源田は、真・帝国学園の医務室で彼を連れてきた影山と対峙していた。

 今にも飛びかかりそうな迫力で敵意を剥き出しにする源田に対し、影山は涼しい顔だ。

 

「……何をしに来た。アンタのことだ、比得達に俺が敗れるのを見越していたんだろうが、わざわざ笑いに来るほど暇じゃないだろう? さっさとここから出ていってくれ。アンタにここに居られたら治るものも治らん。随分鈍っていたからな、俺は早く鍛え直さなければならないんだ」

 

「ククク……お前が怪我をする前に戻っただけでは、すぐにまた負けを味わうことになるぞ」

 

「どういうことだ?」

 

「お前も報道で名前は知っているだろう。遠き星よりこの地球にやって来た“星の使徒”……ククク。この真・帝国学園は、エイリア皇帝陛下より授かった力により打ち立てられたものだ」

 

「エイリア学園……!」

 

 影山の出したその名前は、先のフットボールフロンティア決勝戦があった日から世間を騒がしている宇宙人達の名乗る組織のもの。

 人間に桁外れの力を与える薬品“真・神のアクア”を開発して警察に捕まった影山が真・帝国学園を組織しているのも、彼らの支援によるものだという。

 

「そうだ。エイリアの力に、雷門も太刀打ちできず無様な敗北を喫したのはお前も知っているだろう。お前がいくら鍛練しようとも、彼らに惨敗するだけだ」

 

「……エイリア学園が強いというのは知っているが、そんなことを話してどうする。俺にこのまま負けたままでいろとでも?」

 

「ククク……いいや。教え子が無様に敗北するのを多少哀れむくらいの慈悲は私にもあるのでね。そんなお前に素晴らしい提案をしに来たのだよ」

 

 つい先日、世宇子中を使って源田を含んだ帝国学園という教え子達を鬼道以外全員病院送りにした男が随分白々しいことを言うものだ。

 そんな感情の込められた源田の視線に気づきながらも無視して、影山は言葉を続ける。

 

「まずはエイリア学園の力の源――エイリア石について教えてやろう」

 

 口を不気味な笑みで歪めて、影山はエイリア石という存在の正体を語りだした。

 5年前に地球に落下したとある隕石から見つかった、人間の潜在能力を引き出すエナジーを含んだ特殊な鉱物。

 それを身につければ、人間は絶大な力を得ることができるということ。

 真・帝国学園にも、エイリア石が与えられていること。

 影山は紫色の石のペンダントを手に提げながら、誇らしげにそれらの情報を語った。

 もちろん、そんなことを聞いて黙っていられる源田ではない。

 

「ちょっと待て! 人の力を引き出すだと? それが真・帝国学園にも与えられているということは……」

 

「無論。不動を始めとして、奴らは皆エイリア石による力を得ている。でなければ、病み上がりであることを差し引いても奴らがお前を下すことなどできまいよ」

 

「また、ドーピングという訳か。どこまでサッカーを馬鹿にしている……!」

 

 世宇子中の“真・神のアクア”に続くチームのドーピングという、スポーツマンシップに泥を塗りたくるような所業に源田が憤りを示すが、影山は悪びれる様子もない。

 

「サッカーに綺麗も、汚いもありはしない。ただ勝つか、負けるかだ。勝利のためにできることを全てやるのは、誰もが、それこそお前とてやっていることだ。私はそれを私が持てる全てを以て行っているに過ぎん」

 

「俺達にできることはひたすら自分を高めることだけだ、相手を貶めることではないだろう!」

 

「フン。そのお前の言葉も、敗者のものである以上は無価値なのだ。

 

 ――さて。余計な話を挟んだが、ここからが本題だ」

 

 しばらくの間繰り返された問答をその言葉で締めた影山の雰囲気が、変わった。

 先程までの源田の非難への受け答えには嘲った笑いが混じっていたのに対して、今の影山の表情は圧迫感を感じさせる重苦しい仏頂面となった。

 これからの自分の言葉に拒否は許さないという警告にも感じられた。

 

「源田よ、今一度私に従え。真・帝国学園の一員となって雷門中を叩き潰すのだ。私に従えば、エイリア石によって更なる力を与えてやろう」

 

「断る!」

 

 満を持して行われた影山の言葉に源田は即答で拒否を突き付けた。

 それでも、影山の纏う雰囲気は変わらないままだ。

 源田の答えを見越していたように。

 

「ククク……お前がそう言うのはわかっていた。だがわかっていたならば当然、それに対する準備もしているものだ」

 

 そう言って、影山は懐から小さな端末を取り出した。

 画面に映る光景に源田は言葉を失った。

 枠で9つに分けられている画面に映されていたのは、帝国イレブンの姿だった。

 どこかの街中を駆け回る成神・洞面・辺見。

 集まって話し合っている佐久間・寺門。

 人に聞き込みを行っているらしい大野・万丈・五条・咲山。

 その誰一人として、今彼らが撮影されていることに気づいている様子はない。

 影山がどういう意図でこれを見せてきたのか、それに思い至った源田の頬を冷や汗が伝う。

 

「察しがいいな。もっとも、帝国学園に在籍していた者がこの程度のことも理解できなければそれはそれで問題だが」

 

「貴様……!」

 

「わざわざ、続きも言葉にせねばならんかね?」

 

 これは勧誘や交渉ではない。影山の決定事項なのだ。

 黙り込んだ源田に、彼は言葉を続ける。

 

「お前がエイリア石の力を拒むのはわかっていた。手に入る力を手に取らんなど心底理解できんが、下手な人間にエイリア石を与えるよりマシな強さを持つお前に免じて、それも目を瞑ってやろう。私の下で戦い、雷門を叩き潰すのならばな」

 

「…………」

 

「沈黙は誰のためにもならんぞ。強くなる道も帝国の者共も捨てるか、私の下で更なる力を身につけるか。はっきりと言え。その自分の口でな」

 

「……っ、ああ。わかった。雷門中と、戦う」

 

「――そうだ。それでいい」

 

 俯いた源田の答えに、影山は満足げに笑った。

 

「さて。そうと決まれば、まずはお前の傷んだ体を手っ取り早く治すとしよう。その体で鍛練をしても実になるまい」

 

「……どう治すというんだ。病院では、安静にと言われたんだがな」

 

「エイリア石のエナジーには、単なる人間の能力の強化だけでなく、代謝の促進や肉体を活性化する効果がある。……そう嫌そうな顔をするな。試合の頃にはもうエナジーなど消えている。半端な状態で出して中途半端な試合をされてはお前を連れてきた甲斐がないのだ。治療は受けてもらうぞ」

 

「……本当に治療なんだろうな」

 

 どのみち、今影山に逆らう術はないが源田はそう念を押す。

 それに、影山は可笑しそうに笑い声を上げた。

 

「そう疑うな。治療を行えば、明日にでも修練場を使わせてやる。真・帝国学園の者共も使ったものだ」

 

「そうか。……もう出ていけ。アンタと仲良くする気はないんだ。真・帝国学園もエイリア学園も知ったものか。俺はただサッカーをして、勝つ。それだけだ」

 

「結構。直ちに治療を行い、修練場も開放してやろう」

 

 影山はその言葉を最後にして源田の睨みを背で受け流しながら医務室を後にした。

 真・帝国学園の廊下を、彼はくつくつと笑い声を漏らしながら歩く。

 

「ククク……確かに帝国の者共に手を出しはしない。ただ、奴らの方から力を求めて来た場合はその限りではないぞ」

 

 勝利のためならば、手段を選ばない。

 その影山の意思にいつ何時(なんどき)も変わりはない。

 彼は当然、憎き円堂の孫と鬼道を擁する雷門中を相手に揃えるべき戦力は全て揃えるだろう。

 廊下の照明を受けて、その影はゆらゆらと妖しく揺らめいていた。

 




源田幸次郎
真・帝国学園に一先ず加入。

影山零治
源田を真・帝国学園に引き入れた。
帝国学園の仲間に手を出さないと約束したが、向こうから力が欲しいと言われた場合はその限りではない。

帝国イレブン
既に退院。行方不明となった源田を捜索中。
鬼道にはエイリアとの戦いの最中で心配させまいと連絡していない。

吹雪兄弟
雷門中に加入。
ジェミニストーム処刑準備が進む。
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