源王は玉座を譲らない   作:青牛

5 / 65
ビーストファングについてちょっと設定が捏造入ります。
調べてもどうヤバいのかが出てこんのや! ペンギンは技のモーションがもう使用者を痛めつけに来てるけども。


源王は失点を甘んじない

「流石だ源田。だが、お前に“トリプルパワーシールド”に加え“ビーストファング”まで使わせるとはな。やはり雷門(やつら)もやる」

 

 ハーフタイム中の帝国ベンチで、鬼道はどこか楽しそうにそう語った。

 源田が前半最後に見せた必殺技“ビーストファング”。

 それは絶大な威力と引き換えにして、使い手の体に選手生命を脅かすほどの負担をかける禁断の技として“皇帝ペンギン1号”と並び帝国で封印されていた必殺技である。

 

 “ビーストファング”は円堂の“ゴッドハンド”などのようなキーパーが必殺技を使う際にその肉体から放たれる“気”を無理やり体内に留めて、強制的に活性化させた肉体でシュートを迎撃する技。

 獣の姿が見えるのは、それでも体に収まりきらなかった気が現れたもの。

 だが、本来放出される気を体内に留めるのは全開にした水道の蛇口を塞ぐに等しい行いだ。それが人体で起こればどうなるかは火を見るより明らか。

 使い手は使った瞬間こそ絶大な力に酔いしれるが、切れた瞬間にその無茶な肉体活性の反動を味わうことになる。

 

 源田はその強靭な肉体で、本来襲い来る反動を()()ことにしてしまったまさに規格外なのであるが。

 

 佐久間が後半の戦略を鬼道に尋ねる。

 

「鬼道さん、後半はどうします? このままで行きますか?」

 

「後半では皆いつもより前に出てくれ。奴らが攻めあぐねている内にもう一点もぎ取る。守りはFW2人を警戒しておくが、基本的に攻めを意識しろ。ゴールは源田に預けて、このまま押し切るぞ!」

 

「応ッ!」

 

「頼めるな? 源田」

 

「ああ。どんなシュートだろうと通しはしない。帝国GKの名にかけて!」

 

 ベンチに腰かける守護神に確認を取れば、彼は質実剛健とした姿でその心意気を表明する。

 天才ゲームメーカー鬼道 有人の目には、ただ勝利が映っていた。

 

 

 

 

 

「くっそォ! どうすれば、奴の防御を突き崩せる……」

 

「あんなにシュートを撃ち込んだのに、びくともしませんでしたね……」

 

「源田幸次郎。流石に中学サッカー界最強のGKと呼ばれるだけのことはあるようですね」

 

 雷門ベンチでは、前半中悉くシュートを止められた染岡や宍戸が共通の思いを吐き出し、目金が冷静に相手の実力を再確認していた。

 だが源田がどれほど堅牢な守りでも、既に“皇帝ペンギン2号”によって得点された雷門が勝つためにはなんとしても彼から点をもぎ取らねばならない。

 

「初めに想定していた突破法が通用しなかった以上、奴の隙を衝くしかないな」

 

「なんとか点を取らないとこのままじゃ負けちゃうッスよ」

 

「もちろん、点を取ってもさらに取られたら同じよ。守れるの、円堂くん?」

 

 初め、雷門は尾刈斗中が帝国戦で見せた意地から得た攻略法でまず一点を奪うつもりだった。

 しかし源田が想像以上の守りを見せてその攻撃が防がれ、どころかカウンターで点を奪われてしまった。

 その守りを破るには少しでも手数が欲しいが、帝国の猛攻は、円堂がゴールから離れなければならない“イナズマ1号”も間接的に封じてきている。

 勝利は、今からあの防御を最低でも2度突破しなければ手に入らない。もし再び点を取られればさらに遠のく。

 マネージャーである雷門(らいもん)夏未(なつみ)はその現実を指摘する。

 気落ちしているように見えた円堂は、そのどこか試すような言葉を受けて完全復活した。

 

「ああ! 守る。これ以上やらせない。だから皆頼む、俺は絶対シュートを止めるから、あいつから点を取ってきてくれ!」

 

 円堂がそう言って頼み込む。サッカーに対しどこまでも直向(ひたむ)きな彼だから、仲間達はここまでついてきたのだ。

 それを拒む者などここにはいない。いる筈がない。

 

「言われるまでもねえ。それが俺達の仕事だ。なあ豪炎寺?」

 

「ああ。俺達がなんとしても源田の守りを突破してみせる」

 

「それに、ゴールを守るのはお前だけじゃないぞ? 俺達だっている」

 

「はいッス! キャプテンだけに背負わせたりしないッスよ!」

 

「おうでやんす!」

 

「そうだ!」

 

「お前がいっつも言ってるじゃないか。ここからが勝負だって!」

 

 染岡が。豪炎寺が。風丸が。壁山が。雷門の皆が。円堂の思いに応えるべく奮起した。

 サッカー部があわや廃部という絶体絶命の危機から始まり、円堂が紡いできた絆は、強力なシュートを受けて傷ついていた身も心も癒し、体の芯から力を沸き上がらせる。

 それらを見届けた監督響木(ひびき) 正剛(せいごう)は口を開く。

 

「帝国の守りは堅い。だが、勝つためには点を取らなければならん。臆せず挑め!」

 

「はい!」

 

 雷門もまた、この決戦で栄光を勝ち取るための決意を新たにフィールドへ戻っていく。

 

(帝国の人達も、目が違う。信じてるんだ。こんなに綺麗なサッカーをやるなんて……お兄ちゃんは、昔のままなの? 私達、昔に戻れるの?)

 

「円堂くん達、きっと勝てるよね。夏未さん」

 

「ええ。キング・オブ・ゴールキーパー。彼ならそれくらい、軽く超えて貰わないと雷門の名に傷がつくわ」

 

 見送るマネージャー達も、各々の思いを抱きながら、彼らの勝利を信じていた。

 どんな逆境でも諦めない、そのイナズマ魂を。

 

 

 

 

『さあ、ただ今開始されました後半戦! 帝国、大胆に攻め込みます! これを凌がねば後がないぞ雷門ーー!?』

 

 帝国はボールをゴールへ向かって運んでいく。

 もし再び点を取られれば、2点差となる。あちらには源田の守りがあるなかで、そのようなことになれば絶望的だ。

 雷門は皆必死の思いで攻撃を止めようとする。

 

「行かせませんよ、鬼道さん!」

 

「いい仲間を見つけたようだな、土門。だが勝利は俺達が貰うぞ!」

 

 ――イリュージョンボール

 

 ボールを奪いに挑んだ土門だが、鬼道の無数に増えたボールに惑わされ、突破されてしまう。

 鬼道が突破したのを見計らってペナルティエリアへ上がってきた佐久間とアイコンタクトを交わす。

 

「行くぞ円堂ォ!」

 

「来い!」

 

ツインブースト!!」

 

 鬼道が起点となり打ち上げたボールを、跳び上がった佐久間がヘディングシュートで地上に戻し、それを鬼道が再び蹴り飛ばした。

 2重のブーストがかかったシュートが雷門ゴールへ迫る。

 

「止める! 爆裂パンチ!」

 

 円堂はそのシュートを、怒涛のパンチングでなんとか弾き返す。

 弾いたボールは、壁山が寺門との奪い合いを制しなんとか確保した。

 

「うおぉーーっ! 少林くん!」

 

 壁山がそれを同じ1年生の少林寺(しょうりんじ) (あゆむ)へ渡す。

 少林は懸命にドリブルしながら、ストライカー達に託すために敵陣に向かう。

 

「ククク…行かせませんよ」

 

「アチャー! 竜巻旋風!」

 

 帝国で最も謎に包まれたDF五条(ごじょう) (まさる)がそれを阻まんと立ちはだかるが、少林寺は止まらない。

 彼がその場で跳び上がり、空中で回転させたボールが着地すると同時に竜巻が起こり、五条に襲い掛かる。

 

「クッ、ヘァッ!」

 

「うげ、風丸先輩!」

 

 “竜巻旋風”を受けながらも止めようと迫る五条に(おのの)きながら、少林寺は風丸へパスした。

 

「ああ。疾風ダッシュ!」

 

「またか!」

 

「速ぇ!」

 

 ボールを受け取った風丸は、向かってくる帝国選手達を自慢の速さで抜き去った。

 ついに帝国ゴールのペナルティエリアが近づく。

 

「来たぞ……ッ!?」

 

 風丸が豪炎寺にパスをしようした時、彼は帝国に厳しくマークされていた。

 “ドラゴントルネード”や“イナズマ落とし”、あるいは“イナズマ1号”。それらの強力な必殺シュートに関わる彼を警戒してのことだ。

 

「くっ……」

 

「風丸ゥ! こっちだ!」

 

「染岡!」

 

 豪炎寺はマークをすぐに振り切れそうになく、このままでは抜いた守備にも追い付かれてしまう。

 その時もう一人の雷門のストライカー、染岡が、豪炎寺よりは甘かったマークを振り切って風丸を呼んだ。

 風丸も迷わずそれに応じる。

 

「今度こそぶち破ってやるぜ、ドラゴンクラッシュ!」

 

 そして必殺シュートを放った。

 

「通さん。パワーシールド!」

 

「くそぉ……!」

 

 だが、無情にも源田の守りに呆気なく阻まれる。

 自分の不甲斐なさに歯噛みする染岡だが、試合はそれを待ってはくれない。

 再び帝国の攻撃だ。

 

分身フェイント!」

 

「増えたでやんす!?」

 

 洞面が分身で栗松を惑わし突破する。彼が小柄ですばしこいのも相まって、栗松にも捉えられなかった。

 すぐに後を追おうとするが、洞面はその前にボールを回す。

 受け取ったのは、鬼道だ。

 

「これで2点目だ」

 

 既に佐久間と寺門はスタンバイしている。鬼道の指笛でペンギンが姿を現した。

 

「またあれが来るでやんす!」

 

皇帝ペンギン──」

 

 

 

 

2号!!」

 

 前半で円堂を相手に得点した必殺技。宙を舞うペンギンとともにシュートが円堂へ襲い掛かる。

 

「絶対止める……! ゴッドハンド!」

 

 もう一度、神の手とペンギンが激突する。

 しかしその凄まじい圧に、円堂は少しずつ押し込まれてしまう。

 

──このままでは破られる。

 

 その考えが頭を過った。負ける訳にはいかない。自分を信じてくれている皆のためにも。

 だが、押し勝てない。

 

(どうすればいいんだ──)

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は、お前に負けない』

 

 守りたい。

 円堂のその心がイメージさせたのは、何度もつい先程まで見せつけられた鉄壁の守護神だった。

 思えば、純粋な対抗心をぶつけられたのは初めてだった。

 どちらかと言えば彼は過剰なそれは宥める側であったし、これまで戦ってきた学校は一様に雷門イレブンを見下し、対等な対戦相手とすら見なしていなかった。

 試合でわかりあえたものの、御影専農等は初対面の際、害虫とまで言い切ったのだからひどいものだ。

 

 翻って、彼はどうだったろう。

 初めて帝国の面々と出会い、戦った練習試合。彼らにしてみれば、確かに自分達はどうしようもない弱者であった筈だ。

 その強者が、自分を見て、叩き潰さねばならない敵だと認識して襲ってくる。

 自分を圧倒的に凌ぐ王が一切目を逸らさず、自分の守りを睨むように見続けている。

 

 それは円堂の心に、今までの燃え上がる炎とは別の、電流(イナズマ)を走らせた。

 

 ()()()()負けたくない。一瞬だけ、その思いが心を占める。

 

「――うおおおお! 俺だって、俺だって……! 負けるもんかァーーーー!」

 

 彼は、強力な必殺技を両手を使って発動していた。

 守ることに必死だった円堂は直感で、それを真似てみた。

 

「何……!?」

 

 シュートを見守っていた鬼道が声を洩らす。

 ペンギンが押し返され始めているのだ。

 円堂は突き出していた右手に加え、さらに左手を突き出して輝きを増した“ゴッドハンド”に。

 

「絶対に、絶っ対に、止めるんだァーー!」

 

 そしてその魂の叫びとともに、円堂は“皇帝ペンギン2号”に打ち勝った。

 ボールがその手の中に収まり、負けたペンギンが爆散して消えていく。

 

「馬鹿な……!」

 

 彼を打ち破るために開発した必殺技が敗北したことに驚愕する鬼道達。

 逆に、それを見た雷門の選手達の調子は、最高潮に上がっていた。

 

「行くぞ、皆ーー!」

 

「応!」

 

 円堂が止めたボールは、かつてない速さで繋がれて守備をものともせず帝国ゴールへ接近した。

 

「止めろ!」

 

 走りながら鬼道が叫ぶ。

 たちまち、ストライカーの豪炎寺にマークがついた。

 そのマークはやはり厳しく、ボールを受け取れそうにない。

 

「くっ……頼む、染岡!」

 

 攻撃を決めるのは今しかない。

 そんな確信を持ちながら、それに参加できない自分の不甲斐なさを感じながら叫ぶ。

 豪炎寺は愛する妹の夕香(ゆうか)が胸を張れる兄であるためにサッカーへかける思いを、その叫びとともに、もう一人のエースストライカー染岡に託した。

 

「絶対に決めてやる……!」

 

 ボールを受け取った染岡だが、豪炎寺に比べ遅れているだけで、彼にもDFが迫っていた。

 彼らが来る前に、彼は一人であの源田を突破するシュートを放たねばならない。

 

(これは、絶対に決めなくちゃならないシュートだ。帝国のあのシュートを防いでくれた円堂、そのボールを託してくれた皆のために──!)

 

 だというのに、ボールが異様に重く感じた。もしこちらの最高潮に精神が高揚した状況のこれを止められれば、雷門はこの試合での得点が絶望的となるだろう。

 正真正銘の一人だけで撃つシュートは、こんなにも恐ろしいのか。豪炎寺が来てから、共にシュートを撃ちながら、初めは彼に張り合ってすらいたのに、ずっと心の底では頼ってしまっていたらしい。

 

 染岡はボールを上へ蹴り上げる。普段の彼の必殺シュート“ドラゴンクラッシュ”とは違う動きだ。

 だが、これが正しいのだという不思議な確信が彼にはあった。

 

(逆だ。俺はずっと一人なんかじゃなかった。いつだってあいつらが背中を押してくれた! このシュートには、皆の力がある!)

 

 何かが変わっていく感覚がある。現れた蒼い竜も、傍目から見れば()()()()があったり、その体が少し大きかったりと所々違和感があった。

 しかしそんなことはどうでもいい。このシュートがゴールに決まるのならば。

 

「うおぉぉぉぉ! ()()()()()――」

 

 未熟ながら飛び立った翼竜が気を纏わせたボールへ、振りかぶった右足を振り抜く。

 

「――クラァァァッシュ!!

 

 雄叫びとともに放たれたそのシュートは、それまでとは比べものにならない速さでゴールへ向かった。

 

(速い……! あれでは源田といえど、技の()()の時間がない!)

 

 あまりにも速いそれは、源田を以てしても万全な守りを張る猶予を与えない。

 

「ゴールは割らせん! この(KOG)にかけて!」

 

 “ビーストファング”は間に合わない。“トリプルパワーシールド”も同じく、3枚も壁を貼る力を溜める余裕はない。

 “ドラゴンクラッシュ”の速度に慣れきったこのタイミングで、完全に意表を突かれた。

 それでも、迎撃が間に合う時間ギリギリまで力を溜めて、そのシュートを迎え撃つ。

 

「おおお! パワーシールドォ!!」

 

 衝撃波の壁と未熟な翼竜が激突する。

 

「いっけえええぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「うおおおおォォォォォォ!!!!」

 

 雷門の選手が、監督が、マネージャーが、叫んだ。源田も負けじと叫ぶ。

 永遠にも思える拮抗の中、竜が彼らの叫びに応えるように吼えたその時、全てが動いた。

 

 壁は砕け散り、ボールがゴールネットを揺らす。

 

「なん……だと……」

 

『はっ……入りましたァーー! 染岡、得点! ついに源田、サッカー人生初の失点! キング・オブ・ゴールキーパーの無失点伝説が、今まさに破られましたァァァ! 同点です。雷門、帝国に並んだーーー!』  

 

 誰もが言葉を失う中、実況だけが今起こった現実を説明していた。

 

 

 

 

 




源田幸次郎
ついに絶対防御が破られた。
技が基本タメの動作が必要で、速さ特化のシュートは初見だとパワーシールドしか間に合わない。
二度目からはタイミング早めに対応して他の技も合わせてくるのでそこからが本当の勝負である。

円堂守
ペンギンに負けてしまいそうな時、守る手立てを頭の中で探って浮かんだのは挑んでいる王者の姿だった。

染岡竜吾
KOGに初得点したストライカー。ワイバーンを見せる。

円堂とのシュート練に付き合わされて原作よりドラゴンクラッシュ撃ちまくった成果。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。