源王は玉座を譲らない 作:青牛
ヴィクトリーロード、ついに体験版が配信されめでたい。楽しい。
なんでげんおうつかえないんです……?
製品版はよ。
というわけで勢いづいた更新です。
お待たせしました。
エイリア学園のマスターランクチームであるダイヤモンドダストとプロミネンスの混成チーム・カオス。
それを率いるガゼルとバーンが行ったのは宣戦布告。
二日後にこの場所、帝国スタジアムで試合をすると一方的に告げ、彼らは姿を消したのだった。
そしてその翌日、明日の試合に備えた練習も終わり、解散となった夕方。
「三つのマスターランクチームとやら、そのうち二つが手を組むとはな」
坂道を歩く源田が、夕陽に横顔を照らされながらそう呟いた。
先日のダイヤモンドダストとの試合の結果は引き分け。
しかし、チームとしての力はあちらが一枚上手だった。そこに同格のチームとされるプロミネンスが加わるのだ。
油断などできるはずもない。
ガゼルとしのぎを削った源田とて例外ではなく、その声には緊張感がある。
「奴らは、互いに対立しているような様子だった。その両者が手を組んだということは、エイリア学園でも何かが起こっているのかもしれん」
源田の隣を歩く鬼道は、彼らの内情について考えを巡らせる。
本来は相容れない相手のはずのガゼルとバーン。その二人が率いるチームが、合併までして試合を挑んでくるほどの事態。
恐らくその原因には、
「プロミネンスは沖縄でのバーン以外に情報がない。そちらの不安要素は少々大きいな」
「順当に考えればダイヤモンドダストと同等か、或いはそれ以上。俺は沖縄で現れたというあの男のシュートを直で見ていないから、なんとも言えんが」
「バーンは間違いなく次の試合でも脅威となるだろう。ガゼルと併せて、注意してくれ」
「ああ。任せてくれ」
鬼道の言葉に、源田は拳を力強く握って答える。
たとえマスターランクチーム二つが束になってかかって来ようとも、彼ならば一歩も退かないと、よく知っている鬼道は満足げに頷いた。
「フットボールフロンティアであんなに険しい壁だった
二人のやり取りを聞いてしみじみと呟くのは、彼らの前を歩いていた豪炎寺だ。
彼の言葉に、鬼道もまた懐かしそうに笑んで言う。
「フッ……あの日とは、逆になったな」
「!」
かつて、帝国学園が世宇子に敗れてうちひしがれていた鬼道に豪炎寺は言った。
『
雷門の司令塔としていまやチームに欠かせない天才ゲームメイカーである鬼道有人がいるのは、彼の言葉があったからだ。
その豪炎寺が、今度は以前正面から向かい合っていた帝国の守護神に背中を預けている。
数奇な運命だと言えるだろう。
「おお、ここが鉄塔広場か!」
感慨に浸る二人を追い抜いて坂を登り終えた源田が、弾んだ声を上げた。
三人の目的地は、この鉄塔広場だったのだ。
稲妻町のシンボルである鉄塔の麓。彼の姿は、今日もここにある。
「やはりここに来てたか」
「源田、それに豪炎寺、鬼道も!」
「おっ、さらにダチ登場!」
円堂と綱海が彼らの存在に気付いた。
「おー、ビクともしねえな源田。流石キーパー」
円堂と鬼道が階段のそばで話し出したのを他所に、タイヤと触れ合う源田。
太い木の枝にぶら下がるタイヤが、押された分振り子のように戻ってくる、その勢いを難なく止めた源田へ、綱海が感嘆する。
それを受ける源田は、タイヤを受け止めて起こる、身体の芯まで響くような振動を心地よさげに味わっていた。
これは以前から、一度直に体験してみたいと思っていたものだった。
円堂を、彼のサッカーを育み、見守り続けてきた、謂わば聖地。
心なしか、練習で消耗していた自分の身体にも、力が満ちてくる気がした。
「いい場所だな。試合の前に来られてよかった」
「なんだよ、もう二度と来られないみたいに言って。好きなだけ来ればいいだろ?」
「……ああ。その通りだな、綱海さん」
敵は、凄まじく強さを増していく。
それでも、王者の名にかけて戦い抜いてみせようと、彼は固い決意を抱いたのだった。
そしてやってきた試合当日。
再び帝国スタジアムを訪れた雷門イレブンの前に、彼らは宣言通りに現れた。
「逃げずに来たか」
「負けるとわかっていながら、のこのこ現れるとはね」
カオス。彼らを率いる二人、バーンとガゼルが挑発的に言う。
「どうせ受けなければ、また東京を破壊するとでも言い出すだろうに、随分な物言いだな」
それに対し、雷門側から言い返す源田。
前回の試合では彼に苦汁を飲まされたガゼルが、その言葉に強く睨みつけた。
「源王、君もすぐにそんな口は利けなくしてやるさ。深遠なる冷気と……」
「灼熱の炎でな! お前らを完膚なきまでに叩きのめし、証明してやる」
『宇宙最強のチームは、俺/私たちだと!』
これまで見せたプレーだけでも、圧倒的な力を見せつけていた二人が叫ぶ。
彼らに雷門イレブンへの慢心はない。それどころか、何がなんでも勝利をもぎ取ってやるというプレッシャーを滲ませる、鬼気迫る様相であった。
宣言は驕りでもなんでもなく、必ず果たしてやろうという決意に満ちている。
今回の試合は両チームが全力をぶつけ合う、完全に弄ばれたジェネシス戦とも、見下されていたダイヤモンドダスト戦とも全く違うものになることを予感させた。
「負けるもんか! 俺たちは、お前らに勝つ!」
それにも臆さず啖呵を切った円堂の姿は、チームの総意だった。
これ以上言葉はいらない。
「鬼道……源田……」
「負けるんじゃねえぞ……!」
佐久間や寺門たち帝国イレブンがスタジアムの観客席から見守る中、試合が始まろうとしていた。
雷門イレブンの陣形は、豪炎寺とアフロディのツートップ。普段DFの土門はMFの位置まで上がって来ていて、“デスゾーン2”も狙う形だ。
そして円堂はリベロとして初の実戦となるわけだが、彼に不安はない。
これまで積み重ねてきた特訓の自負と、地上最強と言える仲間たちへの信頼があるからだ。
対するカオスの陣形は、こちらもまたバーンとガゼルによるツートップを主軸にしたものだった。
キーパーはプロミネンスのグレント。彼の守るゴールの手前は、両チームのDF陣が左右に分かれて守っている。
中盤は中央をプロミネンスのネッパーとヒート、その両脇をダイヤモンドダストのドロルとリオーネが固め、ダブルエースへとボールを繋ぐ。
戦意は旺盛。彼らにも負けられない理由がある。
ここまでエイリア学園最強の称号であるジェネシスの座を賭けて争っていたマスターランクの三チームだったが、その座がグラン率いるガイアに決まってしまったからだ。
故に、自分たちこそが最強の座に相応しいと示すべく、二つのチームは手を結んだのである。
カオスの面々にも、勝利以外に道はない。
そしてついに、運命の試合が幕を開ける。
「いくぞ、アフロディ」
「ああ!」
豪炎寺のキックオフから、細かくパスを回して攻め上がっていく雷門。
それを迎え撃つべく、早速カオスが動いた。
ドリブルする塔子へドロルが迫る。
「!」
かわそうと考えていた塔子だったが、その思いとは裏腹に、あっさりとボールを掠め取られてしまう。
(うそ、速すぎる! 前はかわせたのに、なんでこんなに?!)
塔子が振り返りながら内心で驚愕を叫んだように、ダイヤモンドダストの面々の速さは以前の試合からさらに上がっていた。
試合からまだ、そう何日も経っていない。特訓をしたとしても、あまりにも上がり幅が大き過ぎる、不自然な程のレベルアップだ。
「うお!?」
「あぁっ!」
ドロルの凄まじい移動速度。
止めようとした土門や壁山も動揺から反応できず、雷門ゴールへの接近を許してしまう。
「行かせるかよ!」
「綱海さん、ガゼルだ!」
ドロルに駆け出した綱海は、ゴールで構える源田から飛んだ指示で、初めて彼の横合いに滑り込むように走ってきたガゼルを認識した。
前回の試合でも、このように守備を釣り出してガゼルにシュートを打たせる戦法を受けたことを思い出した綱海は、ガゼルへ注意を向けた。
「くっ、同じ手にはかかんねえぞ!」
先んじて気付くことができたお陰で完全には引き離されず、綱海はドリブルするガゼルに追い縋る。
これで、フリーでのシュートは防げる。今のうちに他のDFも戻れば、ガゼルのシュートは封じられるだろう。
しかし今回のチーム、カオスのエースストライカーは一人ではない。
「バーン!」
雷門の注意が自分へ向いたのを見たガゼルは、さらに自分を囮にして、バーンへとセンタリングを上げたのである。
受け取ったバーンが、笑みに苛烈な闘志を滲ませながら跳んだ。
追随するように噴き上がる炎は、まさに太陽から立ち昇る
彼は、その破壊力を存分にボールへ込めて解き放つ。
「アトミックフレア V2!!」
沖縄で雷門イレブンに見せたものから進化したシュート。
芝生を焼き払わんばかりの赤がフィールドを照らし、ゴールへ突き進む。
しかしこうなることまで見切っていた源田は、既に迎撃体勢だった。
ガゼルと肩を並べるに相応しい必殺技。直に目で見てそう確信した彼は、出し惜しみしない。
「キングシールド G2!!」
眩い激突の末、勝利したのは源田であったが、
「ハッ! マジで半端じゃあねえな。だからこそ、てめえを破って最強を証明する! まだまだいくぜオイ!」
バーンは驚きこそすれ、戦意の炎を弱めることはなかった。
それどころか、むしろますます猛り、燃え盛らせる。
「上がれ、お前たち!」
闘志には闘志で真っ向から返す他ない。
動じた方が、この最序盤から試合の主導権を奪われることになるだろう。
やられるままでは不味いと悟った雷門イレブンが反撃に移る。
「アフロディ!」
その主力となったのはアフロディだ。
鬼道に勝るとも劣らない優美なテクニック。ここ数日の特訓で雷門に馴染ませたプレー。
襲いかかるカオスの選手たちを前にしても彼は一歩も退かない。
「さあ、ついてこられるかな? ヘブンズタイム!」
そして出る、アフロディの必殺技。
誰にも邪魔できない歩み。彼だけの時間。
後は止まった守備の間を抜けてしまう、それだけのこと。
しかし、その絶対の理に異変が起こる。
アフロディに襲いかかっていた一人、ネッパー。
他の者と同様に動けないはずの彼が動き、アフロディからボールを奪ったのだ。
「――な、に?」
予想外の出来事に咄嗟に反応できなかったアフロディを置き去りにして、ネッパーは走る。
「“ヘブンズタイム”が破られた!?」
驚愕の声を上げる土門。アフロディと敵として相対したとき、同じ技にまるで手も足も出なかった。
それが通じなかった事実を目の当たりにして、とても冷静さを保てなかったのである。
鬼道がその後パスをカットし、即座にカオスの連続攻撃となるのは免れたものの、ダイヤモンドダストとの戦いで凄まじい力を見せたアフロディの雄姿の揺らぎは、チーム全体に波及していた。
「ノーザンインパクト V2!」
結局、雷門イレブンの攻撃はカオスのゴールまで届かず、逆にガゼルにシュートを放たれることになる。
「キングシールド G2!!」
再び迎え撃つ源田。今度も防ぎはしたが、前回より一段と強力になったシュートに、受け止めた表情は固い。
その足は芝生を擂り潰しながら、はじめに立っていた地点より後退していた。
「くっ……」
「私が以前と同じとは思わないことだ……!」
わざわざ言われるまでもないと、源田はガゼルの言葉に内心で悪態をつく。
腕にかかるボールを受け止めた負荷は、確かに前回とは比べ物にならないものだ。
バーン共々、このペースでまともに付き合い続けていては、試合終了まで保つかどうかも怪しくなってくる。
「フローズンスティール 改!」
「ぐぁぁっ!」
そしてゴッカの進化した技で、再びカオスにボールが渡ってしまう。
「バーン」
「おう。実際に
「このまま私たちが打ち続ければ削り倒せるだろうが……」
「チマチマ向こうの体力切れを狙うってのは……最強を名乗る上じゃあ、ちょいと味気ねえよなぁ?」
並んで走りながら話す、ガゼルとバーン。
彼らのやり取りはそこで終わったが、その先は二人とも言わずとも知れていた。
雷門のディフェンスの隙を突いた二人が飛び上がったのだ。
「!?」
「奴ら、何をするつもりだ……?」
その姿を困惑と共に見上げる雷門イレブン。
彼らは、当然の常識を思い出す。
協力して新たな必殺技を編み出すのは、決して自分たちだけの特権ではないことを。
「しくじるなよバーン!」
「誰に言ってやがるガゼル!」
「来るか……!」
荒れ狂う熱風と、肌を刺す寒風。
温と冷で激しくフィールドを染め上げる二人に、奥の手を悟った源田が全力の防御を展開する。
「キングシールド G2!!」
『――ファイアブリザード!!!』
相反するような力が混ざり合い、更なる力の奔流と化したシュート。
争い合う敵同士だった彼らが一つの目的のために結集したことの、象徴的な必殺技だった。
「ぐ、ぬぅぅ……」
嵐のようなそれを受け止める黄金の盾。しかし、盾を支える源田の手は伝わってくる圧力に震え、足は
「負けるもの、か……!」
「いいや、勝つね!」
「これが我らカオスの力!」
『宇宙最強のチームの、力だァーーー!』
「ぐ――ガァァッ!!」
二人の叫びと同時。砕かれる王者の絶対防御。
主たる源田はボールから弾かれ、ついに正面突破によるゴールを許してしまう。
カオスの得点を示すホイッスルが、無慈悲に、高らかに、フィールドに吹き鳴らされたのだった。
源田幸次郎
鉄塔広場は密かに来てみたいと思っていた場所だった。
タイヤ特訓は案の定びくともしない。
最強の必殺技であるキングシールドが破られる。
真・帝国での対ウルフレジェンドに続く二度目。
ガゼル&バーン
早めにファイアブリザードを解禁。
ネッパー
ヘブンズタイムを破る神殺し。
なんなんだお前。
感想よろしくお願いいたします