源王は玉座を譲らない   作:青牛

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お久しぶりです。

ヴィクトリーロード、発売しましたね。
帝国の装甲バスが未だ現役な姿を見て笑い、エンパイアシールドを見て声が出ました。

それはさておき、長らく間の空いたカオス戦決着です。


戦いの終わりは遠くない

 後半戦。

 試合終了が迫る中で、カオスと雷門イレブン、両チームの激しい攻防戦が繰り広げられている。

 

アトミックフレア V2!!」

 

「壁山!」

 

「はいっス! ザ・ウォール 改!!」

 

「よし……フルパワーシールド V2!! ぬぁあ!」

 

 カオスの猛攻を、雷門は源田を中心にした結束の防御で凌ぐ。

 

「ゴールには行かせねえ! イグナイトスティール 改!」

 

フローズンスティール 改!」

 

 そして雷門の反撃は、ボンバとゴッカの堅牢なダブルディフェンスがゴールより前で徹底的に抑え込んでいた。

 

「“ファイアブリザード”は打たせないよ! アイスグランド!」

 

「みんなで取った点、みんなで絶対守り抜いて見せる!」

 

 刻一刻と試合終了が近づいていく。時間はリードしている雷門イレブンの味方、ではあるが。

 

「このまま負けられるかよ!」

 

「我々こそが、宇宙最強のチームなのだから!」

 

 攻撃を担うバーンとガゼルの気迫は凄まじい。

 必ず1点、否、2点もぎ取って天秤をこちらに引き戻す。その決意がシュートにまで乗っているような勢いだ。

 少しでも間違えば点を奪われかねない防戦一方の状況にして、双方が死力を尽くしている結果の、ギリギリの拮抗。

 

イグナイトスティール 改!」

 

フローズンスティール 改!」

 

「くぅっ!」

 

 そんな中、豪炎寺の下からボールが弾き飛ばされ、タッチラインを越えた。

 また雷門のオフェンスが途切れてしまう。

 

 このまま攻撃が通らないまま一方的に攻められ続ければ、いつかは点を奪われる。

 というより、ゴールに立っているのが源田だったからこそ、雷門はカオスの猛攻を前にしてリードを保てているのだ。今の状況が既に奇跡に等しい。

 そして、その奇跡が試合終了まで変わらず続くと楽観的に考えるのは都合が良すぎるというもの。

 

「あのディフェンスをなんとか破らなければ……」

 

 厄介なのはカオスの鉄壁のディフェンスだ。待ち構えるボンバとゴッカの連携は、決してボールを通さない。

 彼らによるボールの奪取が、そのままカオスの絶え間ない攻撃を作り出す要因になっている。この状況を打開できなければやがては押し切られ、勝負の天秤はカオスに傾くだろう。

 

(だが、どうやって破る?)

 

 普通のパスワークだけであの二人を振り切るのはまず不可能。これを破るのに必要なのは、必殺技を潜り抜ける個の力だった。

 二人のディフェンスの僅かな間隙を駆け抜けるスピード。連続で襲い来る必殺技をかわすテクニック。今のチームで、それらの能力を持ち合わせている選手が誰か。

 

「ボクだ」

 

「アフロディ……」

 

 思索を巡らせていた鬼道へ名乗りを挙げたのはアフロディだった。

 考えれば考えるほど、彼以外の選択肢はない。確かに鬼道にもそう思えたが、同時にそのアフロディといえども容易とは言えない難関である。

 

「破ると言って破れるものではないぞ。いくらお前でも……」

 

「大丈夫だ二人とも!」

 

 そう引き留めようとした鬼道に、遥か後方から力強い声がかかった。

 声の主は、今もゴール前に堂々と仁王立つ源田だ。

 

「あと一撃、俺たちで止める。アフロディ、お前は飛べ!」

 

「……? うん、わかったよ」

 

「円堂、壁山とあれを頼む」

 

「おう!」

 

 そして再開して試合。

 ボールはアフロディに渡り、彼が敵陣目掛けて走っていく。当然、それを迎え撃ちに来るゴッカとボンバ。カオスの鉄壁のダブルディフェンス。

 向かっていくアフロディは彼らを前にして――

 

イグナイトスティール 改!」

 

「くっ!」

 

 ゴッカの“フローズンスティール”にも繋がることなく、ボンバによってボールを奪われた。

 辛うじて直撃は避け、受け身を取ったようだが、ボールを取られていては意味がない。

 

「ハッ! なんだ、もう限界か!?」

 

 そんな悪態と共に、ボンバは念願のボールを味方へ流した。

 後がないカオスは今度こそ点をもぎ取るべく、彼らのエースたちの下へと懸命にパスを繋いでいこうとする。

 

「これで、トドメだァ!」

 

「散るがいい、源王!」

 

 そしてその流れを殺さずに首尾よく雷門イレブンのマークを振り切ったダブルエースが、ついに伝家の宝刀を抜き放った。

 

ファイアブリザード!!』

 

 荒れ狂う灼熱と凍気。

 渦巻く混沌の中心であるボールは、ゴールへ向かって一直線に飛んでいく。

 これまで雷門イレブンが決して打たせまいとしていた必殺シュートだ。放たれた以上、いよいよ同点に並ばれるだろう。

 

「――円堂、壁山!」

 

 しかし、構えていた源田に動揺はなかった。

 源田が名前を呼んだ二人が、前に円堂、後ろに壁山の順に並んだ。

 円堂はリベロ。

 その動きの基本とは、オフェンスに参加もするがあくまで“DF”である。カオスの急襲のせいで時間を多くは取れなかったが、味方のDFたちとの連携の特訓もしていたのだ。

 

「いくぞ壁山!」

 

「はいっす、キャプテン!」

 

ロックウォールダム!』

 

 円堂の背後に立った壁山が出した岩壁を、円堂が“ゴッドハンド”で掴み、横に押し広げる。

 左右に広く守備範囲をカバーする、新たな必殺技だった。“デスゾーン”と違い、二人の既存の必殺技の組み合わせだったので、限られた時間でも形になったのだ。

 普通に走っても追い付けない間合いにあった筈のシュートの前に、伸びてきた岩壁が割り込み、氷熱の渦を塞き止める。

 

「なに!?」

 

「くぅっ……」

 

 シュートは岩壁を貫いたものの、間違いなく威力が減衰していた。

 DFたちにも邪魔されない計算で放っていたバーンたちの思惑は外された。

 そして万全でないシュートならば、彼は止めるだろう。

 

キングシールド G2!!」

 

 誰もが思った通りに、輝く獅子の盾は危なげなくボールを呑み込んだ。

 

「くそぉ……!」

 

「無理もないが、勝負を焦ったな! いくぞっ、アフロディ!」

 

「ああ!」

 

 ボールを持った源田は、アフロディに呼び掛けながら、前方へ向かって駆け出した。

 そしてペナルティエリアの際まで来ると、ダイヤモンドダスト戦で見せたような超遠投の構えを取り、総身に力を漲らせる。

 彼の目が捉えていたのは、センターサークルを越えた辺りで翼を広げ、空へと舞い上がったアフロディだ。

 

「まさか奴ら!」

 

 狙いを察したガゼルが声を上げた。

 雷門イレブンにとって厄介な障壁だったボンバとゴッカも、あれ程の高さでは手が出せない。空中戦で対抗できるガゼルとバーンの二人も、今シュートを打ったところからすぐには戻れない。

 ここまであちらが必死に打たせまいとしてきた“ファイアブリザード”が打てたのは、ただマークを振り切れたためではなかったのだ。

 彼らの狙いは、ひたすら守備で現状の点差を守って乗り切ることではなく、更なる一撃。

 カオスへのトドメだったのである。

 

(打たされた!?)

 

 二人がその答えに辿り着くのと同時に、源田から放たれた豪速球が風を切ってピッチを走る。

 ボールはあまりに強烈な力によって野を駆ける獣のようなオーラを纏い、空中のアフロディを目掛けて軌道を上昇させていく。

 向かってきたボールへ、アフロディは“ゴッドブレイク”同様に光を纏った足を振り下ろし――

 

「ハァーー!!」

 

 打ち込まれた力を翼に変えた獣が、獲物を狩りに行く猛禽のような勢いでゴールへと急降下していった。

 会心の一撃から、電光石火のカウンターだ。カオスの対応は間に合わず、グレントはただ独りでこのシュートに相対する。

 

「させるかよ……! カオスバースト!!」

 

 業火と氷結の生む爆発的な混沌。

 グレントの最高火力を以て迎え撃ったが、しかし。

 

「おおお……! ぐぅぅ、アァーー!」

 

 その全てが獣の牙の前に斬り裂かれ、ボールがゴールネットを貫くのだった。

 同時に、とうとう決着のホイッスルが鳴る。

 点数はこれにて3―1。雷門イレブンの勝利である。

 

「うおぉーーっ!」

 

 点差にしてみれば差が大きく見えるが、気を抜けば容易く逆転されかねない激闘だった。

 そして、ついに勝ち取ったマスターランクチームからの白星。

 雷門イレブンは皆喜びに湧き、最後の決め手となった二人を取り囲む。

 

「アフロディ、源田!」

 

「新しい必殺技じゃねえか今の!?」

 

「源田くんのパスのお陰さ。空のボクの(もと)へ正確に届けてくれた」

 

「ストライカーへのダイレクトパスは、まあよくあることだからな」

 

「神の力を得た野獣の一撃……あのシュートは、“キマイラブレイク”と名付けましょう!」

 

 雷門の力に加わった新たな必殺技に、目金が上機嫌に命名する。

 

「“ロックウォールダム”もいい技だった。円堂と壁山のあれがなければ、流石に“ファイアブリザード”が止められるかは賭けだった。助かったぞ」

 

「プロミネンスとダイヤモンドダストに勝ったから……いよいよ残すはジェネシスだけっスね!」

 

 壁山の言葉に、やっと戦いの終わりも見えてきたと希望が湧く雷門イレブンと対照的に、カオスは静まり返っていた。

 

「俺たちが……」

 

「負けたと言うのか……」

 

 立ち尽くすバーンとガゼル。

 本来対立する彼らが、個のプライドを捨ててまで手を組んだにも拘わらず、それでも届かなかったのだ。その衝撃は大きいだろう。

 しかし彼らが息つく暇もなく、フィールド中央にエイリアボールが落ちてきた。

 衝撃がスタジアムを揺らす。何事かと思えば、答えはすぐに現れた。

 

「みんな楽しそうだね」

 

 そんな呟きと共に、グランがフィールドに降り立ったのである。

 

「ヒロト!? お前いったい何しに……」

 

「やぁ、円堂くん。残念だけど、今日は君に用があって来たんじゃないんだ。

 

 ……なに勝手なことをしている?」

 

 そう言ったグランは用のある相手――バーンとガゼルへ、刺すような鋭い眼差しを向けた。

 二人はそれを受け、グランを睨み返して叫ぶ。

 

「俺は認めない! お前がジェネシスに選ばれたことなど!」

 

「だから戦ったんだ、我々が最強だと証明するために!」

 

「その挙げ句負けたのなら、君らがジェネシスだなんて話にならないな」

 

「くっ……」

 

 しかし、グランの痛烈な指摘にカオスの面々は項垂れることしかできなかった。

 結果は結果。どれだけ叫んでも、それは彼らが唾棄する負け犬の遠吠えに他ならない。

 彼らは全てを懸けて挑み、そして敗れた。その結末は、敗者として受け入れなければならないのだ。

 

「敗者がどうなるかは……知ってるだろう?」

 

 円堂たちが口を挟む暇もなくエイリアボールが白い光を放ち、カオスとグランを呑み込んでしまうと、彼らの姿はやはり跡形もなく消えていた。

 

 この戦いで雷門イレブンがカオスを破ったことで、3つ存在したエイリア学園のマスターランクチームで残すところは、グラン率いるジェネシスのみとなった。

 グランとバーン、ガゼルたちの話し振りからしても、ジェネシスがエイリア学園最強にして最後のチームである可能性は高い。

 彼らとの戦いが、そのままエイリア学園との最終決戦となるだろう。

 

 

 

 多くの者がそう考え、旅の終わりを予感していたところで、その日の夕方に一悶着が起こった。

 

 瞳子のスパイ疑惑が持ち上がったのである。

 

 

 

 




オリジナル必殺技
キマイラブレイク:キーパーが思い切り投げ飛ばした獣のような豪速球に空中からパワーを加える、翼を得た怪物のように強力なシュート。


アフロディ
源田との新必殺技を生み出す。カオス戦で負傷せず続投する。
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