シドニアの騎士 再誕する者   作:re:753

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ストックを貯めてるので初投稿です。

今回もオリ設定多めですまんな……原作までどのくらいかかるかなぁ?


友達

「くんのぉ!!!」

 

 左手の高速振動ブレードでエナの触手を切り払う。

 ハッハッハ!! 二十回目にして成功ォッ!!

 

『バカッ、油断すんじゃないよ!』

「へっ? ほんぎゃあああああああ!????」

 

 母さんの怒号が聞こえると同時に、激しい衝撃が操縦席を揺らす。

 メインモニターには大破の文字が表示され、明るかったコックピット内の照明が消える。

 撃墜されちゃったよとため息を吐く。

 

 仮象訓練装置から出ていくと、母さんからのげんこつが頭を直撃する。

 脳天が揺らされ、目の前がチカチカする。

 

「こんのバカ! かっこつけんのはもっとうまくなってからにしな!」

「切り払いは男のロマンだし、上手くいったやん!」

「追撃で撃墜されてたら意味がないんだよ、こんのバカ!!」

 

 最もだが、別に正規操縦士の訓練じゃないからええやんと思うともう一発頭にぶち込まれる。

 スパルタすぎないっすかね、ウチの母親ァ!!

 

「ったく、1万点超えたからって調子のんじゃない!」

「はいはい、んじゃもう一回やっていい?」

「良いわけ無いでしょ?」

 

 げぇ!? ○羽と言いそうになったが、首だけ後ろを振り向くと怒った顔の女性がそこにいた。

 し、科戸瀬のばーちゃん、許して! おばあちゃん許して!!

 

「全く、訓練装置は一日一時間まで! あなたは体が出来てないんだから無茶は駄目だって何度も言ってるわよね?」

「で、でもさ、まだ俺大丈夫だし」

「何か言ったかしら?」

「何も言っておりません! グランマッ!!」

 

 ビシッと敬礼しながら、青筋を立てている婆ちゃんの機嫌をなだめる。

 婆ちゃん、本名は科戸瀬ユレというらしいが、見た目は二十代から三十代の大人の女性にしか見れないが、その実本年齢は百歳超えらしい。

 最初そう言われたときはギャグかなにかと思った。

 

 婆ちゃんは、俺が失神したあと看病してくれた人だった。

 なんでも母さんの昔からの友人で、科学者であるが人体に精通しているとのことであった。

 

 母さんと一緒にしこたま怒られた。

 下手したら頚椎をやっていたと言われたときは冷や汗が出たもんだった。

 その縁が続いているのか、たまーに顔を出して小言を言うのだ。

 

 心配してくれるのはわかるんだが、仮象訓練装置は俺にとってはおもちゃやゲームみたいなものなのだ。

 一日一時間じゃ暇つぶしにもならない。

 

「暇つぶしで仮象訓練装置使うなんて、佐々木の子供じゃなきゃ許されないのよ? 職権乱用、わかってるの?」

「えっ、いや、その……あぁ、アタシ、仕事あるんだった! 大和! 家帰ったら好きにご飯食べていいからね!」

「は? 母さん?」

 

 脱兎のごとくというのだろうか、母さんは猛ダッシュで走り去っていった。

 に、逃げやがったあの野郎、醤油瓶野郎(激怒)

 婆ちゃんは頭に手を当ててため息を出す。

 

「やっぱウチにくる? 大和くん、イザナもいるし」

「……今のままでいいよ、婆ちゃんに迷惑かけたくないし、母さんも好きだしさ」

 

 苦笑しながらそういう。

 半分は本音であるが、もう半分は嘘。

 婆ちゃんのウチには、俺と同い年の孫がいるらしい。会ったことはないが写真は見せてもらったが中性的な顔つきをしてたが、実際中性である。

 シドニア人は男女以外に中性という、パートナーに合わせて体を変化させる人種がいる。

 

 九十年前の人口激減の際、科学者が提案したものであったが、実のところ必要はないというか、人工羊水という人為的な子宮のおかげで、大量生産が可能となったため消えるはずであった。

 だが面白がった当時生き残っていた富裕層がこれを取り入れ、自分の子孫に適応させたのが中性という第三の性である。

 ただ誕生して半世紀ちょっと、いまだに社会に受け入れられているとは言いづらく、俺も実際に中性を見たことはない。

 

「そう、でもいつでも言ってね。大和くんなら大歓迎よ」

「そうならないことを祈ってます」

 

 苦笑しながら、俺は勝手知ったる東亜重工の工廠から出る。

 あれから数ヶ月、暇さえあればここに通っており、顔なじみの人たちも増えてきた。

 全員から息子、あるいは孫のような扱いを受けており、一部から衛士の整備などを教わっている。

 

 将来は東亜重工に勤めるのも悪くないかなと思っているが、俺の夢は正規操縦士に傾いている。

 衛士に乗ってシドニアを守る夢の仕事、というのは建前でただ衛士に乗りたいだけである。

 

 シドニアは狭い。

 いや広いのだが宇宙船という性質上しょうがないのであるが、閉鎖的な感じがするのだ。

 千年も秩序を保ち、維持しているのはすごいとは思うが、本物の土や空気を知っているとシドニアの空気には何かしら匂いがあるのだ。

 

 抜け出したい、そんな気分もある。

 だが抜け出しても今はどうにもならないとわかっている。

 ガウナという驚異を取り除かなければ、星への入植は絶望的だ。

 

 一応、規則で惑星移住の許可もあるが記録を見る限り、その全てが失敗しているか音信不通となっている。

 どうしてもガウナが来て、破壊する。

 アイツラがいる限り、人類に安息はない。

 

「……でも、九十年以上遭遇してないんだよなぁ」

 

 ポツリと俺はつぶやく。

 実のところ、最期にガウナを確認したのは第四次ガウナ防衛戦。

 それ以来、シドニアと遭遇していないのだ。

 

 だからこそ、俺達の世代、いやもっと言えば大半の人間がガウナの恐怖など忘れてしまっている。

 むしろガウナなんてもう来ない、なんてアホなことを言う奴らもいる。

 バカが、と言うしかない。

 

 歴史を学べば、人類とガウナの初接触から二百年以上、ガウナとの交戦はなかった。

 2371年、唐突に地球にガウナが46体飛来した。

 それからわずか十年で地球は破壊され、播種船が地球を脱出せざるを得なかったのだ。

 

 百年の沈黙が=ガウナが来ないなんて理由にはならないし、仮象訓練しかやってないがガウナは人と敵対する意思しか見せない。

 残滅するしか無い、というのが俺の考えであった。

 ……そう思っていると、このまま帰るのもなんか癪だし、婆ちゃんも帰っているだろうと思う。

 

 婆ちゃんも色々と忙しいらしく、一週間、もしくは一ヶ月に一回見れればいいほうだ。

 ピタリと足を止めて、俺はニヤリと笑う。

 チャンスじゃね???

 

「イクゾー!!」

 

 カーンと脳内SEを鳴らし、来た道を引き返す。

 すいすいっと誰にも見つからないようにスニーキングミッションを行い、いつもの仮象訓練装置の場所へと入る。

 ……あれ?

 

「誰かいんのか?」

 

 仮象訓練装置が一つ、起動していた。

 おかしいと思う。

 俺が扱うまで、この仮象訓練装置は放置されていた。

 

 理由としては今現在、稼働している一七式がないという理由だ。

 老朽化と整備パーツのオーパーツ化で残ってるほうがおかしい。

 ……いや一機だけ遺ってはいるが、記念品扱いだ。

 

 一七式白月改継衛、九十年前の戦争でシドニアを救った伝説的な機体が遺っている。

 ただまぁ、サビだらけなので実戦配備は無理だろうけど。

 

 だからこの仮象訓練装置を使う者なんて俺以外にいないと思っていた。

 誰だろうと好奇心からじっと見つめる。

 プシューと仮象訓練装置の扉が開く。

 

「お、おっぱげた……」

「んっ?」

 

 そこから出てきたのはキレイな白髪の俺と同じくらいの少年だった。

 俗に言うイケメンと言うべき顔立ちに、俺とは比べ物にならないほどキレイな服を着ていた。

 謎のイケメンが俺をじっと見ると顔を顰める。

 

「……何だお前、臭いぞ」

「……すまん、飯毎日食ってるんで」

 

 自分では自覚してないのだが、俺は臭うらしい。

 母さんにも婆ちゃんにも、近所の子供達にも言われた。

 光合成で週に一回の食事が基本のシドニア人は、基本体臭というものはほぼなかったりするらしい。

 

 そんでもって毎日3食食べている俺は、独特の獣臭さ? というのがあるらしい。

 近所の奴らから匂い大魔王だわ、ガウナだわ、飯食い星人と言われて虐められた経験がある……反撃して全員の鼻っぱしへし折ってやったが。

 別に3食喰うなとは言われていないし、恥じることではあるまい。

 

 ただ目の前のこいつはあんまり好きではないらしい。

 こちらを睨みつけながら口や鼻に手を当ている。

 

「ふん、旧世紀の風習に囚われているのか」

「別にいいだろ、お前だって週に一回は食ってるだろうが」

「……お前、俺が誰だかわかってるのか?」

 

 そう自信満々に言う白髪のお坊ちゃんだが、俺は首を傾げる。

 アイドル? なんてものはこのシドニアには存在しない。

 有名人なのかもしれんが、テレビはつまらんのであんま見ていないのだ。

 

 だから正直に答えた。

 

「知らね」

「……貴様」

 

 青筋が見えるが、知らんものは知らんのだ。

 白髪には不快だろうが、訓練がしたいので何か言いたげなお坊ちゃんを無視して仮象訓練装置へと歩いていく。

 お坊ちゃんの隣を通り過ぎようとしたとき、不意に視界が塞がった。

 

「おっぶえ!?」

「なっ!?」

 

 お坊ちゃんが裏拳をしてきたと知ったのは、体勢を低くして交わしたあとだった。

 残念だった、不意打ちとか近所のクソガキ共にやられすぎて自然と避けれるんだよバァカ!!

 お坊ちゃんは忌々しそうに、こちらを見て前蹴りを繰り出す。

 

 俺はそのまま後ろに飛び下がりそれを避ける。

 お坊ちゃんが舌打ちをする。

 

「猿か、お前は!」

「人間は猿から進化したからお前も猿やで」

「ほざけっ!!」

 

 お坊ちゃんが拳を握りながら走ってくる。

 俺は防御態勢を取ると、お坊ちゃんのパンチ、キックをいなしていく。

 よく鍛えられていると思う。拳の強さも速さも近所の悪ガキと比べたら雲泥の差だ。

 

 だが複数人でボコられていた俺の敵じゃない。

 振りかぶった拳を避けて、ラリアットの構えで腕を横に突き出しながら走り出す。

 

「なぁっ!?」

「受け見とれよ!」

 

 お坊ちゃんの顎と首に腕を絡ませ、そのまま床に叩きつける。

 そのまま追撃もいいが、受け身も取れず床に叩きつけられたお坊ちゃんは盛大に咳き込みながら背中を押さえていた。

 

「ウィナァアアッ!! ヤマトォオオオッ!!」

 

 ガッツポーズ淫○くんのように、右腕を天高く突き出す。

 お坊ちゃんは何か言いたげなのか、にらみつけるが痛みでそれどころではないらしい。

 情けないというか、喧嘩売ってきたのはそっちやし正当防衛やろうなって。

 

「お、お前、自分が、何したか、わかっているのか!」

「先に暴力振るってきたのはそっちだろ。なんだよ、お偉いさんの子供だからってなんでもしていいと思ってんのかお前、そんなんじゃ広場で吊るされて奇妙な果実にされるぞ」

 

 ソーレソーレと言いながら、咳き込んでいるお坊ちゃんを煽る。

 お坊ちゃんは暫く、俺を睨んでいたが痛みが収まったのかゆっくりと立ち上がる。

 こちらを睨みつけてはいるが、なんか怯えてる、怯えてない?

 

 だいぶいい感じで入ったのが効いたのか、それとも悔い改めたのか、まぁどうでもいいや。

 俺は興味を失って、仮象訓練装置に入ろうとする。

 扉が閉まろうとしたとき、誰かが扉を押さえつけた……さっきのお坊ちゃんが睨みつけていた。

 

「おい、衛人で勝負しろ!」

「えっ、できんの?」

 

 お坊ちゃんの言葉に驚くが、そういう機能もあったんかこいつ。

 お坊ちゃんはマウントが取れると思ったのだろう、再び鼻を鳴らして偉そうに講釈をたれ始めた。

 なんでも仮象訓練装置を繋げれば、擬似的な対戦モードが出来るらしい。

 本来は掌位などの訓練をするためのものらしいが……まぁどうでもいい。

 

『聞こえているか? 猿』

「うるせえお坊ちゃん、泣き面こくなよ」

『ッ! いいか、お前よりも俺は【継衛】を上手く扱えるんだ』

 

 ん? 継衛? と疑問符が浮かぶが、訓練スタートの文字が出て目の前の画面が明るくなる。

 今までしこたまガウナとの戦闘はやったが、対人戦闘は初めてだから少し不安になる。

 レーダーを見ると赤い光点が見え、継と表示され……えっ?

 

「継衛!?」

 

 驚愕する俺の意識が一瞬外れた瞬間、青白い光がこちらに伸びてくる。

 急いで操縦桿を操作するが、避けきれずに左腕に着弾し、モニターに表示されている左腕が赤く点滅する。

 

「くそっ、ヘイグス粒子砲もろにくらっちまった!」

 

 ヘイグス粒子砲というのは、頭部についているいわゆるビーム兵器だ。

 ただしヘイグス粒子、つまり機体の燃料を消費するので多様は厳禁な諸刃の剣である。

 威力は凄まじいんだけどね……っと余裕かましてる暇はない。

 

 レーダー上に表示される赤点が急速に接近する。

 ほぼ勘で、右腕の高速振動ブレードを起動して振り回す。

 相手も同じように高速振動ブレードを展開していたため、ブレード同士がぶつかり火花を散らせる。

 左腕は耐ヘイグスコーティングのおかげで辛うじて動く状況だったため、躊躇なく左腕に備え付けてある高速連射砲のトリガーを引く。

 

 ゼロ距離射撃だったが、避けられ代わりに胴体に回し蹴りを決められる。

 衝撃が俺を襲うが、構うものかと回転する機体を立て直してブーストを全開にして継衛へと突っ込む。

 

 相手もまさか突っ込んでくるとは思っていなかったのか、一瞬機体が硬直するがすぐさまヘイグス粒子砲の発射体勢に入っていた。

 一か八か……やってやらぁ!!!

 

「なんとぉおおおおおっ!!」

 

 左腕を突き出して、ヘイグス粒子砲に直撃させる。

 レッドからブラック、つまり左腕が消失したことをモニターで確認するが腕の一本くれてやるよぉおお!!!

 残っていた左腕を強制排除して、構わず突っ込む。

 

 ヘイグス粒子砲はその威力は絶大だが、唯一撃ったタイミングで視界が潰れることと連射するにはタイムラグが生じるという欠点がある。

 前者はたった一秒、後者はたった数秒であるが、戦闘中の命取りであることには違いはない。

 

「とったぁあ!!!」

 

 激しい衝突音とともに継衛の胴体に激突する。

 その衝撃で、モニターに頭をぶつけるが構わない。

 スイッチを切り替え、ヘイグス粒子砲をチャージする。

 

 俺が何をしようとするのか理解したのか、離脱しようとする継衛だったが俺は残った右腕でガッチリ背面推進機関を掴み離さないようにする。

 逃さねえぞこのやろう!

 

『は、離せ!!』

「誰が離すかこの野郎!!」

 

 コックピットに向けてヘイグス粒子砲がある頭部を向けると、画面に警告表示が出る。

 向こうさんもヘイグス粒子砲のチャージをしていたのか、頭部が光っていた。

 死なばもろともってかぁ!!

 

「いいよ! こいよ!! じゃあぶちこんでやるぜ!!!!!!」

 

 勢いよくボタンを押し込むと画面いっぱいに光が溢れ、続いて衝撃がコックピットを襲う。

 そして画面が暗転し、モニターに表示が光る。

 俺はそれを一瞥して……ため息を付く。

 

「負けかよ」

 

 そこに表示されていたのは大破の文字……くそがぁあああああああ!!!

 

 

 

+++お坊ちゃん視点+++

 

 

 

 そいつと初めて退治したとき、野獣というものがいたのならそれはそいつを意味しているのだと思う。

 汚らしい服、耐え難い体臭、ギラギラと光る目……気に入らない、なぜか俺はそう思った。

 

 案の定、そいつは野獣だった。

 俺の攻撃をいなし、地面に叩きつけられた瞬間、驚愕する。

 馬鹿かこいつ、と思った。

 

 俺を誰だと思っている。

 俺は岐神開発の御曹司だぞ!? こんなことをしたらたたでは済まない。

 そう怒りに燃えていたはずなのに、そいつの目を見て俺はハッとする。

 

 俺を見ていない。

 いや、地に伏した俺に勝ったと思い眼中から外している。

 ふ ざ け る な 。

 

 なぜ俺を見ない、俺は……俺はっ!!

 ふつふつと湧き上がる怒りに身を任せ、仮象訓練装置に入っていく野獣のあとを追い、閉まる扉に手をかけて止めてこういった。

 

「おい、衛人で勝負しろ!」

 

 勝負にすらならないと思っていた。

 あいつは操縦覚えたての素人、対して俺は物心つく頃から衛人に触れていた。

 だが現実は違った。

 

 ヘイグス粒子砲をチャージして放つ。

 一撃必殺とまでもいかなくとも、お遊びでやっていた程度のやつが避けれるわけがないとたかをくくっていた。

 外した、いや外された。

 

 機体には直撃したが、腕だ。

 だが機体はバランスを崩す、そう思っていたがやつは一瞬で体勢を持ち直すと突っ込んでくる。

 

「こいつ!?」

 

 腕の高速振動ブレードを展開し、振りかぶるがやつも同じようにブレードを展開しぶつけてくる。

 次の瞬間だ、背中に氷を流し込まれたような感覚に陥る。

 機体に急ブレーキをかけ、奴が放つ高速連射砲を避ける。

 

 こいつっ!! と頭に血が上り、回し蹴りを胴体に叩き込む。

 だが奴はまたしても体勢を持ち直すと突っ込んでくる。

 先程獣と言ったがそのとおりだろう。本で読んだことがある、猪というやつだ。

 

「だが突っ込むだけではな!!」

 

 ヘイグス粒子砲をチャージし放つ。

 さすがのやつもこれは躱しきれまいと思っていた。

 だが奴は、中破していた左腕を盾にし、そのまま突っ込んでくる。

 

 避けようとしたがヘイグス粒子砲を撃った影響で、視界が塞がっていた。

 数秒後、凄まじい衝撃と音が響き渡る。

 歯を食いしばって前を見ると、奴がヘイグス粒子砲をチャージしていた。

 

 背部推進機関を限界まで働かせるが、やつの機体ごと動く。

 警告音と眼の前のディスプレイに、拘束の二文字が映る。

 

「は、離せ!!」

『誰が離すかこの野郎!』

 

 このままでは負ける、そう思った俺はヘイグス粒子砲をチャージする。

 こんな、こんなやつに負けてたまるかッ!!

 

「勝つのは俺だ!!」

 

 そしてヘイグス粒子砲を放つと衝撃がコックピットを襲う。

 暗転する画面に表示されたのは……大破の二文字。

 

「馬鹿なっ!!!」

 

 操縦桿に拳を叩きつける。

 俺が、俺が負けた? この俺が、岐神海苔夫が野獣に負けた?

 ありえん、ありえない!!!

 

 仮象訓練装置の扉が開いたのと同時に、俺は飛び出す。

 あいつは、あいつだけはっ!!

 

「おま――――」

「お前凄いな!!!」

 

 手を掴まれる。

 目の前には満面の笑みの野獣が立っていて、俺の両腕をぶんぶんと振り回していた。

 すご、い? だと。

 

「すげえよ! やっぱ競い合う奴が居ないとな!!」

「お、お前……一体」

「俺は佐々木大和! お前は?」

 

 ニコニコと笑うそいつに、先程までの怒りは霧散していた。

 競い合う相手、それは俺も望んでいた。

 ここに来るのだって本来はいけないことで、本当は一八式の操縦訓練をするべきなんだろう。

 

 けれど、俺は一八式よりも一七式のほうが好きだった。

 間に合せの機体ではなく、シドニアを守る本物の衛人、それに憧れていた。

 だけどここに一人で訓練してると虚しさがあった。

 

 どうせここで得たものは一八式では活用できない。

 無駄の極み、わかってはいるが諦めきれない気持ちがあった。

 俺は心のどこかで望んでいたのかもしれない。

 

 こういうやつ(友達)を。

 

「俺は……俺は海苔夫」

「海苔? んじゃお前今日から海苔って呼ぶわ!」

「ふっ!!」

 

 へぶしっ!? と叫ぶ大和。

 反射的にぶん殴った俺は悪くないはずだ……。

 

 

 

 




○人物紹介
・科戸瀬ユレ
 CV能登麻美子の百歳以上のお婆ちゃん、というが二十代にしか見えない若作(消し飛ぶ音)。
 実のところ、今のシドニアを作ったチート科学者。この人が居なかったら百年前に詰んでた模様。
 孫がいるが、その親の話題が一切でないとかいう闇深婆ちゃん……と言いたいが、設定上単性生殖で自分のクローンを出産できるので、年の差でお婆ちゃんと呼ばせてる可能性もある……いやソッチのほうが業が深くない?
 今作では大和のお婆ちゃん役として活躍して貰う予定。

・ガッツポーズ淫○くん
 知る人ぞ知るネットミーム、基本ワイの小説主人公はそのネットミームに言語野が汚染されている。嫌な人は嫌だろうけど多少はね? ちなみにシドニアのアーカイブにもあったが消されている、こんな設定出さなくていいから。

○用語解説
・継衛
 エース機体である一七式白月をさらにチューンナップした伝説の機体。百年前の機体だが近代化改修することで現在の一八式と同等、あるいはそれ以上の性能を発揮する。が、なにぶん一八式と違い、自動化されてないため現在の衛人操縦士では十全に実力を発揮することは不可能である。ちなみにヘイグスコーティングという、対ヘイグス粒子用のコーティングがされているが、どういう感じなのか不明、考えるな、ロマンを感じルンでしたよね?

・一八式
 一七式の後継機……ではあるのだが、シドニアの混乱期を支えるため操作の自動化が進んでおり、小説版によると性能はもっと向上できるのに一定でリミッターがかかる仕様な模様。開発経緯を考えれば仕方ない面もあるが、数十年何してんと言いたくなる平時での名機。ちなみにコストカットで継衛についている腕部高速連射砲とヘイグスコーティングがオミットされている。完全に平和ボケです本当にありがとうございました。

・体臭
 原作主人公もそうだが、毎日食べていないシドニア人はあまり体臭がしないらしく、小説で描写されたが独特の獣臭さがあるらしい。臭い=野獣という安直な考えで作中の罵倒を思いついた。別に枕とかはでかくない。

早くヒロイン出してえなぁ、俺もなぁ。
ちなみに一番好きなヒロインは纈です、 纈 で す……原作最終回、ワイは死にかけた。
あっ、ストック切れたら更新頻度減るよ。
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