お隣さんちの竜殺し   作:カフェイン中毒

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 イルル戦どうしようかめっちゃ悩んだ結果


竜殺し、静観する

 弟子ができてるんるんうきうきな竜殺しことシグルドです。いやー、教え導く立場っていうのは楽しいね。翔太君素直で頑張り屋だから俺も教えるの楽しいし、成長スピードも速いし。流石真ヶ土専務の息子だ。ルーンストーン作りもメキメキ上達してるから近いうちに別の訓練も考えないと。仕事に指導!充実してるなー楽しい!もうこっちの世界に永住しようかな、でもなー、また人柱でも立てられたら面倒っていうか不要な犠牲を見逃したくはないし、結局向こうにいつか帰るんだろうけど。

 

 俺が最近出た給料のおかげで浮いた初期資金を全部ぶっこんだ最新スペックの自作PCをいじってると珍しいことにインターホンが鳴った。誰だ誰だ?俺を訪ねてくる人なんて誇ることではないが皆無だぞ!どっちかっていうと俺が出向くほうが多いからな!いそいそと玄関を開けると。

 

 「おんどりゃ竜殺し!小林さんとの思い出の場所をよくもおおお!!!」

 

 「おっと」

 

 「へぶっ!なんで普通に受け止めてるんですか!」

 

 「逆に当方が聞きたい。なぜ攻撃された?」

 

 玄関を開けると同時にトールさんが強烈な助走(空中で)をつけたドロップキックを叩き込んできたので開いていた片手で受け止める。いきなり慣性を失ったトールさんはずべしゃと地面に落ちて頭をぶつけている。なんで受け止めたのかって当たったら痛いし…なんでわざわざ痛い思いをせにゃいかんのだ。立ち上がったトールさんの抗議をハイハイ聞き流していると後ろからひょこっと小林さんが姿を現した。

 

 「トール、何してんのさ。ああごめんシグルド君、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」

 

 「ん、問題ない。それで聞きたいこととは?」

 

 「えっと今日のニュース見た?ちょっと先の山が思いっきりえぐれちゃってるんだけど・・・それでトールが竜殺しが嫌がらせにやったに違いない!って」

 

 「残念ながら当方、昨日はほとんど会社に缶詰めであった。というか小林殿は一緒に退社したから知っているはずでは?」

 

 「だよねー。私も違うって言ったんだけどルーンをあらかじめ刻んでたんです!って」

 

 「そうです!私と小林さんへの手の込んだ嫌がらせに違いありません!」

 

 「それをして当方に得はないが」

 

 「うっ」

 

 「そもそも当方、その山を知らないのでやれと言われても戸惑う。当方が来たときはトール殿のゲートをいじって座標を変えたからその山を通過してないのだ」

 

 「じゃあ違うかー。じゃあトール?やることあるよね?」

 

 「う…うううううう!!…すいません、でした」

 

 「はいよくできました。じゃあごめんねシグルド君、お騒がせして。私とトールは犯人探しに行くよ」

 

 「いや、構わないのだが当方も同行していいだろうか?山をえぐるなど最低でもギガンテスなどの巨人族の仕業だ。見つかってないということは人間サイズ、すなわち人化を習得しているドラゴンの可能性がある。万が一もある、お願いしたい」

 

 「いや!小林さんを守るのはトールの役目です!たとえあなたがいくら強かろうともそれだけは「いいよー」小林さあああん!?」

 

 「感謝」

 

 トールさん、不憫。本当ならついて行くつもりはなかったんだけど。()()()()()()()()()()()()()()。つまり、アニメ1期ではなく、俺が死んだ後に放送されたのかもしれない2期か俺が読んでない原作にあるストーリー…なら一番いいんだけど、俺が来たことによるバタフライエフェクトで起きたなら、責任を取らんといかん。もしもドラゴンで、この世界に仇をなすなら…殺すことも視野に入れよう。まあ話し合いで何とかなるならそれでいいかな。理性的な奴だといいんだけど所業を見る限りそうじゃさそうなんだよなあ。

 

 ジットーとこちらを恨めしそうに睨むトールさんを少しだけ面白く思いつつも、何も気にすることなく先に進む小林さんを追いかけて俺は玄関のドアを閉めるのだった。

 

 

 

 「知らん。昨日はずっとこの部屋の中で財宝を掘っていたからな」

 

 「ふむふむ、つまりゲームをしていたと」

 

 「変われば変わるものであるなファフニール殿…」

 

 死力を尽くして相打ちに終わった相手のこんな姿みとうなかった……俺も大概か。知識として知ってても実際引きこもってる姿を見るとこうくるものがありますね…。まあ俺のそんなセンチメンタルは置いておいて犯人候補その1、財宝狙えば即呪殺ことファフニールさんは違いましたと。

 

 「ちなみにそれを証明する人は?」

 

 「なぜそんなことを聞く。滝谷だ。昨日俺はやつと明日のライブの準備をしていたからな」

 

 「ライブ?」

 

 「ゲームのイベントだ。行くことで限定のアイテムが手に入る。逃す手はない」

 

 「・・・そんなに面白いものであろうか?」

 

 「なに?興味があるなら貴様もやってみるがいい竜殺し。今なら俺がある程度支援してやろう。見返りはレア掘りに協力することだ」

 

 「考えておこう」

 

 「ファフニールさん、この前私に言ったこと覚えてます?」

 

 「・・・・・・」

 

 「おい」

 

 とにかくファフっさんの沼具合がとんでもないことを確認しただけの俺たちは次の目的地、個人的に絶対やらないだろうなといえるんだけど酒を飲んだらワンチャンありそうなルコアさん宅へ向かうことにした。でもルコアさんがやったのだとしたらこの市ごと消えてるだろうから違うんだろうけど。

 

 「というわけで翔太。ルコア殿がどこにいるか知らないか?」

 

 「ごめんなさい師匠、昨日から外国に行くって言ってどこか行っちゃって・・・知らないんです」

 

 「ししょ~~~?この竜殺しに師事してるんですか~?やめたほうがいいですよどうせ効率的に戦闘ができるように仕込まれるだけです!というかこの世界で調和勢の勢力を広げないでくださいよ!どうです?今からでも混沌勢に・・・」

 

 「やめい」

 

 「あべしっ!小林さんチョップなんてひどいですよ~~~」

 

 「痛くないでしょ?それにこの前見た限りだとそんなことしてなかったよ」

 

 「うむ、その通りだ」

 

 「その冷汗は何ですか竜殺し」

 

 別に冷や汗なんかかいてない、かいてないぞ?決してこの先翔太君に対して戦闘訓練をつけて真ヶ土専務のように魔法使いの最高位に駆け上がれるくらい強くしてやろうとか考えているのを見透かされたような気がしたわけじゃない。翔太君スポンジどころかバキュームレベルで知識を飲み込んでいってくれるからちょっと教えるのが楽しくなってるわけじゃない。うんほんと、自衛くらいだってね?うん。

 

 「ってことはルコアさんも白か…」

 

 「ふむ、後の知り合いでやれそうな人物といえば…」

 

 「もう消去法ですねっ!」

 

 「なぜ嬉しそうなのだトール殿」

 

 

 

 「おんどりゃああああああ!!!!」

 

 「げぼあっ!?!?!?あっ!はむぅ!」

 

 「なぜ初手から攻撃に入るのだ…」

 

 商店街に入り、そこでたい焼きを片手に幸せそうな顔をしているエルマさんに向かって、トールさんは初手から容赦のないローリングソバットを食らわした。人間なら首がねじ切れてタケコプターしてる威力だがそこは同じドラゴンのエルマさん、しっかりと空中に投げ出されてしまったたい焼きを口でキャッチしつつ踏みとどまった。この食いしん坊ドラゴンめ・・・もぐもぐとたい焼きを頬張りながらエルマさんが抗議してくる

 

 「いきなり何するんだ!折角のたい焼きが地面にでも落ちたらどうする!?」

 

 「むぅ、私の蹴りでもこたえてないとは…というか気にするとこそこですか」

 

 「ねえエルマ、今朝のニュースでさ、山が」

 

 「山!?そうだ!それなのだ!私も何かあったと思って調査をしてたんだ!私はてっきりトールかと」

 

 「ってことはエルマも違うんだ」

 

 「ちょっと!そこでなんで私が引き合いに出されるんですか!?」

 

 「ではトール殿、元の世界でやったことを胸に手を当てて思い出してみるといい」

 

 「うっ…」

 

 まあわかってたけどエルマさんも違うのか。というかエルマさん物理によりすぎてるのでネットでさっき見た魔法みたいなえぐれ方の跡を作るのはちょっと難しいんじゃないだろうか。エルマさんのブレスウォーターカッターだし、やるとしたら山が真っ二つになってるとかじゃないと疑えないよ。さてさてこれで明らかに異世界から新しく来た誰かがこれをやったということになってしまうわけなんだけど・・・

 

 「でも私の結界を破れるものなんてそうそう・・・じゃあ誰が・・・?」

 

 

 

 「私だよ」

 

 声がした方向に弾かれたように顔を向ける。するとそこには、赤い髪、切れ長の瞳孔の深紅の瞳、異形の・・・竜の両手、そして尻尾、マント1枚に下着というとんでもない恰好ではあるが、明らかに人化した竜がそこにいた。すごい、何がとは言わないがルコアさん以上だ。・・・ん?待てよ、あの竜から知ってる気配がする。でもあんなインパクトのある外見、俺知らない。誰か食われたか?

 

 「イルル・・・!」

 

 「こーん、にーち・・・わぁ」

 

 「イルルだと…?」

 

 イルル・・・えっイルルゥ!?マジで!?あいつ人化するとこうなるの!?うっそだろ?確かに街を襲いに来た時コテンパンにしてやったことが何度かあるんだけどドラゴンの姿でしか来ないから知らんかったわ!遠くから炎酸ブレスしかしてこないから被害を押しとどめるためにいろいろやってたらとり逃すこと数度、まともに相手するのが俺だけだからって構われにやってきたとしか思えないタイプのドラゴンだったけどまさかこっちまで来るとは…!もしかしてこれ俺の責任?・・・狩るか?距離は目の前だし、やろうと思えば一撃で済む。破滅の黎明(グラム)で首を落としてもいいし、原初のルーンによる空間転移で死のルーンを直接刻んでもいい。

 

 でも・・・でもなあ…小林さんの前でそれをするのはちょっと…血生臭いし、小林さんそういうの嫌いそうだし、殺しにかかったら止められそう。どうしよ。

 

 「イルル・・・貴殿は・・・雌だったのか?」

 

 「気にするとこそこぉ!?」

 

 「?そうだぞー?ほれ、ほれ」

 

 だってだって人間にはドラゴンの雌雄判別なんて殺した後でしかできないから人化しなかったらわかんねえよ!結構血気盛んだから勝手に雄だと思ってたわ!やめろ!そのたわわを両手でつかんで上下させるな目の毒だ!小林さんの目がどんどん据わっていってこっちも怖いんだよ!

 

 「おかしい、おかしいなあ…この奇麗な街並みに笑う人々、いくらでも破壊を楽しめるのに…混沌の竜は人間、しかも一人は竜殺しと一緒。様子見の意味なかったなー・・・皆、敵みたいだし!」

 

 「小林さん、下がって!」

 

 イルルが突如そう叫び一直線にこちらに向かってきてその鋭い爪を両方とも振りかぶり打ち下ろしてくる。当然反応するトールさん、彼女が前に出る前に俺が矢面に立って破滅の黎明(グラム)の柄で受け止める。後ろから遅れて小林さんが息をのむ音がする。姿はトールさんが翼で隠しているから見えないけど。さて、まずはいつも通り、警告かね。これで引いてくれたらいいんだけど

 

 「アハァ♡竜殺し、久しぶりぃ?いなくなったって聞いて破壊し放題だと思ったのに!」

 

 「・・・イルル、何度も言っているが当方は貴殿と殺し合いを楽しんでいるわけではない。速やかに元の世界に戻るかさもなくば・・・」

 

 「とーほーに狩られるか選べぇってやつ?もう聞き飽きたよそんっ!?」

 

 「どこ見てるんですか」

 

 問答の途中、まあ明らかにイルルは拒否してたが小林さんが下がったのを確認したトールさんの強烈なトーキックが命中しイルルが上空に吹き飛んだ。隙ができたので突っ込んで首を狩ろうとしたら腕をエルマさんに掴まれて止められた。立場としては俺より彼女のほうが上なので俺はそこで戦闘態勢を解除するしかなかった。混沌勢同士の闘争にしておいたほうが都合がいいということだろうか。

 

 「ねえエルマ、何あれ」

 

 「イルルだ。混沌勢の最過激派の一匹、破壊と殺戮をこよなく楽しんでいる。典型的な混沌勢といっていいだろう。きっとトールにつられ・・・いや、シグルドか?とにかく、トールのやつどうする気だ・・・?」

 

 「そりゃあ、トールだもの。何とかするでしょ・・・私にはそう信じるくらいしかできないからね」

 

 そういった小林さんが上空で攻防を続ける二人を見上げる。信じるかあ・・・すごいな小林さんは。突発的に始まった戦闘で相手の事をよく知らないはずなのにトールさんが場を収めることを疑ってない。でも、トールさんなら確かにイルル程度何とかすること自体は容易だ。ここが町中じゃなかったら、だけど。イルルは町ごと巻き込んで破壊しようとするがトールさんは被害を抑えるためすべての攻撃をその身で受けている。当然、圧倒的不利だ。イルル自体もトールさんより弱いとはいえ力あるドラゴン。どんどんじり貧になっていく。

 

 炎酸のブレスをまともに受け、爪で引き裂かれるトールさんを見て小林さんがはらはらしながら言葉を漏らす。

 

 「イルルの強さはトールの少し下、それにトールの後ろには町がある。当然ながら不利だ」

 

 「エルマはさ、手伝ってあげないの?」

 

 「私が?小林先輩、トールと私は本来敵なんだ。加勢なんてできない。それに私だけじゃない、他のドラゴンたちもしないだろう」

 

 「じゃあ、シグルド君は?」

 

 「小林先輩がそれでいいというならだが・・・シグルド、お前・・・イルルを殺す気だったな?止めなければあのまま首を落とすつもりだったんだろう?」

 

 「殺すって・・・」

 

 「小林殿、確かに当方はあの竜を悪竜(ドラッヘン)と定め、止められなければ殺すつもりであった。当方は屠竜派、竜を殺すことに理由を求められない唯一の派閥だ。小林殿がそれで良いのならば当方が速やかにイルルを殺す」

 

 「いいわけないでしょ!ああもう…トール・・・!」

 

 そう問答しているうちにトールさんは傷ついていく。爪が入り、ブレスで焦げ、微々たるという形ではあるがダメージが蓄積していく。少々、まずいかも…もし彼女が我を忘れて本気で対応したら・・・うん、もう四の五の言ってられないかもしれん。と思ったがやはりエルマさんが止めてくる。トールさんが力尽きるまでは入るなということか・・・うーん、どうしよ…あっ!そうだ!これならいんでね?と俺は携帯している特性ルーンストーンにびっしりとルーンを書き示す。もちろん原初のルーンで。俺が手を出すなら殺すしかないけど…俺が手を出さなきゃセーフじゃない?

 

 「シグルド、何をしているんだ?」

 

 「小林殿、小林殿はできればイルルを殺さず場を収めたい。でも当方もエルマ殿も手伝えない。ジレンマだ。というわけで小林殿、これで文字通り一石を加えてみるといい。悪いことは起こらない。当方は魔力をこめていないからな。思いっきり、投げてみることだ」

 

 「シグルド君・・・これって…あ!」

 

 魔力をこめずただルーンを刻んだルーンストーン、エルマさんがこの非常時に何をという顔をしているが小林さんは知っている。俺のルーンストーンは他人が使っても寸分たがわず効果を発揮することを。そして小林さんには魔法使いとして大成できるだけの魔力と才能、魔術=プログラム言語という知識がある。魔力のこめ方なんて概要だけ知っていれば十分だ。俺の言う通り、思いっきり投げれば、それでいい!

 

 

 

 「イルルーーーー!!!」

 

 「なんだ?人間?」

 

 「小林さんっ!?」

 

 小林さんの大声で戦いが一時ストップする。イルルは素直というか単純なので呼ばれた言葉にそのまま反応した。小林さんはイルルに向かってルーンストーンを思いっきり投げた。魔力も、ぶっつけ本番とは思えないほど潤沢に込められている。空中で光り輝いたルーンストーンはその中の魔力を一気に開放し、無数の魔力の鎖となってイルルに殺到した。避けようとするイルルだが原初のルーンはそんなに甘くない。あっという間に鎖でがんじがらめにされたイルルが空中で張り付けにされた。

 

 それを見たトールさんは好機と感じたのか思いっきり息を吸い込んでブレスの準備に入る。喉元から胸のあたりが赤く融解しそうなくらい赤熱してるのが見える。あ、これやばいかも。

 

 「あああああ、もう!シグルド!後でスイーツを奢れ!」

 

 「いくらでも」

 

 したり顔の俺にそう要求をしたエルマさんが得意な結界術で町の保護をする。状況が動けばやってくれるって思ってたから計画通り!スイーツで許してくれるなんてチョロい。さすがちょろゴン。トールさんの口から町ごと消滅しそうな勢いのブレスが飛び出し防御態勢も取れないイルルに直撃し、黒焦げになったイルルが落ちる。その下にゲートを開いてイルルを落としたトールさんが下りてくる。これでヨシ!

 

 「ちょっとルーンが滑ったな。たまたまグレイプニルを再現していたものの何事もなくてよかった」

 

 「白々しい・・・!後の事を考えろお前は!」

 

 エルマさんが持ってる槍杖で思いっきり殴られた、理不尽。何はともあれ何も失わずに済んでよかった。ちょっと思いつめた顔をしているトールさんが気にかかるがイルルが襲ってきて犠牲者ゼロは快挙も快挙だ。元世界だったら数百人単位で死んでるからな。とりあえず、これにて一件落着、と。




 イルルちゃんメイドラゴンの中で一番好きなんです。でもなー、最初のファーストコンタクトがなー難しいんだよなー
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