絢の軌跡   作:ゆーゆ

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選択の刻

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それが私達《Ⅶ組》が獲得した、来場者アンケートによる投票数。

2位に大差をつけて見事1位に輝いた現実に、私の感情は歓喜の声を上げてはくれなかった。

 

頭の片隅で考えてはいた。《Ⅰ組》に勝ちたいという競争心もそれなりにあった。

今となっては、順位という数字をつけることは蛇足に思えた。

クラスの数だけ、人の数だけ10月24日がある。優劣を付けることに意味なんて無い。

 

「はいはい。どうせ《Ⅴ》組はビリっけつよ。最下位で悪かったわね」

「あ、あはは・・・・・・ウインナー食べる?美味しいよ、これ」

「要らないわよ・・・・・・」

 

10月24日、午後19時。

グラウンドの中心でメラメラと燃え上がる焚き木。

吹奏楽部2年生による物静かな演奏音と、焚き火を囲いながらダンスに興じる生徒達。

そんな後夜祭の光景を眺めながら、私とポーラは10月24日を振り返っていた。

 

アンケートの結果、大盛況を見せたポーラ達《Ⅴ組》のみっしぃパニックは何故か最下位。

その中身は両端に寄った。1位を付ける生徒もいれば、最下位に選んだ生徒もいた。

前者については、『楽しかった』『みっしぃが可愛かった』といった純粋な感想によるもの。

一方後者は『みっしぃを使うのは卑怯』『客寄せかよ』という、大前提を否定するものだった。

 

「それを言ったら《Ⅶ組》だってそうだよ。音楽院の生徒がさんふぁひひゃっはひ」

「食べながら喋らない」

「ん・・・・・・だから、順位なんてどうだっていいじゃん。楽しかったのは間違いないんだしさ」

「ま、それもそうね・・・・・・はぁー。何か疲れちゃった」

 

大きな溜め息をつきながら、草むらに大の字で寝そべるポーラ。

同じ思いだった。昨日は乗馬体験コーナーに付きっ切りで、夜にはあの騒動。

今日の午前中は何だかんだで歩き疲れたし、午後は全てをステージ上に置いてきた。

そして今し方、演奏に合わせてガイウスと踊ったせいで、体力はすっからかんだ。

特別実習終了後をも上回る疲労感が心身を蝕み、こんな時間に眠気を感じさせた。

 

「よいしょっと」

 

ポーラに習い、ウインナーが詰まった紙袋を置いてから身体を寝かす。

星が見えていた。ノルドには遠く及ばないが、トリスタの夜空も中々の物だ。

吹奏楽部の演奏が、子守唄のように心地良い。目を閉じればすぐにでも眠ってしまいそうだ。

 

「ねえポーラ」

「何?」

「多分さ。向こうも立場上、誘い辛いんだと思うよ。色々な人が来てるしね」

「・・・・・・」

「気持ちは分かるけど、こっちから強引に誘うっていう手もあるんひゃあぁっ!?」

 

脇腹に容赦の無い貫き手が刺さった。

直後に襲ってくる痛みと、脇のくすぐったさ。

勘弁してほしい。ガイウスと一緒で、脇は人一倍弱いというのに。

 

蹲りながら悶えていると、ポーラは半身を起こし、紙袋から1本のウインナーを手に取る。

それを頬張りながら、ポーラは勢いをつけて立ち上がった。

 

「余計なお世話よ。バカ」

 

言いながら、ポーラは歩き出す。私はその背中を見詰めながら、再度紙袋を抱えた。

 

もう半年間も同じ時を過ごしてきた。分からないはずがない。

一時の気の迷いだとしても。知らぬ間に消え行く感情だとしても。

今ぐらいはその感情に身を任せて、思い出を作ってもいい。ここはそういう場で、今がその時。

先の事は分からずとも、きっと3人で笑い合える未来がある。

 

「よお。面白いことになってんな」

「お疲れ様、アヤ」

 

背後から聞こえた声に振り返ると、クロウとエリオットの姿があった。

エリオットの手には、紙コップに注がれた紅茶らしき飲み物があった。

丁度いい。ウインナーのお供に水気が欲しかったところだ。

 

「クク、あの生意気な坊ちゃんの青春を、精々拝んでやるとするか」

「こら、茶化さないでよ」

「馬鹿野郎、こんな面白いもの滅多に・・・・・・分かった分かったからその手をやめろ」

 

言っておくが、私の貫き手はポーラ程優しくない。

私の構えに観念したのか、クロウは漸く2人から視線を外してくれた。

 

その右手でエリオットから飲み物を受け取ると、彼は改めてステージ演奏の話に触れた。

 

「付き合ってくれてありがとう。おかげ様で素敵な演奏が届けられたよ」

「こっちこそ。2人のおかげで、大成功だったし・・・・・・ねえ、クロウ」

「あん?」

「今月までって話だったけど・・・・・・いつまで《Ⅶ組》にいられるの?」

 

来週一杯までだな。

クロウは言いながら、ゆらゆらと揺れる焚き火に視線を移した。

 

たったの2ヶ月間。学院生活24ヶ月の内の、たった12分の1。

共有した時間の長さは関係無い。それは彼自身が教えてくれた。

 

昨晩の試練。慄き狼狽える私達を奮い立たせてくれたのは、クロウだった。

フィーの命が危険に晒された時、自身を顧みず誰よりも早く動いたのも、彼。

少なくともあの瞬間だけは、紛れもない《Ⅶ組》の一員だったはずだ。

やがて来るであろう、同窓との別れ。それが今唐突に、7日後に迫っていた。

 

「んな深く考えんなよ。学内ではどうせ顔を合わせるんだぜ?」

「まあ、そうだけどさ」

「はは・・・・・・少し、寂しくなっちゃうかな」

 

私とエリオットの声が、尻すぼみに小さくなっていく。

するとクロウは両の手で握り拳を作り、私達の額をコツンと、軽く小突きながら言った。

 

「ったく、こういう時ぐらい笑えよ。辛気臭えのは御免だ」

 

応えるように、エリオットは笑いながら、左手でクロウの握り拳を打った。

こういった振る舞いは男性同士でやることかもしれないが、私もエリオットに習い、続いた。

すると加減を間違えたのか、右手に痛みが走り、お互いに拳を抱えながら蹲ってしまった。

その姿が可笑しくて、笑った。クロウも笑っていた。

 

まだ7日間ある。クロウが《Ⅶ組》を去るその日までに、もっと思い出を作ろう。

彼がこの士官学院を去る時には、笑って見送れるようになっておこう。

別れを惜しむ練習と思えばいい。クロウもきっと、笑いながら去って行くはずだから。

 

「ねえクロウ。1つだけお願い」

「何だよ?」

「卒業するまで、キルシェのツケは清算しておいてね」

「・・・・・・あー、今いくらだ?」

 

1024ミラ。

再び積もり始めたそれは、奇しくも今日を示していた。

 

_____________________________

 

それから30分後。

視界の端に、ヴァンダイク学院長と会話を交わす女性が目に止まった。

それが誰かはすぐに分かった。私は小走りで駆け寄り、再会の挨拶を交わした。

 

「お久しぶりです、テンペランスさん」

「あら・・・・・・フフ。久しぶりね、アヤ」

 

セントアーク理科大学植物生理学研究室、テンペランス・アレイ教授。

5月度の特別実習でお世話になった大先輩。漸く見つけることができた。

姿を見かけたとアリサから聞いていたが、結局今まで会わず仕舞いになっていたのだ。

 

テンペランスさんは毎年学院祭に足を運んでいるそうで、今年も例外ではなかった。

1つ例外があるとすれば、それは学院長からの彼女に対する『提案』にあった。

 

「常任理事?」

「ええ。ヴァンダイク先生から引き受けてくれないかって、前々から頼まれていたのよ」

 

士官学院の運営を掌る、3名の常任理事。

その席は数年置きに1名ずつ入れ替わるそうで、今現在候補に挙がっているのが、テンペランスさんなのだそうだ。

 

「何度も断っているのだけれど・・・・・・今日もしつこくってね」

「フフ、おぬしなら誰も文句は言わんじゃろう。もう一度検討してはくれんかの」

 

学院長の仰る通りだ。テンペランスさんなら、誰も口出しはしないだろう。

軍属でも貴族でも政府筋でもない、第3者の視点が求められるのなら、正に打って付けだ。

 

「でも私なんかに務まるとは―――」

「学院長」

 

突然、背後から聞こえた声でテンペランスさんの言葉が遮られる。

振り返ると、サラ教官の姿があった。その表情には、感情が無かった。

一目見ただけで―――唯事ではない何かを思わせる。そんな顔だった。

 

サラ教官と学院長は一言二言の会話を済ませた後、足早に本校舎へと向かった。

その後を追うように、数名の人間がグラウンドを後にしていく。

オリヴァルト殿下。イリーナさん。クレア大尉。クレイグ中将。

名立たる面々がぞろぞろと、列を連ねて歩き始めていた。

 

「何かあったようね」

「はい・・・・・・何でしょうか」

 

その異様な光景に、吹奏楽部の演奏は止まっていた。

ダンスに興じていた生徒らも足を止めて、立ち尽くしていた。

 

ざわめきが起こり始めた頃に、再び学院長がグラウンドに繋がる階段を下りて来る。

その後方にはサラ教官にトワ会長、ハインリッヒ教頭の姿もあった。

学院長は後ろ手に手を組んだ姿勢で、咳払いを1つ。ゆっくりと、喋り始めた。

 

「ご来場の皆様、それに学院生諸君。本日はご来場頂き、誠にありがとうございます。この後夜祭をもって、第127回トールズ士官学院祭を終了します」

 

唐突に告げられた、学院祭の閉幕。

本来なら拍手や労いの声を以って、終了を惜しみながら迎えるべき瞬間。

誰も、何も言わなかった。口を閉ざしたまま、学院長の声に耳を傾けていた。

固唾を飲んで、その先の言葉を待っていた。

 

「それと先程、帝国政府より正式な通達がありました。本日夕刻、東部国境にあるガレリア要塞が壊滅・・・・・・いや。原因不明の異変により、『消滅』してしまったそうです」

 

(え―――)

 

そちらの方面から来られた方々は、どうか落ち着いて行動されるよう。

学院長が言った『そちらの方面』が何を意味するのか。この時の私には、理解できなかった。

 

_______________________________

 

10月24日、午後16時21分。ガレリア要塞と、第5機甲師団が消滅。

まるで理解の及ばない通達を聞かされた私達は、翌日に学生寮での待機を命じられた。

 

知らされたのは、消滅という2文字だけ。

事実確認をする術を持たない私達は、ミリアムを頼るしかなかった。

 

ミリアムはガレリア要塞の消滅を肯定した。正確な日時も、彼女が教えてくれた。

それだけだった。何故、どうして、どうやって。何も答えてはくれなかった。

確かなことは、消滅という事実。そして―――クロスベル自治州の、新たなる動き。

 

時は遡り、10月24日、午前10時半。私達が学院祭を満喫していた真っ只中。

クロスベルでは、ディーター市長による大統領就任演説が行われていた。

同時に市長は、大国への宣戦布告とも取れる声明を出していた。

 

2つの事実の関連性についても、ミリアムは何も言わなかった。

10月24日に、国境沿いで何が起こっていたのか。私達は、疑うことしかできなかった。

 

そして学院祭の翌々日、10月26日。

士官学院生には登校の指示が下り、私はガイウスと一緒に教室へと向かった。

教室の扉を開くと、皆がリィンの机を取り囲んでいた。

 

「おはよう。みんなどうしたの?」

「ああ、おはよう・・・・・・その、これなんだけどさ」

 

リィンの机には、今日の日付の帝国時報が広げられていた。

一面には、今まで見たことがない程に大きな報道写真が1枚、掲載されていた。

 

「・・・・・・何、これ」

 

その写真を目の当たりにした瞬間、血の気が引いた。

思わず目を擦り、もう一度。再度目を擦り、痛みを感じた後に、三度。

学院長が『壊滅』を『消滅』と言い換えた理由が、そこにあった。

 

「・・・っ・・・・・・!!」

 

我慢できなかった。気付いた時には、私は駆け出していた。

行先は決まっていた。『1年半前』の真相を知っているであろう人間なら、身近にいる。

私は勢いよく教官室の扉を開き、目当ての人物の下に駆け寄った。

 

「サラ教官。新聞、見ましたか」

「・・・・・・ええ、見たわ」

「教えて下さい。クロスベルで、一体何があったんですか」

「落ち着きなさい。あたしにも―――」

「同じですよね。全部あの『異変』と、同じじゃないですか!?」

 

1203年の1月。あの時と同じだ。

国境沿いに集結した1個師団。国境沿いで突如発生した超常現象。

写真を一目見ただけで理解できた。あれは普通じゃない。絶対にあり得ない。

 

全てが同じだ。あの瞬間、この国では何かが起こっていた。

そして国境の先、リベールでは塩の杭事件を髣髴とさせる、異変が発生していた。

あの時と同じなら。1203年1月と同じだというのなら。

クロスベルでは、今―――何が、起こっているというんだ。

 

「もう一度言うわよ。落ち着きなさい。あたし達も全ては把握していないの」

「で、でも」

「遊撃士の端くれを名乗るなら、取り乱しては駄目。報道や噂に惑わされず、冷静な言動を選びなさい。いいわね」

 

サラ教官に諭されながら、周囲の視線を感じた。

冷静でないのは、冷静に分析できていた。今の私も、普通じゃない。

私には、どうすることもできなかった。サラ教官に空返事をして、私は教官室を後にした。

 

________________________________

 

午後19時。第3学生寮、自室。

私はリィンから借りた帝国時報を、一字一句逃さず読み耽っていた。

士官学院でも、いくつかの噂話を耳にした。

事実とは呼べないまでも、可能性を拾い上げることはできた。

 

ガレリア要塞の消滅を機に、数個の機甲師団がクロスベルへ侵攻している。

その度に返り討ちに合う程に、クロスベルは何らかの巨大な力を手に入れた。

1つの答えは、共和国の空挺機甲師団。

クロスベルが共和国と結託し、共和国軍が国境沿いに配備されたという可能性。

或いはリベールのように、得体の知れない新兵器をクロスベルが開発したというトンデモ説。

 

あくまで可能性だ。

この中に事実が1つでもあるなら、いずれにしても大変な事態に陥っているということになる。

 

「ねえ、アヤ」

「ん・・・・・・何?」

 

いつの間にか、自習に励んでいたはずのミリアムが、背後に立っていた。

その手には、黒い金属の塊。時折彼女が使用している、遠距離の無線通信機があった。

 

「これ、使う?」

「・・・・・・あはは、いいよ。以前怒られたって言ってたでしょ?」

 

以前に一度だけ、その通信機を使用したことがある。

ミリアムによれば、他人である私に使用を許してしまったことで、こっ酷く叱られたらしい。

叱られるという表現は易しいかもしれない。存在自体が『キミツジコウ』に当たるはずだ。

 

「私は大丈夫だから。心配させてごめんね」

「うん・・・・・・」

 

そんな顔をしないでほしい。

確かに通信が叶えば、現地にいるロイドらと話すことが可能だろう。

だがこれは本来あるはずのない物だ。彼女の立場を危うくするのも本意ではない。

 

「でもアヤ、すごく辛そうだよ」

「勝手に辛くしてるだけだよ。何が起きてるかは、誰にも分からっ・・・・・・?」

 

不意に、気配を感じた。

窓枠の向こう。確かにいる。忘れるはずがない、この感覚。

 

「アヤ?」

「・・・・・・ごめん。少し外に出てくる」

「えっ」

 

私は着のみ着のままで自室を後にし、そのままの足で第3学生寮を飛び出した。

まだ僅かに気配を感じる。街の東部へと、それが遠のいてしまっていた。

私は上空を見詰めながら、走り出した。随分と遠い。一体どこまで離れるつもりだ。

 

結局気配は街を外れ、街道に出てしまった。

かと思いきや、そこから数アージュ先で漸く距離が埋まった。

誘導したつもりなのだろうか。なら先に言っておいてほしい。

呼吸を整えてから、私は気配の名を呼んだ。

 

「おかえり、ラン。いるんでしょ?」

 

直後、ランは街道の木々から飛び立ち、やがて私の肩へと止まった。

姿を眩ましたのは、10月21日。5日振りの再会だった。

 

私は何も言わなかった。

街道の端に転がっていた小岩に腰を下ろし、唯々待ち続けていた。

やがて観念したかのように、ランは私の頭の中に囁いてくる。

 

『何も聞かぬのだな』

「聞かなくても、教えてくれると思ってたんだけどな」

 

想像するに容易い。

この5日間、ランが一体どこに身を置いていたのか。この状況下なら、1つしかない。

本来ランは、この地にはいない。いるはずがないのだ。

 

『フム・・・・・・一応訊ねておくが。知る覚悟はできているのか』

「教えて。全部見て来たんでしょ。もう、ランを頼るしか術が無いから」

 

目を閉じながら、夜の静寂に身を任せる。

覚悟はできている。知ってしまえば、私の身に何が起きるか分かったものじゃない。

だからと言って、逃げるわけにはいかない。事の規模はおそらく、この国に収まらない。

遅かれ早かれ、私は突き付けられる。どう受け止めるかは、私自身の問題だ。

 

『10月8日、午後18時21分。至宝の力が発現』

「は?」

 

突然、2週間以上時が遡った。一言目から置き去りにされた。

何だ今のは。その頃はまだ、ランも私と一緒にいたはずだ。

戸惑う私に構うことなく、ランは続けた。

 

『10月24日、午後15時18分。特務支援課らが式の中心地に突入』

「ま、待って。それって」

『同日午後15時51分、特務支援課らが敗北』

「・・・っ・・・・・・待ってよ」

『同日午後15時55分、零の至宝が覚醒。同日午後16時06分、3体の人形が君臨』

「待ってってば」

『同日午後16時21分、要塞とやらが消滅。同日午後16時29分、特務支援課らが拘束され―――』

「待ってって言ってるでしょ!!」

 

整えていたはずの呼吸が、再び荒んでいた。

心臓の鼓動音が聞こえる。1分にも足らないうちに、額に大粒の汗が浮かんでいた。

 

覚悟はしていた。だというのに、私はどう受け止めればいい。

まるで理解できない単語の中に埋もれていた、敗北の2文字。

私はそれを、どう解釈すればいい。

 

『案ずるな。大事には至ってはおらぬ。だが敢えて表現するならば、敗北であろうな』

「そんな・・・・・・どうして、ロイド達が」

 

確かなことは、クロスベルは私の理解が及ばない事態に陥っているということ。

睨んでいた通り、リベールの異変と同等か、それ以上の何かが起こっている。

そしてロイド達は、それに巻き込まれてしまった。

 

全部が繋がっているはずだ。

クロスベルの独立宣言に端を発した、この状況。

ガレリア要塞の消滅も。ロイド達の敗北も。私はそれらを、どう繋げばいい。

 

目を瞑りながら頭の中を整理していると、ランは肩を離れ、宙を舞い始める。

くるくると私の頭上を飛び回るランから、再び声が聞こえてきた。

 

『もう1つ、おぬしに見せておきたい物がある』

「・・・・・・何?」

『考えていた。因果に触れた身であるおぬしが、何故この地に留まっているのか。その答えは、おぬしの中にある』

 

さあ、選ぶがよい。今がその刻だ。ランはそう言った。

選択を唐突に迫られた。私にとって、それは別れを意味していた。


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