トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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書いてたら楽しくなって色んな視点書きたいなぁって思ってたらいつもより長くなりました。
分かる人は気づいてるかもしれませんが弱ペダ好きです。


第102話:夏合宿!地獄のランニング!

 合宿初日のトレーニングがスタートして、俺たちトレーナーはモニターを見ていた。各々にGPSが付いている腕輪を配り、誰が今どこに居るのかが分かるようになっている。

 

「ミークとサイレンススズカさんは共走してますね」

 

 葵さんは先頭にいる2つの信号を指さした。1番先頭をスズカがその後ろにミークが走る形になっている。

 

「2人で走ればお互い負担を減らせますからね。どちらかが風よけになったり、ペースメイクをしたり。坂道なんかは得意な方が前に出れば効率がいい」

 

 人間でも1人より2人の方が効率よく走れるだろう。だが、ウマ娘達は人間よりも早く走る。その分風の抵抗なんかも受けやすい。そう考えれば擬似的にスリップストリームを再現して走ると効率が上がる。

 

「それから離れてキングヘイローさん。更に後方にセイウンスカイさん。そこからはかなり距離を置いてグラスワンダーさんとスマートファルコンさん。少し離れてメジロマックイーンさんにライスシャワーさん、ミホノブルボンさん、ネイチャさん、ハルウララさんの5人ですか」

 

 キングとスカイもこのトレーニングの主旨を理解している。恐らくグラスワンダーとマックイーンも理解した上でのペースメイクだろう。マックイーンの後方4人はまだとりあえず走っているって感じか?

 

「グラスワンダーは流石にキツイですか……」

 

 グラスワンダーはスカイとキングの同期で黄金世代の1人だ。その才能と実力をジュニアの時に存分に奮っていた。しかし、怪我による休養でしばらく走っていなかった。

 

「グラスさんには無理をしないようにキツく言っておきましたから。本来なら夏までに怪我が治る予定ではなかったんです。けど、グラスさんの強い要望と想いがここまで彼女を回復させました。寧ろよく走っていますよ」

 

 グラスワンダーは賢いウマ娘だ。きっとそこは弁えているだろう。ファルコも割と前を走っている。

 

「ナイスネイチャはどうですか南坂さん。長距離とかって得意なんですか?」

 

 ナイスネイチャの走りを俺はあまり見たことがない。デビュー戦はまだ先というが。

 

「そうですね。ネイチャさんはああ見えて根性が凄いんですよ。考える力もあります。必ずこの1000kmを耐え切ると思います」

 

 南坂さんがそこまで言うんだ。いや……それだけ自分の担当ウマ娘を良く見て信頼してるってことか。

 

 1番最初に10kmを通過したのはスズカとミークだった。案の定と言うべきか、顔にもまだ余裕が見える。軽い給水を済ませてそのまま2週目に突入した。

 

「サイレンススズカさん楽しそうですね」

 

「ミークも楽しそうですけどね」

 

 2人は宝塚記念でも争ったライバルだ。しかし、今は共にトレーニングをする仲間だ。そんな相手と一緒に走れるのが楽しくてしょうがないんだろう。

 

 次に通過したのはキングだ。顔に多少疲れは見えるが、キングも給水を済ませて2週目に突入した。

 

「キングさんはたしか長距離があまり得意でないと聞きましたが……想像以上のスタミナですね」

 

 南坂さんの言う通りだ。キングは元々は短距離からマイル向きだ。しかし、クラシック三冠制覇、全距離G1制覇という大きな夢を目指して人一倍努力してきた。

 

「努力でスタミナは補えると俺は考えています。何よりもキングも根性ありますから」

 

 次に来たのはグラスワンダーとファルコだ。2人はここで休憩を取ると思ったがこちらも水分補給をして2週目に突入した。

 

「大丈夫かファルコ……グラスワンダーも2週目にそのまま突入するんですね」

 

「モニターを見てください。2人のペースがガクっと落ちました。恐らくこのペースで2週目を走って休憩に入ると思います」

 

 なるほど、ペースを落として疲労を最小限にして距離を稼ぐ。賢いやり方だな。

 次に来たのはマックイーンにライス、ブルボン、ネイチャ、少し遅れてハルウララだ。

 

 そして、休憩に入ったのはブルボンとハルウララの2人のみで残りのメンバーは2週目に行った。

 

「スカイから聞いた話じゃブルボンはもう一周行くと思ったが?」

 

「たしかに、私が1000kmを走破するなら休む時間などないでしょうしかし、私の目標は耐えて乗り越えることです。何よりも私のスタミナではここで休憩をするのが効率的と考えます」

 

 ブルボンもちゃんと学んでる。リタイアが出来ないこの状況で自分はどうすれば距離を稼げるか。そう思い休憩を減らすと効率が落ちる。ブルボンのようにスタミナのないウマ娘は定期的な休憩を挟んで走るべきだ。

 

「ハルウララも休憩ですか」

 

「ウララちゃんは短距離マイルの娘ですから。周りよりスタミナが無いのは仕方ないです」

 

 ウマ娘が10km走ること自体にはそんなに時間はかからない。しかし、そのスピード故に体に大量に疲労が蓄積されていく。走るのが早いウマ娘でも距離を走るならそれ相応の時間がかかるんだ。

 

(最高時速60kmで走るとしたら5時間で300kmで合宿の目標に3日で到達するしな……)

 

 そんなこんな午前中に走った距離は、スズカ、ミーク、スカイ、キングが50km。グラスワンダーとファルコが40km。マックイーン、ライス、ネイチャ、ブルボン、ウララが30km。

 

 結局マックイーンとライスとネイチャの3人は一緒に走っていた。ブルボンとウララは休憩を取り最終的に同じ距離走ったという感じだ。

 

「昼食は弁当を取ってあるから各々が適切な量しっかりと食べるようにしてくれ」

 

 トレセン学園メンバーの殆どは直ぐに弁当を手に持って食事を始めた。ナイスネイチャやブルボンは食べるのを少し辛そうにしていたが、それでも何とかエネルギーを摂ろうと口に運んでいた。

 

「やっぱり中々食事が進みませんね皆さん」

 

 南坂さんの言う通り、小等部メンバーの殆どは弁当に手がついてない。それもそうだ、普段走らない距離を延々と走らされ、しかも夏場のこの気温。食欲が失せるのも無理はない。

 

「ですが、ここでエネルギーを摂取しないと午後のトレーニングに支障が出ます。午前中だけでもかなりのカロリーを消費しているはずですし」

 

「葵さんの言う通りですね。ただ、ここで普段のトレーニング量の差が目立ちますね」

 

 参加した小等部で走ったのは最高で20km。20kmを走りきったウマ娘は結構居た。しかし、今食事に手をつけてるのはビワハヤヒデ、ウイニングチケットの2人だけだ。キタサンとダイヤも普段からトレーニングしているんだろうが……流石に年齢的に厳しいか。

 

「さぁ、午後からのトレーニングに耐えられるウマ娘は何人いるか……」

 

 

 ペースを抑えたり休憩を取ったりしても午前だけで50kmはかなり来るわね……普段走るロングコースよりも坂も下りがかなり緩やかなのが救いだった。

 昼食を摂ろう場所を探しているとお弁当と睨めっこしているタイシンさんを見かけた。

 

「どうしたの?食べないのかしら」

 

 私は彼女の隣に座って昼食を摂り始めた。食欲はあまり湧かないけれど、ここで食べないと午後からのトレーニングで走れなくなってしまう。

 

「私は元々少食だし……別に食べなくても大丈夫だから」

 

 彼女はそんな素っ気ない返事を返した。もちろんただの強がりだって言うのは分かる。箸を弁当に伸ばそうとするがどうしても食欲がないんでしょうね。

 

「その強気な姿勢は嫌いじゃないわ。ただ、あなた強くなりたいんでしょう?」

 

 すると、彼女は私に睨みをきかせてきた。そんな事は当たり前。だけど、強くない自分が嫌なのよね。

 

「ならば食べなさい。強くなりたいなら食べなきゃダメよ。それが出来ないなら、このトレーニングを耐えることなんて出来ないわ」

 

 私がそう言うと彼女はハッとした顔をする。そして、その目は覚悟を決めた目をしていた。彼女はたしかに強くはない。それ故に誰よりも強くなりたいと思ってる。

 彼女は弁当をかき込んだ。手で口を抑えて戻しそうになっても何とか飲み込んだ。そして、延々と弁当を食べ進め完食した。

 

「いっ言ったでしょ……私は少食なだけだって……」

 

 本当にこの娘は……トレーナーさんが目を付けるだけはあると思った。だって、私はこの娘がチームに欲しいと思ってしまったから。

 

「午後のトレーニング。先頭を走ってた2人に食らいつきなさい。あの2人よりも早く休憩を取っても構わない。ただ、最終日までには追いつきなさい!このトレーニングで自分を追い込んで……今までより強くなるの」

 

 強さに身長は必要な時もあるかもしれない。けれど、強くなるのに身長は必要ない。小柄を気にしてる暇なんてないわよ?

 

 

「キタさんにダイヤさん。随分とお疲れですわね」

 

 昼食を終えて私はキタサンとダイヤさんの元にやってきていた。正直私も疲れは溜まっている。しかし、それと向き合っていると余計に疲れそうだったので、気を紛らわす意味でも2人とお話したかった。

 

「あはは……流石に応えますね」

 

「私たちも頑張ったんですけど……」

 

 キタさんは苦笑いをしていて、ダイヤさんは自分の実力不足を噛み締めている。

 

「お2人はまだ体が出来上がってませんもの。でも、お2人は仲良しですし、お互いの弱点を補い合えばもう少し走れると思っていましたが……」

 

 すると、2人はお互いを見て目をパチパチとしている。まさか、2人とも共走を上手く出来てませんわね。

 

「どちらかが苦手でどちらかが得意な所は先頭に出て引いて行けば、もう少し走る距離を伸ばせるはずですわ。午後からはコースに慣れ始めて皆が走る距離を伸ばしてきますわ」

 

 休憩感覚。コースの癖。そういうものを見極め始めたウマ娘達がきっと走行距離を伸ばしてくる。

 

「「ありがとうございます!マックイーンさん!」」

 

「いえいえ、頑張ってくださいな」

 

 とは言え、それは私たちも同じこと。私も油断出来ませんわ……延々と続く疲労の蓄積と精神的消耗。かと言って休憩は余計に取る訳にも行かない。頑張らないと行けませんわね。

 

 

 約1時間の休憩を挟んでスズカやミーク達が再び動き出そうとしていた。

 

「午後からは5kmのところにも休憩所を用意してあるから有効に使ってくれ!」

 

 葵さんには5km地点の休憩所に行ってもらった。この休憩地点を上手く利用出来るウマ娘はどれだけいるか。休める場所があるとついつい休みたくなるものだ。休憩時間ばかり増えて走る時間を減らすか、上手く休憩を挟んで効率を上げるか。

 

 午後になって全員がスタートした。午前に溜まった疲労があるから、ここからはまた違ったメンバーで走る事になるだろう。

 

 マックイーンがライスやブルボン達を置いて1人先行し始めた。スタミナの差がで始めたか。その後方にブルボンとハルウララ。そして、更に後ろにライスとナイスネイチャだ。

 

「ブルボンとハルウララは休憩スパンが短い分ペースを上げたか」

 

「そうですね。ライスシャワーさんとネイチャさんもそのペースに引っ張られる事無く冷静にペースメイクしています」

 

 必要なのはハイペースじゃない。自分にあったペースで距離をしっかりと走ること。長距離が得意なウマ娘とマイルや中距離が得意なウマ娘とではペースが変わってくる。

 1日目の後半戦……動きがどう変わるか。

 

 

 私はキングヘイローさんに言われた通りに先頭の娘に付いて行っている。周りよりもペースが速くて付いていくのがやっとだ。

 

(このままじゃダメだ。今の私じゃ自分だけの力だと……)

 

 上手く行くかは分からない。相手とは面識があるわけじゃない。それに、私は強くならないといけない。変なプライドも今は必要ない!

 

「ねえアンタちょっといい?」

 

 返事は無かった。けれど、耳は反応していたから声は聞こえているはず。

 

「私は先頭のアンタに付いてかなくちゃいけない。でも、私はアンタより遅いから長い距離付いてけない。だから……共走しない?」

 

 言っている事はめちゃくちゃだ。それでも、私は!

 

「ふむ。それで、私には何のメリットがある?」

 

 食いついた!

 

「私は最初にアンタを引く。その後、私がついていけない様なら切り捨てて貰って構わない!悪い提案じゃないと思うけど?」

 

 悩んでる。それでも、相手も少しでも体力は温存したいはず。それならいつでも切り捨てられる引き役はいて困らない。

 

「っふ……良いだろう。その提案乗らせてもらおう」

 

 やった!これで半分引いたとしても残り半分を少ないスタミナ消費で走れる。そう思って、前に出ようとすると。

 

「ねえねえ!その話私も乗らせてくれない?」

 

 さっきからずっと近くを走ってる娘が私の話を聞いていたようで話しかけてきた。

 

「私ウイニングチケット!長い時間1人で走ってるのも辛いし……ダメかな!?」

 

「勝手にすれば!」

 

「ありがとう!2人の名前は?」

 

 どうやら着いてくる気らしい。でも、付いてくるって事はきっと速い。私よりもこの娘は速いんだろうな。だけど、今は好都合!

 

「私はナリタタイシン……」

 

「私はビワハヤヒデだ」

 

「そっか!よろしくね!タイシン!ハヤヒデ!」

 

 こうして、私の合宿初日の第2ラウンドが始まった。

 

 

 午後は特に問題なく進んだ。小等部から何人かリタイア者は出たが、そんなに多くはない。そして、午後5時に1日目が終了した。1日目はあくまで様子見だからな。明日からが合宿本当の1日目だ。

 

「今日はスズカとミーク、キング、スカイの4人が100kmグラスワンダーとファルコが80km。マックイーンとライスが70km。ブルボンとハルウララ、ナイスネイチャが60km。タイシン、ビワハヤヒデ、ウイニングチケットが50kmか」

 

「小等部の3人が想像以上に伸びましたね」

 

 走行距離を見て南坂さんが3人を指差す。俺も正直この3人は予想外だった。いつものコースの坂よりも控えめなコースを選んだが。それでも50km走ったか。

 

「でも、本番は明日から……ですよね、柴葉さん」

 

「その通りです」

 

 スズカやミーク、スカイとキング辺りは初日の様子見だろう。それでも距離走った。ペースが例え遅くともこれだけの距離を走れば疲労は蓄積する。しかも、今日の時間でその疲労を抜き切るタイミングは無かった。

 

「小等部のウマ娘は今ここでリタイアすることも可能だ。それと、希望者はそのまま同じ宿でこの5日間を過ごせるように準備もしてある!」

 

 小等部の生徒は日帰りでの参加も可能にしてある。しかし、朝から晩までしっかりと合宿に参加したい者は許可制で受け入れてある。

 結局残ったのは半数程度で残りは帰宅した。慣れない環境での宿泊は疲労も溜まるしストレスも感じる。日帰りしたい娘は多いだろうな。

 

「晩御飯の準備ができているので皆さん食堂に集まってくださーい!」

 

 葵さんの呼びかけで生徒たちが食堂に集まって来た。そして、食堂に用意してある大量の料理を見て絶句していた。

 

「今日君たちは今までにない量走った。そして、明日からも走るわけだが。朝と昼はエネルギー補給。そして、夜の食事は体作りに直接関わってくる。1日完全に疲労を抜き切る事無く動かし続けた今は体が栄養を吸収する。それに、夜の寝ている時間の超回復にはしっかりとした食事が必要だ!しっかりと食べるように!」

 

「トレーナーさん……?流石に全部食べろって事は無いですよね?」

 

 流石の料理の量にスカイから質問が飛んできた。ここにいる中で大食いのウマ娘は少ない。寧ろ少食と言われる娘もチラホラいる。

 

「何当たり前のことを聞いているんだスカイ」

 

 全員が少しホッとしている。そうだこんな多い量の料理。

 

「残したら失礼だろう」

 

 ヤバいヤバい。想像以上の視線の痛さなんだけど。しかし、今日の運動量に見合うタンパク質や栄養を補うには大量に食べなきゃいけない。それに……問題は明日以降だ。今日食べれないようじゃ地獄を見る。

 

 

「あれれ〜?マックイーンちゃんもう少し食べた方が良いんじゃない?」

 

 私が晩御飯を取ってテーブルに着くと正面にスカイさんが座ってきた。

 

「とりあえずですわ!これを食べ終わったら取りに行きます」

 

「いやいや、しょうがないと思うよ?私は今日マックイーンちゃんよりも多く走ったからお腹ペコペコだなあ」

 

 くぅ!大人気ないですわ!たしかに、スカイさんよりも私は距離を走れてないですけど……しかし、私はスカイさんの箸があまり進んでいない事に気がついた。

 

「そんなこと言ってスカイさん先程から箸が進んでないようですが?私はこの通りパクパクですわ!」

 

 私もそれほど食欲があった訳じゃない。だけれど料理はまだ沢山ある。今必要なのは勢い!

 

「なっ何言ってるのかな?この通り私もいっぱい食べれるよ!」

 

 この後、私とスカイさんは争うように晩御飯を食べた。ついでに私が勝ちましたわ!

 

 

 昼間にタイシンさんにあれだけ言っておいて、放ったらかしと言うのは薄情だと思い探していると、横に2人の娘が座っていた。

 

「あら、お友達も一緒に参加していたのタイシンさん」

 

「別に友達じゃないから!」

 

「えっ!?一緒に走ったから友達じゃないのタイシン!」

 

 随分と愉快なお友達が出来たみたいね。途中から誰かと走ってるとは思っていたけど。

 

「あの、チームレグルスのキングヘイローさんですよね?私はビワハヤヒデと言います」

 

「えぇそうよ。初めましてビワハヤヒデさん」

 

 皐月賞を取って日本ダービーに出走していれば流石に名前も知れてるのね。

 

「キングヘイローさん!ダービーで2着だっ……あっごめんなさい」

 

 彼女はたしかウイニングチケットさんね。

 

「いいのよ。あなたはダービーに興味があるのかしら?」

 

「うん!そうなんです!私はいつかダービーを走りたいんです!」

 

 敬語とタメ口が混ざった様な喋り方ね。あまり敬語に慣れてないのかしら?

 

「そう……いい夢ね。頑張りなさい」

 

 目標は力になる。それが明確な目標であればあるほどいい。

 

「ところで……この量の食事を一気にとる事に意味があるのですか?たしかに、柴葉トレーナーの言うことに一理はありますが……」

 

「そうねぇ……ビワハヤヒデさんは翌日立ちたくないと思うほどの疲労を溜め込んだ事はあるかしら?」

 

 彼女は私の唐突な質問に困惑している。私は知っている。筋肉痛と疲労感で学園に登校するのも苦痛だった。あの地獄の様なランニングの日々を。

 

「いえ……ありませんが。しかし、たしかに疲労はあれどそこまでではありません」

 

 今はそうでしょうね。初日のトレーニング。尚且つ自分達が憧れるウマ娘たちとの共同。自分達が思っている以上にアドレナリンが分泌されて疲労を感じにくいはず。

 

「きっと明日の朝には分かるわ。それよりも……この料理をどうにかしないとね」

 

 疲労感の地獄は味わったことはあった。まさか満腹で苦しくてこんな目に合うとは思わなかった。

 

 

 みんなが各々食事を摂る中。俺はキタサンとダイヤが目に付いた。2人は少しづつだがしっかりと食事を取っている。

 

「2人共あまり無理はするなよ?たしかまだ小4だろ?」

 

 あくまでもこれは高学年とトレセン組を想定したトレーニングだ。2人の歳じゃかなりキツイはずだ。今日だって合計30kmは走っていたはずだ。

 

「いえ……小さいからと言う理由で甘やかさないでください!私たちはスカイさんたちとトレセン学園で一緒に走りたいんです!」

 

「その通りです!」

 

 2人はそう言って食事に再び手を付けた。そうか……2人はそれだけの覚悟を持ってこの合宿に参加してきたんだ。

 

「そうか。それはすまなかった。だったら少しだけアドバイスだ。今日は早く寝て……少し早めに起きるといい」

 

 2人は首を傾げていたがこれは重要だ。睡眠は疲労回復にも肉体強化にも必要なことで、朝は早く起きないと体のエンジンがかかるのにかなり時間がかかるからな。体を起こす時間もな。

 

 晩御飯も無事食べ終わり就寝時間になった。明日から合宿本番だ。何人が明日一日を乗り越えられるかな。

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