トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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第104話:厳選!残った精鋭たち!

 2日目の早朝トレーニングに来た人数は昨日からガクっと減っていた。昨日リタイア者は今日中にリタイアを決めろって言ったからな。

 

(これは殆ど残らないな……)

 

 案の定朝食後に殆どのメンバーがリタイアして行った。残った小等部は……5人だけか。

 

「今朝の時点で多くのリタイア者が出た」

 

 食堂に今残ってるメンバーを全員集めて集会を始めた。現状の把握と軽いミーティグのために。

 

「現在残ったのは、ナリタタイシン、ウイニングチケット、ビワハヤヒデ、キタサンブラック、サトノダイヤモンドの5人だけだ」

 

 たったの5人。トレーニング中のアドバイスも殆どないし、やることは1000kmを走る目標だけ、モチベーションなんてゴッソリとえぐられてただろうな。

 

「ナリタタイシン!お前はいまなぜここにいる?」

 

 俺の唐突な質問に周りがザワつく中、冷静にタイシンは答え始めた。

 

「私が速くなるため……ライバルを追い抜くため」

 

「ありがとうタイシン」

 

 たった2日間の間に目標を設定し、ライバルと言える存在ができている。賞賛に値するだろう。

 

「ほかのメンバーが脱落したのはトレーニングを見てくれないから、トレーニングがキツイから、俺らのチームに興味がなかったの3つだ……だが、G1出走ウマ娘の走りを生で見たり、トレセン学園の生徒と走ることが出来る……これだけでも十分すぎるメリットがこの合宿にはあった」

 

 他にも同世代と共に走ることでのモチベーション向上。自分の今の実力を知ることも出来るし、こちらからのバックアップありの万全なトレーニング環境だ。

 

「ここからは、俺を含めるトレーナー3人で走りに対して口を出すこともある。必要だと思ったことはしっかりと取り入れることにしてくれ」

 

(まぁ……俺は既に結構口出しちゃってるけどな)

 

 元々質問が来たら答えるというスタンスでやっていたが、俺はタイシンに結構深入りしてしまった。

 

「朝のミーティングは以上だ!2日目でかなり疲労が溜まってると思うが……各々の目標のため頑張ってくれ!」

 

 

 そして、昨日のようにトレーナーも2チームに別れてトレーニングの監督を行っている。昨晩も走ってたファルコとキングも疲労は残ってなさそうだ。

 

「マックイーン休憩か」

 

「えぇ……流石に夏の暑さの中での長時間のランニングは体に堪えますわ」

 

 マックイーンはドリンクを持って日陰の方に休みに行った。俺にもそれについて行く。

 

「マックイーンは辛くないか?」

 

 俺の質問にマックイーンは首を傾げた。少し言葉足らずだったな……

 

「スズカやスカイなんかは目標を持たせて走らせてる……だけど、マックイーンには何を示してやればいいかわからなかった。申し訳ない」

 

 俺の心配を他所に、マックイーンは何も思ってないように汗を拭っていた。

 

「ここには私が追うべき相手も、私のことを追う相手もいますわ。それだけで頑張るには十分だとは思いませんか?」

 

 マックイーンの目には強い想いが宿っていた。

 

「私もスズカさんやスカイさん、キングさんのようにこのチームを代表するウマ娘になってみせますわ!」

 

(それに……私には負けられない相手がいますし)

 

 道を示さなくても自分で我が道を歩むか……さすがはメジロ家の令嬢と言うべきか。トレーナーとしては少し寂しい気がするが。

 

 合宿2日目はその後問題なく進んだ。昼食を済ませて夕方、晩のトレーニングでもリタイア者や怪我人も出なかったが……問題は3日目の午後に起きた。

 

「トレーナーさん!ダイヤちゃんが!」

 

 ダイヤがキタサンの肩を借りながら2人でスタート地点に戻ってきた。俺は急いで2人の元に駆け寄った。

 

「どうした!?怪我か!?」

 

「ここより少し前で足をつっちゃったみたいで……何とか足は伸ばしたんですけど」

 

 疲労とこの暑さにやられたか……この周回に入る時は大丈夫そうだと思ったが。もう少し目を光らせて見ておくべきだった!

 

「ダイヤ痛むか?」

 

 彼女の足を軽く触った。筋が張っていて、かなり筋肉を酷使していたのが分かる。

 

「ッツ……痛いです」

 

 触っただけで痛いか……骨などには異常はなさそうだし、怪我に直接繋がってるわけじゃない。しかし、これ以上の運動は確実に怪我に繋がる。

 

「サトノダイヤモンド……ここでリタイアだ」

 

 瞬間にダイヤは焦ったように俺の腕を掴んだ。

 

「待ってください!合宿はまだ終わってない……キタちゃんだってまだ走ります!私だって少し休めば!」

 

 俺は首を縦に振らなかった。ここまでの肉体疲労……普通に走っていれば俺が気づいてたハズだし、本人が気づいていなければフォームなどもブレる。しかし、前周のダイヤのフォームは綺麗だった。

 

「ダイヤ……お前隠してただろ。自分の足が限界に近いと気付いてて」

 

 ダイヤは押し黙った。やっぱり図星だよな……ダイヤはまだ子供だ。ここで強く言うのは可哀想だが、合宿に参加している以上は俺が言わないといけない。

 

「いいか?お前のその行為は危ないことだ。今回は何も無かったが怪我……いや大怪我に繋がっていた可能性だってある。近くにキタサンがいたからよかったが居なかったらどうするつもりだ!」

 

「ごめんなさい……」

 

 ダイヤは目に見えるように落ち込んでいた。ここまで頑張って走っていた……その行為を注意されることになったから。俺もそのやる気は褒めてやりたい。だが、怪我に繋がるほどのオーバーワークを俺は注意する義務がある。

 

「ダイヤちゃんはここで休んでて?私は走ってくるから……ってあれ?」

 

 さっきまで座っていたキタサンが立ち上がろうとしたが、上手く力が入らずに座り込んでしまっていた。

 

「あれ可笑しいな……上手く力が」

 

 キタサンの足は震えていた。彼女もほぼ限界状態だったんだろう。この合宿で気分も上がって疲労を忘れる程に必死に走っていた。ダイヤが無事だと分かって安心した所に、体が疲労に一気に気がついたんだ。

 

「キタサン……お前もリタイアだ。その限界な状態でよくここまで走った。さっきの話を聞いていたなら……分かるよな?」

 

 彼女は無言で頷くと落ち込んでショボンとしていた。けど、しっかりと納得はしたようだ。

 

「歩けるようになるまでここでアイシングをして、そのあとは宿舎に戻ってゆっくりと休んでくれ。お前たちは本当に良くやったよ」

 

 2人の頭にポンっと手を乗っけると2人は泣き始めてしまった。自分たちはここまでだというのを改めて実感して悔しかったんだろう……この歳でここまで悔しがって挫折を味わったなら、この2人はトレセン学園に入るまでに確実に力をつけるだろう。

 

 

「小等部のお2人はリタイアですか……頑張っていたのに」

 

 葵さんは名残惜しそうに2人を見送った。頑張る2人に好印象を持ってるのは俺だけじゃない。

 

「むしろ頑張りすぎでこれ以上は怪我になりますから……流石に止めざるを得ません」

 

 脱落者はそこから出ることはなかった。スカイはスズカ達を射程圏内に捉えて、タイシンも小等部先頭の2人を捉えた。しかし、キングが少し厳しい。夜のトレーニングで距離を縮めてはいるが……あと2日目で追いつき切れるか。明日が追いつく最後のチャンスになるだろう。

夏祭りに一緒に行きたいウマ娘

  • スズカ
  • スカイ
  • キング
  • マックイーン
  • ブルボン
  • ファルコ
  • タイシン
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